いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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街頭演説の口喧嘩

 参院選は冷め切った空気のまま終盤戦に突入し数日後には投開票日を迎えようとしている。改憲の狙いをひた隠しにしながら「この道を力強く、前へ」などと叫んでいるのが自民党で、正々堂々と改憲を訴えない戦術は姑息極まりないものがある。しかし一方の野党勢力も「平和憲法を守りましょう」「殺し、殺されない国にしましょう」等の訴えがフワフワと宙に浮いた印象で、まるで真剣さや熱意が伝わってこない。七一年前の大戦がもたらした人人の苦難に根がなく、「平和」を脅かす者への怒りや切迫感に欠け、「平和」が上滑って、生ぬるく嘘臭いのである。従って双方が浮き上がってしまっている。
 右も左も聴衆を魅了するような引きつける力が乏しく、扇動していくような説得力がまるでないのが重要な特徴だ。統治の側にとっても、代理人となる政治家には大衆を欺瞞する力が求められるはずだ。ところが小泉純一郎、橋下徹にしても、昨今はメディアの力で劇場化して一時期は保っても、結局は欺瞞が暴露されて退場に追い込まれてきた。政治家自身の実力によって世論を動員するのではなく、メディアによって支えられてきた。それらと比較してもはるかに劣る安倍晋三が身振り手振りをひどくしたところで、程度が知れているのは仕方がない。終いには現役首相が街頭演説で「帰れ!」コールを浴びてムキになっていい返すような、幼稚な光景がくり広げられているのである。
 政治家は選挙で鍛えられる—という。有権者にみずからの政策や主張を正々堂々と訴え、いかに正しいかを情熱を込めて説得し、支持をお願いするというのが本来の姿だ。ところが、地盤、看板、鞄を引き継いだ七光りたちが苦労もなく当選する構造が出来上がり、国会にはぬるま湯育ちが増えてきた。鍛えられていないのである。選挙は有権者に選ばれるものではなく、メディアの劇場化に頼ったり、あるいは有権者が冷め切った状態を意図的につくり出し、寝た子を起こさない選挙にして議席を得たり、小選挙区制度で死に票を増やして一党が圧倒的な議席を獲得できるようにしたり、対立候補を誹謗中傷して叩きつぶしたり、別のテクニックだけが発達してしまった。そして、扇動する力を失った末に、街頭演説で口喧嘩まで始めるのである。
 既存の政党が色あせていくなかで、一方では渋谷ハチ公前に1万人を集めたりして山本太郎や三宅洋平の選挙フェスが話題になっている。政治家は選挙で鍛えられる– の言葉がピッタリと当てはまるような光景でもある。彼らが聴衆を魅了しているという以上に、他がだらしなさ過ぎる現実も映し出している。
                                            吉田充春

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