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食の改善で健康になる子どもたち 「山口 食のフォーラム」を開催 「食を学べば子は育つ、土に触れば子は輝く」

 「食で輝く子供たち山口」が主催する「山口 食のフォーラム」が3、4、5日の3日間、上関町、山口市、下関市をリレー方式でつなぐイベントをおこなった。国光美佳(子どもの心と健康を守る会代表)、前島由美(ゆめの森こども園代表)、吉田俊道(〈株〉菌ちゃんファーム代表取締役)の3氏が3 日連続で講演し、食と子ども、食と農業、食と地球環境について参加者とともに考える場となった。現代社会の「早い、安い、便利、大量生産」という価値観のもとで、添加物や農薬にまみれた加工品や生鮮食料品が溢れ、その弊害は真っ先に子どもたちの心身の不調としてあらわれ、原因不明のまま「発達障害」と診断される子どもが増え続けている。そうしたなかで、フォーラムでは自然の法則にそって作られた食に改善することで、子どもたちが驚くほど健康で元気になり、自分らしく生きられるようになっていく豊富な事例が紹介された。またそういった新しい食習慣がふるさとの環境を美しく保ち、自然と共生する人間の生き方にもつながることも共有された。

 

「食のフォーラムin下関」(5日、下関市)

 家でも学校でも職場でも、今、何ができるのか、子どもたちに何を教えていくのか。5日におこなわれた下関でのフォーラムは、「食を学べば、子は育つ! 土に触れば、子は輝く!」をテーマにして開かれ、幼稚園の教諭や看護師、母親、自然農に携わる農業者など100人が参加した。スペシャルゲストとして、下関市立垢田小学校の岡田貴子氏が食育のとりくみを報告した。下関のフォーラムの模様を紹介する。

 

国光美佳氏 健康支えるミネラル食

 

 はじめに下関実行委員会代表の柏村康恵氏があいさつし、「みんなで自然と人の繋がりを理解し、食から子どもたちの未来をよりすこやかに育む一歩にできたら」とのべた。

 

国光美佳氏

 

 子どもの心と健康を守る会代表の国光美佳氏は、「子どもの健康を支える、ミネラル食を知る」と題して講演した。国光氏は、保育職を退職後に女子栄養大学で勉強し、食が身体だけではなく精神にも深く関わっていることを知って衝撃を受け、2010年には『食べなきゃ、危険!』という本を出版した。現代食に圧倒的に不足するミネラルを実測値を踏まえて明らかにし、ミネラルが人間の心身に必要不可欠な栄養素であり、昔ながらの煮干しやあご、昆布などの出汁を大事にしたミネラルたっぷりの食事に変えることで化学物質過敏症や発達障害など心身の不調を持った子どもたちが劇的に変化している事例を紹介した。国光氏は次のようにのべた。

 

 ミネラルは、「タンパク質」「脂質」「糖質(炭水化物)」「ビタミン」「ミネラル」の5大栄養素の一つだ。カルシウム、リン、イオウ、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、塩素の7種類がある。微量ミネラルは、鉄、ヨウ素、亜鉛、銅、セレン、マンガン、コバルト、モリブデン、クロムの9種類だ。およそ100種類以上あるミネラルは、骨などの組織の構成や神経の働きを調整するなどさまざまな役割があり、とくに酵素を活性化する司令塔の働きをする。代謝や消化といった生命活動に必要な酵素が、ミネラルを採ることで働く。心を安定させるセロトニンなどの神経伝達物質も、酵素の働きによってつくられるので、ミネラルは精神にも影響する栄養素だ。このようにミネラル不足は生命活動に直結するため、とくに成長期の子どもには、主要ミネラルも微量ミネラルもバランスよく摂れる食事が必須だ。

 

 現代食は「早く、安く便利に、大量生産」が特徴だが、コンビニ弁当やパン、サンドイッチなどを食品分析センターで計測するとそのほとんどがカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などが推奨値に届いていないことが明らかになっている。冷凍食品や惣菜なども同じだ。現代食にミネラルが不足する要因として、①水煮食品の増加、②食品添加物の「リン酸塩」を使った加工食品の増加、③精製食品、なかでも精製油脂の使用の増加があげられる。コンビニ、ファミリーレストラン、弁当屋などで使われる野菜などは多くが水煮食品で、何度も水洗いや消毒をするため野菜が本来持っているミネラルがとり除かれている。

 

 また食品添加物の「リン酸塩」は、冷凍食品、ハム・ソーセージ、ちくわ、はんぺんなどの練り製品等多くの加工食品に使われている。「pH調整剤」などの一括名で表示されることが多い。食品の型崩れを防いだり、食感を保ったり、変色を防ぐために多くの食品に用いられる。人体への影響はないといわれているが、リン酸塩は人間の胃腸のなかでミネラルと化合して排せつするため、ミネラル不足を起こす原因になっている。

 

 また精製食品、精製油脂の使用により、白米、小麦粉、白砂糖などミネラルを除去した精製食品、またサラダ油、天ぷら油など加工食品に使われる油脂類も、脂以外の成分を完璧に抜きとり、ミネラルをゼロにしている。いまや加工食品は食卓に欠かせないものとなり、知らず知らずのうちに「食べても栄養失調」「ミネラル不足」に陥るようになっている。

 

 2020年の小・中学生の自殺率は過去最高になり、精神疾患やうつ病の影響が前年より増えている。病院では向精神薬が処方されていくが、なかには副作用として“自殺”“自殺企図の悪化”というのもある。各家庭のとりくみが重要だが、それでも間に合わない。給食でミネラルをとり、給食をオーガニックにしていこうというとりくみが広がっている。給食であればどの子も平等に食べられる。各地の保育園などで煮干しや昆布の粉末など、炊きたてご飯にかけて食べさせることで、子どもたちが落ちついたり、欠席日数が減るなど明らかな変化が起こっている。いろんな地域に広げていきたい。

 

前島由美氏 子供を癒した食事改善

 

 続いて、「ゆめの森こども園」代表の前島由美氏が「子どもたちを癒した、愛の関わりと食事改善」をテーマに講演した。

 

前島由美氏

 前島氏は25年間、保育士として勤務し、オーガニックな保育園給食で、子どもたちのアトピーや喘息等、アレルギー症状が改善していくのを実感し、2011年から療育支援の仕事に携わった。そこで全国どこを回っても原因がわからず「すべて遺伝だ」といわれ続けて心身の不調に苦しむ子どもたちを多く目にするなかで、「発達障害は脳内アレルギー」という専門家の言葉と、偶然手にとった国光美佳氏の『食べなきゃ、危険!』を読んで食のとりくみを決意し、国光氏とも連携をとりながら、現在は島根県出雲市内で「ゆめの森こども園」を運営している。園は全て自然素材で、昔ながらの日本家屋での療育支援を実現し、鶏の平飼い、養蜂、ウサギ、犬、猫などの飼育で動物たちとの触れ合いや、自然栽培での花や畑作りをしたり、薪割りや竈門でご飯を炊く等の体験から、「イライラ」や「感覚過敏」「多動」などで苦しむ子どもたちが落ち着きと自信をとり戻し、学校や社会で元気に活躍するようになっている。

 

 前島氏は、異常は子どもの心と体だけでなく、「地球環境指標」といわれる、ミツバチがなぞの大量死をとげたり大量失踪するなどの現象としてあらわれていることを映像とあわせて紹介しつつ警鐘を鳴らした。「ミツバチが絶滅したら人類も滅亡する。人間の苦しみと地球の苦しみは同じだ。これを自然に帰していけば人類も地球も幸せになる。それを子どもたちが身を切る思いで教えてくれているのではないか」とのべた。

 

 2019年にはリンゴ農家の木村秋則氏や元農水大臣の山田正彦氏なども参加して「フーズフォーチルドレン」という団体立ち上げキックオフイベントを開催し、わずか1年で47都道府県すべてに支部ができた。「すべてのいのちに優しいケミカルフリーな食と農」を目標に、未来社会を担うこどもたちがいきいきと成長していく社会をめざしている。そのため、子どもたちの食を守るオーガニック給食の実現を入り口に、農業、地球環境への意識を広げていく活動を全国で展開している。

 

 前島氏は「これらは壮大な話に聞こえるがすべて一つのことでとてもシンプルだ。まずは保育園や幼稚園、学校の給食を変えていく動きを大きくしたい」とのべた。

 

垢田小・岡田貴子氏 5年続けた食育の実践

 

 続いて、下関市会場のスペシャルゲストとして市立垢田小学校教諭の岡田貴子氏が「みんなで実践! 食で守る子どもたちの心身」と題して5年間継続してとりくんできた食育の実践を報告した。

 

 「垢田小の子どもたちは素直で優しくて人懐っこい。そして給食が大好きだ。一方で現代の子どもたちが抱える課題として、キレやすい。幼い。集中力や耐性がない。人間関係づくりの力が不足し、スマホ、ゲーム依存などの問題がある。それをふまえて、食育担当として何ができるかを必死で考えた。そして子どもたちに“食べることは生きること”だと教え続けることだということに行き着いた。文科省がいう生きる力とは、知徳体のバランスがとれた力であり、その力をつけるためには基礎となる健全な食生活を実践する力を身に付けさせたい」ととりくみをスタートさせたとのべた。

 

 具体的には、給食時間は45分の授業時間と位置づけた。教員は給食時間は成績つけや連絡帳を見たりする雑務の時間にあてる場合が多いが、食事のマナー、配膳方法、衛生面、感謝の気持ちを育み、残食ゼロをめざすとりくみに徹している。

 

 また5、6年生は年に3回「お弁当の日」をもうけている。家庭科や総合的な学習、道徳や特別活動の時間などを使って、栄養素を学び、献立を考えたり、地域の人から野菜づくりを教わるなどして、単発ではなく継続的な学びを意識しているとのべた。最初は弁当づくりができなかった子が、友だちから刺激を受けて張り切ってつくってきたことや、ある母親から「うちの子には包丁を持たせたことも、火を使わせたこともない」と相談があったが、「子どもの力はすごい。見守ってあげてほしい」と伝えたところ、3回目の弁当づくりを終えたときに、「先生、ありがとう。今では晩ご飯もつくってくれるようになった」と喜ばれたエピソードも紹介した。

 

 「野菜づくりで農家の方への尊敬や感謝の気持ち、協調性、自主性が育つ。大事な学習になっている。学校でしかできないこと、教育でしか伝えられないことをまだまだ頑張りたい」と語った。

 

吉田俊道氏 有機農業と人間の健康

 

 最後に、長崎県佐世保市で(株)菌ちゃんファームを営む吉田俊道氏が「子どもたちを輝かせる菌ちゃん野菜のパワー」と題して、有機農業と人間の健康のあり方について語った。

 

吉田俊道氏

 吉田氏は、20年前に有機農業をやろうとしたとき、草は次々と生え、虫は発生し、モグラはせっかく2年かかって収穫しようとしたアスパラガスを全部食べたりと散々な目にあった経験を語った。「だから農家の人は有機農業はしない。農薬で虫や病気を殺し、動物を脅し、草には除草剤をかける。現代農業は、草も虫もモグラも敵だ。コロナと同じで逃げるか、やっつけるかという発想だ」とのべた。「ところが今、私の畑には虫がこなくなり野菜が元気になった。土が発酵して菌でいっぱいになり、菌とつながった野菜は強くなった。実は虫は同じ野菜でも弱った野菜を選んで食べている。モグラもそうだ。今、モグラは26㌢下を潜るようになって、モグラのおかげで畑に空気が入ってますます根が生えるようになった。虫は腐敗した有機物を食べるから、モグラは腐敗したところにいるミミズなどの虫がほしくて潜っていたのだ」とのべた。
 そして「自然はうまく回っている。人間も同じで腸内細菌が活発であれば強くなる」と語った。

 

 また最近では無肥料栽培を始めたとのべ、「茅やセイタカアワダチ草、籾殻などを土の上にのせて、2、3カ月マルチをして水を切ると土のなかで菌が野菜の根になり、その細い根は空中のチッ素を運んでくれて肥料がいらなくなった。私たちは肥料をまくと大きく育つから、欲を出して人工肥料を入れるようになったが、土のなかのたくさんの生きものが死んでしまう。そして半分以上は海に流れて海を汚染させてきた。私たち人間がよかれと思ってやってきたことで、自然のバランスを崩し始めた。そろそろ時代は変わらないといけない。子どもたちにもいろんな問題が起きている。病院に行って医薬品をもらう前に、きちんと煮干しなどを食べて栄養をとろう。変えていくのは専門家ではない。やるのは私たちだ。みんなで虫の来ない野菜をつくる実践をしてほしい。自然の循環の力を、ぜひ腹の底に落としてほしい。ぜひ子どもたちと一緒に野菜をつくってほしい」とのべた。土に親しみ、食べ物を育てる経験が子どもの心の栄養になっていることを写真も見せながら伝えた。

 

 3日間連続で、会場には周防大島町出身の歌手・マウンテンマウスのまぁしいも駆けつけ、食のフォーラムを通じて作曲した歌を披露した。「食で輝く子供たち 山口」代表の福嶋弘祐氏(上関町・遍照寺住職)は、山口県下のそれぞれの地域で志ある人がフォーラムを主催し、一人一人の足元から未来の食や農のあり方について考えを共有できたことを喜び、謝辞をのべた。

 

 【下関会場のアンケートより】


 「自分の子と重ねて涙が止まりませんでした。1年前に、食事で発達障害は変わると情報を耳にしました。半信半疑でした。料理が苦手ですが、少しずつしてる途中で食のフォーラムを知り行ってみたいと思いました。自分が知りたいと思っていたことをきけて、とてもうれしかったです」「今日はとてもよい話を聞くことができてよかったです。……私は小学校で特別支援学級の担任をしています。発達障害が増えていること、朝食ぬきの子がいること、夕食も外食や買ったものが多い子がいることは現場で感じていましたが、それらが繋がっていることを知り、驚きました。それぞれの家庭の事情もあり、家庭の食生活に直接なにかできるわけではありませんが、保護者、子どもたちの食に関する意識を変えていくことはできるかもと今日のお話を聞きながら思いました」

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