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政策顧問って何ですか? 下関市役所の不思議な存在 本池市議の一般質問

 下関市議会12月定例会で8日、本池涼子市議が前田市長が市長に就任してから任命している「政策顧問」について、一般質問をおこなった。「顧問」は中尾前市長が初めて設置したが、前田市政に移行してから「政策顧問」という肩書に変わり、一期目から現在まで、「前田市長の最初の公約づくりに深くかかわっていた」といわれている市役所退職者の金山俊之氏が任命されている。中心的な施策やプロジェクトの多くに関与し、現場職員に指示を出しているといわれ、「いったいどのような立場で行政に関与しているのか」「いったいだれなのか」と市役所内をはじめみなが不思議な存在として疑問視していたものだ。質問を通じて、同氏が「パートタイム会計年度任用職員」という位置づけの責任を問われない一職員でしかなく、その職務内容や権限についての規定なども極めて曖昧な状態にあることが明らかになった。一般質問の要旨を紹介する。

 

 本池市議 市役所にもうけられている政策顧問とはどのような役職なのか質問する。
 下関市には役所を定年退職された後も「政策顧問」という肩書でひき続き市政執行に関与されている方がおられる。この政策顧問が庁舎内でさまざまな事業に口を出されるとか、政策顧問にお伺いを立てなければことが前に進まないといった話を職員の方よりよく耳にするようになり、「政策顧問とはいったいどのような存在なのだろうか」という疑問を抱いている。本来であればこの議場でご本人にお聞きしたいところだが、議会にも出席されていない。行政組織のあり方ともかかわることなので質問することにした。

 

市長または副市長が任命

 

本池市議(手前)の一般質問を聞く前田市長と三木副市長(8日、下関市議会)

 本池 まず、事実関係から確認をしていきたいと思うが、その前に政策顧問を置く目的、どのように必要なのかをお聞きする。

 

 吉鹿総務部長 政策顧問の職務は、市長または副市長の命を受け、市長の政策理念の実現に向けて、政策判断にかかわる特命事項について調査、研究、助言、提案をおこなう。そして市政に関し、識見および経験を有することを求めている。

 

 本池 どのように必要なのか。必要性をお願いする。

 

 吉鹿 法律あるいは規則等にもとづき、「任命権者が必要と認める場合」に雇用できるという規定をしている。それにもとづいて判断している。

 

 本池 県内他市で下関市のような「顧問」を置いているところが他にあるか。

 

 吉鹿 県内の都市について調査をした。まったく類似の形態はない。岩国市は根拠法が異なるが、地方公務員法の三条三項第四号にもとづく市長の秘書職として置いているケースが一つ、長門市が一般職だが、部次長級の職員を政策調整監という職名で置いている。

 

 本池 岩国市の場合はおそらく審議官だと思う。岩国基地の関係だ。私も確認をさせていただき、地方公務員法三条三項四号の特別職だと理解している。下関市のようなものはないと判断していいかと思う。

 

立場はパート会計年度任用職員

 

 本池 下関市だけに置かれている政策顧問だが、政策顧問を雇用する根拠規定はあるのか。

 

 吉鹿 政策顧問については地方公務員法の第二二条の二の「パートタイム会計年度任用職員」という形態を持って任用している。

 

 本池 地方公務員法二二条の二は、会計年度任用職員の採用に関するものだ。下関市に政策顧問を置くことについての規定とは違うのではないかと思う。令和元年度までは下関市の「政策顧問」は地方公務員法三条三項三号にもとづく特別職だった。そのさいには「下関市政策顧問の設置等に関する要綱」があり、政策顧問に関することが決まっていた。そうしたものはないのか。

 

 吉鹿 かつて(令和元年度まで)は地方公務員法三条三項三号の特別職として限定的に列挙されている「非常勤の顧問」という形で任用していた。地方自治体が嘱託職員という非常勤の職について、さまざまな地方公務員法の根拠をもって任用していたため、国の方で統一的な任用根拠を求めるということで整理がなされた。令和2年4月から運用開始しているが、総務省から地方公務員法三条三項三号の「顧問」は非常に厳格に職務の内容を限定して任用するよう通知がきているため、下関市としては会計年度任用職員、非常勤なのでパートタイムという形で任用している。

 

 本池 パートタイム会計年度任用職員の規定で雇用しているということだが、政策顧問に限った規定はないと理解していいのか。

 

 吉鹿 政策顧問の職については「特命事項について調査、研究、助言等をおこなう」ことを求めており、任用は「下関市職員の任用に関する規則」第一〇条二号にある「特殊な専門的知識または技術を必要とする職を選考によって採用することができる」という規定にもとづいて任用している。

 

 また、会計年度任用職員の休暇および給与に関する運用というものがある。こちらは条例にもとづいた運用だが、そのなかで政策顧問は別表2に掲げている、「任命権者がとくに必要と認めた場合、市長の承認を得て任用することができる」「その雇用条件等については別に定める」というものがある。そうした根拠に沿って任用している。

 

 本池 特別職のときにあった「下関市政策顧問の設置等に関する要綱」に準ずるものはないということでよいか。

 

 吉鹿 当時、地方公務員法三条三項三号を根拠として顧問を任用するなかで、一定の規定をする必要があるので、要綱を市で独自に作成し、そこを根拠に任用していた。しかし現時点では、会計年度任用職員・パートタイムということで、地方公務員法二二条の二、条例のなかの職員の任用に関する規則などを根拠としているので、とくに現時点で要綱という形で定めたものはない。

 

説明責任伴わぬ「助言」

 

 本池 次に政策顧問の身分上の位置づけについて質問する。まず、先ほどから出ているが、政策顧問は「パートタイム会計年度任用職員」ということだ。パートタイム会計年度任用職員もさまざまあるので、政策顧問の勤務日数、勤務時間はどのように規定されているのかお聞きする。先ほど少しふれていただいたが、まず、根拠規定があるのかないのか、あればどのようなものかお願いする。

 

 吉鹿 まず勤務形態について説明する。政策顧問の給与は基本報酬、期末手当および通勤の実情に応じた割り増し報酬を地方公務員法二二条の二にもとづいて支給している。そして、「下関市会計年度任用職員の給与等に関する条例」第二三条第四項の規程のなかで「高度の専門的知識またはすぐれた識見を有する業務に従事する」ということで運用規定があり、そちらの条例から運用を定め、月額報酬などを定めている。勤務形態については1日7時間・週5日を勤務することとしている。

 

 本池 規定はそうなっているということだが、実態はどうなっているか。

 

 吉鹿 所属が秘書課になっているので、日々勤務していただいている。私たちともしばしばお顔を拝見し、仕事も協議等も一緒にすることもある。執務室等があるので1日7時間・週5日の範囲内で勤務いただいている。

 

 本池 政策顧問の任期はどうなっているか。

 

 吉鹿 基本的には会計年度任用職員の任期ということになるので、1年間の任期が2回くり返して合計3年が基本的なルールだが、顧問については例外の適用ということで更新することができるようになっている。

 

 本池 給与はいくら支払われているのか。

 

 吉鹿 基本的に一般のパートタイムとは異なった役割ということなので、再任用6級職の報酬をベースにしている。1日7時間・週5日で勤務時間が週35時間になるので、フルタイムの38・75時間から割り戻した金額として、28万4600円の月額報酬となっている。

 

 本池 議会への出席はどうなっているか。

 

 吉鹿 基本的にこの議場に、執行部説明員という形では出席はしていない。ただ、議案の審査をする常任委員会といったものの出席については、必要があれば議会の委員長の判断によって出席するということになろうかと思う。

 

 本池 今の話の確認だが、必要かどうかは議会の委員長が判断するのか。

 

 吉鹿 「議案の審査で求められれば」ということで、「必要であれば」と答えた。議会サイドで金山顧問が必要だと認めれば、みずから委員長の許しを得て出席するということもあるかと思う。今のところは積極的に出席した実績はないと思うので、委員長の判断によってとお答えさせていただいた。

 

 本池 ということは、議会に対する説明責任は負っていないと理解してよいか。

 

 吉鹿 顧問は先ほど申し上げたように調整、あるいは研究、助言などをおこなうことがおもな役割となっている。決裁権限も持っていないので、基本的に議会の方で答弁するのは部長、課長といったラインで決定権のある者が責任を持って答弁する形になっている。

 

市長特命で部局間で口出し

 

 本池 次に政策顧問の所掌事務、職務内容についてお聞きする。政策顧問の所掌事務や職務内容について規定するものがあるのだろうか。

 

 吉鹿 とくにない。

 

 本池 ないということだが、所掌事務や職務内容はどうなっているのか。先ほど(政策顧問の)必要性をお聞きしたときに、職務内容を答えていただいたかと思うが、もう一度お願いする。

 

 吉鹿 市長・副市長の命を受け、政策理念の実現に向けた政策判断にかかる特命事項の調査、研究、助言、提案をおこなうことが職務内容だ。

 

 本池 通常であれば「この人はこのような仕事をする」といった職務内容を定めていなければならないはずで、政策顧問についても特別職の時代にはあった。それも現在はないということか。

 

 吉鹿 要綱等がないということだ。雇用にあたっての内部的な伺いは当然あり、そのなかで職務の内容は特命事項についての調査、研究、助言をおこなうということは書いている。会計年度任用職員なので「雇用条件等の通知」というのがある。そのなかにも雇用条件等は書かさせていただくなかにあり、直接的には雇用条件通知のなかには………書いていないが、基本的に市長がとくに必要と認めるときということなので、一般の会計年度任用職員とは別に伺いをもって、職務内容を定めている。

 

 本池 定めているのはわかったが、とくに明文化したものはないということでいいか。

 

 吉鹿 要綱等で明文化したものはない。

 

 本池 職務内容は「市長、副市長の命を受けて」ということだ。聞きとりのさいには「部局間の調整」という説明も受けてきた。部局間の調整がつかないものは、不安定な雇用の職員ではなく、もう一段上の段階、責任ある立場の者が責任を持って調整すべきだが、政策顧問に助言や調整を求めるか否かは市長・副市長が判断するということでいいか。

 

 吉鹿 個々具体的に市長・副市長に判断を求めて動くということではなく、そのために、これまでの職務の経験や識見を有しておられるということで任用していると理解している。

 

 本池 であれば、政策顧問に助言を求めるというのはだれが判断するのか。ご本人か。市長・副市長か。

 

 吉鹿 基本的に「こういった政策を進めてください」と市長・副市長が政策顧問に対して依頼するというか、政策的な会議のなかで顧問に推進していただくということになると、その段階で主体的に動いていき、政策立案、事業の進捗といったものを進めていく。その過程の中で協議あるいは判断といったものが必要であれば、市長・副市長にも相談しながら進めていくというのが通常の政策決定された事務の進捗方法だと理解している。

 

 本池 依頼するというのはだれが決めるのか。

 

 吉鹿 とくに重要な政策なので、トップである市長が職務命令として出すということだ。

 

 本池 市長が判断するということだ。政策顧問に対する相談内容、依頼内容は限定的になっているのか。たとえば甲乙決裁分のみなのか、あるいは建設に精通された方のようなので建設部分のみなのか、部局にかかわらず、すべてにおいてなのか。

 

 吉鹿 政策顧問が推進される政策は、単体の部・課で進めるのが困難な場合であるかと思う。私がかかわって知る限りにおいては、多部局間にまたがるような、推進が単体の部で進めにくいような、横串を通す必要があることの調整をおもに進める。あるいは進める方向性や事業費についてもさまざまなことが考えられるので、どういった手法がいいのかなどについてよりよい助言をして、最終的に判断を仰ぐ形になっていると理解している。

 

 本池 とくに限定的にはなっていないということでいいか。

 

 吉鹿 限定的になっていないというのがよくわからない。この事業を進めてくださいと市長から命があるので、その意味では限定的だと理解している。

 

 本池 「この事業を進めてください」ということではあるが、それがどんな事業かもあると思う。たとえば建設部分だとか、甲乙決裁分だけということでもないということか。

 

 吉鹿 事業をするときに、なにか建てて終わりではなく、ソフト的なこともかかわってきたり、いろんな多部局間の問題が起こってくるので、あらゆることの調査をしたり、研究や助言をおこなうと理解している。

 

 本池 政策顧問に助言を求め、政策顧問が助言した場合、そのときに決裁文書への押印はされるのか?

 

 吉鹿 基本的には政策顧問が決裁権限を持っている職ではないので、決裁者としての押印はしていない。

 

行政の公正性保てるか

 

 本池 決裁権者ではないので押印はしないということだ。一つずつ確認してきたが、市民サイドから見ると、この顧問制度は次のような問題が起きる恐れがあり、心配している。

 

 一つ目は、行政の公正性、公平性、透明性からの問題だ。職務内容とその責任については明確に規定され、かつ権限とその責任とが均衡がとれていなければならない。強い職務権限、あるいは多岐にわたる職務権限が与えられていればいるほど、その責任も重くなるはずだ。しかし、短期雇用のパートタイム会計年度任用職員が、しかも市議会にも出席しない、決裁文書にも押印しないという、あいまいな立場の職員が、市政の決定に関与するということは極めて控えめであるべきではないだろうか。助言も本当の助言だけであれば理解できるが、限度をこえると、無責任に口だけ出す、口は出すが責任はとらないというおかしなことになってしまう。また、部局横断的な調整は、課所間の調整なら部長が、部局間の調整なら副市長という責任ある立場の者が責任を持っておこなうべきだ。公務能率の観点、守秘義務の観点からも、顧問制度の慎重な運用が求められる。

 

 また、政策顧問が秘書課所属の職員であるということも理解できない。どうして秘書課所属の職員、しかも普通の正規職員でもない職員が、大きな政策助言や政策調整をすることにしたのだろうか。国政を見ても、直接の職責でない立場の公務員が「トップの意向」として行政に介入して行政が歪められたとされた例が多々あった。例えば加計学園のような問題だ。

 

 本市での顧問制度は設置後まだ年数がたっていないので、まだ大きな問題は起きていないようだが、これまでの質疑でも明らかなように、この顧問制度はあいまいで、この運用と人選を誤ると、公正・公平な市政が歪められてしまう恐れが強いと感じる。私がこの質問をしたのも、市民や市役所内部からの「おかしいではないか」という声があったからだ。この顧問制度について、県内他市ではどこも置いていないのに、本当に本市に必要なのだろうか。その点を含めて、顧問という組織のあり方について、廃止も含めてよく検討していただきたいと思う。

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