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平和希求し広島訪れる世界の若者たち 第2次大戦と現代の戦争を重ね論議 「西側の正義は偽善だった」 平和公園で原爆と戦争展

広島平和公園でおこなわれた原爆と戦争展を真剣に参観する外国人の若者たち(4月27日、広島市)

 原爆展全国キャラバン隊(本紙後援)は4月27、28日、広島市中区の平和公園で街頭「原爆と戦争展」をおこなった。ウクライナ戦争やイスラエルによるガザへの無差別攻撃など世界的な戦争情勢のなかで、戦争を止め、平和を求める問題意識をもって世界各国から多くの人々が広島に足を運んでいる。展示に足を止める外国人参観者は、原爆を投げつけられた広島・長崎市民の視点からの写真や証言、子どもの詩などを目にし、衝撃を受けている。とくに若い世代の外国人参観者は日本がどのようにして戦争に進み、戦後日本を占領したアメリカがどのように統治・支配し現在に至るのかについても強い関心を示していた。そして、過去の戦争でも現代でも、戦争を煽動する一部の政治家や支配層が存在し、彼らの政治的・経済的利権獲得の思惑のために何の罪もない市民が犠牲になることへの憤りを口々に語っている。

 

虐殺容認する政治への怒りを共有

 

展示に多くの人が集まり、順番を待つ列ができた(4月27日、広島市平和公園)

 広島平和公園の原爆の子の像横でおこなわれた街頭展示には、多くの外国人観光客が関心を示し、パネルのスタート地点には順番待ちの列ができた。日本全国の人々の戦地での体験、全国空襲、沖縄戦、広島・長崎の原爆など、第二次世界大戦前から日本の敗戦、戦後から現代まで、体験者の証言を中心に時系列を追って構成された展示に、多くの人々が真剣に見入った。

 

 とくに欧米諸国では、戦勝国アメリカ側の「原爆投下は戦争を早く終わらせるために必要だった」という政治的通説のもと、実際にそこに暮らしていた人々が原爆によってどのような被害を受け、どんな思いで生きてきたかを知る機会はないという。そのため「広島を訪れて本当のことを知りたい」との思いをもって海外から来る人が多い。参観者は、体験者の証言をベースにした「第二次大戦の真実」パネルに衝撃を受け、「もっとも説得力がある資料だ」「直接証言を聞くのと同じくらい貴重」などの反応が目立った。

 

 展示を見たイギリス人の女性は、「ヨーロッパでは、原爆以外にこれほど日本全国で爆撃があったことは教えられてこなかった」と驚いていた。女性は東京都に約一カ月間滞在したことがあったが、都内で東京大空襲の犠牲者を弔う慰霊碑などをまったく目にする機会がなく、「知っていればこの目で見たかった」と話していた。原爆だけではなく、全国空襲や沖縄戦、東京大空襲についても詳しく展示されていることに触れ、「東京では、米軍が何度も何度も空襲をくり返し、人口密集地を狙って25万人もの人が犠牲になった。一方で皇居や三菱、新聞社などは爆撃を受けなかったということを知り、完全に日本を戦後支配するための戦略的な攻撃だったのだとわかった」と話した。また、日本の現在の軍拡の動きについても言及し、「日本政府が軍備増強のためにどんどんお金をつぎ込んでいることは私も知っている。とても心配だ。これらはすべてアメリカの影響下でおこなわれていることは明らかであり、第二次世界大戦の終戦から今までずっとアメリカと日本の関係は変わっていないということを示している。展示のなかでも、戦後のアメリカの占領政策について詳しく書いてあったことがとくによかった」と感想をのべた。

 

 また、「今日、原爆資料館にも行ってきたが、私はこの街頭展示の方が良い内容だと思う。大きな違いは、資料館のような“報告書”ではなく、当事者の体験や苦しみを知ることができる点だ。西側の視点とはまったく異なるとても良い展示だ」とのべた。そして現在の世界的な戦争情勢について「戦争は多くの場合、経済的利益のために起きるものだ。今のガザ戦争も、イスラム教とユダヤの宗教対立のように描かれるが、現実はまさに金のための戦争だと思う。だからアメリカ政府はイスラエルへの軍事支援を絶対にやめようとしない」と指摘していた。

 

 ドイツ人の友人数人と一緒に参観したドイツ在住の日本人男性は、「世界中の人たちが日本の原爆の被害を学ぶためにこれほど真剣に参観してくれているのを見て嬉しく思う。今、世界各国の政府の戦争に対する態度が問われている。ドイツ政府は今のイスラエルによるガザへの攻撃を支持している」と語った。

 

 明らかな民間人の虐殺をおこなっているイスラエルに対して、ドイツ国民のなかでは批判の声が広まっているにもかかわらず、ドイツ政府がイスラエルへの軍事支援を続けていることについて、「ドイツでは、第二次世界大戦中にユダヤ人に対しておこなった残虐行為の反省から、イスラエルに対して何もいえない関係性がある。ナチスが600万人のユダヤ人を殺し、戦後ドイツは毎年多額の賠償金を支払いながら罪を償ってきた。賠償はもう終わっているが、それでもいまだにドイツ政府はイスラエルに対して頭が上がらない」と説明した。

 

 また、「国民が声を上げにくいのは、東西冷戦の影響もあると思う。ベルリンの壁崩壊以後、ドイツ国内では西側の“自由圏”が政治の主導権を握り、アメリカ色が強い。今、ドイツ含め欧米諸国がアメリカにならって“イスラエルを助けろ”といっているなかで、イスラエル支援に反対の声を上げようものなら“お前は東側か?”というレッテルが張られるのではないかという無言の圧力もあるのではないかと思う」と指摘した。それでも国内では多くの人々がイスラエルによるガザ市民への無差別爆撃に対して怒りの声を上げていることを語り、「イスラエルは病院やモスクなどへの攻撃をくり返し、ガザでは三万人以上もの人々が犠牲になっている。ドイツ政府はイスラエル政府に頭が上がらない関係性であることもみな知っているので、“おかしい”という思いがありながらも声を上げにくい部分もあると思う。それでもイスラエルが民間人を狙っていることは明らかで、世界中から非難されるべきだ」と話していた。

 

 20代のドイツ人女性は、イスラエルによるガザへの無差別攻撃が続いていることについて、アンケートに「私は戦争継続を決断した政治家たちに大きな怒りを抱いている。なぜ人々が国籍や宗教の縛りであれほど強く同一視する必要があるのか理解ができない。そうした視点を持つおかげで、本来は分離ではなく最終的には団結すべきなのに、そのことに気づかず、暴力を正当化することになる。人間として、私たちは戦争を止めなければならない。これまでに犯された過ちをくり返し続けるのではなく、異なる未来を創造するために、できることは何でもやる必要がある」と思いを綴った。

 

市民の視点は国籍超える 戦争させないために

 

 ゴールデンウィークということもあり、日本人の親子連れや若い世代の真剣な参観も目立った。

 

 東京都から来た20代の男性は、「自分がいかに無知だったかを気づかされた展示だった。私自身、両親や祖父母から戦争のことは人並み以上に聞かされてきたと思う。だが、日本側の視点から“やられた”という被害の部分だけ見ていてはわからない戦争の中身やその裏側の出来事があると感じた。とくに、戦後日本を完全に占領するためにアメリカは戦争になる前から計画的に日本を追い込み、先に手を出させたという記事を読み、なるほどと繋がる部分があった」と話した。また、「先日、オッペンハイマーの映画を観た。原爆を開発した科学者側の視点で、その部分だけにフォーカスした内容だったが、アメリカにはアメリカの戦略や事情があったと知った。過去に留学していたときに、友人に“原爆についてどう思うか”と聞くと、“あれは絶対に必要だった”といわれてすごく悔しかったことを思い出した。とはいえ、小さい頃からアメリカ側の観点から歴史を教わればそういう思考になるのは仕方ないことかもしれない。だが、今こうして海外の人たちが真剣に展示を見てくれていることが嬉しい。日本人である私も含め、戦争について考えるうえで、自国以外の戦争の歴史や観点を学ぶことはとても大切なことだと思う」と話していた。

 

 1時間以上かけて展示を読み込んだ20代の女性は、アンケートに「広島以外では観ることができない戦争のリアルを知ることができた。とても貴重な学びを得ることができた。アメリカにも日本政府にも偏らないこのような展示こそ大切だと思う」と記した。

 

「表面上“勝者”でも人道的敗者だ」 外国人参観者のアンケートより

 

参観後にアンケートと記入する外国人の若者たち(広島平和公園)

 外国人参観者は参観後のアンケートに、展示に対する感想や意見、そして現在起きている戦争や紛争、民間人に対する武力行使へ強い憤りを記している。とくに若い世代が真剣に戦争について考えており、アメリカの占領政策や戦後の日本国民に対する抑圧、天皇や政治家の対応など、戦後から現代に繋がる歴史に強い関心を示している。以下、内容を紹介する。

 

 ▼興味深い。広島の人々に対しておこなわれた出来事の結果に光を当て、広めることを促進させるものだ。アメリカの占領中、そしてその後も、アメリカが日本に残した政治的、経済的影響の下で多くの声が沈黙させられてきた。また、都市への爆撃は戦争を終わらせるために必要だったわけではなく、アメリカ帝国主義を日本に広めるためにもっとも有利な条件で戦争を終わらせるために必要だった。この展示があるおかげで、かつて国際社会に起きた大惨事について公平な情報を得ることができる。市民への残虐行為は誰であっても非難されるべきだ。国際社会において西側諸国は“偽善者”だ。ウクライナ市民への攻撃には全会一致で非難したにもかかわらず、イスラエルが犯したパレスチナへの攻撃については正当化している。またその西側主要国の主張は、米国政府に依存した一辺倒なものだ。(イタリア・22歳男性・学生)

 

 ▼第二次大戦の終結と原爆投下に対する日本人の経験や考えを初めて知ることができた。私は今まで、アメリカの視点からの見解や分析は知っていたが、それらはすべて地政学的、歴史的観点からおこなわれたものであり、民間人が経験した恐怖についてはほとんど語られていなかった。この展示は、目撃者から直接証言を聞くのと同じくらい貴重で、誠実なものだ。この時代だからこそ、真の日本人の苦しみと絶望を伝えてくれたこの展示に感謝する。帝国主義とは、より多くの権力、より多くの領土、より多くの金を国(国民)が求めるよう煽動するものだと思う。20世紀に起きた残酷な戦争からでさえ、人類はその教訓を学んでいない。そしていまだに国際社会は、市民が攻撃の標的となることに“合意”している。現代の戦争に対して、ただ市民を保護するためだけに戦争を止めるのではなく、全個人がウクライナやパレスチナの人々の助けとなるために考えなければならない。そして、誰も彼らの人生や生活に踏み込むべきでない。また、人々はパレスチナが国家として認められるようもっと勉強する必要がある。(フランス・22歳女性・学生)

 

 ▼(この展示は)食べやすくするために“砂糖でコーティング”されていない生モノのようだ。感情的にならずにすべて情報を読むのは難しいが、それでもここにある“真実”を提供することは重要なことだ。世界中で起きている戦争や紛争の大きな問題は、ごく少数の人々が権力を手に入れ、維持しようとすることだ。まるでかつて戦争の裏側で天皇が日本の国民に対しておこなったことと同じように。(オーストラリア・40歳男性・ソフトウェアエンジニア)

 

 ▼自分の無知を痛感する展示だった。これまで見たことのない写真や生存者の生々しい体験談を見て、戦争と原爆がもたらした痛みを少しでも感じ取ることができた。どんな理由があっても戦争はおこなうべきではない。結局、罪のない人々が傷つくことになる。そして彼らの死は次の世代に苦しみを残す。第一次世界大戦のドイツ軍兵士の言葉を引用する。「ドイツの降伏後、指導者たちはただ座って話し合った。なぜ彼らは最初からそれをしなかったんだ」(ドイツ・24歳男性・会社員)

 

 ▼啓発的な展示だ。また同時に辛すぎた。人々に対する戦争の暴力を目にし、とても辛かった。戦争の壊滅的影響と全世界共通の平和の尊さを忘れないためにも、この展示は不可欠だ。私はあらゆる形での暴力を非難する。それが戦争であればなおさらだ。また、そこに政治的、経済的目的があることを無視してはならない。その影響を受けた民間人、子どもたち、すべての人々のことを思うと、今世界で起きている戦争が早く終わり、平和な生活を送ることができるようになってほしいと思う。(アメリカ・30歳男性)

 

 ▼アメリカがこれほど日本に対して残虐で暴力的であったということを私は知らなかった。この展示は非常に示唆に富んでいる。また、日本人犠牲者のすべての写真や体験談を読むことはとても辛かった。世界で続いている戦争や紛争は平和的に解決されるべきだ。政府や一部の卑劣な人々の利益のために無実の人々が犠牲になるべきではない。誰であろうと絶対に戦争に反対しているはずだと思いたいが……。(ドイツ・26歳男性)

 

びっしりと感想が記された原爆と戦争展のアンケート用紙

 ▼言葉を失った。いいようのない悲しさと寂しさを感じる。なぜ広島で起きたような残虐行為が今も世界各地で続いているのか、私には理解できない。過去の傷を癒やし、より平和な未来を築くことは、教育と過去から学ぶことによってのみ実現できると信じている。この展示に感謝している。写真を見たり証言を読むことは苦痛だったが、現実を直視し、戦争がいかに恐ろしいことか、そして戦争はいまだに終わりがないという現状を理解するために必要なことだ。(ドイツ・26歳女性・セラピスト)

 

 ▼ドイツでは、ドイツが犯した戦争犯罪について多くのことを学んできた。広島でも、何十万人もの人々がこの悲劇に耐えなければならなかったという話を読むと気分が悪くなる。このように戦略的な戦争作戦によって罪のない人々の命が破壊されるということは例外ではなく、忘れてはならない。展示をおこない、平和を呼びかけてくれてありがとう。私たちは、戦争にはどんな口実も許されないということを学ばなければならない。金に支配された権力者のために人々が殺されるのを許してはならない。(ドイツ・23歳女性・農家)

 

 ▼すべてを文書化してくれたことに感謝する。この展示は、私がこれまで読んできた資料のなかでもっとも説得力のあるものの一つだ。体験者の記事や証言、被害者の写真は、この都市が耐えなければならなかった残虐行為をよく伝えている。79年前に私はここにいなかったが、まるで私がそのときにいたかのように感じさせる力があった。ぜひこれからも新しい内容を記録し、資料を追加し続けてほしい。すべての戦争は間違っている。表面上の「勝者」が誰であろうとも、地球上で戦争をおこなっている時点で人道的な敗者であることは間違いない。(ベルギー・34歳男性・IT企業従業員)

 

 ▼展示の序盤の内容が非常に興味深かった。1930年から1939年にかけての時期に日本で起きた出来事が、今日のロシアの状況と酷似していると感じた。世界の国々の市民は、もしも自国政府が軍事政権の導入や戦争を始めようとするなら、それを止めるために立ち上がらないといけない。そうしないとまた日本や広島で起きた悲劇がくり返されてしまう。(ロシア・37歳男性)

 

【関連】「原爆と大戦の真実」パネル縮刷冊子

 

(5月3日付)

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この記事へのコメント

  1. 田中新也 says:

    この「原爆と戦争展」をWEB上で拝読することは出来ないでしょうか?

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