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日本を破綻させる小泉外交 対米追随の一本槍でアジアと世界の笑いもの

 小泉首相は今回の総選挙では「郵政民営化で民意を問う」と勝手に決めこみ、4年4カ月来の内政・外交問題への国民の審判をかわそうとしている。アメリカ一辺倒で突っ走った売国外交は、ことごとく大失敗し、国連安保理常任理事国入りの挫折が示したように、アジアをはじめ「世界の孤児」となっている。メディアをはじめ権力で支えられた内政でテレンパレンなことをやる調子で外交をやるのでは相手にされるわけがない。イラク参戦でアラブ諸国から見放され、中国や朝鮮、「韓国」などとは靖国神社公式参拝や歴史教科書、領土問題などをめぐる頑迷きわまる挑発的姿勢で反日デモが起こるほど関係を悪化させた。反米の高まる中南米では相手にもされず、カネをちらつかせて常任理入りの支持をとりつけようとしたアフリカ諸国からもけられ、同じ敗戦国のドイツにもバカにされている。日本の国益をアメリカに売り飛ばし属国に変えアジアと世界から孤立する小泉政府の亡国外交は、日本の進路とかかわって重大問題である。

友好関係破壊し戦争挑発


 日本が石油の大半を依存する中東・アラブ諸国は、「日本はアメリカに原爆を投下された国」として連帯する感情が強かった。だが、小泉政府が「人道・復興支援」の名目で自衛隊約1100人をイラク戦場に派遣、アメリカの占領支配に加担したことで世論は一変した。サマワの陸自駐屯地に十数回もロケット弾が撃ちこまれ、陸自車列が路肩爆弾で襲われ、街路に立つ「日の丸」にバツ印がつけられ、「日本の占領軍は早く帰れ」と叫ぶデモ行進が起こるようになっている。


 小泉政府のアジアでの孤立ぶりはとりわけきわだっている。日本国民の圧倒的多数がアジア近隣諸国との平和・友好を望み、二度と戦火をまじえないことを願望しているにもかかわらず、小泉首相はそれを裏切ってことごとにけんか腰で挑発をやり、ブッシュを喜ばせている。


 靖国神社参拝、侵略肯定の歴史教科書、尖閣諸島(釣魚島)や竹島(独島)の領有権問題などは、過去の侵略の歴史の清算問題であると同時に、台湾海峡有事への介入、ミサイル防衛(MD)配備など中国や朝鮮を敵視する戦争挑発を日米共通戦略としてすすめていることでもある。


 靖国神社公式参拝は、1985年に中曽根首相(当時)を最後に、歴代首相は自粛し、表むき侵略戦争と植民地支配を反省するポーズをとってきた。ところが、小泉首相は就任早早、「いかなる批判があろうと8月15日に参拝する」と公言、実行した。


 中国や「韓国」から「A級戦犯問題」を出され、戦争責任を問われると、「戦没者追悼の仕方に他国が干渉すべきではない」と突っぱねた。それを理由に来日中だった中国の呉副首相が小泉首相との会談をキャンセルすると、小泉首相ととりまき閣僚らが口をそろえて「外交的な礼儀を逸している」と騒ぎたて、安倍自民党幹事長代理にいたっては「靖国で譲歩しないことが日本外交刷新の試金石」といって、今後も首相たるものはみな参拝すべきだとあおるありさまだった。


 中国各地で4月、青年・学生や労働者らが「愛国無罪」を叫び、「教科書改ざん反対」「釣魚島を守れ」「日本の安保理常任理入り反対」などをかかげたデモが起こった。小泉政府はここぞとばかりに、声を大にして「謝罪と賠償」を求める大キャンペーンを展開した。それが失敗すると、小泉首相はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で、「侵略と植民地支配を反省する」との村山談話を引用し、中国首脳から「行動で示してほしい」とクギを刺されるなど、まったく信用されなかった。


 「韓国」との関係も、竹島問題で島根県議会が「竹島の日」条例を採択、日本の駐「韓」大使が「歴史的にも法的にも日本の領土」と公言したことで険悪となった。「韓国」政府は対日新政策として、①日本の侵略行為にたいする謝罪、②植民地支配を正当化する歴史教科書などに断固対処することを、「日韓条約」締結40年にしてはじめてうち出した。

 米国に従い方向を転換 朝鮮問題 


 朝鮮にたいしては、小泉首相が訪朝して「国交正常化」を約束するパフォーマンスをしたが、アメリカから横槍が入ると拉致問題を騒ぎたて、それに「核の脅威」を加えて、敵視世論をマスコミを使ってあおりたてた。朝鮮籍船舶の日本寄港を阻止する一連の法律をでっちあげ、万景峰号の入港阻止をもくろんで、「経済制裁をちゅうちょする必要はなくなった」(安倍自民党幹事長代理)と、戦争をも挑発する構えとなった。


 ところが、ブッシュの横暴な「一国主義」は世界で行きづまり、朝鮮への「圧制の拠点」発言や武力攻撃の脅しを一時引っこめて、8月に朝鮮の核問題にかんする六者協議の再開に応じざるをえなくなった。その場でなお日本代表が拉致問題を持ち出すと、中国や「韓国」、ロシアから「場ちがいだ」と相手にされず、アメリカもとりなす側に回った。ここにいたって、拉致問題の強硬派で名をあげた安倍晋三氏も、拉致のらの字も口にしなくなった。「拉致家族会」のなかも、政府に「経済制裁を求めるもの」が45%と少数派となった。対米追従外交の見本のようなものだ。

  歴史の事実も覆す 日米戦略の具体化


 対中国、朝鮮南北の外交では、かつての侵略や植民地支配を清算し、平和・友好、平等互恵の関係をうち立てることが、日本民族の誇りであり圧倒的多数の人人がそう考えている。だが敗戦後、アメリカに膝を屈して生き長らえた天皇をはじめ日本の支配勢力は、これら中国、朝鮮との関係でも、アメリカの敵視政策に追随して、中国封じこめ、朝鮮戦争、ベトナム戦争に加担して肥え太り、侵略と植民地支配の戦争犯罪を免罪されてきた。


 しかし、小泉首相がどう考えようと、日本支配層はかつての侵略戦争で中国だけで2000万余り、アジア全体で3000万をこえる人人を犠牲にした事実は消えるものではない。また、36年におよぶ朝鮮の植民地統治で、朝鮮の言語、名前まで奪い、強制連行で二百数十万人を拉致、酷使した事実も消えない。そしてその侵略戦争で320万人の日本人が殺されたことも忘れられるものではない。


 小泉首相らがこうした戦前戦後の歴史的事実を否定し、くつがえそうとするのは、ブッシュの尻馬に乗ってふたたびアジア諸国に侵略戦争を仕かけるためである。今年2月の日米安保協議委員会で、台湾海峡有事に日米共同で対処すると共同声明に明記し、2007年には日本へのMD配備で核攻撃態勢をとろうとしている。ピストルを突きつけていて「平和・友好関係」を求めても信用されるわけがない。また、日本を核攻撃拠点とすることは、日本を報復による原水爆戦争の戦場とすることを意味し、日本人民も許すものではない。


 日本民族の利益を売り飛ばしてアメリカの「第五一州」とし、アメリカの「世界一極支配」の野望をとげるために自衛隊を米軍の下請軍隊として世界各地に派遣する。こうした小泉政府の売国・亡国政策は、中国や南北朝鮮との関係を悪化させているだけでなく、東南アジアや太平洋諸国の強い警戒心を抱かせている。小泉政府の安保理常任理入りを支持したのは、ブルネイとミクロネシアの二国だけだった。7月のASEAN(東南アジア諸国連合)プラス3の会議に、町村外相が常任理入りの多数派工作のために欠席したことにたいし、「日本は地理的にはアジアにあっても、心はアジアにない」とヤユされた。2003年10月、東南アジア諸国が相互不可侵や紛争の平和的解決を趣旨とした「友好協力条約」を立ち上げたとき、小泉政府は「日米安保条約と両立しない」と参加を拒否した。翌年、アメリカの指図で加盟したが、加盟国は「日米安保を軸に主導権を握るのではないか」と疑惑を強めている。

中南米やアフリカでも相手にされぬ日本


 小泉政府の対米従属外交は、世界その他の地域ではまったく相手にされなくなっている。
 近年、ベネズエラ、キューバが中心となり、南米のいくつかの国の左翼政府が連合して、アメリカの「新自由主義」に反対し、平等互恵の南米共同市場をつくり、アメリカの米州自由貿易協定に対抗する動きが強まっている。そのなかで、日本が長期にかくまっていたフジモリ元大統領をふたたびペルー大統領選挙に出馬させ、日米の利益のために使おうとしているが、南米をおおう反米機運はそれを許さなくなっている。


 アフリカ諸国との関係では、「貧困救済」や「エイズ撲滅」と称して少しばかりODA(政府開発援助)をふやしているが、それもアフリカの油田確保を狙ったアメリカ戦略を担うものと警戒されている。今回の安保理常任理入りの多数派工作において、小泉政府は票数の多いAU(アフリカ連合)をとりこもうとし、当初は楽観論をふりまいていたが、結局AU総会で否決されてしまった。それで常任理入りは絶望的となったのである。


 世界主要国首脳会議(G8)でも、アメリカの腰巾着にすぎない日本の影が薄くなっている。イラク戦争をめぐって、ドイツ、フランスは参戦を拒否、日本はブッシュのいいなりにはじめて戦場に派兵した。今日、大量破壊兵器はなくテロ組織との関係もなく、イラク戦争の大義名分がたたなくなり、しかもベトナム戦争同様に泥沼状態におちいった。それでも小泉政府は自衛隊を引き揚げようとしないことから、「日本は独立国なのか」と同じ第二次大戦の敗戦国であるドイツにすらバカにされている。かつての侵略戦争の責任をとらず中国などアジア諸国から嫌われていることについても、ドイツをひきあいに出して笑いものにされている。


 米ソ二極構造崩壊後の世界を見ても、「第二の経済大国」の日本がこれほど世界から孤立し、権威を失ったことはない。小泉首相の四年余りの外交が日本の国益を第一にした独自外交ではなく、1にも2にもアメリカの国益を優先する従属外交であったからである。

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