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「公金で市長お気に入り教員を養ってよいのか」 下関市議会で本池市議が反対討論

 下関市議会令和2年第1回定例会が23日に閉会した。今議会には来年度予算を含む68議案が提出されており、最終本会議では市議会はすべてを賛成多数で可決した。来年度予算のなかには、昨年から問題になってきた下関市立大学に市長の推薦した人物を採用する専攻科設置の予算も含まれており、こうした内容について3人が反対討論をおこない、1人が賛成討論をおこなった。本紙記者の本池涼子市議も反対討論をおこなった。以下、要旨を紹介する。

 

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反対討論

 

 議案第10号令和2年度下関市一般会計予算に反対討論をおこなう。来年度予算のなかには、公立大学法人運営業務2億4423万4000円のうち、公立大学運営費交付金のインクルーシブ教育推進のための交付金2185万円が含まれている。来年度予算の新規事業として計上されているこの予算は、専攻科設置にかかるもので支出と収入の差額が計上されている。

 

 まず収入だが、特別の過程の受講料として675万円、令和3年度からの専攻科設置のための受験料に相当する検定料と入学金で74万9000円、合計749万9000円を見込んでいる。次に支出だが、教員3名と事務職員1名分の人件費として2780万円、研究費144万円、消耗費10万円、合計2934万9000円となっており、先ほどものべたとおり予算に計上されている2185万円はこの収入と支出の差額分となる。

 

 つまり、昨年から問題になってきたが、前田市長の推薦する特定の方およびそのグループを下関市立大学に採用するための予算だといっていいと思う。下関市立大学の一連の騒動は昨年5月30日に前田市長が市長応接室で山村理事長(元副市長)に研究者を紹介したところから始まっている。実際に市立大学では、市長の意向を受けて中期計画にもなかったこの計画が動き始め、大学自治を逸脱した特定の人物の採用ありきの専攻科設置に学内での反発が広がり、9割の教員が反対する事態まで招いたが採用を内定し、さらに9月議会には、大学運営の根幹にかかわる重要事項、例えば教員の採用であったり、学部・学科の設置であったりだが、これらを現場の意見を聞くことなしに理事会で決めていく定款変更議案をこの市議会が可決した。

 

 全国的ニュースにもなり、大学のガバナンス上ありえないことだと驚きをもって受け止められるなか、1月にはその方が理事長の任命により市大の理事に就任し、さらに先日3月16日には現事務局長とともに副学長に内定したことが発表された。また4月1日以降に教授として採用されようとしている。

 

 9月議会では何人もの議員が反対討論をおこなったし、全国的に見ても考えられないようなことが「改革」の名を借りて進行しており、これについて問題視する声が大学内外から高まっている。それらについて「将来を見越して学長のリーダーシップのもとで生き残れる大学にするのだ」とか、「これに反対するものは抵抗勢力だ」「改革を恐れている人たちのいうことだ」といった意見が出ているようだが、これまでの手続きそのものがルールを逸脱しており、ならばルール、すなわち定款を変更してしまえというやり方だったにすぎない。学内の合意形成も図られないなかで決められていったのは誰がどう見ても事実なのだ。

 

 ある市民の方が「市大は前田晋太郎大学なのか?」と私に問うてこられた。本来ならば「いいえ、下関市立大学です」と応えなければならないが、市長が「この人」と見初めた人物を理事長にお願いしたら採用されるというのであれば、それは大学としてのガバナンスを逸脱しており、私物化という指摘を払拭することはできない。そして、その度に市財政から何千万円という人件費その他を運営費交付金として注ぐというのだろうか。市民のみなさまから、市長が気に入った人物が公金によって養われるのか? といわれたさい、私たち市議会議員は何と答えればよいのか。この議場におられる先輩議員のみなさまにもお聞きしたい。

 

 インクルーシブ教育の推進についてはなにも否定するものではない。重要なことであれば教育現場の実状に即して推進するべきだ。ただ、それを特定の人物の採用ありきで、あまりにも乱暴なやり方で進めていることに大きな違和感を感じている。本当にインクルーシブ教育を充実したものにしたいのであれば、教育現場の先生方や、専門家、受け入れる市立大学の関係者などで論議を尽くしたうえで、下関にとって必要なものをとり入れるという形でなければ、市民のみなさまの理解を得ることもできないのではないか。

 

 2月27日、市立大学の名誉教授7人が連名で専攻科設置と定款の変更に対して疑問を抱き、意見書を前田市長と山村理事長に対して提出された。2名の学長経験者も含む。この方々も「やむにやまれぬ思い」だといわれていた。

 

 初めから特定の人物の採用ありきだったことが今回の騒動の根源であり、そのような人事に対して市民の税金である運営費交付金を投入することについて、認めるわけにはいかない。

 

 来年度予算のなかには市民にとって非常に重要なこともたくさん含まれている。しかしながら議案は一つなので、この内容を含んだ議案に賛成することはできない。下関市議会として、市民のみなさまに対して説明がつくような賢明な判断を加えることを訴えて反対討論を終える。

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