(2026年7月15日付掲載)

JCFU全国沿岸漁民連絡協議会は3日、沿岸漁民に厳しい漁獲規制を強いる「クロマグロTAC制度」の問題を考えるシンポジウムを開催した。シンポジウムの前には「沿岸漁民要求実現7・3東京行動」と題し、水産庁に対して沿岸漁業者を重視したTAC制度改善によりクロマグロ漁獲枠の大幅拡大を要求する要望書を提出した。JCFU全国沿岸漁民連絡協議会は、水産庁長官宛てに「クロマグロ資源回復達成下における沿岸漁業重視のTAC制度への改善を求める要望書」【㊦全文別掲】を提出した。要請書には、JCFU共同代表および地区役員として全国19の漁協から代表が名を連ねた。これと合わせて、対馬市曳縄漁業連絡協議会が「水産庁はきびしいTAC管理に協力してきた対馬漁民の心を裏切るな! 沿岸漁業のクロマグロ小型魚・大型魚漁獲枠の大幅拡大を求める要望書」を提出した。また、シンポジウムでは厳しいクロマグロTAC規制によって苦しむ全国の沿岸漁民が現場の実情を報告し、早急に漁獲枠を大幅拡大するよう求めた。以下、発言要旨を紹介する。
・マグロ増えすぎた結果、今年の成績は過去最悪
千葉県沿岸小型漁船漁協組合長 酒井光弘
われわれ千葉県の漁民は、大型魚と小型魚両方のマグロをとって生活している。マグロの規制が始まった当初、小型魚の漁獲枠を大型まき網漁業と沿岸漁業で半分ずつに分けることに絶望して辞める漁師が続出した。いすみ地区では1隻あたりの漁獲枠は20匹で、キンメダイなどの他の商売をやりながらとる場合は10匹という規制のなかでメジマグロ(クロマグロの養魚=小型魚)をとってきた。だが生活は厳しくなり、メジマグロをとる船はどんどん減っている。
大型魚に関してはかつて千葉県ではそんなにとれなかった。御蔵島(房総半島から南へ約200㌔㍍、伊豆諸島に位置する)の沖にある北黒瀬(御蔵島の北東沖約30㌔㍍位置する好漁場)まで行かなければならず、小型船ではよほどの凪の日でなければ漁ができないが、それでも1匹でも釣れれば一攫千金だということで夢見ながらマグロをとっていた。しかしここ何年かで資源が増えており、近海でもどんどんマグロがとれるようになっている。今年は勝浦沖で2、3月の漁期になると常に水面で跳ねているような状況だった。
だがマグロの増加を喜んでいたのは昨年までだった。今年は痩せたマグロがずいぶん増えてきており、商品価値のある個体がほとんどいない。千葉県に割り当てられた漁獲量は微々たるものなので、マグロが釣れても小さなものは仕掛けを切って放している。また、本来なら延縄に250本の針を垂らすが、それではマグロが掛かりすぎて縄が沈んでしまって上がらなくなる。そのため私の場合はひとカゴの仕掛けで針は10本だけ。それでもマグロが9本から10本食ってくるので、1本だけ形が良いものがあれば船に揚げて残りは全部放流しているという状態だ。
本来ならカジキやバチマグロなどを釣って生計を立てていきたいが、そういう魚が食う余地もないほどマグロがいる。だから今年は生活がかなり厳しく、延縄をやっている漁船はほぼ全船が漁業共済の「積立ぷらす」(漁業者の収入減を補うための国の収入安定対策)を受けとらなければならないほどだ。
こういう状況であるにもかかわらず、国はさらに漁獲規制を強めようとしている。今回、WCPFCでは大型魚については25%増枠を考えているそうだが、小型魚については250㌧削減しようとしている。
海にマグロがいっぱいいて、しかもエサがなく痩せたものばかりという状況のなかでさらにマグロを増やそうとするのは間違っている。
今から30年ほど前までは、私はイカをとって生計を立てていた。その頃から青森沖でまき網や底引き網がイカをとるようになり、そこからどんどんイカのとれる量が減っていった。「このままではイカがとれなくなる」とデモをおこない、当時TACが出始めの頃だったので、イカをTACに入れて資源管理するよう求めた。その後イカはTACに入れてもらえたが、水産庁の管理が甘く、今ほとんどイカはとれなくなっている。
このように日本近海のバランスはかなり崩れているが、これは水産庁のTAC規制によるものだと思っている。昔、「TACをやればすべての漁師が豊かになって暮らせる」という謳い文句を信じて協力してきた。マグロに関しても、TACをやって資源が増えれば漁師も楽になるとの思いで八年間我慢してきたのに、その結果、今年は今までで一番成績が悪くなっている。まるで漁師に首を吊らせてその下から国が足を引っ張っているような状況だ。
実際に、地元の漁師は「我慢の限界だ」「WCPFCなんてやめてしまえ」といっている。こうした状況は千葉県に限らず日本全国同じだ。なんとかして日本の近海を元に戻したい。
・我慢続け獲り控えてきた漁師への追い討ち許されぬ
対馬美津島漁協組合長 宮崎義則
6月16日の水産庁の説明会で、大型魚の25%増枠と小型魚の250㌧減枠という内容が示された。これに対し何のために私たちが今まで資源管理に付き合って小型魚をとり控えてきたのかと怒りを覚えた。そして今日は海の現状がどうなっているのかを訴えるために水産庁へ要望書を提出しに行った。
対馬には946隻の船があり、全体の割り当てを隻数で割ると小型魚については1隻当り440㌔くらいの配分しかない。大型魚も全体で8㌧しかなく、割り当てを隻数で割ると1隻当り年間6・4㌔くらいしかとれない。漁師からすると釣ったマグロを切り売りしろといわれているようなものだ。
定置網も35カ統あるが、150㌔のマグロの場合1カ統で3~4匹しかとれない。だから他にもマグロが入っていても全部捨てなければならない。「放流」といえば聞こえは良いが、定置網に入ったマグロはほとんど死ぬので「不法投棄」になるのが現実だ。そんななかで今回水産庁が説明した内容を聞くと、WCPFCの会議に向かう水産庁自身の姿勢は到底私たちには理解できない。
対馬では小型魚に依存して生活してきた。かつては1隻当り340㌔の割り当てだったが、ようやく今440㌔の配分になっている。この間ずっと規制してとり控えてきた結果、最近は対馬海域全域に大型マグロがいるようになった。
その影響により、対馬のイカ釣り船はマグロ被害が5年間続いている。スルメイカに依存している漁船は20%くらいで、残りの水揚げはほとんどヤリイカだ。この時期はヤリイカの盛漁期だが、マグロのせいでまったく沖に出られていない。漁業者が毎年私のところに来て、「(マグロ被害を)なんとかしてもらえないだろうか」と訴えに来る。魚群探知機を見せてもらったが、ものすごい量のマグロが反応している。その漁船はわずか3日間で1000丁(セット)もの道具をマグロにとられ「もう沖に出られない」といっていた。
こんな我慢を漁師はずっと続けてきて資源が回復したのに、今回小型魚の漁獲枠を250㌧削減するというのは到底理解できない。今日の私たちの訴えが全国の沿岸漁業者にも届くことを願っている。
・深刻化する「マグロ被害」、漁獲枠の拡大は急務
対馬ひきなわ協議会会長 西川征二
対馬の現状を報告したい。対馬では約900隻ある漁船のうち、9割が2~10㌔の「ヨコワ」(クロマグロの幼魚)と呼ばれる小型魚をメインに漁獲している。大型魚を釣りに行く漁師もいるのだが、今年も5月終わりから6月上旬までの僅かな期間で枠がいっぱいになって漁が終わっている。小型魚に関しても対馬に与えられた枠を900隻で分けるので、1年間で1隻当り400㌔くらいしかとれない。
マグロはたくさんいるので釣ろうと思えば釣れるし、本来なら400㌔なんて1日かからずに水揚げできる量だ。それをなんとか値段が良い時期に付加価値が付きやすい形で水揚げして、1年間持ちこたえられるように枠を少しずつ消化しているのが現状だ。対馬には10漁協あるが、みんなTAC規制が始まって以来ずっとそうしてきた。
とにかくマグロが多く、定置網、イカ釣りでも被害が続出している。私がやっている曳き縄ではカツオを釣りたくてもヨコワが釣れてしまい、水揚げできないので商売にならない。そんな状態がずっと続いている。
私たち対馬の漁民の共通した思いは、小型魚の枠を減らすのではなく増やしてほしいということだ。そして小型魚をこれまでとり控えてきた分、大型魚の枠も増やしてほしいと思っている。
今日提出した要望書が国際会議に届くよう、水産庁にがんばってほしいと願っている。
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【要望書】クロマグロの資源回復達成下における沿岸漁業重視のTAC制度への改善を求める
JCFU全国沿岸漁民連絡協議会
2026年7月3日
水産庁長官 藤田仁司殿
国連やFAOなどでは家族農業や小規模漁業を大切にし、農漁業政策実施にあたっては経営体の9割を占める小規模家族農業・漁業者の生活権や生存権に配慮した政策を実施するよう各国に提言している。
しかし、日本の漁業政策、とくにクロマグロの漁獲量割当制度(TAC)の導入にあたっては沿岸漁業の特性に配慮せずに、沿岸漁民の反対の声を無視して大規模まき網漁業を優遇した配分方式でのTAC制度を導入した。しかもWCPFCおよび水産庁は科学的根拠もなく2002-04年を基準年に設定し、小型魚だけに50%削減という過大な漁獲規制をかけ、さらに小型魚のTACを年々の加入量変動に対応せずに一律に4007㌧に固定するという誤りを犯している。
水産庁は2015年からの漁獲規制開始にあたり、船数も多く漁期も漁獲サイズも多様な小規模漁民の特性に配慮することなく、小型魚では、大中型まき網に2000㌧(49・9%)、沿岸漁業に1901㌧(47・4%)、また大型魚では大中型まき網漁業に3098㌧(63%)、沿岸漁業に1678㌧(34%)の配分を行った。その後、TAC法が開始される2018年には、小型魚を大中型まき網に1500㌧(32%)、沿岸漁業に1529㌧(33%)、大型魚を大中型まき網漁業に3063㌧(80%)、沿岸漁業に1125㌧(20%)配分した。
沿岸漁業の漁獲枠には、沿岸はえ縄漁業や小型まき網漁業、定置網漁業分も含まれるため、登録数2万隻(実稼働数7000隻以上)を超える小規模なひき縄漁業者などへの配分量はさらに少なくなり、年間収入をクロマグロに依存するひき縄漁業者への漁獲枠は年間数本だけとなる地区もでており、スルメイカの不漁も相まって沿岸漁村は疲弊の状況下にある。
以上のように、水産庁のクロマグロTAC管理政策は、地域漁村の経済を支える沿岸小規模漁業を軽視し、わずか40数隻の大規模漁業の大中型まき網漁業を優先する内容であり、沿岸小規模漁業経営を困難に陥れる結果となっているといって過言ではない。
TAC管理制度の元での小型魚の年々の加入量変動を無視した小型魚への過大な漁獲規制の結果、WCPFCも予測を見誤る勢いで太平洋クロマグロ資源は増大し、WCPFCの「回復目標」は14年も早く2021年には達成し、日本周辺にはクロマグロがあふれている状況である。
以上の状況をふまえ、日本の漁業経営体の九割以上を占める沿岸小規模家族漁業を守り、離島や半島地区をはじめとする全国の沿岸漁村の維持・発展を願う立場から以下を要望する。
要望事項
(1) WCPFCの「回復目標」は14年も早く2021年には達成し、日本周辺のクロマグロ資源は増大していることから、WCPFC会議ではクロマグロTACの大幅な増加を勝ち取ること。
(2) 小型魚だけに過大な漁獲規制を課すことは、資源回復のための負担の公平性の観点からみて不公平である。2015年以来、沿岸漁民は資源回復のため水産庁に協力し小型魚規制に多大な犠牲を払ってきた。資源回復が達成されたことを受けて、ICCATで実施されているように、沿岸小規模漁業に配慮し、小型魚TACも増枠すること。6月16日の水産庁説明会での小型魚250㌧削減方針には断固反対である。
(3) 資源回復目標が達成されたことから、2027年のTAC割当量の決定にあたっては、沿岸クロマグロ漁民、地域漁協の経営維持の観点から、クロマグロ大型魚・小型魚の県知事(沿岸つり・はえなわ、定置網漁業)漁獲枠を大幅に増やすこと。
以上






















水産庁の漁獲枠規制は資源回復を口実に日本国内の漁業関係者削減が目的。
マグロなどの大型肉食魚を必要以上に増やす事は餌になる他の魚を減らし、漁業の衰退になる上にマグロなど大型魚は規制で獲らせない。
国内漁業者が衰退すれば輸入量を増やし業者の利益拡大が出来、他国の漁業を支援する事になる(WCPFCに加盟する事で中西部太平洋を漁業生活圏としない国の漁業者を輸入で支援)
輸入量を増やす事で輸出量を増やせる事で国としては利益が増やせる事で、国内漁業を犠牲にする事を厭わない。
農林水産省は以前から輸出を増やす為、木材からコメや牛肉など国内の自給生産物を犠牲にする政策を取ってきたが、農林産物は限界にあるので水産物を取り引き材料にしている。
農林水産省は農林水産業従事者を犠牲にする事で食料の国内自給率を減らし、工業生産企業の輸出量拡大で雇用者を増やし失業率を減らす国策を貫いたが、ロボット化された現在では企業が人員削減を進めているため、労働者は農水産業で使用面積限界の農業に就けず漁師を目指す者が増えているのに、規制をかけて漁業衰退を進めているがそれは日本国の衰退を目指していると思われる。