いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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日米首脳会談 安倍晋三が勝手にTPP参加表明

 安倍首相がオバマ大統領と日米首脳会談をおこない、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加や、米軍普天間基地移設早期推進などの実行を約束した。すでに民主党が消費税やTPP、普天間問題などあらゆる公約を覆して「日米同盟」を復活させた日本社会つぶしに輪をかけて、安倍自民党は「それでは不十分」とさらなる全面的な国売り飛ばしに乗り出している。
 
 辺野古への新基地建設も推進

 年頭に「TPPの進展がない」と訪米をはねつけられると、TPPを具体化する規制改革会議などさまざまな検討会議を発足させ、「やれ」といわれるより先にTPPも米軍再編を軸とする軍事強化も朝鮮へのミサイル対応を想定した集団的自衛権の具体化も、アメリカの要求をせっせと先取り。そして「聖域なき関税撤廃を前提にしたTPP交渉には反対」「沖縄の負担軽減に頑張る」と訪米直前まで公言しながら、TPP問題も普天間移設問題も国民をだまし討ちにした売国行為に、全国で尋常でない憤りが噴き上がっている。安倍は「二級国家にはならない」と講演したが、米国に売り込むためにはアジア諸国、欧州諸国、世界中と対立・孤立していく度はずれた売国奴の本性を見せつけている。それこそ「二級国家の二級首相」の姿にほかならない。
 安倍は「オバマ大統領とファーストネームで呼びあうほどの信頼関係を作りたい」と意気込んで訪米したが、一国の首相としてまともな扱いをされなかった。一月に訪米を打診して「TPPの進展が望めない」と蹴られ、今回も「TPPについて踏み込んだ議論が期待できず、具体的な成果も発表できない」と米国側が会談後の共同記者会見を事前に拒絶する異例の事態となった。呼ばれた場所も親密度を示すキャンプデービットではなくホワイトハウス。会談前の晩餐会も持たれなかった。このなかで安倍は対日施策を裏で操る米国のシンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)へ行き英語で講演。尖閣問題にふれて「挑戦を容認することはできない」と朝鮮や中国への挑発姿勢を示すとともに、米国には「日本は戻ってきた。私の国を頼りにし続けてほしい」「日本は二級国家にならない。私はカムバックした。日本もそうでなくてはならない」とこびを売ることに終始した。
 そして日米会談ではこの2カ月でやってきたTPPの準備や集団自衛権行使容認に向けた検討会や改憲準備など、日本国民の利益を売り飛ばす売国施策の進展を報告。しかし新しい内容はなく米国側は「すでに指示している内容を早く実行しろ」という対応。とくにTPPや米軍再編などの対応について「もっと急げ」とハッパをかけ、朝鮮や中国の対応は米国に火の粉がかからないように日本が矢面に立つ体制を早急につくることを迫った。その米国の要求を積極的に丸呑みしたのが安倍訪米の中味となった。そんなものを安倍は「“日米同盟の信頼、強い絆は完全に復活した”と自信を持って宣言したい」と威張って表明している。

 米国利益優先する基準 TPPで国富差出す

 TPPをめぐって「すべての関税撤廃が前提でないことを引き出した」とメディアがもてはやしたが、米国はTPPへの態度を一切変えていない。共同声明の「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように両国ともに二国間貿易上のセンシティビティー(敏感さ)が存在することを認識しつつ両政府は最終的な結果は交渉のなかで決まっていく」「すべての関税を撤廃することを約束することを求められるものではない」という内容は、米国への輸入品にかかる関税は維持し、日本へ輸出するものは関税を撤廃するダブルスタンダードを示したにすぎない。
 米国はすでにTPP交渉参加の前提条件として、米国産牛肉の輸入規制を緩和し、安全かどうかもわからない米国産牛肉の乱売が日本国内で始まり、農業関係者に甚大な打撃を与えている。自動車も米国が輸入する日本車にだけ関税をかける方向(日本は輸入車の関税はゼロ)で交渉中だ。そのほか1491兆円にのぼる個人金融資産、そのなかでもゆうちょ・かんぽ資金267兆円という国民資産を外資が略奪することを狙い、「郵政」の完全株式上場など民営化徹底を急げとハッパをかけている。
 2期目のオバマ政府は、TPPによる中国封じ込めのブロック経済政策をすすめ、TPPの原加盟国・交渉参加国11カ国(中国や韓国は参加の意志を表明せず)のうち日本が加われば市場規模が約3割増えると見込んでいる。しかもTPPは非関税障壁撤廃が前提。このため米国はなにがなんでも日本をTPP交渉に引きずり込み、工業製品や農産物、サービスなどすべての関税を米国の都合にあわせて全面撤廃(日本側の関税自主権の放棄)させ、医療や保険、労働、金融、不動産、政府調達、知的財産権の規制緩和によって非関税障壁を撤廃させ、日本の富を根こそぎ食いつぶそうというのである。

 日本盾にする日米同盟 原発で核もためこみ

 そして重要な特徴は、「日米軍事同盟の強化」と称し、日本を対中国戦争の盾に変えていく日本全土売り飛ばしである。米国がグアムとともに出撃拠点と位置づけている沖縄の普天間基地問題をめぐっては、安倍の方から「普天間移設と嘉手納以南返還の両方を早期にすすめたい」と表明し、オバマがうなずくと「合意」と評価。すぐ実行へむけて動き出し、3月中にも沖縄県知事に埋め立て申請をする方針を明らかにしている。地元合意もまったくないまま、普天間基地代替の新基地建設へ乗りだす姿勢である。
 さらに北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射と核実験問題については、米国とともに経済制裁を強化することを確認。他方対中国関係は「日米が引き続き連携することを確認」とし、日本が前面に立ち自主的な対応をする方向。このために米軍の移動式早期警戒レーダーを日本国内に追加配備し、日本をミサイル発射拠点にすることや、「原発稼働ゼロ」方針を見直して原発を稼働させ、核兵器製造につながる核物質ためこみを加速することも盛り込んだ。
 それは米軍の損害を可能な限り最小にし、日本に対中国戦争を肩代わりさせる「アジア人同士をたたかわせる戦略」にもとづいている。日米政府は「集団的自衛権」「邦人保護」といって世界中に自衛隊を動員する準備を急ぐ一方で、中国の核ミサイル攻撃が届く九州、沖縄をはじめ日本列島、台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線のなかから米軍は外に移し、米国だけ通信ネットワークや精密誘導弾などを駆使した「遠隔誘導戦争」をやる体制を整備している。
 朝鮮のミサイル問題、核実験、中国船の「レーダー照射」問題を煽って「中国や北朝鮮から日本を守ってくれる米軍が攻撃されても守れないのはおかしい」と大手メディアが煽り立て、それにのって安倍が「集団的自衛権が必要だ」とさまざまな法整備に着手した。日本で進行している現実はミサイル攻撃態勢、戦斗機の出撃体制、迅速な輸送体制網の整備に加えて、TPPによる大収奪で職のない若者を戦地に投入していく日本全土の米軍基地化である。
 安倍は「集団的自衛権の行使容認に向けて検討を始めた」とさっそく報告し、オバマは「米国にとって明らかに日本は最も密接な同盟国であって、日米同盟はこの地域の安全保障にとって、アジア太平洋地域において、中心的な礎だ」とけしかけている。

 参院選まで待てぬ米国 反米斗争発展で窮地

 もともと自民党は参院選で勝利することをめざし、TPPにしろ日米同盟にしろ本音を隠し「安全運転」を演出してきた。安倍自民党自体が総選挙で得た得票はわずか16%であり、自民党総裁選も国会議員票を集めて返り咲いただけで自民党内の支持すらほとんどない。いくら安倍が「TPPも普天間移設もやる」と息巻いても、日本国内の反対世論に火をつけるだけで、今後の手続きが進展していくどころか困難を増すしかない。全国の圧倒的な批判世論に包囲され、国民を動員する力などまるでない「裸の王様」がいくら暴走しても、反発が強まる一方だからである。
 だが参院選まで待つことも堪えきれず安倍政府を暴走させるところに、米国の深刻な危機が現れている。米国は近年、中東、中南米、アフリカなどで反米斗争が発展するなか、軍事費がかさんで米兵の犠牲者が増えて窮地に立っている。このなかでアジア重視戦略に転換したが、世界各国の反米斗争はますます勢いを増し、アジアにおける支配も北朝鮮が核実験をやって対抗するなど行き詰まり状態。米国内もいったん減税打ち切りと歳出削減が重なる「財政の崖」を回避したが、時期を先送りしただけで、いつ政府の借金残高が法定上限に達し債務不履行の危機になってもおかしくない事態が継続している。五年前にアメリカの住宅バブルが崩壊してリーマン・ショックとなり、その後財政を投入して金融機関救済に動いたが、職がなくフードスタンプで暮らす人が4000万人に拡大し、オバマ政府自体が窮地にたっている。
 これを打開するためすべて日本に肩変わりさせて延命を図る米国の意図を先取りし、TPPによる対中国包囲網をつくって日本の富を根こそぎ差し出し、日本全土を基地化する米軍再編を強行してアジア諸国との対立を煽り、あげくの果ては国内の反発をおさえつけてアメリカのための対中国戦争の盾にし、戦火にさらすというのが、日米首脳会談で安倍が実行を買って出た内容にほかならない。安倍訪米による日米首脳会談は、売国独占資本集団の利益のために、日本民族の根本的な利益を根こそぎ売り飛ばす売国の旅であり、国民からいかに浮き上がろうとも、アメリカに認められることで地位を守ろうというのである。
 失業や生活苦など、国民生活でのあらゆる苦難の根源は、敗戦後から続くアメリカの日本支配、国益を根こそぎ売り飛ばす日米安保体制を軸にした売国奴政治にある。独立、平和、民主主義と繁栄の道か、売国、戦争、反動、貧困の道か、日本全国で大衆自身がそれぞれの個別要求に共通するこの日本の国をどうするかという根本問題解決に向けて、各地で渦巻く巨大な世論を形にするときが到来している。

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