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原爆正当化の欺瞞剥落 ICANノーベル平和賞受賞が示す世界の潮流

ノーベル平和賞授与式(10日)

 

 ノルウェー・ノーベル委員会は10日、「核兵器の使用がもたらす破滅的な人道上の結末への注目を集め、核兵器を条約によって禁止するための革新的な努力をしてきた」との理由で、今年のノーベル平和賞をICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)に授与した。国連の核兵器禁止条約を巡っては、「核なき世界」を訴えて同賞を受賞したオバマ前米大統領が「非現実的であり、核兵器廃絶のプロセスに反する」と反対し、さらに受賞歴のあるEUをはじめとした核保有国がこぞって不参加を表明していたが、世界の主流な世論として、いまやその全面禁止を求めることが平和にとって抜き差しならない課題となっていることを示した。また、米国の影響力の低下と、被爆国でありながらそれに追随して参加をボイコットした日本政府の国際的な孤立を浮き彫りにするものとなった。

 

 ICANとは、スイスのジュネーブに国際事務局を置き、核兵器を禁止し廃絶するために活動する世界のNGO(非政府組織)の連合体で、現在101カ国から468団体が参加している。 核戦争防止国際医師会議(IPPNW、日本支部は広島市医師会)を母体に2007年、オーストラリアで発足し、国際会議の場を通じて法的拘束力をもった核兵器禁止の枠組みをつくるキャンペーンを展開してきた。日本からは、「世界一周の船旅」をとりくむピースボートが国際運営団体に参加しており、同組織を代表して川崎哲氏が国際運営委員に加わっている。

 

 昨年11月、核兵器禁止条約の決議を主導したオーストリアのクグリッツ軍縮大使は「核兵器の被害の実態を知る被爆者が訴えてきたことで、核兵器が非人道的だという認識が国際社会の中で広がった」とのべ、広島や長崎の被爆者が果たした役割を強調した。

 

 ICANのベアトリス・フィン事務局長は、条約案提出にあたって「核兵器の被害をもっともよく知る被爆者の声が、決議の採択に至る過程でも非常に重要であり、今後の交渉の過程でも重要になってくる」とのべており、今回の受賞が決まった後、「この賞は、広島、長崎の被爆者全員へも与えられる賞だ」「われわれは被爆者の話を聞くことから活動を始めた。それがすべてのベースだった」と、その出発点を明確に語っている。広島・長崎が長年にわたって発してきた頑強な意志が、核兵器廃絶の国際的世論を推進する最大の力となったことはいうまでもない。それは自国の犯罪を封印するために「核なき世界」を唱えたオバマのパフォーマンスや、「日本人は被害をいうまえに加害責任を反省せよ」「反核を反米にしてはならぬ」等等の原爆投下の犯罪を欺瞞し、被爆者の口を封じてきた者との不屈のたたかいなしにはなしえなかったといえる。

 

 今年の8月6日、広島の原爆死没者慰霊式典にグテレス国連事務総長(ポルトガル)が寄せたメッセージでは、「被爆者の皆様と広島市の不屈の精神と平和への模範的努力に対し、心から敬意を表する」とし、「広島の平和への強い決意は、世界にとってのインスピレーション(神秘的な導き)」だと強調。核兵器禁止条約の採択は、いかなる状況においても核兵器の使用を許さないという世界的な運動の結果であり、「広島の平和へのメッセージと被爆者の方方の英雄的な努力は、核兵器の使用がもたらす壊滅的な影響を世界に強く印象付け、核兵器廃絶を目指す世界的な運動に貴重な貢献をしてきた」と賛辞を送った。それは国際社会における広島の影響力の大きさと、その位置の重要さを改めて実感させるものとなった。

 

占領下の広島で口火を切った原水爆禁止運動

 

 核兵器廃絶の運動は、67年前の広島ではじめて口火を切った。占領下にあった1950年8月6日、占領軍のプレスコードによる言論弾圧に抗してはじめて開催された原水爆禁止の市民集会は、原爆投下の犯罪を真っ向から暴き、朝鮮戦争での原爆投下を許さぬ被爆地の世論を結集した。その運動は、それまで抑えつけられていた広島市民のいうにいわれぬ悲惨な体験を世に広め、峠三吉の『原爆詩集』が海外にも届けられるなかで世界にはじめて原爆の惨禍と被爆地の心を伝えた。同年、「原水爆の無条件使用禁止」「原子兵器禁止のための厳格な国際管理の実現」「最初に原子兵器を使用した政府(米国)を人類に対する犯罪者とみなす」と宣言したストックホルム・アピールに世界の5億人が署名するなど、核兵器廃絶の世界的な世論を醸成した。

 

 その力は、謝罪はおろか「原爆投下は戦争を早く終結させた」と正当化してきた米国の朝鮮戦争における3発目の原爆使用を阻止し、5年後には広島ではじめて原水爆禁止世界大会が開かれた。

 

 米ソ二極構造の崩壊後も、原爆投下を正当化するあらゆる欺瞞や妨害、圧力をはね除けて続けられてきた被爆地の努力がいまふたたび脚光を浴びていることは、核戦争の危険が身近に迫るなかで、戦後社会において米国がふりまいてきた第2次大戦評価の欺瞞が剥がれてきたことと無関係ではない。それは、今回の核兵器禁止条約に激しく抵抗する米国をはじめとする核保有国の態度、さらには被爆国でありながらそれに追随して無視を決め込む日本政府の孤立にも鮮明にあらわれている。

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