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募金に丸投げされる貧困対策

 安倍政府が子どもの貧困対策を強化するといって、首相官邸で国民運動の発起人会議を開き、子どもの支援を行うNPOなどを財政的に支援する「子供の未来応援基金」を創設し、寄付(1口1000円から)を呼びかけたことがニュースになった。まるで貧困に向きあっているような印象でメディアがヨイショしているのを見て、ちょっと待て! と思う。新三本の矢で「夢を紡ぐ子育て支援(出生率1・8)」を叫んでいたが、蓋を開けてみると募金で子どもたちの貧困対策にあたるというわけで、政府が恥ずかしげもなく「誰か救ってやって下さい」の無責任をやっているのである。
 基金は貧困家庭の子どもに対して学習支援や生活支援をおこなっているNPOや団体への助成金や、放課後や休日などにスポーツを教えているNPOや企業に支払われ、支援先は関係省庁と財団法人でつくる事務局が審査して決めるとしている。官僚の天下り組織をひねり出し、貧困対策を慈善事業化して担わせ、その原資は税金とは別に国民に委ねるというものだ。国家予算を投じることはまかりならないので、貧乏人に恵んでやれ! というのが本質である。
 貧しさ故に学業を断念せざるを得なかったり、かけ算九九もできないまま放置されていたり、給食を唯一の栄養源としている幼い子どもたちがいること、両親が働き詰めで夏休みにカップラーメンを持って公園で遊んでいる子どもがいること、かまってもらえず、満たされない愛情への欲求を暴れて表現する子どもが増えていることなど、首相お膝元の下関でも貧困を感じさせる実態を耳にすることが増えた。就学援助の受給率は山口県下でもダントツで、全国的に見ても指折りなのが下関だ。いかに親たちが貧しいかを反映している。この子どもたちの貧困は、親たちの貧困と切り離して慈善団体が勉強を教えたり、NPOがスポーツを教えて解決するような代物ではない。
 この間、大企業は構造改革など新自由主義政策の恩恵を被って内部留保を300兆円近く溜め込んできた。その利潤は労働者を搾取することによって積み上げたものだ。国内を搾取しすぎて貧困状態に追いやり、景気を悪化させながら、新たな市場を追い求めて海外に出ていき、その権益を守るために武力動員を求めるまでになった。しかも国民を貧困に追いやった側は、法人税減税の恩恵まで受けている。強欲な資本が社会に何ら還元しないから、みなが貧しくなっているのである。
 貧困対策なら、その原因をつくり出している強欲資本主義をどうにかしなければ何の対策にもならない。国家予算投入を拒んでいるのについても、安倍晋三が得意になって海外でばらまいてくるODA資金なり、東京五輪に注ぎ込んでいる無駄金を国民生活に回すなら、貧困対策のカネはいくらでもある。
                                            武蔵坊五郎

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