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コロナ禍にあえぐ豊前田の実情 下関最大の歓楽街のいま…

 新型コロナ感染の「第二波」が全国各地で広がるなかで、下関市の豊前田商店街などの繁華街でも夜の街を中心に閉店や廃業が出始めている。緊急事態宣言が全国に出された3月以降、持続化給付金や家賃支援給付金、市や県の助成金などでつなぎつつ、テイクアウトなどにとりくんできたが、8月半ばから再び自粛ムードが広がり、「このまま行けば年末までに存廃の決断をせざるをえない事業者が多数出てくる」と語られている。感染対策をして「安全安心宣言」のステッカーやポスターを貼るだけでは、根本的な対策にはなりえず、またGoToトラベルなどで観光客が増加することは、感染発生=休業の危険性と隣り合わせでもある。豊前田の歓楽街はそれ以前から「景気が悪い」と語られてきた。消費増税でさらに落ち込んでいたところにコロナ禍が追い打ちをかけている。これから忘年会シーズンにかけて回復しなければ、廃業続出は避けられないとみられている。

 

 下関市内の感染者は9月13日現在で累計24人。4月半ばから7月下旬にかけては感染者ゼロが続き、一時は繁華街も客足をとり戻したという。だが、7月半ばから「GоTоキャンペーン」が始まる8月にかけて、市内や宇部市、山陽小野田市など周辺で再び感染者が増加した。この時期に「豊前田商店街で陽性者が出た店があったらしい」という噂が広まったことも追い打ちをかけ、盆時期以降、客足がぱったりと途絶えたという。「9月が一番厳しい」と話す店もある。都市部に比べると廃業件数はまだ少なく、客足が戻った店もあるなど、温度差はあるが、全体として厳しい状況が続いている。

 

週末夜の豊前田(19日、午後10時過ぎ)

 飲食店の店主は、「ある月曜日の夜は客が2人、売上は4000円だった。こんなことは今までなかった。店も11~12時くらいまで開けていたが、電気代がもったいないので今は9時に閉めるようにしている。光熱水道費、リース代など店の固定費は最低でも1日5万円するが、売上が2万5000円あればいい方だ。マイナスになるので、借入しないと回らない」と話した。夏時期、馬関まつりや花火大会が中止になり、毎年秋におこなわれる海峡マラソンも中止だ。県外からも人が集まるイベントが軒並み中止になり、売上の急激な回復は見込めない。持続化給付金も受けたが、それでも足りないので、一時は店を畳むことも考えたという。「アルバイトには休んでもらい、従業員と自分で店を開けているが、売上がないので、自分の年金から給料を出したりしている。うちは常連さんが来てくれるから持っているものの、観光客相手の店はもっと大変だろうと思う」と話した。

 

 別の飲食店店主も「今日もお客さんは一人だけだった。来るかどうかわからないお客さんのために食材を仕入れなければならない。あまりにも誰も来ない日が続くから昨日は食材を仕入れていなかったが、そういう日に限ってお客さんが来る。せっかくのお客さんだったが、本当に食材がなかったから断ってしまった。今は少し落ち着いたが、野菜が高騰しているときは本当に大変だった。1玉300円のレタスなど買えないので、カット野菜などで乗り切った。今は予約が入っても1日に1組くらい。お金を使う年配層が出てこなくなって若い人ばかりになった。いつまでこの状態が続くのかがわからないからもう諦めの境地だ。無利子の融資が受けられるといっても借金だし、返すあてがないのに借りるわけにはいかない。どうやってこの状況を乗り切るかという状態だ」と話した。盆時期に同級生が帰省すると店に立ち寄っていたが、今年は親が高齢なので帰省できなかった同級生も多かった。この状況では正月も厳しいとみている。

 

 飲食店主たちに聞くと、豊前田は平日に仕事帰りに立ち寄るサラリーマンが多い町だという。しかし、三菱や神戸製鋼、ブリヂストンといった大手企業をはじめ、四大病院も含む病院関係者、市役所や国の出先機関など官公庁の職員たち、教師などは、まだ大人数での飲み会は自粛している。企業の出張なども次第に再開しているとはいえ、「夜に飲みに出てくる出張のサラリーマンの姿も見なくなった」「個人客は少し戻りつつある気もするが、大きな飲み会がないので売上は厳しい」「二次会、三次会に行く客もいないので、スナックなど夜の街はとくに厳しい」と語られている。夜10時ごろになると、店内に客がいないからか、店の女の子たちが路上に立っている姿が目立つようになったという。

 

 こうしたなか、複数店舗を持ち、従業員を抱えていた事業者が何店舗か閉店したり、近く廃業することを決めたスナックも複数店舗あるといわれている。週末営業に切り替えている店も多く、とくに平日は閑散としている。スナックのオーナーたちのなかで、昼間にアルバイトを始めたり、転職を考え始める人たちもいるといわれ、先行きの見えない状況にみなが不安を語っている。

 

 豊前田でスナックを営む女性は「7月、8月はまだ、去年と比べて半分くらいは売上があったが、8月後半に宇部や山陽小野田でクラスターが発生して、九月からはまったく人が来なくなった。1人もお客さんが来ない日が連日続いている。他のスナックのママさんたちも常連さんの予約が入った日だけ出勤したり、週末営業にして平日は店を閉めているところが多い」と話した。店を開けている店主も、往復のタクシー代を節約するために車で出勤したり、客のいない時間は電気を半分消すなど、少しでも経費を節約しようとしているという。一方で安心してお客に来てもらおうと思えば、感染症対策は必須だ。加湿器や空気清浄機、カラオケのマイクを殺菌する機械を購入するなどしたため、経費は減らない。

 

 「給付金や家賃補助などあらゆる補助金などを申請して、そのお金を崩しながら店を続けているが、そのお金が尽きたら終わりだ。コロナが収束するのが先か、お金が尽きるのが先かという状態だ。大家さんにお願いして緊急事態宣言のころから6月まで家賃は安くしてもらっていたが、それ以降は元の値段に戻る。それではやっていけないので家賃の安い場所を探し、引っ越そうと思って大家さんに連絡すると、同じくらいまで家賃を下げるから残ってほしいといわれた。大家さんも安くても収入があった方がいい。他のテナントの状況はわからないが、どこも大家さんと交渉しているはずだし、大家さんもかなり大変だと思う。これだけ飲み屋に人が来ないということは、酒屋、カラオケ屋、タクシーなど関連するところもみんな厳しくなっているということだ。下関は都会と比べて家賃などの経費がかからない。だから今はまだみんななんとか耐えているが、今の状況が続くと九月から年末にかけてバタバタ倒れるところが出てくるのではないかと思っている」と話した。

 

 別のスナック経営者も、三菱や神戸製鋼、ブリヂストン、長府製作所や四大病院などが自粛して飲みに出てこないため、二次会・三次会で来ていたお客が来なくなっていると話した。「うちは善良なオーナーさんのおかげで家賃が据え置かれたのと、給付金があったのでなんとか持ちこたえているが、あと2、3年この状態が続くと先が怖い。転職も考えている」と話した。

 

 不動産オーナーの一人は、「家賃を2カ月据え置きにしたが、なかには許可をとらずに営業している店や、確定申告をしていない店もある。そういう店が補償を受けられず、家賃が払えなくなって店を畳んでいる。閉店が増えるのはこれからだ。年内はもっと潰れる。もう4、5軒は聞いている」と話していた。

 

 ほかにも、給付金や家賃補助などの申請手続きが複雑で難解なため申請できずにいる人、もともと収入が少なく、非課税扱いで確定申告をしておらず、持続化給付金を受けるための売上を証明できず困っているといった話もかわされている。「飲食組合や民商に入れば手続きをしてもらえるが、その会費も払えない」と話す店主もいる。

 

 売上は厳しいが、県外から観光客が押し寄せて、コロナが発生したとなると休業しなければならず、それは廃業にも直結しかねない。地図を手に訪れるGoToトラベルと思しき観光客は丁重に断り、常連に限って受け入れていると話す店主も少なくない。「コロナと社会経済活動を両立する」というのであれば、検査体制の拡充なり、本当の意味で安心して営業できる対応が不可欠だ。

 

コロナ以前から産業の衰退 銀行の撤退

 

 コロナの長期化で、資金的に余裕があるかどうかの体力勝負になっているが、豊前田商店街を長く見てきた地域の人々や事業者の実感は、「コロナ以前から厳しく、消費税10%でさらに落ち込んでいたところにコロナが追い打ちをかけている」ということだ【グラフ参照】。

 

 

 ある地域住民は「昨年から夜の店の人たちはお客さんがかなり少ないといっていた。とくに消費税が10%になってからお客さんが減り、“従業員の給料が払えなくてやめてもらった”といった話をちらほら聞いていた。ビルの中の店はやめていても気づかない。消費税でもともと大変だったのが、コロナで追い打ちをかけられたのだと思う」と話した。

 

 不動産関係者の一人も「コロナで店が減ったという実感はないが、去年から見ると確かに減っている。消費税10%も影響したが、それ以前に豊前田界隈から、生命保険会社、証券会社、銀行の支店などが撤退したのが大きい。銀行関係が下関に支店を置いてもメリットがないとみなして、みな広島や福岡に散っていった」と話した。

 

 直近でも、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が2019年12月に下関支店を北九州支店に統合。十八銀行もATMのみとなっている。今年10月にはみずほ銀行が下関出張所を撤退することも決まっている。

 

 地図をさかのぼると、2001年段階でも広島銀行北九州支店が下関豊前田出張所を置いていたほか、十八銀行下関支店やJA山口県連下関ビル、山口銀行入江支店などが豊前田周辺にあった。さらに下関市がまだ水産都市として勢いのあった80年代までさかのぼると、竹崎から豊前田、細江にかけては、相互銀行(1993年廃止)の各支店があり、住友銀行、福岡銀行、十八銀行などが支店を置いていたほか、生命保険会社やメーカーの支店など、多くの企業の支店が置かれていることがわかる。

 

 金融機関の撤退は下関の産業の衰退と密接にかかわっており、豊前田の苦境もそれと切り離しては考えられない。関係者に話を聞くと、コロナ対応と同時に、もともと抱える問題への対応を求める声も多く語られた。

 

関連各業界へも影響 タクシーや漁業者等も

 

 飲食店の苦境は、そのままそれに繋がる各業界にも影響している。

 

 スナックなどにカラオケの機材をレンタルしている会社の男性は「このままの状況が続くと、どれくらいの店が忘年会シーズンを迎えられるのだろうか」と不安を話す。

 

 「どこの店も行政からの給付金などを受けてなんとか繋いでいる状態だ。都市部に比べて下関は家賃も人件費も安いので、同じ100万円をもらってもまだなんとかやっていけるが、もう収入がないからあとは体力勝負だ。うちがカラオケの機材をレンタルしている店もどこも売上が厳しくなっているため、月々のレンタル料を安くしたりして対応している。その分は全部こちらの負担だ。うちとしてもいつまでもこの状態は続けられない」と話す。「ニッパチ」といって、飲食店では2月と8月が閑散期で売上が落ちるといわれている。その苦しくなるといわれる2月分まで忘年会シーズンなどの年末年始で稼ぐのだが、このままコロナが収束しなければ、忘年会シーズンが迎えられるかも怪しい。

 

 「これから冬になってくれば今以上にコロナの感染が増える可能性がある。そうなると一気にバタバタとやめる店が出てくるのではないか。年末年始というのは店を閉めるところも多いが、いつもならその分新しく店を出すところも多い。しかし今回は新規出店がどれだけ出てくるか。このままではどんどん店が少なくなって町が寂しくなっていく。今はもうアフターコロナといっているが、この状況に対応していかないといけない。カラオケの機材のレンタルだけでなく、室内の空気清浄機やマイクを殺菌する機械などもお客さんに提案して販売も始めている」と語った。

 

 唐戸で鮮魚を売る漁業者たちも3月以降、飲食店のキャンセルに直面したという。「個人客や観光客に魚を買ってもらうだけでは量が少なく、飲食店の仕入れがあって成り立っていたので、しばらく漁に出ていない人も多い」と話していた。売上が減少した漁業者は、経済対策としておこなわれた海底掃除に出たものの、ひと月4、5回の2カ月間で、収入は30万円程度のようだ。

 

 タクシーも同じで、運転手たちに聞くと、ある会社ではおよそ3分の2の運転手がすでに半年近く休業しているという。夜間に豊前田の繁華街で待機しなくなった会社もある。もっとも厳しかった緊急事態宣言の期間中に比べると、下関駅前などでは企業関係の動きが持ち直してきたといわれるが、それでも運転手の収入は月10万円程度。それもタクシーの台数をしぼりこんでいるからで、みなが復帰すると一人当りの水揚げは減少する。「今の状況では、休業している人はあと3カ月休業が続くのではないかといわれている。タクシー運転手は年配者が多いので、1年近く休業が続けば復帰できなくなる人も出てくるのではないかと心配されている」と話す運転手もいた。

 

 別のタクシー運転手は「うちは最初の1カ月は3日出勤の3日休みで、その分は会社が補償してくれた。しかしそれ以降はなにもないから生きていくには出勤するしかない。他の会社は何カ月も運転手を休ませている所も多い。しかし出ていてもまったく人が動かない。タクシーに乗るのは、病院通いか買い物に行く高齢者くらいだ。駅に電車が着いても人は降りて来ないし、豊前田はもともと人が少なかったのが、まったくいなくなったという感じだ。店を開けていても客が来ないから閉めている所が多いと聞く」と話した。


 続けて「月の水揚げが34万円いけばそのうちの4割が給料になる。しかし今の状況では34万円もいけばいい方で、手取りはだいたい12万円ほどだ。若い人は生活できないから、寝る間を惜しんで走り回っている。失業保険をもらった方がいいからやめていった人も多い。個人タクシーは持続化給付金で100万円をもらった人もいるようだが、それでも車検代やガソリン代などの支払いで消えていく」と話した。

 

 また4連休のさいに観光客が多かったことにふれ、「これからGoToキャンペーンで県外からの観光客でコロナの感染が広がったら元も子もない。今でもお客さんを乗せたあとは絶対に消毒をして、仕事が終わって家に帰ってからも念入りに手洗いや消毒をする。タクシー運転手はどこから来たかもどんな人かもわからない人を乗せないといけない。運転手はみんな年寄りばかりだから感染したら危険だ。しかし今の政府の対応を見ていると、多少コロナが広がってもいいから経済を回そうという考えなのだろう」と語った。

 

 若手の飲食店主たちは「コロナの前から不景気だったよね…」と仲間内で語り合いつつ、「以前のように戻ることはないと思うから、居酒屋も新しいスタイルに変えていかなければいけないのかなと思っている」「テイクアウトもしながら、なんとか乗り切っていきたい」など、厳しいなかでも事業をいかに継続していくか模索している。

 

 だが、企業や官公庁、病院などが安心して飲みに出られる状況でない以上、この町の飲食店を守るには、現金給付なりで経営を支えるほかないのが現実だ。「ずっとは難しいと思うが、月10万円ずつでもあると存続することができる」という声もあった。年内もあと3カ月あまりとなっており、対応が急がれる。

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