いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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世界に広がる原水爆禁止の世論  国連決議やICANノーベル賞受賞の根拠

唯一の被爆国を訪れる外国人の問題意識

広島平和公園の街頭原爆展の反応から考察

 

パネル下に吊り下げられた英訳に見入る外国人参観者(広島平和公園)


 朝鮮半島を舞台にして核保有国の恫喝合戦が過熱する一方、今年7月には国連で122カ国の賛成によって核兵器禁止条約が採択され、世界各国のNGO(非政府組織)が参加するICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)がノーベル平和賞を受賞するなど、核兵器の禁止と廃絶を求める国際的な世論はかつてない高まりを見せている。

 

 そのなかで日本を訪れる外国人の多くが唯一の被爆国の経験を学ぶために広島や長崎を訪れており、その数は年年増している。下関原爆展事務局と原爆展を成功させる広島の会は、18年間にわたって街頭原爆展を開催し、2011年から6年間、原爆展全国キャラバン隊が毎月の第1・3日曜日に広島市内の学生や被爆者と共同で街頭「原爆と戦争展」をおこなってきた。世界の人人の感想からは、広島・長崎、原爆投下に対する関心と、核廃絶と平和構築に向けた鋭い問題意識を知ることができる。

 

 近年、広島を訪れる外国人の数は年年増加している。広島市の統計でも、2013(平成25)年度に約53万人だった外国人観光客は、14年には約65万7000人、15年には約102万9000人、16年は117万6000人と3年間で倍増しており、5年連続で過去最高を更新してきた。

 

 そのほとんどが原爆の被害を学ぶために広島平和公園を訪れ、公園内で開催している原爆と戦争展は、やるたびに黒山の人だかりを作ってきた。展示パネルは、満州事変から始まる日中戦争から日米開戦にいたる国内外の情勢や人人の暮らしを、そこに生きる人人の経験から描き、中国大陸や東南アジア、太平洋の島島などの戦地に駆り出された兵士たちが飢えや病気で死んでいった経験とともに、戦局が悪化するなかで日本指導層は真珠湾攻撃に踏み切り、負けるとわかっていた日米戦争へと突き進んでいった経過を伝えている。日本の戦力は壊滅し、敗戦が濃厚になるなかで、一夜にして十数万人を焼き殺した東京大空襲をはじめとする全国都市空襲、基地を奪うために二十数万人が殺された沖縄戦、広島・長崎への原爆投下の実相を伝え、さらに日本を単独占領したアメリカの植民地政策と今日の日本の現状についても犠牲になった人人の側から明らかにしている。

 

 展示には、アメリカ、イギリス、フランス、ロシアなどの欧米諸国、アジア、中東、中南米、アフリカなど世界各地から訪れた人人が参観し、これまで知ることのできなかった日本人民の戦争体験、原爆の惨状への衝撃を語るとともに、広島から発信する核兵器廃絶運動に強い賛意をあらわしている。戦後72年をへた現在、ふたたび核戦争の危険が迫る世界情勢への危惧が高まるなかで、これまで定説とされてきた「原爆投下は戦争終結を早めるために落とされた」「アメリカは日本の軍国主義から世界を解放した」とする原爆投下者の論理が説得力を失う一方、これまで隠蔽されてきた原爆被害の実相、広島・長崎市民の声への関心が増し、それを広く伝えることが核戦争を食い止める重要な共通課題として捉えられていることを示している。

 

 これまでの平和公園での街頭「原爆と戦争展」、今月7日から17日まで広島市留学生会館で開催されている「国際交流のための原爆と戦争展」(主催/原爆展を成功させる広島の会)に寄せられたアンケートのなかから、主なものを紹介する。

 

海外から来た人人が熱心に街頭原爆展を参観(平和公園)

 

【アメリカ、ヨーロッパ】

 

 ▼非常に多面的な展示だ。戦争がどのように始まり、原爆がその後どのような被害をもたらしたかという過程がよくわかる。私が驚いたのは、東京大空襲の真相と、戦中から戦後にまで及ぶアメリカと日本の大企業のつながりである。72年も経過して、人人は依然として核兵器廃絶の活動や論議をしている。当たり前のことが、なぜこれほど長い時間を要しているのか?と思わざるを得ない。日本政府は政治的・経済的な影響力を駆使して、核大国に圧力を加えるべきだ。だが、残念ながら彼らは、この展示会が示しているようにはアメリカに立ち向う気がないように見えてならない。(米国、70歳、男性退職教師)

 

 ▼原爆投下とそれによって人人が受けた被害について非常に詳細にわたって描かれている。とくに戦争犠牲者とその家族の写真、詩、体験談に心を動かされた。私は世界平和を願っている。しかし、歴史的には、自分のものではないものや他国に対して、自分の願望を強制する政治指導者が常に存在してきた。そのような自国の利益追求の欲望から他国を襲撃することを防ぐために国連のようなシステムが機能すべきだと考える。(米国、55歳、男性教師)

 

 ▼非常に詳しい資料である。生存者の証言によって戦争の歴史について暴露しており、それは決して得やすいものではなく、原爆資料館への私たちの旅をさらに価値あるものにしてくれた。英語の翻訳は訪問者にとって歴史的な資料を理解するうえで助けになり、展示の終わりにある「フクシマ」の報道も非常に関連性があり、高く評価したい。ふたたびこれ(核の被害)をくり返すのか、私たちに思い起こさせるうえで必要な運動だ。私たちは、前世代が生命と生きる希望を奪われた経験を忘れてはならない。そして、戦争のない社会だけが人類が繁栄する道であることを知るべきだ。(米国、28歳、女性)

 

 ▼この展示は戦争の恐怖、また私たち人間がどれだけ残酷な苦しみの原因を生み出すかということについて表現している。「悪」は民族や国といったものにではなく、それを「やる・やらない」といった個人の心の中にあると思う。この展示は平和へ向けたとても良い動機となるものだ。しかし、法律に関わっている人人が核兵器の恐ろしさを知らず、国や人人はいまだにそれに従っている。アメリカ、ロシア、中国、フランス、インド、イギリス、カナダ、そういった国国が核兵器廃絶を拒んでいる。(米国、25歳、男性、学生)

 

 ▼説得力があり、ここで何が起こったかを効果的に伝える展示だ。悲惨な結末であり、破壊的な出来事だ。この展示は続けなければならない重要な運動だと思う。なぜなら、多くの国国がまだ日本人の経験を学んでおらず、核開発に今でもかかわり続けているからだ。(英国、44歳、女性会社員)

 

 ▼日本人とアメリカ人のハーフとして、非常に複雑な心境になった。私はアメリカ側の歴史認識では見落とされがちな日本人の観点から、これまで大戦について勉強してきたが、教育的で衝撃的な内容の展示に感銘を受けた。この展示は原爆投下以前、以降の問題について公にするものだ。原水爆禁止の運動は必要。どんなに国際的な紛争があったとしても、原爆の悲劇は二度とくり返してはならない。(米国、23歳女性、大学生)

 

 ▼アメリカで育った私は、第2次世界大戦や原爆について学んだが、いざ原爆ドームを初めて見て、自分の感情をどう表現して良いか分からない。もし世界中のみなが広島を訪れれば、核戦争はなくなるだろう。なぜならそれにともなう死や破壊についてみなが学び、理解するからだ。この展示を見て私は日本の苦しみと、第2次世界大戦における日本の立場が分かった。地球上に戦争、核兵器はあるべきではない。私はヨーロッパ、南北アメリカ、アジアを訪れたが、そこに居る人人の違いは住む場所が違うということだけだ。アメリカ人が自分の息子を愛するように日本人も息子を愛している。しかし戦争になると人人はそのことを忘れてしまうのか。みな同じ人間なのに。(米国、22歳、学生)

 

 ▼人類の暗い部分の歴史について私たちに知らせてくれたことに感謝する。近代社会においてとくに若い世代は、これから終わりなき平和な時代を築き上げていくためにも第二次大戦の歴史についてよく学ばなければならない。世界平和のためにこの歴史を記憶しておくことがどれほど重要かを忘れてはならない。私たちは傷つけ合うことをやめなければならない。私たちが必要としているのは武器ではなく、1人の人類として平和に生き、今も、そしてこれからもお互いに愛し合うことだ。(42歳、男性、芸術家)

 

 ▼つい最近原爆資料館を訪れたばかりだが、この展示ではより原爆投下後の出来事について知ることができた。とくに読み込んだところは政治的に原爆投下を急いだことだ。それは政府の意見を人人に受け入れさせ、許されるための印象を人人に与えることが重要だった。広島に来る前、たしかに私自身、核兵器を持つべきだという自分が住む国(イギリス)の意見に対し曖昧な思いを持っていた。しかし、広島へ来て私の意見は変わった。破壊的権力のない世界をつくるべきだ。(英国、27歳男性、精神科医)

 

 ▼この場所で見た展示の写真や文章にとても感動し、泣きそうになった。この美しく平和的な公園でかつてもっとも最低で残虐な出来事が起きたことは想像しがたいが、広島で何が起こったのか、今日見たようなことを後世に伝えていくことが重要だと考える。私たちは何度でも歴史に学び続けなければならない。だが、受け入れがたいことに、この世界には過去の歴史から学習しない人人がいる。今も、世界中のいくつかの場所では戦争が続いている。戦争を止め、最後には平和を勝ちとるため、私たちは戦争に強く反対する行動を続けなければならない。(スウェーデン、33歳、女性)

 

 ▼ショッキングな写真や恐ろしい体験証言を目にし、非常に感動した。ここに来れば人人がどれほどの被害を受けたのかを知ることができる。パネルの英訳文が非常にわかりやすくてよかった。海外からの観光客にもよく知らせることができるすばらしい展示だ。原水爆禁止のためにたくさんの人人がたたかっていることはすばらしいことだと思うし、この活動を支持する。70年を経た現在、人人はこれらの兵器が恐ろしい物であると自覚するべきだ。(オランダ、20歳、男性)

 

【アジア】

 

 ▼この展示は、戦争がいかに悲惨であるかを私たちに教えている。そして、中国人の私にとっては、戦争における日本人の体験を知ることに非常に役に立つ展示だ。私はこの活動に賛同する。(中国、27歳、女性、大学院生)

 

 ▼この展示会を開いてくれてありがとう。戦争はとても残酷で非建設的なものだ。国のリーダーやより高い地位にいる人は(隠された議題や目的が何であっても)戦争による苦しみを体験していない。しかし、兵士やその関係者の家族たちは、戦争で最も苦しんだグループに属していた。私たちも同じ世界に住んでいる。どんなにあなたたちの視点から見る材料が不足していても…考える材料はあらゆる生活のなかに豊富にある。この展示は、経験的証拠をもって戦争の否定的な側面の本質を描き出しており、高い価値がある。とくに、日本兵士の大量の死と苦しみには涙を禁じ得ない。

 私はあらゆる爆弾に反対する運動を支持する。これは決して非創造的な行動ではない。すぐに結果を出すだけでなく、実現には時間を要するものだ。人間は破壊を拒む一定の潜在能力を持っている。私たちはともに協力して、愛と思いやりと善意とを結びつけ、積極的に建設し、間違った破壊行為を明確に拒否しなければいけない。(タイ、32歳、女性研究者)

 

 ▼これまで第2次大戦や日本に関するさまざまな場所や史跡などを訪問したが、日本についての情報はあまり得られなかった。この展示で新しく多くの情報、とくに日本人の視点からの情報を得ることができた。なぜ日本は真珠湾攻撃をしたのかについて知りたかったが、アメリカは石油封鎖をして日本を追い詰めて挑発し、戦争に踏み切らせた。イラクでもフセイン政権が大量破壊兵器を持っているといって攻撃したが実際は嘘だった。アフガニスタンへもビン・ラディンを口実にして侵略した。アメリカはいつもそういう手を使う。こうした展示は、英語を含めておこなわれるべきで、そうすれば私のような外国人もより真実を学ぶことができる。

 私はこの運動を強く支持するし、積極的に参加したい。世界の人人はこの歴史から学ばなければならない。そして、将来こうした悲劇が、世界のどこであれくり返されないようにすべきだ。この運動は各国の指導者に届くほど強力であってほしい。(ネパール、30代、男性医師)

 

 ▼戦争の原因、効果、苦しみについての真実が非常に啓蒙されている。原爆については映画や本を読んで知ってはいたが、標的になったのが軍需施設や軍人ではなく、民間人が暮らす市街地であったことを初めて知った。東京空襲でも軍需施設を避けて民間人が殺されている。私にとっては非常に衝撃的な事実だ。これまで日本がなぜアジアで残虐な侵略をくり返したのか不思議だった。実際に日本に来ると、日本人はとても優しくて親切で残虐性とは無縁に見える。この展示にもあるが、当時の日本人は志願して戦争に行ったのではなく、権力の命令によって戦場に連れて行かれたということがよくわかった。この運動は大胆で高度に洗練されたものであり、強く支持する。世界の人人は原子力政策に反対してともに立ち上がるべきだ!(ネパール、34歳、女性医師)

 

 ▼戦争は一番いけないものだとつくづく感じている。とくに、何の罪もない庶民が犠牲にさせられたことは悲しいことだ。もうこれ以上、美辞麗句をやめて本当の平和な世界がつくれるように1人1人ができることをやっていかなければいけない。(中国、42歳、男性教師)

 

 ▼私は第2次世界大戦前になにが起こったのかについて多くの情報を持っていなかった。今日、それについて知ることができた。この活動は、今日非常に重要な活動だ。私たちはインドからこの運動を支持する。(インド、26歳、男性)

 

 ▼とても悲しい。広島へ来る前、私は複雑な気持ちを持っていた。なぜなら中国人として、私たちは日本と中国との間の歴史について知っており、日本は中国に謝っていないことも知っていたからだ。しかし展示を見終わってみて、私は異なる側の歴史もあるということをはっきりと理解した。争いは終わりにして、みながお互いを尊重しあい、互いに平和的であることを願っている。(シンガポール、62歳、男性、退職)

 

 ▼第2次大戦を冷静な目で整理した展示であり、非常によくできている。なかには私が簡単には忘れられないような強烈な内容もあった。重要なトピックを扱った展示会に感謝する。この運動(原水爆禁止運動)よりも幅広く、より重要なものがあるだろうか? いくつかの国にとっては差し迫った緊急の課題でもある。このような邪悪な兵器を消滅させることは、早ければ早いほどよいと思う。(アジア圏、男性、学者)

 

英訳判冊子を読み始める人もいる(平和公園)

 

【オセアニア】

 

 ▼戦争を終わらせるために原子爆弾を使う必要はなかった。原爆のために苦しんでいる多くの一般人はつらい思いをしている。日本は一切戦争に参加しない方が良い。なぜなら戦争に対する多くの教訓があるはずだから。私は今後も戦争や原爆のような兵器を支持しない。みなが平和に暮らすべきであり、他国に対する過ちをくり返させてはならない。私は、原爆を排除する活動を支援する。そしてみなが原爆を使用した戦争から教訓を得ることを望む。(オーストラリア、61歳男性、教授)

 

 ▼展示はとても細かく描写してあり、とても悲しくなった。原爆投下は、峠三吉の詩にあるように、「人間であることを恥じるべき行為」だ。何度も休憩が必要だったし、涙が出た。初めて広島に来て、ここで起きたことを知り、悲観的で重たい気持ちになる。この題材をとり扱う限りは「楽しむ」なんてできない。しかし、多くのことを学んだ。展示をしてくれてありがとう。どんな国であろうと核兵器はあってはならない。人間はこのような「力」に頼ってはならない。人間の「闇」の黒さを見つめる力が、人間のもっとも残酷な部分を引き出すことができる。(ニュージーランド、25歳、男性)

 

 ▼誰でも戦争体験がどのようなものであったのかを知れば心が痛むものだが、第2次大戦の悲惨な経験をくぐり抜けた日本人を尊敬する。日本で第2次大戦を生き残ることの残酷さを表現したこの展示に自分ほど影響を受け、感情を動かされた者はいないかもしれない。広島・長崎だけではなく、世界中が戦争を経験したのだ。核兵器はどんな生き物にも使われてはならない。たった2発落とされただけで、日本では悲惨な、数知れない命を失ったのに、それでも核実験を続けるということは悲劇だと思う。世界は、この破壊的な力を自分たちへ向けて使ったことを忘れてはいけない。よいことなどなに一つないのだから。(オーストラリア、25歳、男性、小売業)

 

 ▼この展示を地球上に生きるすべての人人に見てもらいたい。永遠に続けてください。原水爆禁止運動は非常に重要であり、永遠に続けられなければならないものだ。(オーストラリア、68歳、男性科学者)

 

英訳判パネル冊子

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