いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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「私、日本人で“なかった”」

 目をつぶってにっこりと白い歯を見せる若い女性の顔に日の丸らしきチークを施し、さらに背景に日の丸を配置して、「私日本人でよかった」「誇りを胸に日の丸を掲げよう」と記したポスターの存在が明るみに出て、いったい誰がこのような代物を作成して貼り出しているのかと物議を醸していた。他民族を侮蔑するヘイト(ひどく嫌う)スピーチ等等が社会問題になり、一方でテレビ番組には「ニッポン凄い」「ニッポン最高」が氾濫するなかで、昨今の日本会議の暗躍とも合わさって薄気味悪い印象を放っていたからだ。


 興味を抱いた人人の調べによって、このポスターは神社本庁が2011年に作成し、国旗掲揚運動の一環として配布したものだったことがわかったが、ここで世間を拍子抜けさせたのは、モデル女性が実は日本人ではなく中国人だったという疑惑が浮上したことだった。写真会社「ゲッティ イメージズ」が管理する写真素材そのもので、カメラマンLane Oatey氏が北京で撮影し「中国人」「20代」として登録した1枚3万5000円のものであると突き止めた者があらわれ、みなをズッコケさせた。こうなると「私日本人でよかった」は神社本庁の意図に反して「私日本人で“な”かった」になってしまい、物笑いの種にしかならない。制作会社が安上がりにつくり上げたのだろう。発注した神社本庁はあずかり知らぬことかも知れない。しかし、「愛国」とか「日本人凄い」とかを大上段に叫んでいる割には、厳密さが乏しくいい加減であることに驚かされる。彼らが日本人の美しい女性と思っていたモデルは中国人の美しい女性だったのだから――。


 風俗習慣や文化は違えど、どちらの民族が上でどちらが下であるとか、ことさら日本人が美しいとか凄いとかを吹き回る行為には品位の欠片もない。本来、美しいとか凄いとかの評価は自分たちでするものではなく、他者の評価に委ねるべきものだろう。自己愛が満たされず「僕って天才」「僕って偉い」と吹き回る残念な子どもと同じである。近隣諸国を卑下しなければ誇りが保てないような者の根底には、アメリカに物いえぬコンプレックスがあり、卑屈な者ほど他には狂暴なのだ。


 互いの違いを尊重して、平等互恵を基本に国際社会と切り結ぶことのできる社会でありたい。ヘイトスピーチが最たるものだが、中国人を「チャンコロ」といったり、朝鮮人を「チョン」などと侮蔑して、いったい何が満たされるのか? である。「上見て暮らすな下見て暮らせ」で、他民族を一方的にバカにして満たされる心ほど歪んだものはない。「私日本人でよかった」の裏側に込められたメッセージにそのことを思う。
                                          吉田充春

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