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大企業の草刈り場と化す四国 巨大風車計画が相次ぎ浮上 各地住民が情報交換

 現在四国では、すでに156基の大規模風車が稼働し、計画中の風車は323基にものぼる。四国風車ネットワーク(黒田太士代表)は23日、四国各地の計画地周辺や、すでに建設された地域に暮らす人々がオンラインでつながり、風力発電をめぐる動きや疑問・不安などを報告しあうとともに全国に発信するため、オンラインシンポジウム「四国の巨大風力発電 いま起こっていること」をおこなった。

 

 同シンポには、愛媛県からえひめ風車ネット、高知県から四万十ふるさとの自然を守る会、ヤイロチョウを守る会、竜串の自然と共生した地域づくり協議会、四国自然史科学研究センター、徳島県から日本野鳥の会徳島県支部、徳島県勤労者山岳連盟のメンバーが参加し、討論の模様をライブ配信した。

 

 シンポのなかでは次のことが明らかになった。

 

 高知県ではオリックスが、高岡郡四万十町と四万十市の境にある550㍍の山の尾根筋に、3000㌔㍗×最大49基の大藤風力発電を計画している。風車の高さは120㍍で、四万十町の庁舎の7・5倍だ。

 

 風車のために山を削って平地にするので、土砂災害の増加、下流のアユやウナギ漁への影響、イノシシやシカによる鳥獣害の増加、また日本最後の清流といわれる四万十川の景観破壊を地元の人々は心配している。とくに女性たちは子どもの親として、一番近い民家が風車から2㌔、小中学校や高校が3㌔のところにあるため、低周波による健康被害を心配している。そこで、ふるさとの自然を守る会をたちあげ、風車の問題点をチラシにして配り、署名運動を開始している。

 

 同じ高知県の土佐清水市と幡多郡三原村の境の尾根筋にも、日立サステナブルエナジーが二つの今ノ山風力発電を計画している。一つが5500㌔㍗×36基、もう一つが4200㌔㍗×9基。

 

 ここは住民が自伐型林業をやっているところで、当事者である住民の一人は「風車のための作業道を設置するのに50㌶以上の山林が皆伐される。以前の豪雨災害では山林の崩落が多数発生して、竜串湾に大量の土砂が流れこんだ。今後、大量の土砂が水源地に流れこめばとり返しがつかない。すべて都市部の企業が田舎にやってきて、利益も都市部に吸い上げる構図だ。“原発に反対するなら風力に賛成せよ”というが、納得できない。地域住民だけの問題ではない」とのべた。

 

住民の繋がり恐れる企業側

 

 徳島県では三つの大規模風力発電計画が進行している。

 

 一つはオリックスが標高1955㍍の剣山東側で進める天神丸風力発電で、2300~3450㌔㍗×最大42基。もう一つがJAG国際エナジーが進める那賀・海部・安芸風力発電で、3200㌔㍗×34基。三つ目がこれもJAGが進める那賀・勝浦風力発電で、3200㌔㍗×34基だ。

 

 これについても参加者の一人が「現地のことを知らない東京の企業がもうけのためにつくろうとしている。四国は雨が多く山が崩れやすい。稜線部に道路をつくって森林の保水機能を破壊すれば、大雨のとき水が一気に流れ出す」と指摘した。また剣山は人の開発が入らない自然林が多い場所で、風車建設は生物多様性も破壊すると関係者が指摘した。

 

 愛媛県では宇和島市と南宇和郡愛南町で、Jパワー(電源開発)による南愛媛風力発電(2400㌔㍗×9基、2300㌔㍗×3基)と、シグマパワージャネックス(東芝グループ)による僧都ウインドシステム(2400㌔㍗×8基)が稼働を始めた。加えてJパワーによる南愛媛第二風力発電(3400㌔㍗×12基)、ガイアパワーによる槇川正木ウインドファーム(3400㌔㍗×8基)が計画中だ。

 

 既に僧都地区では風車による睡眠障害を訴える人が出て、県に対して夜間稼働停止の申し立てをしているが、県は「因果関係が立証できない」としている。

 

 僧都地区で風車から1㌔の場所に住む農民は「風力発電計画が持ち上がってから、国は地域の保安林指定を解除した。一昨年の西日本豪雨で大きな被害が出ており危険性が高いと意見を出したが、“当事者ではない”と門前払いされた。うちは風車から一番近いのに。この計画が持ち上がってから若い人が躊躇して、Iターン、Uターンはゼロだ」とのべた。

 

 討論のなかで四万十町の住民から、オリックスが住民説明会を各地で開いたが、その集落以外の住民は同じ町民でも参加してはいけない、集会会場で配った資料の著作権はオリックスにあり、勝手にコピーして配ってはいけないといって、住民同士が横に繋がることを怖れていることが出された。徳島県の住民は、オリックスの社長宛に風力反対署名を集めると1万5000人分が集まったとのべた。

 

 四万十町の女性町議は「日本全国で自然エネルギーの名の下に自然を破壊している。これだけの豊かな山や川、海を手放して得るものとはいったい何なのか。住民が幸せになれない施策はしてはいけないと思う。コロナ禍の今、大量生産・大量消費の時代はもう終わったのだと見直していくことが必要だ」とのべた。

 

 これまで四国各県でバラバラに活動していた各団体が初めて一堂に会しての討論となった。三県の各団体の意見をまとめ、各県や企業側に声明を出すことも決まった。なお、当日の模様は四万十ふるさとの自然を守る会のフェイスブックで見ることができる。

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