いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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菅政府が発足 輪をかけた対米従属路線

 鳩山首相が野たれ死にしたのち菅内閣が発足した。メディアは民主党が小沢離れをして「政治と金の問題」が解決し、支持率がぐんと上がったと騒いで問題をすり替えている。菅は早速オバマと電話会談をし、普天間基地の辺野古移転について、日米合意の線ですすめることを確約し、オバマを喜ばせている。それは野たれ死にした鳩山の二番煎じの政治をやるということであり、沖縄の合意にはほど遠く、独立と平和を願う全日本国民との対立を激化させるものである。
 普天間基地の移転について沖縄県民は「沖縄から出ていけ」であり、徳之島も大村も全国も「米軍は来るな」が国民の世論である。どこへ持っていこうとしても日本国民は「来るな」が意志であるのに、政府はこの国民の意志は踏みにじって、アメリカの意志を優先する。日本の政府は日本国民を代表する政府ではなく、アメリカのかいらい政府なのだという現実を見せつけている。
 鳩山が選挙の時に「最低でも県外移設」とか「米軍再編の見直し」と叫んで、結局は「抑止力が大事なことがわかった」などといって現行案の辺野古移転に回帰した顛末は、日本の政府というものが、自主的に物事を考えてすすめることはできず、すべてアメリカの指図で動くものだという実態をまざまざと見せつけた。オバマ政府の高官やメディアが直接に「鳩山は反米か」と脅しつけ、日本の新聞、テレビも「アメリカを怒らせたら大変だ」の大合唱を始める。日本の支配機構が構造的にアメリカの支配の道具として動いている姿を見せつけられている。
 菅は辺野古移転という「日米合意を実行する」とオバマに約束したが実行するうえでは沖縄、国民の合意をえなければできない。「普天間基地の最低でも県外移設」「米軍再編の見直し」は鳩山がいなくなったら無効ではなく、それは民主党の公約であり、菅内閣もこの公約を掲げた総選挙に拘束されている。菅が「辺野古移転の日米合意をすすめる」というのは、鳩山と同じく公約破りの二枚舌をやる宣言となる。

 日本危険にさらす基地 戦争挑発する米国

 米軍基地の増強どころか、米軍基地が日本にあること自体が、日本にとっては大きな危険となっている。敗戦後、65年間も外国の軍隊が居座り、しかも毎年数千億円もの駐留経費を払い、米軍再編に当たっては3兆円も負担する。そして岩国では2500億円、辺野古でも数千億円を使って新しい大型基地をつくってやる。香港割譲は99年、日韓併合は36年だったが、日米安保条約には期限がない。
 アメリカの存在が日本を守る抑止力どころか、アメリカのための戦争に日本を動員し、アメリカを核ミサイル攻撃から守るために日本が危機にさらされているのが現実の関係である。しかもアメリカの出撃基地となり、米軍指揮下の自衛隊編成になっている日本は、いつ戦争が始まってもおかしくない緊迫した情勢になっている。
 これを示しているのが「韓国」の哨戒艦沈没事件をめぐるアメリカ側の戦争挑発姿勢である。「韓国」政府は「北朝鮮の魚雷攻撃」と断定し、一触即発の戦争の危機がつくられている。アメリカが北朝鮮制裁の旗を振ると、事情のわからない民主党政府も同調を叫ぶ。「平和ボケ」ではおられない事態になっている。
 米「韓」合同演習のさなかで、潜水艦を攻撃する専門の艦船が、性能の悪い北朝鮮の潜水艦が接近するのもわからず、逆に沈没させられたというのはあり得ないことである。アフガン、イラク戦争の口実となった9・11事件もアメリカの自作自演説が優勢であり、ベトナム戦争におけるトンキン湾事件もでっち上げ、真珠湾攻撃も参戦口実のために待ちかまえていたのがアメリカだった。「北の攻撃」というような、でっち上げ、陰謀、謀略は、いつもアメリカが戦争を始めるときのやり口であることは広く暴露されている。
 こういうなかで菅政府が「日米合意の線でいく」というのはきわめて危険な要素を持つ。民主党でも前原国交大臣などは、自民党安倍元首相と似たりよったりの、親米の戦争ボーイとして知られている。官房長官や幹事長などの要職に前原グループがついていることや、菅の「日米合意」の方向はきわめて危険性を持っている。

 問題をそらすメディア 「政治と金」騒ぎ

 いまメディアは、民主党が小沢離れをし、「政治と金の問題」が解決して、支持率が上がったと騒いでいる。そして日米関係が中心であることを煙に巻いてそらそうとしている。「政治と金」の問題というが、国政であれ地方政治であれ「政治は金」であり、上から下まで利権政治であることは誰もが知っている。警察や検察が、数ある「政治と金」のなかで、いつ誰を摘発するか、しないかは、別の意図で決まっていると誰もが見ている。安倍代理の下関市政をめぐっても数数の官製談合が暴露されたが、警察も検察もがんとして動かない。「アメリカ国債を売りたい」といった橋本派はつぶされ、アメリカ一辺倒の小泉がやった「かんぽの宿」のような「民営化」なる膨大な国有財産の分け取りなどはフリーパスとなる。
 また菅は財政再建が重要だといって法人税率引き下げと併せて消費税率を上げる意図を明らかにしている。世界最大の債権国である日本が世界最悪の借金国になっている。対外債権の多くはアメリカのいかさま証券であり、日本の国家予算に匹敵するアメリカ国債がある。アメリカにはいかさま証券などで巻き上げられた500兆~600兆円が流れており、紙くずになろうとしている。さらに郵政民営化にみられるように、郵貯資金もアメリカが巻き上げようとするなど、アメリカのためにとことん日本の資金を吸い上げようとしている。国家財政危機はアメリカの資産略奪とその下での200兆円を超える内部留保を貯めている日本の大企業の略奪によってつくられている。消費税率を上げることは、アメリカと大企業の要求である。菅はその代理人として要求に応えようというのである。

 政治機能の崩壊も暴露 国民を動員できず

 日本の政治は、国民を納得させる必要はなく、万事アメリカの要求を第一にして、聞く耳なしの暴走をやってつぶれるのが習慣になっている。長期にやったという小泉政府がもとをつくってそれをついだ安倍、福田、麻生と鳩山の自民党から民主党の短命政府である。普天間基地問題にしろ岩国にしろ、地元の合意はまるでないのに、日米政府間で空の上で勝手に決めて暴走してつぶれる。岩国でも「米軍再編見直し」と叫んで選挙をやって、与党になると一方的に愛宕山米軍住宅用地買収の予算を決めた。上関原発問題でも、祝島の漁業権変更の合意はないのに、国政実行の騎手である二井知事は勝手に埋め立て許可を出して行き詰まっている。
 日本には権力者だけしかいないのではなく国民がいる。権力の力の源泉はアメリカの方にあるのではなくて、働く勤労国民のなかにある。日本の権力はアメリカが握っているのであり、アメリカに認められさえすれば安心だと、国民の合意をとる必要などないという政治とはいえないものになっている。地元の合意をとる、国民の合意をとる、国民を動員するというのが政治であるが、そのような政治の機能が崩壊しているのである。この状況は、ろくな政治家はいなくなったという事情とともに、主人のアメリカが弱ってしまって、日本国民をだます力もなくなっていることをあらわしている。
 菅は安倍、福田、麻生、鳩山などの首相経験者の息子か孫のお坊ちゃんではなく、「市民運動出身のたたき上げ」などというおべんちゃら記事が出ている。なるほど岩国などで民主党政府になってから、民主党系や「日共」系などの政治勢力が運動の上に乗っかったり、爆音訴訟とかで矮小化したりして、基地反対の市民の運動がやりにくくなったという世論が動いている。
 菅内閣の最大任務は米軍再編となっている。米軍基地の問題はアメリカの日本支配の根幹をなすものであり、沖縄や岩国は日本全体の縮図である。辺野古移転、岩国基地増強など米軍再編問題は、日本をアメリカの戦争にかり出すとともに、日本を核戦争の戦場にして再び焼け野原にする破滅の道である。また軍事支配が、政治、経済、文化、教育など日本社会全体をつぶしていく根幹になっており、日本の独立をかけた大問題である。
 戦争を阻止して国の独立を実現し、日本を立て直すという全日本人民の共通要求を鮮明にさせて、さまざまな親米の政治勢力の枠を突き破って、下から大衆的な世論を形にし、運動にしていくことが切望されている。菅政府はメディアの目くらまし宣伝にも関わらず、鳩山のあとを継ぐ短命になろうとしている。

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