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イタリア総選挙 既存政党凋落のもとで五つ星運動が第1党に躍進

首相候補のルイジ・ディマイオ(中央・31歳)と元党首のベッペ・グリッロ(左)

 イタリアで4日におこなわれた総選挙で、新政党「五つ星運動」が上下両院で最多議席を確保し、第1党に躍進した。与党・民主党は、選挙前(378議席)から議席を3分の1程度にまで減らす見通しとなり、レンツィ前首相は党首辞任を表明した。

 

 開票の結果、五つ星運動の得票率は約32・7%で政党単独では最多となった。複数の右派党派が野合した中道右派連合は37%で、そのうちサルビーニ党首が率い、反移民などを掲げる同盟(旧・北部同盟)が17・4%となり、脱税で有罪判決を受けたベルルスコーニ元首相が率いる「フォルツァ・イタリア(頑張れイタリア)」は14%にとどまった。民主党を含む中道左派勢力は、得票を大幅に減らして約23%となった。

 

 政党としては五つ星運動が最多の102~122議席を確保する見通しで、第3勢力から第1党へと大躍進を見せた。だが、今回の選挙からは40%以上を得票した政党に自動的に過半数議席が与えられる「ボーナス制度」が廃止されたため、政党単独で過半数(158議席)に届かない場合は政党間の協議による連立政権を模索することになる。この選挙制度の改定は、国民的な支持を広げて躍進する五つ星運動などの新興勢力に政権を奪われることを危惧した民主党や右派連合の二大政党が推進し、昨年成立させていた。今回の総選挙は、表面上対立する格好をとりながら国民を欺瞞してきた左右の既存政党と、その政治構造の根本的な変革を求める国民世論との対決となった。

 

 イタリアでは、リーマン・ショック後の金融危機で財政が悪化し、中道右派のベルルスコーニ政府のもとで2011年11月にIMF(国際通貨基金)の監視下に入り、二大政党の片方を担ってきた民主党政府に移行してからも、政治中枢をIMF、EU、欧州中央銀行(ECB)の通称「トロイカ」関係者が握り、国民の主権を無視した徹底した緊縮策を実行してきた。貧困層は10年で3倍に膨れあがり、全人口の8%に及ぶ500万人が生活必需品すら買う経済力がないほどになり、IMFは昨年、「国民の29%が貧困層に転落する」との調査結果を報告している。周辺国からの移民流入に加え、イタリア人自身が移民となって欧州各地や中国、米国へと移住する事態が社会問題となっている。

 

 その下で、ミラノ社会党、キリスト教民主党などの幹部を中心に2000人以上の政治家が逮捕や捜査対象になるほどの大規模な贈収賄事件をはじめ、ベルルスコーニ元首相も賄賂、脱税、不正経理などで捜査を受け有罪判決を受けるなど政治汚職が蔓延した。一方、かつて「西欧で最大の左翼勢力」といわれたイタリア共産党がキリスト教民主党と野合して生まれた民主党も右派政党と同じ政策を実行し、同党を含む中道左派連合は歴史的な大敗を喫し、二大政党制そのものが国民から不信任を突きつけられる格好となった。

 

既成政党乗り越える世界の潮流

 

 2009年に政党として発足した五つ星運動は、これら政界を支配してきた左右の二大政党を批判し、国民の直接民主主義の行使によって政治制度を抜本的に改めることを主張してきた。有名なコメディアンでありながらテレビで政治家の汚職を暴露したことでメディア業界から排除されたベッペ・グリッロが党首を務め、①公的な水源確保、②持続可能な公共交通手段の確立、③環境保護、④インターネットアクセス権の保障、⑤持続可能な成長、の5つのテーマを目標にし、どんな国会議員も任期を2期10年(それ以上は出馬できない)に限定し、議員歳費を一般労働者の平均年収(現行の半額)にまで下げる、有罪判決を受けた国会議員の出馬は禁止するなど議員特権の廃止を掲げている。

 

 さらに、独自に構築したインターネットの交流サイトや街頭での集会を通じて、誰でも新しい法案を提案することができ、それが一定の支持を集めるものであれば、国民や住民投票による採用を可能にする「直接民主」制度を憲法に盛り込むことを目指している。

 

 政治腐敗の追及、議員特権の廃止や政治の透明化を要求する街頭での住民集会や署名活動から始まったこの運動は、日を追うごとに大規模化した。数十万~百万人規模の署名や請願を既存政党の議員が受け付けなかったことを契機にして、本格的に政界に代表を送る体制を整え、2010年の地方選挙を皮切りに各地に地方議員や市長、州知事を送り出した。

 

 結党4年後にしてはじめて国政に進出した2013年の総選挙では、中道右派・中道左派の二大政党連合を押しのけ、全体の25%にあたる900万票を獲得し、政党単独では第2党に躍り出た。2016年には、首都ローマ市長に女性活動家のヴィルジニア・ラッジ氏(37歳)、トリノ市長に同じく女性のキアラ・アペンディーノ氏(32歳)が当選したのをはじめ、市町村レベルで2000人以上の議員を抱えるまでに急速に勢力を拡大した。

 

 既存メディアや政治家は、スペインのポデモスや五つ星運動をはじめとする反グローバリズム、反緊縮を掲げて躍進する大衆政党を「ポピュリズム(大衆迎合主義)」と揶揄しているが、これらの国民的運動は、国民からかけ離れて腐敗の一途をたどる既存政党と、IMFやEUなどの内政干渉による主権剥奪政治に風穴を開け、その勢いはとどまることなく金融資本による政治支配を下から揺さぶっている。この潮流は、欧州だけでなく、同じ課題を抱えた世界各国に波及することは疑いなく、政党政治が崩壊して久しい日本社会にとっても大きな刺激を与えるものとなっている。

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