(2025年10月8日付掲載)

柳井市で対話集会を開いたれいわ新選組の山本太郎参議院議員(3日)
「山本太郎とおしゃべり会」全国ツアー中のれいわ新選組は3日、山口県柳井市のサンビームやないでおしゃべり会を開催し、市内外から200人以上の人々が参加した。参加者からは、上関町で計画されている中間貯蔵施設(関西電力の原発ゴミ廃棄場)建設問題や岩国基地問題をはじめ、地元の人々が抱える具体的な政治課題についての質問があいつぎ、それら地方で起きている国政の問題をいかに解決していくかについて議論が展開された。今回のツアーでは、各都道府県のなかでも都市部ではなく地方に足を伸ばし、それぞれの地域に暮らす人々のリアルな問題意識と結びついた質疑が活発におこなわれている。柳井市での質疑を中心に、各地域の参加者と山本代表とのやりとりを紹介する。

(スケジュール出典:れいわ新選組HP)
質問 なぜ今回おしゃべり会の開催地を柳井市に決めたのか。今後どのような選挙を想定しているのか?
山本 全国ツアーはれいわ新選組を立ち上げる前からずっと続けているが、その理由は二つある。一番の目的は、みなさんとのコミュニケーションを通じて、国民に対して今何が必要なのかをよく理解するためだ。柳井市では初開催だが、私も来たかった。この地域の問題として、「核のゴミ捨て場」にされる可能性が高いということを考えると、今日はそういった声も実際に聞けるのではないかと思っている。建設計画については、私自身もかなり近づいてきているという危機感がある。みなさんとのやりとりを通して、私たちに足りない部分や、何に力を入れていくべきなのかを勉強したい。
もう一つの目的は、れいわ新選組の候補者になってくれる人との出会いだ。山口県は保守王国でもあり、れいわ新選組はほとんど生息していないような状況だ。下関市には地方自治体議員としてれいわの議員がいるが、さらに一緒に自分たちの街やこの国を変える大きな運動にしていくために、柳井のみなさんにも私たちの考えを知ってもらいたい。
また、おしゃべり会を通じて今後れいわから国会議員や地方自治体議員への立候補のお誘いもしている。とくに自治体議員はチャンスがある。山口県内では、来年4月に市議選がある山口市と下松市、10月に市議選がある岩国市は、私たちにとっての重点選挙区だ。この3市では、過去の国政選挙におけるれいわ新選組の比例票が、それぞれの市議会における当選ラインの3~4倍ある。れいわ新選組から出馬していることをしっかり周知することで議会に入ることができる可能性が高い地域だ。
質問 将来的に山口2区(1人区、現職は岸信千世〈自民〉、比例復活で平岡秀夫〈立憲〉)でれいわ新選組から候補者を擁立する可能性はあるのか?
山本 平岡さんは、私たちの敵ではないと思っている。一個人の意見としては、法務大臣をしていた頃も知っているので、れいわ新選組の経済政策などと大きなずれがない限り、平岡さんに走れるところまで走ってほしい。ただ世代交代も必要なので、そのタイミングで私たちが候補者を擁立する可能性はあるかもしれないし、私の希望は十二分にある。
質問 岩国市から来た。岩国には米軍基地があり、騒音被害がひどい。昨日も夜の10時頃まで米軍機が飛んでいた。米軍の人たちは岩国市の行政サービスを受けられるし、図書館や子ども支援センターを利用できる。だが私たち日本人は、米軍基地内にあるきれいな公園やボーリングセンター、スケートパークをまったく使えない。この不平等をどうにかしたいという思いが常にある。
山本 今回東京から飛行機で岩国空港に来たが、離陸するときと着陸するときに、機内で「米軍が使うところだから撮影するな」というアナウンスが流れていた。
米軍基地が近くにある地域はどこも騒音問題に悩まされている。WHOの騒音の標準は30~35デシベルと定められているが、日本の学校では50~55デシベルと世界基準よりも高めに設定されており、世界で日本だけ騒音の基準が緩い。沖縄の学校で航空機騒音を測定したら、100デシベルをこえることもある。電車が通過するガード下の騒音と同レベルで何も聞こえない。そんな状況が放置されている。
だが国はきちんと調査しない。学校の衛生基準による調査はできるが、学校側が希望した場合に限り、年に2回実施できるというものだ。また、その方法も決められた1日のうちたった5分間だけ騒音を計測するという、何の意味もないものだ。
それでも、「米軍基地があるおかげで街が潤っている」「地元にとってもプラスじゃないか」という空気感がある。だが、実際には沖縄でも米軍基地だったところが返還され、民間が利用することで経済効果が上がったということもわかっている。つまり沖縄の場合、地域経済発展の阻害要因が米軍基地だということがわかっている。岩国でも同じことがいえるかもしれない。
日本はひと言でいえば米国の植民地だ。米軍機は航空法から除外され、どれほど低空飛行をしても許される。米国内では絶対にやってはいけない訓練でも、日本国内なら許される。米軍は世界中の国々に展開しているが、必ずその国のルールに従うということになっている。だが、唯一在日米軍だけは日本国内のルールに従わなくて良いという話になっている。日米「同盟」というが、実際には宗主国と植民地の間柄だ。日本は米国からの間接的な被支配の状況から脱しなければならない。真の独立国になるには時間がかかるかもしれないが、それまでの間に日米地位協定を改め、米軍を日本国内の法令に従わせるという形に変えていく必要がある。
故郷守るために行動を 核のゴミ捨て場問題

質問 中間貯蔵施設建設計画がある上関町のすぐ近くに住んでいる。地域の衰退が進むなかで、私たち住民はお金でなんとかしようという主張と、命の方が大事だという主張で分断されてきた。山本代表の意見を聞きたい。
山本 中間貯蔵施設は受け入れてはいけない。「人目から遠い」という理由だけで瀬戸内海の地域が目を付けられている。私が議員になる前に、ドイツに視察に行ったことがあるが、最終処分場の候補地では工事が進まず、中間貯蔵施設も休止中になっていた。その原因は、どちらも固い岩盤だということで選ばれたものの、人間の手が加わったことにより岩盤に水の通り道ができてしまい、地下から水が出続けるようになってそれをくみ出し続けなければならなくなり、前に進めなくなっていた。
「中間貯蔵」だといって上関に核のゴミを置くことになったとして、最終処分場の建設を決められるわけがない。だから結局上関が最終的な核のゴミ捨て場になる。そうなった場合、「安全に管理します」などといわれるだろうが、ドイツですら安全に管理できていなかったし、人目に付きにくい場所で何か問題があった場合、それに対して誰かが声を上げるという状況になりにくい。また、廃棄物を入れる容器には耐用年数があり、それをこえると中身が漏れ出す危険性もある。どんなに深く地下に埋めても、漏れ出した放射性物質が地中の水と繋がれば、地上に出てくる可能性もある。
今、自分たちの手で漁業を営んで美味しい魚をとったり、美味しい作物を作ったりできる皆さんの故郷が、核で汚染されるような状況は絶対に避けなければならない。
では、核のゴミをどうするか? 一つは、核で発電している地域に最終的な処分までを仕事としてやってもらう。ただ、これに対しては元々福井県側から「核のゴミを置くな」「県外に出せ」ということで話が進んでいることなので、当然反発もあるだろう。
もう一つは、そもそも福井で作った電気は福井県内ではなく、大阪などの大都市を支えるために使われている。福島第一原発も同じで、東京の人たちが生活するために発電していた。今まで原発を引き受けて日本の発展のために大都市を支えてくれてきた地元の人々のことを考えると、もうこれから原発は電力消費地のど真ん中に置くしかない。もしそこで放射性物質が漏れれば多くの人が騒いで大問題になるだろう。私自身はずっとそうした主張をしている。
上関中間貯蔵施設をめぐっては、周辺1市3町で様々な活動をしていると聞いた。そういう活動を続け、各市町の議会に仕事をさせて、知事に対して牽制していくことが非常に重要だ。
受け入れる理由はカネでしかないだろう。私もお金の話をたくさんするが、お金というのは国を支え、国民が幸せに生きていくための道具の一つでしかない。多くの人々がお金を追い求めなければならない社会構造にされてしまったなかで、本来なら国は地方自治体が住民の命を守れるような予算分配をしなければならないはずだ。だが国は小泉政権以降、地方に対する支出を絞り続けてきた。だからどの自治体も疲弊しているし、自分たちでお金を刷れないから住民が困っていても支出を躊躇する。国は地方への予算を絞り、財政を苦しくさせることでコントロールしやすくし、「これを受け入れたら楽になるぞ」と誘導する。
国民も同じで、6割が「生活が苦しい」といっている。だから目の前の生活で精一杯になって政治に興味など持てなくなるし、ギリギリの状態で生活する人が多ければ多いほど政治はコントロールしやすくなる。国を統治する者たちは果てしなく頭が良く、人々を分断させる。この半年間、「外国人が~」という話にさせられている。参院選の本来の争点は外国人問題ではなく、30年間国を衰退させて国民を貧乏にさせたということから、この国を立て直すための経済政策は何が必要かが最大のテーマだったのに、それを外国人問題でかき消された。
中間貯蔵施設をめぐっては、みずから札束で顔を叩かれに行こうとする人たちもいるだろうが、それも作られた分断だ。だが決して自分たちの故郷を売らないでほしい。今までとは違う力で政治を動かし、この国をまともな国にしていく以外方法はない。最後の希望はあなたという存在だ。勝つか負けるか分からない戦いではあるが、私は諦める気にならない。不備も多く完璧とはいえない選挙制度だが、これがあるうちはまだひっくり返せるチャンスがある。まずはこの地域の住民の皆さんの力を発揮して、故郷を守るために行動すれば、中間貯蔵施設を止めることができると思う。みんなでやれることをやっていこう。
地方創生で強い国作り 災害対策とあわせ

質問 地方では、人口規模に対して子どもの数が少なすぎるという問題を抱えている。柳井市では人口3万人(今年9月1日現在の推計人口2万8446人)に対して子どもが100人(2024年の出生数120人)だ。このまま消滅してしまうのではないか。どうしたらいいのだろうか?
山本 子どもを育てる以前に、自分の地元に仕事があるかが大事だ。経済的基盤がなければ子育てなんてまず無理だ。地域で回るお金の量が減っていくという現象が進む一方で、東京や大阪、名古屋など特定の地域だけが肥大化してきた。この国が持つ人、カネ、モノという資産を、どこに投下するかを考えたときに、ここ数年は大都市で大イベントをおこなうということを熱心にやってきた。それが万博でありオリンピックだ。やる必要なんてないのに、そこに利権と票と金が固まっているから結局やる。
一方で、日本全国には「消滅可能性都市」が増えるばかりだ。地方創生など名ばかりで、カネは流し込むが結局は都会のコンサル会社がもうかるだけで、地域の人々の経済状況の底上げにはなっていない。こんなことをずっと続けている。
この国の経済は30年間落ち込み続けている。働き方を壊し、高い税金で国民の力を奪い続けた結果、この柳井市でも少子化が進んでいる。地域が衰退して回るお金が減れば、仕事自体が減る。だからどこか別の地域に出て行くしかないというのが現状ではないだろうか。
消滅の可能性さえある地域に人々の営みを復活させるためには、大々的な地方創生が必要だ。そのために私たちが考えていることはいくつかある。
南海トラフ地震は今後必ず来るといわれており、その規模は阪神大震災の18倍、東日本大震災の10倍だ。日本の生産設備は太平洋沿岸に集中しているが、地震によって多くの人命と設備が失われ、供給能力が壊される。モノが作れなくなることにより、ハイパーインフレが起こる可能性もある。東日本大震災のときも東北沿岸の工場が破壊され、実際にモノ不足になった。
だからこそ減災対策に加え、国がお金を出して企業と協力し、大きな被害が予測される太平洋沿岸の生産設備をバックアップとして日本海側などに分散させる必要がある。これによって、それぞれの地域に仕事が生まれ、雇用も増える。災害対策と合わせて地方が再生できる仕組みを国が作っていくべきだ。
今、東京でもしものことが起きたらこの国は終わりだ。東京の都市機能が破壊されてしまったとしても、その代わりを務められる地域を増やしていくことこそが強い国づくりだ。今からでも本当の意味での地方創生をやり直していく必要がある。
学校と子どもの教育 予算つけ人員増やせ
質問 45年間教員をしている。いつの時代も子どもたちはかわいいものだが、学校は大きく変わってきた。とくにこの20年来、新自由主義的な方針の下で能力主義や成果主義が強まり、人手不足も深刻だ。非正規や非常勤が増え、正規の教員が減って現場はとても大変だ。人を増やすためにはお金が必要だが、お金をどうやって生み出すのかという財源の問題で議論が行き詰まる。信用創造によって無からお金を作っていくという議論をどうやって進めていけばいいのだろうか?
山本 学校現場は大変だ。「教師になったら地獄」ということが広まりすぎて、教師になりたい人が減っている。現場の教師は仕事を抱えすぎて残業に次ぐ残業で、家に帰っても仕事をしなければならない。その結果、年間7000人の教師が精神を病んで休職している。教師がこれだけ精神を追い込まれる環境では、子どもたちも普通ではいられない。
これはまさに新自由主義的なコストカットを進めてきた結果だ。世界の「教育機関に関する公的財政支出」を見てみると、2022年時点で日本はOECD38カ国中ワースト4位だ。お金がどんどん削られて教師を増員できないなかで、生徒をコントロールするために滅茶苦茶厳しい校則を作らざるを得なくなる。ルールで子どもたちを縛り、とにかく手がかからないようにしないと学校が運営できない。これでは大人にとっても子どもにとっても地獄だ。
教師は授業だけではなく、授業の準備や生徒・保護者の対応、部活などもしなければならず、一人が抱える仕事があまりに多い。一方で残業代という概念すらないという狂った環境だ。この状況を変えるには、教育にしっかり予算を付けて人員配置を増やすしかない。
では、財源はどうするか? 今質問された方も、国はお金を創り出すことができるという話を周囲にしているとのことだったが、そのような考え方は日本のなかで一般的ではない。テレビや新聞では、「みんなから集めた税金をどう使うか」しかないという刷り込みをやり、足りないときは国が借金をしなければならず、その借金は国民みんなの借金だという。だから、「学校の教師を増やさなければ」という当たり前の話でさえ、結局財源の話になって「無責任なことをいうな」という扱いを受けてしまう。
だまされているのは国民だ。どの国も国家の債務(借金)は増え続けている。そして先進国の多くの国々は、その債務を国民の税金で返済しておらず、国債を借り換える事実上の「永久国債」によって返済する。だから借金が増え続けるのは当たり前だ。
政府の借金は、あなたの借金とはまったく別だ。あなたの借金は死ぬまでに返さなければならないが、国の借金は返してしまうと世の中のお金が減ってしまう。
簡単にいうと、社会に流通しているお金の多くは、国が社会に供給したお金だ。国は借金という形をとって通貨を増やし、社会にお金を供給している。
「国が借金をするのがけしからん」というのなら、みなさんが過去にもらった10万円の給付金も国に返さなければならないはずだ。でも、国から「あのときの10万円を返せ」といわれただろうか? いわれるわけがない。国民一人に10万円を配るために、国は13兆円の赤字を作った。一方でその13兆円分の黒字は国民が持っている。ただそれだけのことだ。「政府の借金が1000兆円をこえた」と報道されるが、その1000兆円分の資産は民間の側が持っている。その証に、一般政府債務の増加にともない、家計金融純資産(資産・債務差額)も増え続けている。
「私の家計は増えていない」という人もいるだろうがそれは別の話だ。借金して作ったお金を、国がどこに投下していくかでお金の広がり方は変わってくる。これが10万円給付などという形であれば確実にみなさんの家計に届くことになる。
教育現場の話に戻るが、軍拡に60兆円も注ぎ込めるなら教育にもお金を注ぎ込めるはずだが、政府がそこに使いたがらない。60兆円の軍拡のためには簡単にお金を刷るが、学校現場が疲弊し子どもたちが苦しんでいる状況に対してはびた一文出したくないという考え方だ。金は無限ではないが、必要なものには出せて当り前だ。
それでも、「借金はだめだ」という人はいるだろう。そういう人には、日本の債務残高と金融資産を比べてみてほしい。国・地方の債務残高が1280兆円で国民一人当りの借金は1037万円だといわれている。一方、国(企業・家計・政府)の金融資産は9895兆円で、国民一人当りの資産は8019万円もある。「日本はこれ以上借金をしたら財政破綻する」という人もいるが、その借金を余裕で上回るほどの金融資産があるのだから破綻しようがない。
6割の国民が「生活が苦しい」といい、1万社以上の中小企業がバタバタと潰れている。金はあるのに、これだけ社会が不安定化していることが一番の問題だ。だからこそ財政出動して消費税を廃止したり、給付をしたり、教育現場に投資して教員を増やすことをやらなければならない。
口塞がれても真実発信する 社会立て直すため
質問 市議をしている。私のいる自治体の元市長は、県の政策などにたてついたことでスキャンダルに陥れられた。他にも昨今のSNSなどでの行きすぎた誹謗中傷などを見ていると、私自身、議員になったらいいたいことをいってやろうと思っていたが、今は自分の議会等での発言が統制されていくのではないかと、正直怖くなってきている。
山本 自分がいったことに対して何かいわれるというのは、誰しもが緊張するだろう。だが、それで萎縮してしまって発言する人が減るのは社会的損失だ。私の場合は芸能界にいたときに「原発はいらない」といったときから今まで、そういった感覚が壊れてしまっている。原発には、電力会社や電機メーカー、メガバンク、建設会社などありとあらゆる既得権が絡んでいる。彼らに対して発言するということは、大きな反応が返ってくる。私の場合も、当時所属していた事務所に抗議の電話が鳴り続けて事務所機能がパンクして、所属している芸能人全員が仕事の連絡がとれない状況になった。あれはおそらく組織的な攻撃だった。
テレビや新聞が踏み込んだ主張をしない裏にはスポンサーの存在がある。そしてネットはそれ以上にお金を投じてコントロールしやすい。見たい内容しか見ないという環境のなかで、自分の関心がある情報に近いものばかりが集まる世界ができあがり、流れてくる情報が事実かどうかを判断する以前に勝手に事実だと思い込んでしまうようになる。だからこそ、今回の総裁選で小泉氏のステマ騒動みたいなことも起こる。自民党がずっとやってきた手口であり、「Dappi」のように野党側の足を引っ張るために悪口をいったり、事実と異なることをいうように操作してきた。
議員として行動したり発信することが怖くなるというのは昔の比ではないだろうが、それはもうしょうがない。自分が何をしたいのかが大事だ。それだけの気持ちや覚悟がなければこんなことはしていない。社会を食い物にしてきた資本側と対峙するには、私たちれいわ新選組のような者たちが必要だ。風が吹けば飛ぶような存在かもしれないが、彼らにとって一番目障りな存在だと思う。資本側に食いつぶされてきた社会を立て直すという思いで活動している以上、嫌な思いをするのも当然だ。自分が成し遂げたいことがあるのなら、どんなに厳しくても飄々(ひょうひょう)とやり続ける以外ない。
政治本来の姿とり戻す 全国各地での質疑より
質問(出雲市) 自民党総裁選の過程を見ての受け止めと、高市氏が総裁に決まったことへの受け止めや政策への危機感、今後どう向き合っていくのか教えてほしい。
山本 総裁選の期間中、テレビを点けたら自民党のことばかりで、政治コーナーはすべて総裁選。そうやって国民のなかに「自民党」が刷り込まれていく。テレビはみなさんのためのものではない。NHKは別として、無料で見られるということは何かしら意図があると思った方が良い。資本主義の世界では当たり前のことだ。
総裁選の話に戻ると、一刻も早く国民救済をやらなければならないのに、あまりにも薄味な政策のオンパレードで、議論さえもほとんど深まっていないことを2週間も3週間も垂れ流されてお腹がいっぱいだ。
結果として総裁は高市さんに決まったが、だからといってこの社会が大きく変わるきっかけにはならないと思う。30年の不況を立て直すにはあまりにも政策が小粒すぎる。今の日本には、対症療法ではなく根本治療をしなければならない。高市さんだけではなく他の候補者もみんな一緒だし、もっといえば自民党だけでなく他の政党もみんな一緒だ。失われた30年が40年になるような内容しか提案されていないことは非常に問題だ。
「高市さんは積極財政派だ」などという人もいるが、何をいっているのかと思う。場面場面で違うことばかりいっている。2021年10月の衆議院選挙の立候補者アンケートでは、消費税について「現状維持」と回答している。失われた30年の最中にあり、コロナもあるなかで現状維持で良いといっている。
そもそも、自民党の総裁選ではかなり良いことをいいながら、総理になってからてのひらを返すというのが自民党の伝統だ。バックにいる経団連つまり資本側にとって不利なことはやらない。だから消費税減税もやらないだろう。だからこそ今になって、「給付付き税額控除」などといっている。消費税は普通にとって、あとからキャッシュバックするというようなことだが、それではだめだ。今使えるお金を増やさなければならないのに、「あとからキャッシュバックします」みたいなことでは消費は活発にならない。
「経済は高市だ」という空気が流されているが、それは実際にこれから何をするかで判断しなければならない。大きな期待を抱かずに、高市さんから何を引き出せるのかを考えながらお尻を叩いていくしかない。
質問(米子市) 土木建設業の会社に勤めている。建設業では、作業員、重機オペレーターなど現場での実働部隊が少ない、若い人材が入らず高齢化が進んでいる。現状、その穴埋めとして外国人技能実習生の力に頼っている業者がかなり多く、私が勤めている会社も実習生が11人おり、彼らには本当に助けられている。その一方で、このままでいいのだろうかという気持ちもある。インフラ整備や災害復旧の現場には必ず必要な実働部隊をどうやって増やせばいいだろうか。
山本 建設業界は本当に大変だ。日本はずいぶん前に低賃金の外国人労働者を大量に入れることにした。「日本の技術を国に持って帰りませんか?」という建て付けだったが、本音は奴隷労働者がほしかっただけだ。今は改善されつつあるが、まだ日本人に比べて賃金は安い。また、そうした外国人労働者がいる現場では、日本人の給料も上がりにくくなる。その代表が建設系や介護、農業だ。ここは改めなければならない。この国において欠くことができない分野については、労働者が高い給料で働けるようにしなければならない。
土木・建設業は、何かと「自民党と絡んでいる」などとうがった見方をされがちだが、現実はその逆だ。これまで自民党を支え続けて来た土木・建設業界でさえ、どんどん切り捨てられている。
例えば、公共事業。景気が悪い時ほど、お金の波及効果がもっとも大きい公共事業を景気対策としてやるべきだ。そういう仕事によって全国の土木業界は支えられてきたし、災害など何かあったときに対応できた。だが小泉政権以降、公共事業は大幅に削られた。政府がつくる道路などのインフラ整備や、公団・公社がおこなう設備投資や住宅投資による「公的固定資本形成」(公共投資)の推移を見てみると、1996年の橋本政権のときに48兆円あったものが、2007年の小泉政権のときには27兆円に減っている。10年間で半減だ。
また、国内の建設事業者は1999年に約60万社あったが、2012年には47万社に減った。政府支出が半減しているのだから、経済成長するわけがないし、業者がバタバタ倒れる。
そうなると災害時に動ける人材がいなくなる。今、それが日本中で大問題になっている。だから住民がやるしかなくなる。能登半島地震で被害を受けた珠洲市では、国がまったく復旧に入らないから住民が重機を動かし、デコボコになった道路に畳を敷いて支援物資を運べるように整備していた。そうした人たちも、現場での経験があるからいざというときに動ける。だがこのまま土木会社が減り続ければ、復興復旧に必要な人材も減っていく。結局、政府は災害においても自己責任で「お前ら、自分で頑張れ」というスタンスだ。これではだめだ。こうした課題は国防の観点からも非常に重要なことだ。公共事業を動かし、単価を上げ、労働者にきちんとお金が払われる仕組みを作っていかなければならない。
質問(倉敷市) TikTokで山本代表のことを知ったが、政治のことはあまりよく分からない。政治のおもしろさを教えてほしい。
山本 政治のおもしろさは「変えられる」ことだ。それは、政治は変えられるルールのもとにあるからだ。社会を厳しく苦しいものにするために、政治は最大限の力を使ってきた。国家権力とはものすごく大きな力であり、国民に対して税金を上げて、お得意様の大企業に対しては税金を下げることだってできる。票やお金をくれる人たちを特別扱いするために、ルールを作ってそんなことばかり前に進めてきた結果、30年間この国は弱り続けてきた。そんなことが政治の力によってできるのなら、その反対の社会も政治の力で実現できるということだ。その社会を創るために政治を動かすことができるのはあなただ。それくらいのダイナミックな動きができるのが政治の本来の姿だ。そう考えたら、私は面白いゲームだと思う。変えるチャンスがあるのなら、一か八かみんなの力を合わせてやっていこう。





















