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市長選前年の大盤振る舞い予算 下関市・史上最大規模予算の中身とは? 市民置き去りの大型事業に拍車【記者座談会】

下関駅前応援宣言のセレモニーでの前田晋太郎市長(昨年10月、下関市)

 下関市の前田市政が20日、2024年度予算案を公表した。1年後(任期満了2025年3月)に市長選を控えた前田市政8年目の予算は、その額も「異次元の金融緩和」を倣ったかのように過去最大規模で、全方位にわたって新規・拡充予算をつけているのが特徴となっている。2022年7月に後ろ盾だった安倍晋三元首相が急逝し、今や東京の清和会・安倍派は裏金問題ですったもんだとなり、地元の安倍派も人知れず解体に向かっている。そうしたなかで迎える市長選に際して、現職にしては異常に早いタイミングで出馬を表明した前田市長がどんな来年度予算を組むのか注目されていた。28日には3月議会も始まる。政治構造が揺らいでいるもとで下関の未来はどうなっていくのか、今年度予算の特徴を分析しながら、記者たちで議論してみた。

 

  一般会計の総額は1312億円で、前年度比約87億円(7・1%)増と大幅な増加となった。これは比較可能な1市4町が合併した2005(平成17)年以降で最大の予算だ【グラフ①参照】。今回の予算は「For Kids For Future~セカンド・ステージ」予算なのだそうだ。ちょっと何を言っているのかわからないのだが、前田市長は「これから下関はさまざまな事業が形をなし、魅力と活気にあふれ、賑わいに満ちた新しい景色があらわれる」といっている。最近、あちこちの行事などに顔を出しているが、その姿を見た人たちは「すでに当選確実という顔をしている」と話題にしている。次期市長ポストについて林派にもお墨付きをもらって、競争相手も牽制して、もう自信満々なのだろうと話題になっていたが、今回の大型予算もその自信の根拠の一つなのだろう。

 

 予算書をざっとみたところ、なんと表現したらいいかわからないが、八方美人予算という感じだ。予算規模が膨れ上がったのは「投資的経費」、つまり大型の建設事業や改修・整備をおこなうための予算が73億9000万円増えて総額約228億2000万円になったことが大きい【グラフ②参照】。火の山公園再編整備事業や安岡地区複合施設整備事業、市立大学のデータサイエンス学部に加えて、これから総額20億円の看護学部の建物建設が始まる。大型投資が目白押しの状態だ。

 

 B すでにこれまでに大型投資を続けていて、2024年度にオープンするおもな施設だけ見ても、市立大学データサイエンス学部(4月/約38億円)、民設民営の学校給食共同調理場(4月/設計・建設・維持管理に15年間で約101億円)、新総合体育館(8月/設計・建設・維持管理に約15年間で約98億円)、安岡地区複合施設(来年1月/設計・建設・維持管理に15年間で約30億円)、乃木浜総合公園の野球場(来年1月/3億3000万円)など、億単位の大型施設が並んでいる。老朽化した施設の更新などもあるので一概に大型投資を否定するわけではないが、市長選の前年にこれだけ集中させたというのは、そういうことだろう。

 

 A 歳入は、市税が322億9500万円で、前年度より9億8000万円減る(個人住民税の定額減税がおこなわれる分を見込んでいる)一方で、地方交付税が約266億6900万円で約18億円増えるほか、国・県支出金が302億円(0・2%増)となっている。先ほど話したように大型投資が続くので、借金にあたる市債が120億7900万円と対前年度比でなんと43・6%の増加となっている。ボートレースの利益から積み立てていた基金を56億円とり崩し、さらに足りない分を財政調整基金から14億円とり崩すことにしている。来年度末には、財政調整基金の残高、市債残高ともに財政健全化プロジェクトで掲げる目標を下回る予定だ。今ボートレースがもうかっているということで、ギャンブル依存を深めている。そして多くの投資事業が継続していることで、当初予算ベースのプライマリーバランスは大幅な赤字に転じる。今後数年間は大型事業が続くので赤字傾向が続くと見込まれている。

 

 前田市長によれば「想定内で、健全な財政状況」だそうだ。それなら今まで「プライマリーバランスが…」とか「財政危機に陥る!」といって毎年予算を削ってきたのはいったいなんだったのか?という話にもなる。

 

  役所のなかでは毎年「削れ!」と指令が下りるから、各課は「どこを削ろうか…」と頭を悩ませてきた。小さな事例ではあるが、敬老の日に80歳以上全員に送っていたタオルが廃止となり、全員に配っていたカステラが羊羹に変わり、一口饅頭(3つ入り)に変わって、最終的に半分サイズの羊羹を会場に来た人だけがもらえるようになったとか、そんなレベルだ。敬老の日の祝い品なら「けちくさい市だな」で済むが、高齢者のシルバーパスも他市と比べて貧弱だし、障害者用のタクシーチケットの配布枚数を削減したり、地域行事の予算を削ったりと、市民生活や地域の活気に直結する予算も削られてきた。

 

  市役所の正規職員をどんどん削減して非正規雇用にかえてきたのも「財政健全化」のためだ。おかげで現場が回らなくなってきている。赤字だ黒字だと一喜一憂するのも違うが、これまでさんざん削っておきながら、市長選前の大盤振る舞いによって赤字傾向になることはよしとするならダブルスタンダードといわなければならない。それこそ借金を背負わされる未来の世代からしたらたまったものではないが、そのようにして選挙前の大盤振る舞い予算が出てきている。

 

子育て支援 下関市もようやく着手

 

  前田の7年のなかでは、全国的な流れもあって、やっと下関も子育て支援に力を入れ始めた。ここは評価していいとは思う。はっきりいって下関は他所と比べて遅すぎた。去年10月から子ども医療費の無償化が中学生まで拡大になり、高校生が入院した場合にかかる医療費の自己負担分の全額助成が所得制限なしで始まっている。子どものうちは病気やけがも多いから、これは助かったという声が多い。一番後回しになりがちな歯医者に行くようになったという話もある。それと、物価高騰のなかで2022(令和4)~25(令和7)年度までの時限措置ではあるが、給食費の半額支援もおこなわれている。来年度からは第2子以降の保育料無償化も始まる。所得制限なしで認可・認可外・幼稚園すべての子どもが対象になるから、子育て世帯にとっては助かるだろう。

 

 前田自身は実績としてそれ以外にもいろいろあげているが、国の意向に沿った補助メニューを利用している施策などはちょっと残念なものも多く、「子育て支援してますよ」アピールに使っているだけだろうといわれている。ただ、なかには事業がスタートしてから市民の声を受けて若干改善したものもあったりするので、少しは聞く耳を持っているのか? とも感じなくもない。

 

  しかし、医療費無償化しかり、保育料無償化しかり、本当は地方自治体が人口維持のために競ってやるような施策ではなくて、日本全国どこに住んでいても同じように安心して暮らせるように国がやることだ。全国の自治体が独自に政策として実施し始めたことは否定されるべきものではないが、一方で地方自治体の首長がやらないといけないのは、国に対して子育て支援を真面目にやってくれ! と声を上げることではないか。それをするかどうかが、自分の実績づくり第一なのか、市民の暮らし第一なのかのバロメーターになると思う。

 

市大の新学部設置 民主的運営の機能は破壊

 

建設中の下関市立大学データーサイエンス棟

  ただ、予算全体で見ると市長選前にあちこちにばらまいた感は否めない。学校や就学前施設、公園などの老朽化した遊具の更新や新たな整備など、今まで問題になってきたことへの対応がここにきて入っているのも特徴で、住民が直接働きかけたもの、議員たちが要望したものなどがかなりの割合で盛り込まれている。農林水産業や旧4町の切実な課題にも予算がついていたりして、全方位にアピールしていることがうかがえる。

 

  今まで散々寂れるにまかせてきた下関駅前周辺(大丸下関店、シーモール)に突如力を入れ始めたのも特徴で、昨年10月に「下関駅前応援宣言」を市長名で発表。来年度予算案には下関駅前応援事業として2億5000万円を計上した。すでに今年度は補正で7000万円を出しているから、これに上乗せして出すということだ。これらがなにをあらわしているかはいうまでもない。

 

  今まで遅れていたこと、放置されてきたこと、市民生活にとって必要なことに予算をかけてやるのはいいことではあるが、そこには絞る部分は絞るという責任もともなう。だが、大型投資もまんべんなくやって利権も保障しつつ、大小さまざまに予算をつけている。市長選前の駆け込みといったところか。

 

  大型投資の代表的なものの一つが市立大学の総合大学化だ。前田市長が一期目の選挙で公約に掲げていたもので、データサイエンス学部がこの春にオープンし、2025(令和7)年春には看護学部がオープンする予定だ。これは、かかわってきた市職員たちも驚くほどのスピードで進んできたもので、学部の選択にあたって大学内の教授たちや市民の意見を聞いて熟考して決めた形跡は残念ながらない。むしろ異論、反論、議論を排除して進めてきたといえる。

 

 総合大学化の前段としておこなわれた専攻科設置では、2019(令和元)年6月に現学長を市長が連れてきて、その後理事会ですべてが決められるような定款変更をおこない、大学の自治の要であった教授会を実質なくした。理事会理事を任命する理事長、その任命権者は市長であって、要するに市長の意向でなんでも決まっていく大学に変質させた。大学の私物化だ。その後、学内で抑圧的な空気が強まり、それに嫌気がさしたり、精神を病んだりして、毎年大量の教員が流出していった。わずか4年で教員の6割が大学を去っていったのは周知の事実だ。その穴埋めで学長の周囲から教員が雇われたり、それでも足りないから市職員OBや現職職員までが特命教授になったり、辞めた学長が特別招聘教授になったりしてきた。総合大学化以前に教授会が無力化して民主的な運営ができなくなっている。大学にとって致命的だ。その過程では自殺者まで出た。

 

 前田市長は「すばらしい大学ができる」とアピールしているが、大学の質が担保できなければ、それは「仏つくって魂入れず」の典型的な事例にもなりかねない。前途多難であることは必至だ。

 

  市大問題が典型的だが、前田市政7年を見たとき、力でねじ伏せる、意見を封じる的な、権力を使った進め方が目立ったといえる。それは安倍政権の7年8カ月の存在とも無関係ではないし、林派の中尾友昭を市長から押しのけて、安倍派が下関市政を牛耳ってきた7年とも重なるものだ。

 

給食センター 子供たちの安全後回しか

 

竣工した新下関給食センターの外観(16日、下関市)

 C 学校現場や保護者のなかで関心事となってきた民設民営の給食センターも4月から供用開始となる。彦島にある南部学校給食共同調理場が老朽化して建て替えないといけないというのが発端になっているが、これ幸いとばかりに給食調理場そのものを公共が手放して「民設民営にする」ということだけが先行して決まって進んだ。子どもたちの安全のための栄養教諭が配置されなくなることも想定していなかったし、23校も一気に集約した場合、各学校の実務がどうなるかの想定も後回しだったから、学校現場は直前まで大わらわだ。

 

 「子育て支援」というわりには、子どもたちの安全よりもコスト優先であるし、なんなら広島駅弁(JR西日本子会社)を潤わせることが優先されてきたのではないかとも思える。設計から運営まで15年間で約101億円で広島駅弁の子会社が請け負い、そのなかには9億円の役員報酬まで含まれている。建設も広成建設だった。つまりJR西日本であり、「江島(元市長、参議院議員)利権なのだ」と解説する人もいるほどだ。竣工式には金融機関も含めて広島勢がそろって参加していた。

 

 D 何度聞いても理解できないのが、「民設民営」といいながら、市が建物を建設する費用も払ったうえで、調理場の建物は民間企業の物になるということだ。もし15年後に契約が終了した場合、この建物はどうなるのだろうか? 広島駅弁からすると、自社工場建設を公金で建ててもらって、利益も保証してもらって、そこで高齢者の弁当事業もやって利益を得ることができるし、給食事業の実績にもなるから濡れ手に粟だ。

 

星野リゾート誘致 公金注入して観光都市化

 

観覧車が見える「あるかぽーと」では星野リゾートを核とした開発が計画され、火の山(奥)から対岸の北九州・和布刈をつなぐメガジップライン計画も。

 B 2025(令和7)年秋ごろには「あるかぽーと」で建設中の星野リゾートのホテルも開業を予定している。普通借地という好条件で星野リゾートを誘致しているが、星野の開業が決定したのち、下関市ではあるかぽーと・唐戸エリアマスタープランの作成を星野リゾートに委ね、それを具現化する事業が進んできた。来年度はウォーターフロント開発事業もあわせると検討、設計、実証事業などだけで1億3000万円以上の事業費が計上されている。星野といえばホテルは自前で整備するが、周辺環境は公金で整備させることでよく知られている。下関市でもご多聞に漏れず、「日本を代表するウォーターフロントシティ」を掲げて、公金をしっかりと投入して星野のために海沿いの街並み整備がおこなわれていく予定だ。

 

 C あるかぽーとの開発と関連して、火の山整備も進んでいる。「光の山プロジェクト」と名づけていて、今年度は約11億円でロープウェイを新築する契約を締結した。来年度は展望デッキやアスレチック、キャンプ場整備などに約14億円投じる予定だ。火の山といえば、昔は木でできたアスレチックなどがあって、小学校の遠足で行ったりしていた時期もあったが、遊具や遊歩道も老朽化してひどい状況なのが話題になってきた。山麓のチューリップ園は春になると多くの人が訪れるので、もったいない状況だったし、子どもたちが自然のなかでのびのび遊べる場所をつくることはいいけど、メガジップライン(関門海峡にワイヤを架け、うつ伏せ状態で最高時速100㌔超で滑り降りるアトラクション)については、事業者に職員を出向させてまで行政がかかわることではないのではないか。いつも民間、民間というのになぜここには公金が出るのだろうか。副議長の知人というのが関係しているのだろうか? と穿(うが)って見ている人も少なくない。林派に利権を分け与えているのだと見なしている安倍派の人だっている。

 

  主要な施策のベースにあるのが観光客誘致と銘打った遊びだ。海響館のアシカの展示を含めた改修費で10億円も入っているが、今すぐ必要なのか? 観光交流人口が増えるだけでは町の発展につながらないことは、すでに各地で実証されている。町のなかで「魅力と活気にあふれ、賑わいに満ちた新しい景色」に期待する声はあまり聞かれない。だから一生懸命、自分でアピールしているのだと思う。しかしアシカよりも急がれる課題はたくさんある。

 

 C 急がれるかどうかでいえば、南風泊市場もどうかと思う。高度衛生管理型の市場に建て替えているが、埋立地だから掘ったら海水が湧き出て、工期が長引き予算が膨れ上がっている。2025年(令和7)年度に完成する予定だが、市場関係者すら「もう仮設を修理するのでいいではないか」といっている。下関漁港(大和町)も同じ物を建てたが、補助金があるからといって、身の丈に合わない箱物をつくる流れも考えものだ。

 

 B 市民の安心・安全にとって必要不可欠な部分をどんどんぶん投げているのも特徴だ。体育館や海響館などに民間のノウハウを活用するというならまだ理解できるが、医療・教育・福祉分野での民間委託が急増している。

 

 養護老人ホームなどはセーフティネットなのに、老朽化した建物のまま民間に譲渡したし、唯一の市直営だった本庁東部地域包括支援センターもこの4月から民間委託される。この話も突然浮上したので、ほかの包括支援センターを受託している関係者たちも非常に驚いた。しかし「公平な運営のために1カ所は市直営を残すべき」という声が聞き入れられることなく、林派企業への委託が決まってしまった。

 

 A 公立保育所(保育園、幼稚園など)も減らしていく一方で、今後は民間を主にして公立を減らしていく方向性を持って、子どもの数の減少にあわせて統廃合していく方向だ。児童クラブも来年度から民間委託を開始しようとしている。本当に公共がやらないといけない仕事の部分は「カネがない」という理由で切り縮めていっている。アウトソーシングしすぎるとその弊害は必ず出てくる。

 

病院統合 市民の意見集約乏しく

 

  あと、これから大きな問題となってくるのは急性期総合病院の統合だろう。下関市内には4つの急性期総合病院があるが、昨年、これを3病院体制にするという第2次中間報告が出された。その後、統合するのは市民病院と下関医療センターで、建設場所が幡生ヤード跡地になるとか、早ければ2029年にオープンする――といったところまで計画(基本構想)が出てきている。

 

 病院再編については2017年ごろから話は出てきていたが、具体的にどこでどんな話がされているかを多くの市民は知らないまま今日まで来ている。彦島や豊北の自治会が説明を求めて地元で説明会をしたということだが、それでも多くの市民は知らないままだ。令和六年度予算では統合する「新病院」の基本計画策定のための予算が3400万円もついているが、人口減少と少子高齢化が進むなかで、行政が担わなければならない医療とはなんなのか検討が必要だ。2017年から下関市内の状況も激変しており、コロナ禍も経て医療体制についての考え方も変わってきている。あまりにも新病院を建設するのだ! という方が勢いづいていて、これに対し、いや、待て待て、社会情勢も変わっているし、市民も知らないままだし、市民と膝を交えた議論が改めて必要ではないか、といった声が医療関係者からも出ている始末だ。

 

 D 形ばかりの「協議」を経て計画を策定しても、そのなかに市や市民の実情が反映されなければ意味がないし、それを市民が知らなければ「誰のための計画なのか」ということになる。そしてなによりも、中途半端な再編をした場合、大病院が共倒れすることも考えられる。だからこそ計画を市民に知らせ、なぜ今再編が必要なのか理解してもらって、下関に必要な医療体制を考えたり、再編によって不便になる地域の声を救い上げフォロー体制をとったりということが必要なのだ。

 

 病院再編についての説明を彦島・豊北でしたということだが、そこが説明を求めたからしただけであり、「求められればしますよ」というスタンスだそうだ。給食のときもそうだった。要するに「説明を求められればするのに求めないほうが悪い」「後で文句をいっても知らない」ということだ。

 

未来描けぬ市政 今度は林派への忖度か

 

 A 今、見てきたものだけでも思うのは、これほどの大きな計画が進んでいることについて、市民が詳細を知らないし、知らせないまま進んできていることだ。いつも一部の関係者だけでごそごそと決まっていく。そのなかには「なんだ、○○利権か」と思わせるものも少なくない。安倍亡きあと、これまで通りではいかないから、多方面の要望に応えて、あれもこれも盛り込んでいるが、なんせ動機が不純だから、本当に予算が有効に使われるのだろうかという疑問は拭えない。過去最大規模なのにからっぽという結末になったのでは本末転倒で、「過去最大の予算規模」=「前田の3期目のため」という印象がぬぐえないのだ。

 

 C どんなに立派な政策があっても、それを熱意をもって実行する人材がいなければ、絵にかいた餅になる。前田市政になって、「なんとなく市役所の雰囲気が変わった」という関係者は多い。単純な言葉でいえば、「元気がない」「やる気がない」といったものになるが、いい得て妙だと思う。この間見聞きして思うのは、中尾前市長のときより「忖度」が働くようになったことだ。

 

 たとえば、O病院(民間)だけ市に返還しないといけない介護報酬の過払い金約2億円(総額約3億円)について約40年間の分割納付が認められたり、税金の滞納処分(差し押さえなど)をするのに市長や議員の顔色をうかがわないといけないとか、福祉系でも議員が絡んで無理難題をねじ込んでくるとか、突然政策顧問(なぜか会計年度任用職員)から横やりが入って振り回されたりとか、そういう話が明らかに増えた。意見した職員に対して「そんなこといったら創世下関(市議会で以前最大派閥だった安倍派会派)に飛ばされるぞ」という上司もいたようだ。安倍晋三が急逝して若干変わってきたようではあるが、公平公正よりも「だれがいっているのか」が重要視される。忖度を是とする上司に当たれば現場職員は最悪だ。嫌気が差して降格してでも異動したいと希望を出した人がいることも話題になる。「市民のため」というよりもだれかに目をつけられないため、安泰に過ごしていくためになっていくし、出世したくてみずから染まっていく者だって出てくる。そんなのが横行したら職員のやりがいが失われていくのも当然だ。

 

 B 正規職員の減少にともなって会計年度任用職員(非正規職員)が急増し、全職員に占める割合は5割をこえた。これらの人々が担っている仕事量もすごいが、40~50代の正規職員の業務量や責任の負担も増えていて、今まで以上の力量が求められ、躓(つまず)いたりうまくいかなければ責められるし、職員評価制度でD判定になり勤勉手当を削減される。今まで踏ん張ってやってきたのに、ぷつんと糸が切れたようになって病んでいく職員も増えているし、逆に割り切って「市民のため」を手放していく職員、去っていく職員も出てきている。

 

 E 自治体職員なり役所の空気感というものはトップによって大きく変わるものだ。

 

  新年度予算にかんして論議をしてみたが、迷える前田晋太郎の心情をよくあらわしていると思う一方で、市民の切実な問題が置き去りにされてはいないかを考えるべきだと思う。産業、医療、介護、交通など、少子高齢化が招いた人手不足によって、危機的状況にある分野が山ほどある。たくさん弾を撃っているようではあるが、本当にそれらの課題が解決する方向に向かうとは思えない。前田市長がいくら「希望の街」といっても市民が盛り上がらないのは、そこにある。一見、前田市政の恩恵を受けているように見える企業でも実際は青息吐息で、来年のことすら見えない。未来が描けないのだ。

 

 A 産業に向きあい、市民と対話しながら市民がなにを求めているのかを把握しながら町づくりを考えていく作業が大事ではないか。これは安倍派だろうが、林派だろうが関係なく、市政やそれを担う市長に求められる責務だ。いつも、やれ安倍派が天下をとっただの、林派が天下をとっただのとやりあってきたが、結局のところ私物化争いに明け暮れているだけだ。そうこうしているうちに下関は衰退著しい街になり下がってしまった。安倍晋三がいなくなったもとで、今後は安倍派が主流派を追われて、林派がぶいぶいいわせるようになるのだろうが、今度はそっちにご機嫌伺いしながら政策が繰り出され、予算配分すなわち利権の分配機能が動き始めるというのでは、「前田晋太郎が林派に門徒替えしただけ」ということになる。

 

 1年後の市長選には、いまのところ前田晋太郎以外に立候補表明はないが、もっとどんな下関にしていきたいのかの議論が発展して然るべきと思う。安倍派が林派に糾合されて、市長も県議も市議もしれっと林派ににじり寄っていくという光景を見たとき、「これでは何も変わらない」と思うのは当然だ。市長選を前にして林派との手打ちが完了し、既に勝った気になっているというのは健全ではないし、対抗馬を擁立する力の結集が求められるところだ。

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