(2026年2月24日付掲載)
自民党安全保障調査会が20日、武器輸出規制の全面緩和に向けた政府への党提言素案を全体会合で了承した。素案は防衛装備移転3原則の「5類型」撤廃、国際共同開発品の第三国移転容認、紛争国への武器輸出容認が主な柱だ。日本は戦後、武力参戦に直結する武器輸出を禁じてきたが、歴代政府は武器輸出規制を緩和し続け、昨年11月には米国に初となる殺傷兵器(完成品)輸出を強行。そして今度は戦争当事国への武器輸出を解禁し、武力参戦の地ならしに乗り出している。しかもこの規定変更は閣僚による運用指針改定のみで、国会での法改定は不要。国会論議も経ぬまま今特別国会会期中に運用指針改定を強行しようとしている。
「5類型」撤廃し18カ国に武器輸出想定
自民党が撤廃を目指す「5類型」は2014年に決定した防衛装備移転3原則の運用指針で定めたもので、完成品として輸出できる品目を「救難、輸送、警戒、監視、掃海」に限定。そのためこれまでの防衛装備品輸出は警戒管制レーダー、救難艇、輸送艦など殺傷力のない装備に限られていた。しかし「5類型」をめぐって昨年12月に自民党と日本維新の会が与党の実務者協議を開始し「5類型」撤廃の方針を確認。自民・維新はすでに連立政権合意書で「5類型」撤廃を明記しており、戦闘機や戦車、長距離ミサイルをふくむ攻撃兵器の海外輸出解禁を目指している。
また防衛装備移転の運用指針は日本と他の国が共同で開発した「国際共同開発品(完成品)」の扱いも規定。それは共同開発相手国への輸出は可能だが、共同開発相手以外の国(第三国)への輸出は基本的に禁止していた。だが提言素案にはこの規制を廃止し、共同開発相手国以外の第三国へ共同開発兵器輸出を容認する方針を盛りこんでいる。
加えて防衛装備移転3原則は「紛争当事国」への武器輸出を禁じている。そのため自民党政府はウクライナを「紛争当事国」ではなく「被侵略国」と規定し「防弾チョッキなど殺傷能力のない装備品に限って輸出を認める」といった限定的対応をとってきた。ところが自民党素案は「現に戦闘がおこなわれていると判断される国」への武器輸出は原則不可としつつ、「我が国の安全保障上の影響を考慮して特段の事情がある場合」は殺傷兵器の輸出が可能と規定。「特段の事情がある場合」は紛争当時国への武器輸出を認める内容を盛りこんだ。
具体的な武器輸出先は防衛装備移転協定を結ぶ国(現在は18カ国=米、英、仏、独、伊、スウェーデン、豪、印、シンガポール、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイ、アラブ首長国連邦、モンゴル、カナダ、バングラデシュ)を想定。それは対中国をにらんだ軍事同盟「オーカス」構成国の米英豪、南シナ海の領有権問題で中国と争うフィリピン、ベトナム、マレーシア、ロシアに対抗するNATO加盟国(仏、独、伊、スウェーデン等)へ日本から武器を供給する体制にほかならない。
今後、自民党は3月上旬に提言を政府に提出し、7月17日までの特別国会期間中に防衛装備移転3原則の運用指針見直しを実行する構えだ。しかも同運用指針の改定は法改定を必要としない。政府は国家安全保障会議(NSC)の9大臣会合で決定し、問答無用で実行に移す青写真を描いている。
歴代政府が進めた武器輸出
武器輸出をめぐって日本は戦後、痛ましい戦争の経験から「全面禁止」の立場を堅持してきた。ところが1983年に中曽根政府が「3原則の例外」として米国に武器技術の供与を決定。それ以後、武器輸出規制の緩和に拍車がかかった。そして2014年に安倍政府(当時)が武器輸出禁止3原則を撤廃し「防衛装備移転3原則」を策定した。それは3条件(①紛争当事国などを除く、②輸出を認める場合を限定し厳格に審査、③目的外使用や第三国移転に事前同意を義務づける)を満たせば、他国への武器輸出を認めるもので「武器禁輸」ではなく「武器輸出のルール」にすり替える方針転換だった。
そして2022年2月にロシアがウクライナに侵攻すると岸田政府(当時)がウクライナへの装備品支援方針を決定した。防衛装備移転3原則は武器輸出国について「紛争当事国などを除く」と規定していたが、同年3月に防衛装備移転の運用指針を変更。「防衛装備移転を認める国」にウクライナを追加し防弾チョッキやドローンを供与した。
さらに米国政府が、日本製火薬や155㍉砲弾を提供するよう圧力を強めると、2022年末に閣議決定した安保関連3文書で「防衛装備移転の推進」を明記。2023年12月に防衛装備移転3原則と運用指針を改定した。
そして「米国がライセンス元の場合、部品の輸出だけ容認(完成兵器移転は不可)」と規定していた「ライセンス兵器移転」について「完成品を含め米国以外のライセンス元国への輸出を解禁。ライセンス元国から第3カ国への移転も容認」と変更。ウクライナ限定で殺傷能力のない装備品輸出を認めた「被侵略国への支援」は「ウクライナに限らず被侵略国へ自衛隊法上の武器ではない装備品が輸出可能」と変えた。「国際共同開発」については共同開発相手国限定で日本からの部品・技術輸出を認めていたが、「日本から第三国へ部品・技術の直接輸出可能」と変更。「殺傷兵器輸出は禁止」としていた防衛装備移転3原則の「5類型」に関しては「本来業務や自己防護に必要な殺傷能力のある武器は輸出可能」と変えた。
さらに「ライセンス兵器」はこれまで「米国に完成兵器を輸出することは禁止」「戦闘機のエンジン部品など部品類の輸出しか認めない」と規定しており、ライセンス元の米国でも日本から「完成兵器」を輸出することはできなかった。ところが米国が「ウクライナに送る弾薬や武器が足りない」と主張し日本で生産した弾薬や武器を米国へ供給するよう要求すると「ライセンス元国への完成兵器輸出」を認め、米国へのパトリオット(地対空ミサイル)輸出を決定。高市政府は昨年11月に日本でライセンス生産したパトリオットを米国へ引き渡していた。
そのうえに防衛装備移転3原則の「5類型」を撤廃し、共同開発兵器の第三国移転や紛争国への殺傷兵器輸出解禁を目指しており、日本を世界の紛争地に武器を送りこむ武器供給拠点に変貌させる有害極まりない計画が浮き彫りになっている。





















