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下関市議会のタクシーチケット問題 住民監査請求に対し議会事務局が陳述

 下関市議会議長・副議長のタクシー券使用に関する住民監査請求について、19日の午前10時から、議会事務局職員による陳述があった。監査委員は本来なら4人いるが、亀田博議員は当事者であるため、地方自治法第191条により、同議員を除く3人の監査委員がこの件の監査をおこなっている。陳述の端々で、議会事務局が「弁明書」と証拠書類を提出していることがわかったが、資料は請求者の手元にはなく、録音も禁止だったため、この報告はメモにもとづいた発言の要旨であることをお断りする。

 

(問題の詳細はこちらの記事より)

 

 最初に、議会事務局の岡本次長が陳述した。岡本次長はまず、「平成31年4月6日より前の支払い分については措置請求対象期間外だ」と主張した。監査請求には「3月末まで自主的な賠償があるものと考えて待っていたが、返還がなかったため住民監査請求をおこなった」という内容を「正当な理由」として記載している。岡本次長はこれについて、昭和62年2月20日の最高裁の小法廷判決をあげ、「正当な理由に該当しない」と主張した。

 

 さらに平成31年4月6日以降の支払い分についても、「不正・不適正な使用ではない」とした。岡本次長の言い分はおおよそ以下のような内容だった。

 

 正副議長は市民から選挙で選ばれた議会を代表するもので、職務は多岐にわたり、職責は非常に重いので、公務を機能的かつ円滑に務めるための移動における迅速性の確保、移動中のセキュリティを保ちつつ、確実に連絡をとれる体制の確保という観点から、正副議長車の使用が認められている。

 

 一方、正副議長は非常勤の特別職だが、事務決裁や執行部からの報告、市民からの要望や来客があるため、原則として毎日公用車を使用して市役所に出勤している。そうである以上、公務後の各種用務が終了したあと、その場所から自宅まで公用車を使用することは当然である。ただし、公用車の代替手段としてタクシーを利用することもある。

 

 正副議長は議員であり、市民の信任を得て当選し、議会を代表する立場にあるため、あらゆる機会を通じて市民団体や関係団体、事業者と交流し、市の施策に対する意見聴取や議会としての立場について説明・理解を求めること、市民や業界団体の要望実現のためさまざまな関係者に理解・協力を求めることも公務に位置づけられると判断している。公式・非公式にかかわらず、社会通念上、儀礼のようなさまざまな交際も含まれ、非常に広範に及ぶ。過去の最高裁判決で、地方公共団体の交際について、「一般的な友好、信頼関係の維持増進を目的としてされるものであったからといって、ただちに許されないこととなるものではなく、これが地方公共団体の役割を果たすため、社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り、許容されると解するのが相当だ」と判示している。

 

 続いて高松議会事務局長も、「用務」とは、正副議長の立場だけではなく、政治家としての立場で、案内文書のない非公式なものも含め、市民や団体、事業者と交流し、市の施策に対する意見聴取や、市民・業界団体の要望実現のために関係者に理解と協力を求めることであり、公務に準ずるもので、「私用」とは個人的なこと、プライベートなことだと区分を説明した。議会事務局としては基本的に私用でのタクシー券使用は認めておらず、公務のあとに用務というスタイルを認めているという説明だった。

 

 今回、返還を請求しているのは「公務の証明のない使用」についてだ。監査委員からは「公務」「用務」「私用」の区別について改めて質問が出たほか、「公務・用務がある日に、途中で私用がある場合はどのように考えているのか。公務が終わった最後の予定が私用であった場合も考え方は同じか」といった質問が出た。

 

 高松事務局長はこれについて、「じつはタクシーの使用基準をつくっておらず、策定についても検討中だ」としたうえで、公務と公務のあいだに私用があった場合などは、総合的に判断してタクシーチケットを渡しているとした。また、平成30年に定期監査を受けたさい、「疑義が生じるような使用方法は注意するように」との指摘を受けたことにふれ、それ以後は別の場所に立ち寄ったり、複数人数で乗車するといった使い方はしないようにしていると説明した。

 

 吉田真次副議長が複数人数で乗車し、送迎した経費を公費で支払っていたことについて、「正副議長に使用方法を説明していたのか」という質問もあった。高松事務局長は、「就任時に口頭で説明していたが、徹底していなかった点を反省している」としたが、支払いは公費でおこなっているとした。

 

 複数人数での乗車は調査対象期間をみると相当数にのぼる。送迎などして迂回すれば料金は跳ね上がる。経路の把握についても質問が出たが、把握していないとのことだった。高松事務局長は、「話が盛り上がってそのままタクシーに乗り、実質的な意見交換はタクシーの中でと考えていた」が、「平成30年の定期監査の指摘で、疑義が生じないよう多人数で乗ることが好ましくないといわれ、必ず一人で乗車するようにしている」と説明した。

 

 また、「公用車の使用がなく、登庁した形跡のない日の夜にもタクシーを使用している日がある」という質問も出た。これまで本紙の取材では、案内文書のない「用務」の日程については「すべて用務をおこなった日であるが、公務でないのでスケジュール管理までする必要はないと考えている」「用務の管理まではおこなっていないため回答できない」として、説明を受けることができなかった。しかし、陳述のなかで具体的な日時が出ると、「その日は三重県の知事が来関して市長とともに意見交換した」「林議長の8月9日は日中に山口県議会議長会研修会があり、柳井に行っていただいた夜、地元業者の懇親会ということで豊浦の経済界との意見交換をしていただいた」「亀田前副議長の12月19日は、夜、議会事務局の職員と議会運営についての意見交換をさせていただいた」などと答えていた。把握しているのならなぜかたくなに回答を拒否したのか疑問である。

 

 また、質疑のなかでわかったのは、タクシー代を返還した件が複数件あること、紛失処理も複数件おこなわれていたことだ。返還処理について岡本事務局次長は「チケット支払い時に半券が来るので、どのような使用か確認し、明らかに私用ではないかというものについては請求を正副議長にしたものだ」と説明。また紛失処理については高松事務局長が「金券なのであってはならないこと」としたうえで、議長・副議長に余分にチケットを渡すこともあり、紛失したものだという説明をおこなった。

 

 こうした説明を受けて、元議長でもある関谷監査委員が、「ということは私用と公務の区別はきちんとできているということでいいのか」と念押ししていたのも印象に残った。

 

 議会事務局が強硬に正当性を主張する姿には驚いてしまった。この説明を受けて監査委員がどのような判断をするのか注目だ。コロナ禍で飲食店をはじめ多くの市民の収入が減り、10万円の支援金の申請が殺到している。そうした市民感覚と、夜遅い時間帯に唐戸や豊前田から片道7000~8000円を平気で頻繁に使う感覚の落差も浮き彫りになっているところだ。しかも公務であることを確認できない金額は4人で90万円をこえる。

 

 市民を支援するために議員報酬を削減する案もなかなか決まらないなか、市民のあいだでは「議会はまずタクシー代を返還してから議員報酬の削減だ」という声も高まっている。

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