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500万円以上も競争入札に 下関市の公共事業 中小潰しの全国モデル

 下関市(江島潔市長)は4月1日から、電子入札と条件つき一般競争入札を500万円以上の中小公共事業にも導入する方針を明らかにした。2000万円以上の公共事業をめぐって地元業者間でたたきあいになっており、中小零細業者に導入すれば地域全体が冷えこみ、1万3000人といわれる建設業界の雇用にも深刻な影響となる。地元業界では反対世論が圧倒しているが、小泉政府がすすめる「構造改革」の中小企業つぶしの全国モデル版として、強引にすすめているものである。

 発注件数は半分に 
 公共事業として市が発注する件数は、年間800件程度と5年まえと比べて半分前後にまでへっている。このうち4月1日から条件つき一般競争入札の対象となる500万円以上の工事は、年間で400件程度である。金額ベースで昨年度と比較しても、地元業者がおこなった土木は80~90%に圧縮されており、建築は年度ごとの波があるもののわずか二十数%だった。
 作業員がおらずペーパー会社のような業者、営業力でおとった業者などから、つぎつぎに淘汰(とうた)されていき、家族離散や自殺などの悲劇が起こっている。まだ力のある業者のなかでも、仕事が少ないうえにたたきあいに放りこまれ、息を止められている。500万円以上の工事に拡大すれば、業者数、作業員数ともに大きい中小業者は、息つなぎであった公共事業が修羅場に変えられ、下関の建設業界全体の基盤が崩れることになるとみられている。
 また市が明らかにした計画によると、ISOを取得しなければ入札参加の優遇が受けられないこと、案件に応じてISO取得を入札参加条件にするとしている。ISO(国際標準化を推進する機関)が、地方の中小企業でも国際取引とは無関係であるのに行政の手で持ちこまれて、審査登録機関に認証として数百万円、毎年の更新で60万円前後を払わされることになる。

 ISO取得はアメリカの圧力
 「WTOでアメリカから自国の業者に不当な利益を与えているといわれ、国際入札をおこなうように要求されてから、通産省(現・経産省)が圧力をかけはじめた」とある建設業者はふり返る。ISOは取得しなければ仕事をとりあげると脅されて金を払っているようなもので、「大企業でも零細でも同じ値段で、小さい業者はコストアップでやれなくなる」と指摘した。また地元業者はたたきあいとなるが、数億円以上の公共事業をとるゼネコン、大企業は電子入札になっても入札参加業者がかぎられるため、100%~95%で談合が守られていると指摘されている。
 安岡地区のG建設は社長とその息子夫婦合わせて10人足らずで、土木中心の下請がおもである。社長は官庁の入札、営業に回るだけでなく、作業現場にも出むいて現場監督、作業となんでもこなす。「小さいところは経営者がなにもかもするから成り立っている。それでもやっとのうえに、さらにたたきあいをさせられたのでは、どうやって会社をつづけたらいいのか」と怒りを語った。
 「いまでも電子入札のおかげで、会社の見とおしがまったくたたない。予定価格と最低制限価格だけが公開されて、あとは宝くじをあてるような落札だ。先がまったく読めない経営をこのままつづけていくことはできない」「500万円の75%ということは、375万円で材料、人件費、管理費を出さなければいけない。つぶれろといっているようなむちゃくちゃなものだ」と訴える。
 創業40年近くになる川中地区のT建設は、「近くの経営者が亡くなった。責任感が強い人で、材料屋や親族に迷惑をかけてはいけないと、自殺して保険金をあてた。人間をかかえていると、弁当をかかえてやってくるのだから、もうけなしでもやらなければいけない。みんな家族がおるんだから」と、しめつけられていく業界に危機感を募らせる。
 「大型公共事業は入札業者がかぎられてくるから公募になっても話ができるしどうでもなる。小さな公共事業はそうはならない。数が多いから、うちも1年半以上も公募に入ったが、1件もとれなかった。何千円もするような仕様書を買うだけでもバカにならない。仕事がなくてずっと遊んでいた」とのべる。建設クラブがなくなり建設業界の横のつながりが薄くなり、やられっぱなしになっているとつけ加えた。

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