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九電管内は既に電力供給過剰 再エネ増え過ぎ出力制御 発電量調整不能な太陽光や風力

 佐賀県唐津市沖から長崎県平戸市沖にわたる広範囲な海域で、国内最大規模の合計200基をこえる洋上風力発電計画が進んでいる。九州電力管内では2012年に再エネの固定価格買取制度(FIT)が導入されて以来、全国に先駆けて太陽光や風力発電の建設が爆発的に急増し、電力供給過剰に悩まされている。電力供給過剰に対応するため九州電力は2018年以降、全国で初めて太陽光や風力発電の「出力制御」を実施し、2019年には原発3~4基分の電力が捨てられた。その後も供給過剰状態は続いており、経産省は昨年12月に2022年度には北海道、東北、四国、九州、沖縄の五地域で「出力制御」が発生するとの試算を出した。

 

 福島原発事故後、政府がFITを導入したのを契機に、日照条件に恵まれる九州では太陽光発電を中心に再エネへの参入があいついだ。昨年3月時点で九州の太陽光設備導入量は1029万㌔㍗(100万㌔㍗級原発約10基分)であり、FIT導入前の2011年比で約14倍に増えている。風力発電は59万㌔㍗で合計すると1100万㌔㍗近い。

 

 再エネ発電急増には弊害がともなっている。再エネ発電の弱点は、天候次第で発電量が大きく変動する不安定性で、調整が不可能だということだ。電力は需要と供給が同じ量でなければ周波数が乱れ、最悪の場合は大規模停電が起きる。

 

 電力はつくり貯めできず、発電と消費はつねに同時同量でなければバランスが崩れる。電力会社は消費量にあわせて小刻みに発電量を調整してバランスをとっているが、ここに変動が激しく調整不能な太陽光や風力発電が大量に入ってくるとバランス調節ができなくなる。

 

 たとえば2018年の北海道地震のさいには火力発電が停止し、供給量が急減したため、ほぼ全域が停電する「ブラックアウト」が発生した。逆に電力の供給量が需要量を大きく上回った場合にも需給のバランスが崩れ「ブラックアウト」が発生する。

 

 九電は再エネ発電急増による供給力の増大に悩み、余った電力の一部を本州に融通したり、火力発電の出力を抑制したりして需給バランスを調整してきた。だが、それだけでは調整が困難となり、2018年10月に全国で初めて、再エネ事業者に稼働停止を求める「出力制御」を実施した。

 

 当時の九電の計算では太陽光がもっとも多く発電する時間帯の供給量が1293万㌔㍗、同時間帯の需要量は828万㌔㍗で196万㌔㍗を域外に送電し、226万㌔㍗を揚水式発電や蓄電に回しても、43万㌔㍗余る。この分を午前9時から午後4時まで太陽光を止めて抑えるとした。

 

 当時の太陽光発電の出力は807万㌔㍗。これに加え原発4基が営業運転しており、出力は計約414万㌔㍗であった。

 

 その後、九電管内では電力供給過剰を解消するための出力制御が頻発してきた。2019年には出力制御は計74回に達し、1回当り最大289万㌔㍗で原発3基分の出力を抑えたこともあった。さらに2021年の出力制御の指示回数は67回、前年同期の51回を大きく上回った。

 

 2020年4~5月の抑制率は9・7%だったが、2021年4~5月には14・0%に増加している。なお2021年4月の抑制率は14・4%で過去最高を記録している。

 

 電力の供給過剰は九電管内ばかりではない。経産省は昨年12月15日に太陽光や風力による発電を抑える出力制御が2022年度には北海道、東北、四国、九州、沖縄に広がるとし、それぞれの地域の出力制御の見通しを初めて発表した。抑制する最大電力量は、九州は7億3000万㌔㍗時で地域の再エネ発電量の5・2%に相当する。四国は5388万㌔㍗時で1・1%、東北は3137万㌔㍗時で0・33%、北海道は144万㌔㍗時で0・35%、沖縄は97・6万㌔㍗時で0・2%としている。

 

 このように再エネ発電による電力供給過剰が問題になっているなかで、政府は洋上風力発電を40年までに全国で最大4500万㌔㍗導入する計画を掲げ、そのうち九州が最大で1190万㌔㍗をめざしているが、実際上は発電した電力を捨てるために建てるようなものになっている。しかも発電量が天候に左右される再エネは、現状では出力を調整できる火力発電との併存が欠かせず、「脱炭素」や「カーボンニュートラル」などがいかにいいかげんなものかが浮き彫りになっている。

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