いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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泣きながら腹を立てていた甘利明

 週刊文春に贈収賄スキャンダルを暴露された甘利明(経済再生担当相)が1週間かけて記憶を呼び覚ました結果、大臣を辞任した。もったいぶったために逆に注目を浴びて記者会見が生中継され、全国のお茶の間にしどろもどろでいい訳する姿が映し出された。一人の男が泣きながら腹を立てている。しかし弁護士が作成した原稿を読むだけなのに緊張している。その様子を見て、世論をひどく恐れていることはわかった。自信を持って潔白を訴えられなかった時点ではじめから詰んでいたのだ。裁判所の準備書面かと思うような長い弁明原稿は、1週間かけて自己保身の鎧をまとっただけだったことを示していた。
 会見は、安倍政府の危機感も相当なものであることを伺わせた。開き直って続投した場合には本人だけでなく、お友達内閣の傷跡も深いものになりかねなかった。辞める以外に選択肢など残されていなかったようだ。「懐刀」を失った任命権者が病気みたいな顔をしているのがそれを如実にあらわしている。あっちもこっちも意図に反して八方塞がりになっていく。たかが週刊誌報道と思っていたのが、権力だけでは抑えきれない力関係によって揺さぶられていくのである。
 甘利明が担当していたのは、TPP交渉であり、アベノミクスの経済政策であり、いまやこのどれもが吹き飛んでしまいかねない趨勢だ。株価は大暴落の淵をさ迷い、世界的な金融危機を前にして如何ともし難い状況を迎えている。場合によっては年金基金を焦げ付かせた責任だって安倍政府は負わなければならない。TPPは米国本国ですら反対世論が強まり、各国で批准できるかどうかも危うい。政治、経済全般にわたって修羅場はまだまだこれから先で、国内の反発も猛烈に吹き荒れているなかで、安倍政府の倒壊がはじまろうとしている。甘利事件はその端緒となった。
 甘利明の最後っ屁はテレビ画面を活用した「潔い政治家」アピールだった。しかしながら、その口から出てくる言葉だけが“真実”とはならない。筆頭秘書が深く関与した事件の真相は何ら解明されていない。50時間の録音等等の動かぬ証拠を突きつけられ、恐れるから辞任したのであって、都市再生機構に対するゆすりたかりを口利きした疑惑は払拭されていない。大臣辞職だけでなく、議員辞職して出直すのが筋だろうし、検察も真面目に仕事をしなければならない。同じようにさらし者にされ丸坊主にして驚かせた号泣県議と比較しても本人自身の反省が感じられず、むしろ腹を立てているから驚かされる。             武蔵坊五郎

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