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風力発電の不都合な真実  武田恵世医師の講演(上)

 三重県の医師で歯学博士の武田恵世氏は22日、下関市の川中公民館で開かれた安岡沖洋上風力発電建設に反対する住民集会で、「風力発電の不都合な真実―風力発電は本当に環境に優しいのか?」と題した講演をおこなった。その要旨を何回かに分けて紹介する。


◇     ◇


 私の住んでいる三重県伊賀市と津市の間には、青山高原というところがある。ここに風力発電がたくさん建っているが、その理由は「年中風が強く吹いて、雷が少ない」ということで、中部電力子会社のシーテックがつくった。ところが私が小学校のころから習ってきた郷土史の教科書には、ここは霧と雨と雷が多いところとあり、おかしいと思っていた。


 現在、青山高原には51基の風力発電があり、加えて40基が建設中で、日本でも最大規模の91基が集中する風力発電所となる予定だ。「世界的に完璧な成功例」(清水幸丸三重大学名誉教授)ともいわれている。


 1999年に最初の4基ができた当時、みんなが喜んだし、私も「これで火力発電所や原発が減ればいい」と思っていた。しかし一昨年、その4基を津市がシーテックに譲渡してしまった。全国初の自治体経営の風力発電だったが、修理費と維持費がかさみ過ぎたのだ。23年に2基が故障し、その修理費の6000万~8000万円が出せないということでやめた。建設費の半分が補助金だったが、実はこの年、その返還義務期間が過ぎてもう要らないということで譲渡した。ところがなぜか増設は続けている。


 1999年当時、私も大賛成で、真剣に出資を検討した。出資条件として、①CO2排出は削減できるのか、②自然環境に優しいのかどうか、③人間生活に悪影響はないか、④利益は得られるのかどうか、⑤将来性はあるのか、⑥成功例はあるのか――こういった観点から詳しく検討を始めた。その結果ダメだったが、なぜそうなったのかを話したい。

 停電すると発電できず 電気で動く巨大風車 

 まず風力発電の特徴だが、ブレード(羽)をモーターの力で強制的に風上に向けることで発電している。だから停電すると発電できなくなる。また停電すると自動停止もできなくなるので、壊れてしまう。だから災害に強いというのはまちがいだ。


 高さは80~135㍍と巨大なものだ。これは20~40階建ての建物に相当する。下関にはそれほど大きな建物はない。そしてブレードの直径が100㍍近くある。それから夜間は航空機がぶつからないように、航空灯の閃光がかなりまぶしい。また山に設置する場合は直径200㍍もの平坦地が必要だ。陸上の風力発電は2010年現在で393箇所、1683基ある。これは統計によってはもっと多い。かなりの山肌を痛めている。


 風力発電の一般的なイメージとして、石油などの化石燃料を使わない、排気ガスを出さないクリーンなエネルギー、エコだと宣伝されている。そしてCO2排出削減が本来の目的だが、そのためには風力発電が増えた分、火力発電所の出力を削減しないと意味がない。


 次に風力発電所の説明書の読み方を説明したい。安岡沖洋上風力発電事業(前田建設工業の事業)は、発電所の発電規模が6万㌔㍗(60㍗)で、4000㌔㍗(4㍗)の風力発電機15基を設置する。そして想定発電量は年間1億6000万㌔㍗。これは6万㌔㍗×365日ではなく、設備利用率20%強を見込んでおり、一般家庭約3万世帯の年間使用量に相当する。だいたいこれを見ると、すごいなあと思う。


 ところが、火力発電所や水力発電所の場合はこれでいいが、風力発電機が定格出力(最大出力のこと)で発電できるのは、風速12~25㍍のかなり強い風のときだ。そして25㍍以上の風だと自動停止する。


 風速12㍍の風がどんな風かというと、大枝が動く、電線が鳴る、傘が差しにくい、つまり歩きにくいほどの強風だ。それではじめて定格出力ということになる。専門家も「そんな風は滅多に吹かない」といっている。


 風力発電機の出力は風速の三乗に比例する。普段私たちが風が強いと感じる風速は、だいたい6㍍だ。砂埃が立ち、紙片が舞い上がるというほどのものだ。これだと出力は8分の1になる。つまりこの場合だと7500㌔㍗だ。つまり県庁か市役所で普段使っている程度の電力なのだ。


 「一般家庭約3万世帯の年間使用量に相当する」というが、実際は風の強い時間しか発電できない。だから一年間を通じて一般家庭の電気を風力発電でまかなうのは無理だ。真冬の深夜に強風で発電したとしても、これは使いようがない。逆に真夏の暑い昼下がり(サマーピーク)には電力需要も逼迫するが、まず強い風は吹いていない。もし強い風が吹けばエアコンが要らなくなり、電力は要らなくなる。ただの数字の遊びにしかすぎない。

 減額される地方交付税 誘致の「メリット」

 風力発電所ができることによる地域のメリットとデメリットがある。メリットとしては、建設場所と取付け場所の地主には借地料が入る。洋上の場合には漁業補償が入ると思う。それから道路ができる。風力発電機が好きな人が見に来る。青山高原は全国初だったので結構人が来た。今は全国どこにでもあるので誰も見に来ない。


 デメリットとしては、自然と景観が大規模に破壊される。土砂崩れなどの災害の危険性が発生する。騒音、低周波音による被害も発生する。自然や自然景観が好きな人は来なくなってしまう。


 実は、メリットといわれていて実際はそうではないことがある。「固定資産税と法人税が入る」ということだ。これはその通りだが、その分の地方交付税交付金は減額されるので、プラス・マイナスゼロだ。地方交付税交付団体でなければプラスになる。下関市は地方交付税をもらっていると思う。だからプラス・マイナスゼロ。三重県では川越町と朝日町ぐらいが地方交付税交付金をもらっていない。なぜかというと、一つは火力発電所がある小さな町、もう一つは日産の工場がある小さな町だからだ。


 地元が一番期待したのは雇用・仕事が増えることだったが、特殊な技術が必要ということで、伊賀市・津市の業者にはほとんど仕事がこなかった。今も風車の補修に来ているが、ほとんどが岐阜ナンバーか愛知ナンバーだ。林道をつくるぐらいは特殊な技術は要らないと思うが、必要な大量のコンクリートを運ぶタンクローリーは、なぜかみな大阪ナンバーだった。三重県にもコンクリート会社はたくさんあるのだが。

 青山高原の風力発電だが、山頂付近は国定公園の第一種特別地域になっており、そこを外して山の中腹に、風車がぎっしり建っている。

 元はとれない風力発電 建設費の半分補助金 

 実は風力発電の配置の原則というものがある。主な風向に対して風下には、それぞれの風車をローターの直径の8~12倍離さなくてはいけない。左右には、2~4倍離さなくてはいけない。安岡にできるものは直径130㍍だから、後ろには1・3㌔離さないといけないはずだが、そうすると陸に建ってしまう。変な配置なのだ。


 実はそれで訴訟になっているところがある。江差ウィンドパークという北海道の風力発電所だが、主な風向に対して約100㍍でたくさん並んでいる。こういう建て方をすると、風力発電機をつくった会社は利益を得たが、発電から利益を得る約束になっていた地主と自治体は赤字になってしまった。それで訴訟になっている。これだけ並べてもまともに発電するのは先頭のせいぜい三基で、他は乱気流の影響でまともに発電できない。


 和歌山県の例だが、国民宿舎の正面に建っている所もある。風はまともに当たらない。しかし当時は補助金がもらえたので、こういう風力発電がたくさんできた。回らなくてよかったのだ。ここでは建設費の半分~3分の1の補助金が出ているが、経産省にその補助金が妥当かどうか調べているのかと聞くと、「調べたことはございません。今後も調べません」というから、「それではいいなりではないか」というと、「いやそういう制度ですから」という答えだった。幸いその制度はなくなった。


 青山高原でちゃんと利益が得られているのか。当初の予測では建設費をまかなうのに11年という計算だった。ただし、11年間一度も止まらずに回ったらだ。実際の発電実績値で計算してみたら21年かかる。実は風力発電機の寿命は三重大の教授にいわせると15年、つくったシーテックにいわせると13年。だから元はとれない。実際に故障などが頻発し、元がとれない状態で譲渡してしまった。


 それでは全国的な発電実績はどうかと聞いてみると、民間の風力発電所で実績を公開しているところはゼロだった。自治体経営のところは公開しているが、NHKの調べでは80%が赤字だった。残りの20%は修理費を会計に入れていないだけだった。


 全国の主な工学部の教授に「風力発電所の成功例を一つでもいいから挙げてくれ。ただし実績を公開してくれないと検証できないから困る」と五年前に頼んだが、挙げてくれない。仕方がないので独自に調べると、北海道の寿都と苫前、静岡県の東伊豆の町営の風力発電所の三つがあった。いずれも小さな発電所で「あと一回故障したら修理費はとり崩してしまう」といっていた。あれから故障しているので、恐らく赤字になっている。

 CO2削減に貢献せず 原発も火力も減らず 

 では、風力発電はCO2削減に貢献しているのか。各電力会社に聞いてみたところ、「風力発電所ができたからといって、原子力発電や火力発電の出力を下げたことはない」といっている。理由は、「電力系統全体の1~2%以下なのでその必要はない。誤差の範囲なのだ。でも今後相当に増えたら調整が必要になる。その場合は揚水発電で吸収すればいいと考えている」ということだった。
 つまり原子力と火力は減らせない。実際、風力発電所が相当に増えた北海道電力や東北電力は、風の強い日には火力発電所の出力を下げずに、風力発電所からの送電を停止している。なぜかと聞いてみると、技術者は「(風力発電は)風によってしょっちゅう変化する。それに合わせて火力発電所の出力を調整するなんてとてもじゃないができない。それより風力発電所の電気を切った方がはるかに安くつく」とはっきりいった。火力の出力を減らしていないので、CO2削減には貢献していない。
 ヨーロッパではどうか。ヨーロッパでは大成功だといわれてきた。ところが2007年のフランスの「持続可能な環境連盟」がEU統計機関ユーロスタットのデータから明らかにした。ドイツは電力全体の4・4%が風力発電だが、CO2排出量は減少せずに1・2%増加した。他のフランス、スペイン、ポルトガルなどみなそうで、デンマークだけが唯一、CO2削減に成功したという統計を出している。


 ただし、デンマークの輸入電力量は倍増している。つまりデンマークは風力発電所でつくった電気を国内では使えておらず、必要な電気は送電線が繋がっている周辺国から輸入している。だから、風力発電の補完のために他の諸国でのCO2排出量を増やしただけだといわれている。ドイツにいわせると「おたく、うちの火力発電の出力を上げただけやろ」、フランスにいわせると「うちの原発があるからあんたはやっていけるんやろ」と、さんざんないわれ方をしている。


 では、風力発電は原発の代わりになるか。そのためには莫大な面積が必要だ。原発1基100万㌔㍗だとすると、風力発電は2000㌔㍗が500基必要になる。これを一直線に並べると、必要な距離を離したとして200㌔、また平面に並べると225平方㌔が必要だ。原発1基分でこれぐらいだ。しかも、傘が差しにくいほどの風が吹いた時間帯だけ発電できるのだ。


 電気というのは同時同量で、使用する量とほぼ同じ量を発電しないと大停電を起こす。それを火力発電所が数分単位で調整している。朝、みなさんが起きて出勤してくる頃から少しずつ出力を上げて、昼休みは少し減らしてまた少し上げて、夕方、仕事が終わるころから減らしていく。風力の場合、朝、風が強く吹き出して、昼は少しやんで、夕方にかけてまた吹いて、夜はやむ、なんてことはしてくれないので、ほぼ無理だ。

 青山高原の風力発電は故障が非常に多い。この前も壊れて、突然ブレード(羽)が落ちた。それに対してのシーテックのコメントは「何もいえない」ということだった。専門家は、台風のときよりも普段の風の方がよく壊れるという。なぜかというと台風のときは大概、自動停止しているからだ。
 それと落雷が青山高原では故障の大きな原因だ。これは秋田県の例だが、この羽に落雷して、折れて、電気が切れて燃えた。一応はしご車はつけるが、なんせ100㍍近く上なので水が届かない。だから見守るしかない。

 乱気流発生制御は不能 新出雲は発電に失敗 

 去年、青山高原の風力発電が壊れた。同じ頃京都府でも壊れて、部品の不具合だといわれたが、おそらく何らかの理由で停電して自動停止装置が働かずに壊れたのだと思う。世界的にはそういう例が結構報告されている。


 山の周りは乱気流による失敗例というのがある。新出雲が典型的で、一番先の発電機で乱気流を起こして、その乱気流が次の発電機を襲う。それで一基以外はまともに発電できない。だから赤字になった。こういう例が結構ある。


 実は風力発電機の後方には、後流渦または後方乱流という複雑な乱気流が発生する。簡単にいうとつむじ風のようなものだが、これをいかに制御するか、制御といっても離すしかないが、それが今、課題になっている。


 コウモリという獣は風車に近づいただけで大量死する。アメリカとカナダの例だが、風車のまわりで死んでいる動物の約6割がコウモリで、鳥とは違って目立った外傷はない。2007年、カナダのカルガリー大学の研究者チームが解剖した結果、ブレードが回るときに起こる急激な気圧の低下で肺の中の血管が破裂して、血液が肺の中に充満したことが死亡原因だった。つまり原因は小さなつむじ風だった。


 これが人間に当たるとどうなるか。乱気流が発生するので雲が発生する。その雲はかなり遠くまで飛んでいく。したがって西側に風車があれば霧の渦になるということもありうる。

 野鳥へも深刻な影響が 様々な対策効果なし 

 私は青山高原で野鳥の調査をした。結論からいうと、繁殖期で4分の1になっていた。越冬期だと20分の1になった。原因は、冬の方が風車がよく回っているからだろうと思う。


 実は世界的にも、野鳥への影響はよく調べてあって、風力発電所のまわりには鳥がかなり少ないということが報告されている。原因は、風力発電機の稼働による騒音、振動、低周波音、シャドーフリッカー(ストロボ効果ともいう。風力発電機の羽の影がチラチラする現象)、後方乱流、そして有名なバードストライク(野鳥が巻き込まれ死ぬ)だ。


 バードストライクは非常に深刻で、アメリカではさまざまな対策がとられたが効果は見られなかった。羽に目玉の模様を付けたり、赤に塗ったり、蛍光塗料を塗ったり、強い音を出したり、かかしを置いたりしたが、だめだった。


 カリフォルニア州アルタモントパスには5300基の風力発電機があるが、年間イヌワシが3けた、アカオノスリも3けた、この23年間で2万羽以上が死んだという。この風車は安岡に計画されている風車の4分の1の大きさだ。


 スペインのタリファというところでは、世界的に有名な絶滅危惧種シロエリハゲワシが年間で数百羽死亡している。総繁殖数は8100つがいしかいないので、種の存続にとって重大な脅威となっている。
 日本でも、特別天然記念物のオオワシ、オジロワシ、イヌワシなどが非常にたくさん死んでいる。結局、野鳥の来るところには建設しないということしかない。

 取付道建設で山を破壊 鹿激増、猪は凶暴化 

 青山高原に風車をとりつけるさい、既存の林道はあったのだが、運ぶ物が大きすぎるのでこの道路では間に合わず、平行して取り付け道路をつくることになった。運ぶ物の一つ一つが100㍍以上もあるので、非常にたくさんののり面をつくって運ぶことになった。結果として非常に激しい土砂崩れが発生している。道路も寸断し、上水道の取水停止も頻発した。


 これに対して事業者は、「私どもは規定どおりの工事をしただけでございます」という返事をした。さすが中部電力、いうことが違う。


 その取り付け道路は、3年目には大きな溝ができて崩れている。その対策だが、崩れた土砂を谷底まで運んでいる。残土処理も結構出て、白滝山(下関)の例だが、谷を完全に埋めてしまっている。南淡路ウィンドファームは、安岡に計画されている風力発電機の70%ぐらいの大きさのものだが、かなり土砂崩れもひどく、800㍍離れたところまで崩れてきた。この会社は悪い会社で、まだ片付けていない。


 シカも激増した。非常にたくさんののり面や平地をつくるので、そこに外来牧草を植える。つまりシカにとっては産めよ殖やせよ状態。今まで笹ぐらいしか食べる物がなかったのが、牧草だから栄養満点だ。


 イノシシが凶暴化したという報告もある。南伊豆町だが、風力発電機がよく回転しているときはイノシシが活発で、追っても逃げないで向かってくるという。風力発電症候群、振動音響病の症状の一つとして、複雑な思考ができなくなる、簡単な計算ができなくなる、イライラする、怒りっぽくなる、という症状がある。

 早い話が酒に酔ったような状態。つまりイノシシは今まで人間が怖かったのが、「人間なんてなんぼのもんじゃい」という気持ちになって向かってきたと考えればつじつまがあう。

(後編につづく)

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