いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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嫌韓あおるメディアの罪

 安倍政府が韓国ともめ始めたのをきっかけにして、大手紙や週刊誌、テレビをはじめとしたメディアが異様極まりない嫌韓ブームを煽り始めている。寿司でも奢られてハッスルしているのか、暴支膺懲(ぼうしようちょう・「横暴な支那を懲らしめろ」の意)をスローガンにして日中戦争に突っ込んでいったかつての反省などどこ吹く風で、扇動をくり返しているのである。「ソウルは3日で占領できる」などと武力侵略をほのめかす週刊誌まで出てきており、これは到底看過できるものではない。しかし一方でふと考えると、いつも「北が攻めてくる!」「中国が攻めてくる!」と攻められることばかり心配して煽っている輩が、今度ばかりは「占領できる」、つまりいつの間にか攻める側に立場を置いているのだからいい加減なものだとも思う。不戦の誓いなどすっかり忘れ去っているのだ。

 

 表現が露骨であるか狡猾であるかの違いこそあれ、戦後最悪ともいわれる両国関係の亀裂について「ちょっと待て!」と歴史的変遷も踏まえて解決方向を見い出すような論調が乏しい。目前の日韓対立の動向を垂れ流すだけであったり、はたまた「韓国がけしからん」と悲憤慷慨(ひふんこうがい)するようなものばかりが氾濫している。大手紙では毎日新聞が8月27日付の仲畑流万能川柳の一番トップに秀逸記号付きで「台風も日本のせいと言いそな韓」を選定して話題となった。毎朝楽しみにチェックしている仲畑流万能川柳だったのに、秀逸の基準はそこなのかと少し残念なものでもあった。ヘイトを煽っているとの批判を受けて「毎日新聞社として、掲載にあたり“嫌韓”をあおる意図はありませんでしたが、“嫌韓をあおる”と受け止められた方がいらっしゃったという事実について、真摯に受け止めております」と、釈明の文章を発表することとなった。しかし、数日後に「土下座って舌を出しても分からない」が秀逸付きで掲載されたのが、実は返答なのかとも思ったのだった。

 

 ひどいのが週刊ポストで「“嫌韓”ではなく“断韓”だ 厄介な隣人にサヨウナラ」「韓国なんて要らない」「“10人に1人は治療が必要”--怒りを抑制できない“韓国人という病理”」等等の見出しで民族差別意識を丸出しにした。記事中では「ソウルは3日で占領できる」などの見出しも打った。その後、同誌にエッセイを執筆していた作家が反発して執筆陣からおりる旨をツイートし、今後は版元である小学館からの仕事は請けないことを表明する知識人があらわれるなど影響が広がり、「誤解を広めかねず、配慮に欠けておりました」と文章を発表するにいたった。販売部数において週刊文春の一強状態といわれるなかにあって、飛び跳ねることによって自誌の存在感をアピールし、嫌韓に投機したのだろう。ビジネス右翼とそっくりな行動原理である。

 

 その他、ワイドショーときたら他国である韓国のことなのに、文在寅側近の疑惑をたいそう時間を割いて報道し、その嫁がどうとか細部にわたって扱っている始末だ。森友疑惑から逃げ回る安倍昭恵とか、自国の権力者界隈の疑惑についてはへっぴり腰だった者が、よその国の政治家になるとたちまち熱を上げている。これまた不思議な光景である。斡旋利得罪が疑われている汚れ政務官とか、国内でも徹底追及すべき取材対象はゴロゴロいるだろうに、みな韓国叩きでカモフラージュしている。しまいには、東京の韓国大使館に銃弾のような金属と脅迫文のような文書が送りつけられ、ドサクサに紛れて丸山穂高までがひょっこり出てきて「(竹島も)戦争で取り返すしかないんじゃないですか?」とツイートする始末なのである。

 

 戦争狂いが大きい顔をしてのさばる社会などろくでもない社会であると断罪し、ペンの力によってたたかわなければならないジャーナリズムが、逆にナショナリズムを煽って加担する。メディアの現場から戦争のなまなましい記憶を脳裏に刻んだ世代がいなくなり、編集責任者から記者にいたるまでが平和ボケ世代に交代してきたという問題もあるだろうが、日頃からなんでもかんでも権力に忖度して飼い慣らされているうちに、言論人が好戦的な世論を煽ることへの抵抗意識を失い、その矜持が根本から取っ払われている。広告をもらうスポンサーに忖度し、政治家に忖度し、権力にもみ手をしながらでも適当に食えればそれで良しというのなら、堕落である。二度と国民に塗炭の苦しみを味わわせないために、権力の暴走や社会が誤った方向へ進むことを阻止し、第四の権力として任務を付託されているのがジャーナリストであるはずだ。

 

 東アジアを彷徨う旧植民地主義の亡霊が往生しきれず、74年たった今も3代目に意識だけが引き継がれて顔を覗かせている。韓国が戦後レジームから脱却しつつあるなかで、面白くない感情を爆発させていよいよ行き場を失い、孤立を深めているのが実態だろう。そのことによって日本社会にとっての国益、近隣諸国との友好平和も含めた関係を断ち切るというのなら、それは反日売国奴のやる所業である。必要のないトウモロコシを爆買いするのと同根なのだ。 武蔵坊五郎

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この記事へのコメント

  1. 長崎のファン says:

    私もこんな「ヘイトスピーチ」に遭いました。もう5年になりますが近所の路上をただポケットに手入れて歩いてただけで何も気に障ることしていないのに「なんかその態度は。おまえ朝鮮人か」と見知らぬ人にどなられて必死で逃げました。背後からナイフで刺された気分がして怖かった。許せない。こういうヤツラが支持している政治家、企業のトップが世の中の中心であり続けていることに怒りを感じます。

  2. 私も記事の論文に同意します。こんなことがまかり通るメディアは看板を下ろすべきです。

  3. 揃いも揃ってメディアが嫌韓、嫌中をあおるのは愚の骨頂。
    戦前に酷似している。
    歴史を学び同じ過ちを犯さないようするのが重要だ。
    そして過ちに対してはきちんと謝罪し誠意を示す。
    天然資源のない国、日本は、周囲の国々と協調する以外に生き残る道はありません。

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