いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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彼らは何を隠しているのか? 下関市立大学トイレ改修工事損害賠償請求事件についての調査報告書

 本紙でも事あるごとにとりあげてきた下関市立大学のトイレ改修工事を巡る損害賠償請求事件について、その真相があまりにも隠蔽され、消えた公金の行方があいまいなまま済まされようとしていることを問題視した有志が、このほど調査グループを結成して広く市民にもわかるよう調査報告書を作成した。下関市、下関市議会、下関市立大学の三者がかたくなに隠蔽し、守っているものは何なのか? だれなのか? さらに、その対応は地方公共団体としてまっとうなものといえるのか等等、下関市役所や市議会の在り方ともかかわってさまざまな問題を投げかけている。事実を丹念に追っていることから長編となっているが、紙面上で連載したものを紹介したい。

 

Ⅰ はじめに

 

 市民の皆さん、森友・加計の問題が大きく報道されていましたが、モリカケ問題についてどのようにお考えでしょうか。学校、学園を舞台に明らかに不正、不適正な行政が行われていたのに、国会の場でも文書隠蔽、改ざん、虚偽答弁などをくり返し、疑惑を必死に隠そうとする政府。そして、それに手を貸すかのように真相究明に消極的な与党の対応。この現状に腹立たしい思いをしている人は多いはずです。そこには「政治、行政は国民のためにある」という当たり前のことが全く無視されています。モリカケ問題は、権力の私物化、権力者のおごりが象徴的にあらわれた事件だと思います。

 

 下関市立大学トイレ工事の記事を読んだり、議会での傍聴の度に、どこかモリカケ問題に通ずる事件だと感じ、激しい憤りを覚えます。市大トイレ工事事件は、下関市民のためにあるはずの下関市政が下関市民無視市政になっている典型的な事件です。市民のお金(公金)約1610万円が市大職員の不正、不適正行為によって失われたという事件です。

 

 市民のお金がいつまでに、どのように回収されるのか、そして実際にどのように回収されているのかということを市民に知らせるのは当然のことです。それなのに、どのように回収されるかについては、市民には内緒にするという条件で和解(秘密条項付きの和解)した大学、市大を指導する責任と権限があるのに、全く無責任な対応に終始している市、市民代表として市政をチェックし、市大や市の無責任を正すべき責任があるのに、この事件を積極的に解明しようとしない市議会。常識では考えられない状況です。これ程おかしなことが平気でまかり通るのは、この事件の背後に何かあるに違いないと思ってしまいます。

 

 当時、市大トイレ工事を請け負った業者と深いつながりがあり、大学にも市にも、市議会にも、いわゆる“顔が効く”市会議員(当時)C氏の存在が噂されましたが、本当にそのことが影響したのでしょうか。

 

 本件は、色々な問題を含んでいますが、本来、それほど複雑な事件ではなかったはずです。市または大学が「このような和解をしました。いつまでに全額回収できる見込みです」と議会へ報告し、その後質問された都度、回収状況を誠実に答弁すれば済む問題でした。しかし結局、この事件は多くの問題を抱えてしまい、決して看過できない事件になりました。これを許すと、こんなやり方が今後の前例になってしまい、モリカケ問題以上に違法、不適正な下関市民不在の下関市政がまかり通ってしまう恐れがあります。

 

 このようなことから、本事件の真相や問題点を多くの市民の皆さんに知っていただきたいと考え、有志で調査グループを結成し、市議会でのやりとり、マスコミ報道等も参考にまとめたものです。これがその第一弾ですが、これからも調査を続行していきます。なお、この問題に関係した職員の氏名はマスコミで報じられており、公表しても問題ないと思いますが、一応、現職以外は氏名を出さない扱いにしました。

 

Ⅱ 事件の概要

 

1 指名業者の選定、落札、契約の締結について

 

 平成22年12月、市大はトイレ改修工事を行うため、市内業者6社を指名することとし、市大事務局のS総務グループ長を中心に6社を選定した。入札の結果、この6社のなかからS社が落札した(落札率99・7%)。S社は平成22年8月、市の入札で「豊北道の駅」工事を落札したが、市営駐車場の管理権の無断譲渡問題に関連した問題業者だということで、9月市議会でも工事議案が認められず、継続審議になっていた。このようなことはマスコミでも報じられており、S社が問題企業だということは市大も当然知っていたはずだが、市大はS社を指名した。そしてS社が落札したものである。

 

 12月初旬、市議会は「道の駅工事議案」を否決した。S社は市から市の工事を請け負う資格なしとされた。経営不振も噂されていた。このような状況にあるなか、市大は12月中旬にトイレ改修工事請負契約をS社と締結した。この指名業者の選定、及び契約の締結については、いずれもM理事長まで書類が上げられ、M理事長がそれで良しと決定している。荻野現理事長も副理事長としてこの書類に押印している。

 

2 工事前払金の支払い

 

 工事請負契約の締結後、すぐにS社から工事前払金の請求があった。前払金はS社が保証会社との間で前払金保証契約を締結していないので支払うことはできない。にもかかわらず、平成22年12月末、翌年1月と2回にわたり工事代金の6割にあたる2260万円を契約等に違反してS社に支払った。この契約等に違反した前払金の支払いについては、U事務局長まで書類がまわり、U事務局長が支払いを決定した。

 

3 請負業者S社の工事中断とこれに伴う損害の発生

 

 ①990万円の損害の発生
 噂通りS社は経営悪化で事業停止に追い込まれ、平成23年3月初めにはトイレ工事が行われなくなった。このため大学は3月31日に記者会見を開き、工事の中断と契約書に違反した不適正な支払い(工事代金の前払い)があったことを発表した。S社の工事中断までの工事出来高は約32%、金額にして1270万円と認定され、前払金2260万円と工事出来高1270万円との差額990万円がS社への過払額、すなわち市大の損害金と決定した。

 

 ②620万5000円の損害の発生
 違法な手続きでS社に仕事をさせ、結局、S社が仕事を途中で止めたため、再度別の業者に頼まざるを得なくなった。工期を短縮せざるを得なくなった等の理由から、工事費が620万5000円余計にかかることになった。市は議会で、この620万5000円もトイレ改修工事に伴う市大の損害金であると答弁している。本件トイレ改修工事に伴う市大の損害金は上記①と②の合計額1610万5000円である。

 

4 損害賠償請求

 

荻野理事長

 違法な業者指名を決裁したM理事長と、不適正な前払金の支払いを決裁したU事務局長は共に平成23年3月末任期満了によって退任した。4月から新たにH理事長と新事務局長が就任。市大幹部は荻野副理事長(当時学長)を除き新体制となった。

 

①990万円の損害賠償請求
 市大はS社に工事執行能力がないと判断し、同社との契約を解除するとともに、損害賠償を求めたが、S社には支払う意思がなかった。このため損害発生の原因のうち、過払金(前払金)による損害990万円について、法的に損害賠償責任があると考えられるS元グループ長とU元事務局長に支払いを求めた。

 

 しかし2人とも誠意ある対応を示さないため、平成24年7月12日、2人に対して990万円の支払いと平成24年6月1日から完納まで年5%の支払いを求める損害賠償請求の訴えを山口地裁下関支部に起こした。市が訴えを起こす場合は法律上、市議会の議決を必要とするが、市大は独立行政法人化しており、市とは別団体ということで議会の議決は必要としない。

 

 しかし、設置者は市であり、市から交付金を受けているということ等から、市大は訴えの提起に関して平成24年7月12日に記者会見を行った。また市は7月17日、市議会総務委員会に本件を報告している。公金の損害賠償事件を市民に説明するというこの考え方は妥当であろう。

 

②620万5000円の損害賠償請求
 違法な業者選定に伴って発生した損害金620万5000円については、市大は法律上の措置は講じていない。市大はS社に請求していると答えているが、支払能力が疑わしいS社に何故請求したのか。回収方法やその回収がどのように担保されているか、又、いくら回収されているか等については答えていない。

 

5 裁判上の和解

 

 本件損害賠償事件は訴えてから約1年後の平成25年7月16日付で大学側と被告側(U元事務局長とS元グループ長)が次のような内容で和解したとY新聞で報じられた。
 主たる和解条項は
ア U元事務局長は大学側に200万円支払う
イ S元グループ長はS社の大学側に対する債務のうち990万円までを連帯保証する。
ウ この和解条項は公表しないこととする。市が議会に報告する場合も非公表の趣旨を体して報告すること。議会も非公表の趣旨を尊重するよう求めること
等であった。
 なお、Y新聞の報じた和解条項では、完納時期や遅延損害金の扱いなどは不明である。

 

 大学側の要求どおりの和解であれば判決までいかなくても市民は納得するだろう。しかし、大学側の要求(訴訟内容)とは異なるのに、どのような理由で和解したのか。和解内容をなぜ非公表としたのか。大学側はどのような手続きで和解したのか。和解について市と協議したのか。市民には真相がよくわからないし、理解し難いことばかりである。

 

 裁判上の和解は990万円であり、620万5000円については回収が確実なのかはっきりしていない。

 

6 損害金の回収状況

 ①990万円について
 平成25年7月の和解以降、市議会で本池市議が何回か質問しているが、市側からは明確な答弁はなかった。

 

 平成30年6月議会で、市は「和解内容による損害金の回収は完了したと聞いている。利息等の有無や内容については、市としても知らない」と答弁した。

 

②620万5000円について
 これについても990万円の損害金と同様、これまで市側から明確な答弁はなかった。
 平成30年6月議会で市は「和解の内容による損害金の回収は全て完了したということだ。金額については承知していない」と答弁。ここでも回収金額、遅延損害金等については知らないという。

 

Ⅲ 本事件の問題点

 

1 指名業者の選定、契約の締結について

 

 事件の概要で述べたように、当時の状況下、普通では考えられないS社選定であった。

 

 指名(入札)業者6社は、実際にはS社が選定したもので、それを大学案としていたことが判明した。違法かつ不公正な指名業者の選定であった。

 

 Sグループ長は、入札等妨害罪及び官制談合防止法違反容疑で送検され、その後容疑は確定している。指名業者の選定と契約の締結は当時のM理事長が決裁している。従って、M理事長、荻野副理事長(当時)まで責任が及ぶ。M、荻野両氏が全く知らないで行われたとしても組織上の管理監督責任がある。ましてや決裁文書に押印しているのだから、損害発生とその損害の賠償には直接的責任がある。しかしながらM理事長は1円の損害賠償金を払うことなく、満額の報酬と退職金を得て退職し、何らの責任もとっていない。荻野副理事長(現理事長)も何らの責任をとっていない。当時の最高幹部で損害の発生と組織管理に責任ある両氏が何ら責任をとっていない。多くの市民は納得できるだろうか。

 

2 工事前払金の支払いについて

 

 工事代金は後払いが原則だが、資材の購入等、工事着手前にお金が必要なことがあるので、例外的に前払いを認めている。

 

 しかし、前払金は支払ったのに工事に着手しないとか、工事を途中で投げ出すということがあってはいけないので、前払金を支払うことができるのは請負業者が保証会社との間で前払金保証契約をしている場合に限られる。この保証契約を担保として前払金を支払うことができるという決まりになっている。この場合でも4割しか支払うことができない。

 

 本件前払金の支払いで問題なのは、
 ・請負契約書上支払わないことになっているのに契約に違反して支払ったこと
 ・前払金を支払う契約になっていても、前払金保証契約を締結していないと支払うことはできないのに支払ったこと
 ・契約書上支払うことが出来、前払金保証契約を締結していても4割しか支払ってはいけないのに6割も支払ったこと
 このように三重に違反した、不正な前払金の支払いであり、常識では考えられない職員の背任行為である。

 

下関市立大学のトイレ工事(2011年6月)

3 損害賠償請求事件の和解と損害金620万5000円の処理について

 

①損害金990万円について
 市大職員による工事請負業者の違法な選定と規定に違反した不正な前払金の支払いによって生じた公金の損害であり、本来裁判で訴える前に損害発生に関係したM理事長以下の職員が早期に損害賠償を行うべきものである。それがなされなかったために訴訟になったものだが、関係職員の自覚と責任感のないことにはあきれてしまう。

 

 今回の損害発生の原因、経緯等から考えると訴えたとおりの判決を求めるべきである。ただ、訴えたとおりになるのであれば和解することに市民も納得するだろう。従って、市民が納得できる和解になっているのかどうか、和解の内容が問題となる。その重大な和解の内容を市民に非公表としたことは、まさに市民無視の大問題である。市民の納得を得るという和解の大原則を無視したのである。

 

 それでは、なぜ非公表とする条件で和解したのだろうか。

 

 Y新聞が報じた和解内容だと、違法行為によって市大に損害を与えたSグループ長は、本来なら損害賠償の最も重い責任者であるはずなのに請負業者Sの連帯保証人という立場になっている。連帯保証人なのでSとS社は同等の損害賠償責任者となるが、そもそもS社には支払能力も支払う意思もなかったから、SとUに支払いを求めたものである。S社は本件訴訟の被告ではない。従って、和解の当事者でもない。そのS社をなぜ主たる和解条項のなかに入れたのだろうか。疑問である。

 

 この和解条項だと市大の利益(公益)より損害賠償責任のある職員(UとS)の利益の方を優先している。市民から公益より利益優先の和解ではないかという批判が出ることを恐れて非公表としたのではないか。

 

 先日も「父親の入院、介護等で苦労した後、アルバイトで働き始めたが、そこで働いた給料9万円から固定資産税の滞納の一部として7万円が差し押さえで天引きされた。これからの生活が大変だ」という市税滞納者に対する厳しい徴収が記事に出ていた。方々で市税徴収が厳しいという声を聞く。市税徴収の現状とこの損害金回収の和解内容は格差があり過ぎる。

 

 和解は荻野理事長と損害賠償責任のある被告側とで行われているが、まず荻野理事長の立場である。荻野理事長は違法な業者選定をした伺書に市大ナンバー2の副理事長として押印している。市大に損害を与えた側の責任者の一人である。加害者側として責任のある者が被害者側代表として和解している。しかも、その和解内容は公表せず、秘密にしようという和解をである。そして今度は自分たちが勝手に結んだその秘密条項をタテに市議会でも事実上の答弁拒否をしている。(市議会で答弁するのは市総務部長であるが、総務部長は「和解内容は市大が公表しないということなので知らない」と答弁している)。

 

 次に和解に至る手続きである。

 

 訴えの提起のときは当時のH理事長は記者会見を開いて市民に公表したし、市は市議会総務委員会にも訴えの内容について報告した。しかし和解については、荻野理事長は記者会見を開いていない。市大には理事会もないようである。荻野理事長が独断でこのようにおかしな和解をしたのではないかと批判されても当然である。

 

 市は平成25年9月3日の市議会総務委員会に和解したことを報告したが、質問に対して「和解内容については公表しないことを条件にしている」ことを理由に和解内容について答えていない。賠償金額、完納時期、分割支払いなら遅延損害金の扱い等は議会に対する最低限の報告事項である。それらも報告しないのなら議会への報告にはならない。

 

 市執行部は議会を無視しているのに、議会はそれを甘受している。議員は市民を代表して行政をチェックするのが主要な職務である。「職員の不祥事により公金が失われた損害賠償なのに、どうして金額や完納時期が明らかにできないのか。議会に報告するのは当然ではないか。

 

 これらのことも明らかにしないという和解なら、和解そのものが問題だ」と主張する議員が居なかったのは不思議であり、残念である。市大も市執行部も市議会も、市民に対して無責任ではないか。

 

 以上見てきたように、本件和解はまず和解内容が市大の利益より職員の利益を優先している。被害者より加害者を優先している。このことが大問題である。次に和解内容を非公表としたことは市民無視の行為であり、これも大問題である。市立大学が「公益軽視の和解内容」で「秘密条項付きの和解」を行うことは違法性があると言わざるを得ない。

 

 市が訴訟で和解する場合は、訴えを起こすときと同じように法律上、市議会の議決を要することとなっている。市大は現在、独立行政法人として法律上、市とは別団体になっているが、市が設置し、市から交付金が出ている大学である。和解する場合、市に準じてできる限り市議会、市民に和解の事実と和解の内容を報告、公表すべきである。理屈上はそうなる。

 

 このようなことから「和解内容を市議会にも報告しないということは難しいだろう。秘密条項付きの和解とするが、市議会には和解内容を報告することができるようにしておこう」と考えて、「議会に対しては和解内容を報告する。ただ、その場合も非公表の趣旨を尊重するよう議会にも求める」という条件をつけたものと思われる。

 

 市大も市も「和解条項の非公表」ばかりを主張し、この「和解内容を議会に報告できる」という条項を無視した対応(「和解内容は非公表ということなので知らない」との市答弁等)をし続けたことが、市行政の信頼を失墜させ、事態を悪化させた。議会での本池議員の質問に対して、嘘を言わず誠実に答えていればここまでおかしなことにならなかったかも知れない。

 

②損害金620万5000円について
 これについてはS社と和解し、S社に請求していると市は答えている。支払能力が疑わしいS社に請求しているのか、それで良しというのは無責任である。大学職員の違法、不適正な行為による公金の損害賠償事件であり、大学当局は速やかに、確実に全額回収できる措置を講ずべき責任がある。

 

 その点から考えると、決裁した当時のM理事長以下、荻野副理事長、U事務局長、Sグループ長に損害賠償の連帯責任があるのだから、支払能力の疑わしいS社に請求するより、まずM理事長以下の連帯責任者が責任をとって速やかに賠償すべきである。そのような方策をとるよう荻野現理事長がリーダーシップを発揮すべきであった。それこそが高額報酬を得ている荻野現理事長の最低限の職務である。

 

4 損害金の回収状況について

 

①裁判上の和解をした損害金990万円について
 損害金を現在までにいくら回収できたのかは、秘密条項付きの和解条項には含まれないことであり、当然市民に公表すべきである。しかし、市は市議会での本池市議の質問に対して、和解条項を理由に明確に答えてこなかった。これは本件和解条項に対する違法な拡大解釈である。

 

 その後、平成30年6月議会で市は「和解内容による損害金の回収は完了したと聞いている」と答弁したが、回収完了年月日、遅延損害金の有無等については知らぬ存ぜぬで押し通している。無責任であるし、「知らない」で済ませられる問題ではない。子どもだましのような答弁で押し通すことが許されているのが下関市議会の現状である。

 

②損害金620万5000円について
 この損害金は裁判とは無関係であり、従って秘密条項付きの和解とは全く無関係である。これまで市議会での質問に明確に答えなかったのは答弁拒否であり、市民を無視した市の対応であった。平成30年6月議会で本池市議が「返済完了と答えたが620万円についてもか」と質問したのに対して、市は「双方の和解による損害金はすべて完了したということだ。金額については承知していない」と答弁。相変わらず子どもだましのような誤魔化し答弁、無責任答弁をくり返している。①の損害金と同じく、今後も追及が必要である。

 

 公金の損害賠償事件の和解を秘密条項付きとしたことは大問題だが、この秘密条項も完全な秘密とすることにはなっていない。先述のように議会への報告については一定の条件が付されてはいるが、報告できるようになっている。また訴訟記録の閲覧制限申立書では、非公表の理由として、公表すると

 

・被告に背任行為があったように思われること
・社会的評価を落とすこと
・就職にも支障が出ること
としている。秘密条項付きの和解にしたのも上記理由からだと思われる。

 

 市大トイレ工事に関して違法行為があったこと、大学職員が逮捕されたこと、損害が発生し損害賠償請求の訴えを起こしたこと等はすでにマスコミで報じられており、公知の事実である。これについての和解であり、和解内容が公表されると被告の就職等にどのような影響を及ぼすというのか、全く理解できない。せいぜい氏名を隠せば良いだけのことである。むしろ、和解内容を公表した方がこの問題に一定の責任を果たしたということを市民に知ってもらう良い機会だと思う。

 

 以上のことから市(大学)が議会での質問に対し、秘密を主張できるのは、
 ①和解調書に記載された事項であり、かつ
 ②その事実を公表すると被告の就職等に支障が出ると客観的に考えられる事項に限られる。
 和解調書に記載されていない事項や、和解調書に記載されていてもそれを公表すると就職等に支障を及ぼすとは客観的に考えられない事項は誠実に答弁しなければならない。なお、就職等に支障をきたすような事項でも議会が秘密会等、秘密を保てるよう配慮すれば市(大学)は答弁を拒否することはできない。

 

 以上が本件に関する市の議会答弁の基本的ルールである。しかし、市議会では本池市議の質問に対し、秘密条項付きの和解を理由に答弁拒否できない事項まで、ほとんど全て答弁拒否している。

 

 質問事項は予め通知している。市は市大に対する調査権、指導権を持っている。市は調査権限を行使して調査し、議会で明確に答える義務がある。それでも松崎総務部長(現水道局長)は他人事のような答弁をくり返した。議会もそれを許してきた。

 

 本池市議は本件に対する市民や大学関係者の疑問をふまえて的確な質問をしている。松崎部長が本池市議の質問に誠実に答弁していれば、ここまでこじれることはなかったと思う。以下、虚偽的答弁、誤魔化し答弁の一部を別示する。

 

市議会で本池市議の一般質問に対し手をあげる当時の松崎総務部長(平成25年9月議会)

1 平成25年9月議会

 

 本池市議 訴訟していたのに、なぜ和解したのか。回収の見込みがたったから和解したというが、990万円とは別に620万5000円の損害がある。これは誰が負担するのか?
 松崎総務部長 990万円+620万5000円の合計額1610万5000円の和解が成立した。
※訴訟について和解したのは990万円についてのみであって、1610万5000円を裁判上の和解額としたのなら虚偽答弁。本当に知らなかったのなら、職責を果たしていない。

 

2 平成26年6月議会

 

 本池市議 裁判上の和解金額、遅延損害金の扱い、完納時期は?
 松崎総務部長 損害金の回収は順調に進んでいる。和解内容は公表しないことになっているので。
※答弁拒否の理由にならないのに答弁を拒否

 


 本池市議 和解内容を市は把握しているのか?
 松崎総務部長 和解内容は公表しないということなので具体的な話は市は承知していない。
※市には法的に市大を調査する権限がある。その権限を行使せず、議会での質問に「知らない」は職責を果たしていない。無責任である。和解には和解内容を議会に報告できるという条項が付されている。それを「知らない」は議会軽視ではないか。

 

 本池市議 和解条項中に議会への報告ができる旨の条項があるが?
 松崎総務部長 市としては訴訟記録も見ていないし、言われたのは伝聞の話しだから確認できない。
※平成25年9月議会で本池市議が和解について質問しているし、今回も質問通告している。それなのに、まだ訴訟記録を見ていないというのは常識では考えにくい。本当に見ていないのなら無責任。

 

3 平成26年12月議会

 

 本池市議 現時点の回収額、利息延滞金、完納時期は?
 松崎総務部長 市大の財務諸表から平成25年度中に420万円の回収があったものと推測される。完納時期、利息等については和解内容は公表しないということで知らない。
※回収額等については秘密条項付き和解を理由に秘密にすることは出来ない。当然答えるべきことなのに答弁拒否している。

 

 本池市議 和解条項の中に議会には報告できるようになっているのに、どうして議会に報告することがはばかられるのか?
 松崎総務部長 ア 和解の内容については公表しないということなので知らない(「議会に報告する」は知らない)。
 イ 市とは別人格をもった市大の話なので内容については話すことができない。
※アについては、6月議会で本池市議が同じ質問をしている。従って、「議会に報告する」ことは市も知っているはず。「知らない」は虚偽答弁ではないか。イについては無責任な答弁。市大は別人格団体なので、市議会で話せないという法令的制約は何もないので話すことはできる。市立病院についても、市はノータッチか、議会審議なしか。

 

4 平成30年6月議会

 

 本池市議 損害金の回収状況は?
 今井総務部長 和解内容非公表のため具体的な金額はわからないが、平成30年4月、大学との協議のなかで和解内容による損害金の回収は完了したと聞いた。利息等の有無や内容については市は知らない。
※回収金額等について議会で「知らない」と答えることは市議会軽視、市民無視に等しい。秘密条項付き和解で制約される問題ではない。回収金額等を答えることが被告の就職等に悪影響があるとは思わない。

 

 本池市議 620万円についても企業が620万円をすべて支払ったのか?
 今井総務部長 これについても承知していない。
※無責任答弁。職務怠慢

 

 本池市議 和解条項のなかに「原告は和解条項を尊重して市議会に報告し、市議会に対しても本和解条項の尊重を求めるものとする」という記載があり、公表しないでよいというものではない。
 今井総務部長 「議会に対しても和解条項の尊重を求める」ということだが、市としてはそのへんのことは承知していない。
※議会に報告するという和解条項を知らないということなら虚偽答弁ではないか。これを知らないはずがない。和解条項の内容を知らないということなら無責任。

 

 三木副市長 市大の担当の副市長としてお答えする。議会に報告をして尊重を求めるということについては、和解の内容について議会に報告して尊重を求めるということなので、これを公表しないという和解の内容についても議会にご報告申し上げ、その尊重することを求めるということなので内容についてすべて公表する。そこを議会に報告しなさいということをいっているのではないということ、そういうふうなわれわれは理解をしている。

 

※この三木副市長答弁は、市は「議会に報告する…の条項を知っていた」「知っていただけではなく、実質的にこの条項を理解したうえで、この条項を基に、極論すればこの条項に支配されて議会対応してきた」ということを示した。発言の意味が、市は和解内容を議会に「報告する」と理解していたのか、「報告しない」と理解していたのか、肝心な点が不明確だが、どちらにしろ今後に大きな問題を提起した発言である。

 

 これまで再々述べてきたように、双方代理のような立場の荻野理事長が本来、市民に公表すべき事項まで秘密とする和解をした。そのうえ、実質的に市を制約する条項または和解通りの実行ができない条項を入れたという非常に問題のある和解である。特にこの条項が「報告しない」という趣旨で入れた条項なら、まさに議会制民主主義の否定を強いた和解であり、荻野理事長の責任は極めて重い。また、市大を監督指導する立場にある市が、この条項に何一つの問題も感じず、それどころかこの条項を金科玉条のように信じ、この条項に縛られた議会対応をしてきたというのは驚きであり、市の責任も重い。

 

 長年にわたりこの問題の真相究明に取り組まれている本池市議に、これまでの問題点、取組への反省点、今後の見通しなどを聞き意見交換した。そのなかで、次のような市大の不誠実かつ不可解な対応が明らかになった。以下、本池市議の語ったところを要約すると「6月議会の一般質問は新総務部長の答弁なので少しは前進するかと期待したが、相変わらず他人事のような要領を得ない答弁だった。何人もの方たちから“あのような答弁で済ませていたら疑問点は何一つ解消されない”“何のための議会かわからない”などと怒りの声が多く寄せられ、私も叱責を受けた。市民代表の市会議員として市民の疑問に応えるためには、市大理事長と市大事務局長に直接会って話を聞くしかないと考え、砂原事務局長に会って、荻野理事長に面会したい旨要請した。しかし、いろいろなやりとりがあった後、結局面会は拒否された」ということであった。

 

 荻野理事長が面会要請を受けて実際に面会したのなら面会までのやりとりはどうでも良いことで、市民にも関心はないことであろう。しかし、荻野理事長は面会を拒否した。その面会拒否は、市民目線で見て妥当なのか、市民が納得できるものなのか、市民の判断を仰ぐためにはどのような経過、やりとりを経たうえでの面会拒否なのかを市民に知ってもらう必要がある。このように考えて、本池市議に市大とのやりとりを詳しく聞いた。以下がそのやりとりの抜粋である。

 

6月28日 荻野理事長出張。砂原市大事務局長に荻野理事長と面会したいと要請。

 

 本池 「6月議会の一般質問でも取り上げたが、要領を得ない答弁なので、大学としての考え方を確認したい。場合によっては9月議会において、再度取り上げることも考えている。荻野理事長に面会をお願いしたい。荻野理事長は当初からの当事者であり、現在の最高責任者だ」
 砂原 「先日の総務部長の答弁と同じことしかないと思う」
 本池 「あれではわからないからじかに聞きたい」
 砂原「たしかに、今いるもののなかでは一番かかわってはいるが、部長がいったことと同じだというと思う」

 本池「理事長本人に聞きたいことがある。事務局長さんには損害賠償金返済状況を答えてほしい。990万、620万5000円はどうか、利息と延滞金はどうかを」
 砂原 「それも、総務部長がいったでしょう。私も詳しいことはよくわかりませんよ。もちろん議事録は読みましたよ」「聞くのは議員としてか、長周新聞としてか。違ってくるので」
 本池 「議員としてだ」
 砂原 「一応、理事長には話してみる。今日は出張なので、数日かかる。連絡先を教えてくれ」

 

7月3日 砂原事務局長から電話。

 砂原 「総務部長が答弁しているので話すことはないので(理事長は)会う必要はないといっている。私も総務部長と同じだ。もう一度聞くが、取材なのか、議員としてなのか」。
 本池 「答弁ではわからないからだ。議員としての立場で面会をお願いしている」
 砂原 「また連絡させてもらう」

 

 その後1週間近く経っても返事がないので電話した。

 本池 「返事がないがどうなったのか」

 砂原 「理事長は総務部長の答弁と同じだから会う必要はないといっている。何が聞きたいのか」

 本池 「最終的に損害金がどうなったのかを聞きたい。あなたには990万と620万はどうなったのか聞きたい。理事長には一つは、和解条項を市に報告したのか、議会に報告したのかは聞きたい。そのほかも聞く」

 砂原 「市出資法人の委員会が、今年は総務委員会でおこなわれるからそこで話になるのではないか。理事長も出席すると思う」

 本池 「9月議会に取り上げるかもしれない。市大問題の総務委員会は10月だ」

 砂原 「会わないといっているから」

 本池 「その理由をちゃんと書いてもらいたい」

 砂原 「わかった」

 

 その後今日(7月25日時点)まで市大からの連絡はない。

 

 このやりとりを見て、市民の皆さんはどのように思われたでしょうか。市会議員が多くの市民の声(市民が損害を被っているのではないか、市民の知る権利が阻害されているのではないか)を受けて、市政に対する市民の疑問を解消するために面会を要請した。特定の一個人や一団体の利害のために会いたいと言っているのではない。これに対して、砂原事務局長は市会議員としての立場での面会かと2度も確認した。また、面会での質問項目までも聞いた。そのうえでの面会拒否である。

 

 しかも、次に述べるように全く理由にならない理由をつけてである。一般常識からすれば最低でも会って話をし、話を聞くのが普通ではなかろうか。また、面会要請に対して返事をしていない、再度本池市議から電話したあげくの面会拒否である。不誠実というより、むしろ失礼な対応だと思う。市大理事長や事務局長という立場から見ると、市会議員はその程度というように思っているのかなと思ってしまう。

 

 本件に関して最も重要な点は、「総務部長答弁と同じだから」という、面会拒否の理由である。松崎・今井新旧総務部長はこれまで「和解内容、和解金額、回収額、完納時期などは市大は公表しないということなので知らない」と他人事のような答弁に終始してきている。これらの事項はこれまで再々述べてきたように、非公表とすることはできない事項があるにもかかわらずである。

 

 荻野理事長は、損害発生の責任者の1人であり、この損害賠償請求事件を不透明にし、市民の疑惑解明の妨げになる秘密条項付きの和解をした当事者である。その当事者が、和解金額、回収額、完納時期などは知らないと言っているのである。損害発生責任者の一人であり、市大の最高責任者がこのような無責任な発言をすることに怒りさえ覚える。市民に対して申し訳ないという気持ちは微塵も無いようである。下関市民をバカにしていませんかと問いただしたくなる。

 

 また、砂原事務局長の対応も問題である。面会要請に対して返事をしないというのも問題だが、最も問題なのは損害金の回収状況についてきちんと答えないことである。「総務部長回答と同じ」という考えられないような回答が平然とできるのも驚きである。しかも総務部長答弁の議事録を読んだうえでの回答というから二重の驚きである。

 

 市大のナンバー1、ナンバー2がこのような状況である。

 

 市民の皆さん、市大の対応に納得できたでしょうか。市大の対応を見ると、何かおかしい、全額回収できたというのは本当だろうか、何かを隠しているに違いないという思いを強くするばかりである。真実ほど強いものはない。何事にしろ、隠してだましてやり過ごそうとしても、結局、嘘はバレるものである。

 

まとめ

 

 これまで述べたように本件は市大職員の不祥事と組織ぐるみとさえいえる不適正な事務処理が原因で発生した公金の損害賠償事件である。

 

 損害発生に対しては厳しく問われて然るべきだが、回収については市及び市大が議会で誠実に答弁し、市民への説明責任を果たして「市民が納得できる形」で回収できれば、本来、それほど問題は生じない事件であった。

 

 しかし、損害の発生から一連の議会審議を通じてわかったことは、市民に知らせるべきことが秘密にされ、そこに無理が生じたために、市は無責任な対応に終始し、責任ある行政、市民に信頼される行政とはとても言えない状況を呈してきた。和解以来、市大が一切表に出てこず、市のみが議会対応してきたことも、市、市大両者の無責任に拍車をかけたようである。

 

 平成30年6月議会で一応、損害金は全額回収できたようだという答弁はあったが、回収金額は知らないという無責任答弁であった。今後に残された問題は多い。お金が回収できたというのだからと、この問題を終わりにしてはならない。今後、市議会での虚偽、誤魔化し無責任答弁を防ぐためにも、また市政の信頼回復のためにも次の事項の真相究明を図り、その責任の所在を明らかにしなければならない。

 

 1 損害賠償金の回収について(990万円と620万5000円)
 ①損害金の回収状況(年毎の回収額)と完納時期
 ②遅延損害金額
 ③上記①②について市は知らないと言ってきたが、本当に知らなかったのか。知らなかったとしたらその理由は?

 

 2 和解について
 「原告及び被告らは、本件和解内容を公表しないこととする。ただし、原告が市議会に報告する場合はこの限りではないが、原告は本和解条項の趣旨を尊重して市議会に報告し、市議会に対しても本和解条項の尊重を求める」(和解条項
 ①市大はなぜ秘密条項付きの和解をしたのか?
 ②市大は和解することについて市と協議あるいは報告をしたのか、したのならいつしたのか?
 ③市大は市に和解内容を報告しなかったのか?なぜか?(市は和解内容は知らないと答弁しているが)
 ④市大は上記1の①②③(損害金の回収状況等)は秘密条項付きの和解で秘密にしなければならない事項と考えているのか? その理由は?
 ⑤市は和解内容を市大に聞かなかったのか?聞いたが市大に拒否されたのか? 市は権限に基づいて市大に和解内容を聞かなかったのか?
 ⑥市は訴訟記録を閲覧していないのか。閲覧したのなら、いつ閲覧したのか?

 

 3 行政の信頼と議会審議の信頼を失墜させた市執行部発言の確認と責任の所在の明確化。市議会での虚偽答弁は許されない。

 

 4 秘密条項付きの和解にも市議会に報告するという条項がある。
 ・市大は如何なる理由でこの条項を入れたのか?
 ・市はこの条項であることをいつ知ったのか?
 ・市はこの条項をどのように解釈(理解)したのか?

 

 以上の点については今後も究明し、行政の信頼の確保を図らなければならない。

 

 本問題の真相究明と解決のためには、今後、荻野市大理事長が市民への説明責任を果たすことが最重要である。この問題の根源を知り、キーマンである荻野理事長が真実を話さないと、市民が納得する真相究明は難しい。もう逃げやいい加減な答弁、説明を許してはならない。

 

 本件は江島元市長時代に損害が発生し、中尾前市長時代に損害賠償請求訴訟を起こし、和解した問題であるが、現在、前田市長がこの問題をどう解決に導くかが問われている。従前と変わらない対応を続けていると、結局、前田市長の責任となってしまう。前田市長にはリーダーシップを発揮して市民が納得できる解決を図ってほしい。また、市議会はチェック機能を働かせ、下関市議会の権威と各議員の名誉のためにも市民が納得する形での解決を図って欲しい。

 

報告書作成にあたって

 

 報告書作成のため、各メンバーが資料を持ち寄ったが、その中で本池市議の一般質問(記事)が大変参考になった。本池市議は、この問題が発生した当初から市民の声を受けて真相究明に努力してこられた。おかしいことはおかしいと終始一貫ブレることなく、市民代表としての責任を全うしようと努力されてこられた。その信念と行動には共感するし、敬意を表したいと思う。今期で退かれるようですが、まだ時間があります。この問題を追及し続けて下さい。私どもも多くの市民の方たちと共にバックアップします。そして、失礼な言い方を許してもらえるなら、下関市政、下関市議会にはあなたのような「愚直」な議員が絶対に必要ですので、今後もあなたと同じように市民を第一に考える議員の育成に努められるよう期待しています。

 

 なお、連載中から大きな反響があり、いろいろな意見が寄せられた。市大トイレ工事の損害賠償について、あるいはこの調査報告に関して、ご意見、ご感想、疑問点などがあったら是非お寄せ下さい。(おわり

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