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イスラエル軍人の宿泊キャンセル依頼で解雇された元ホテル支配人 不当解雇は撤回、裁判は和解に 

(2026年6月10日付掲載)

ホテル「マテリアル」元支配人のジェロニモ・ゲレス氏(2024年)

 京都市東山区のホテル・マテリアルで2024年6月、ホテル支配人ジェロニモ・ゲレス氏が「ガザの虐殺という戦争犯罪に加担したくない」と考え、イスラエル国防軍関係者の宿泊予約をキャンセル依頼したところ、当時のホテル運営会社ルークスから解雇された【既報】。これについてゲレス氏が同年11月、運営会社を相手に、解雇は違法・無効であるとして、従業員としての地位確認などを求める訴えを京都地裁に起こしていたが、5月21日に和解が成立し、運営会社側が解雇を撤回、さかのぼって合意退職とし、和解金を支払うことになった。「国籍差別であり、解雇と謝罪を求める」という駐日イスラエル大使の主張は通らなかった。

 

◇     ◇

 

 ゲレス氏は、2020年1月から同ホテルの支配人として勤務していた。2023年10月からガザ地区で、イスラエルが子どもや女性を含む多数の民間人を虐殺する国際法違反の戦争犯罪をおこなっていることを目にし、それに加担したくない、ホテルがそれに加担するリスクを負うこともできないと考え、イスラエル国防軍関係者の宿泊予約に対してキャンセルを依頼し、24年6月13日、本人からも承諾を得た。

 

 ところが同日以降、グーグルマップでそのホテルに「反ユダヤ主義者」「人種差別主義者」などの悪意あるレビューが大量につき始めた。ゲレス氏やホテルのSNSアカウントには誹謗中傷のメッセージや、ゲレス氏や家族の殺害を予告するメッセージが届いた。

 

 そして、駐日イスラエル大使ギラッド・コーヘン氏から運営会社に、「国籍差別であり、支配人の解雇と謝罪を求める」という内容の書簡が届いた。これに追随して厚労省・京都市も運営会社に行政指導した。そのなかでゲレス氏は、運営会社から「今後は個人の信条を優先することなく勤務に当たること」などを記した誓約書を提出するよう求められた。

 

 翌日、ゲレス氏が「誓約書は提出しない」というと運営会社は業務命令を出し、10日間の出勤停止を命令。その後本社勤務の辞令が出るが、ゲレス氏が内容がまったくわからないので従えないというと、解雇された。

 

 ゲレス氏は24年11月、運営会社を提訴した。運営会社側は、誓約書拒否、業務命令拒否、辞令拒否で解雇やむなしと主張したが、ゲレス氏側は「誓約書は拒否しておらず、信条への言及が問題。業務命令は拒否していない。辞令は身分・労働条件・業務内容が示されておらず失当。よって解雇は不当」と訴えていた。

 

「世界の不正義に対し行動を」ジェロニモ・ゲレス氏

 

 和解成立後、ジェロニモ・ゲレス氏は本紙に次のような意見を寄せた。

 

 「和解が成立し、解雇が撤回され、円満に解決できてよかったと思います。しかし、私の裁判が終わったとしても、私の解雇の背景にあったイスラエルによる戦争犯罪とガザでのジェノサイドはまったく終わっていません。むしろイスラエルのジェノサイド的行為はレバノン、シリア、そして現在はイランにまで拡大しています。そしてイランの情勢は、日本にとっても重大な影響を及ぼしています。

 

 以前、私はよく“なぜ日本でガザのためにたたかい、イスラエルを批判するのか。私たちには関係ないだろう”といわれました。しかし私の答えはいつも同じでした。不正義は世界のどこで起きようと不正義であり、だからこそ行動しなければならない、と。そして、イスラエルは自ら止まることはありません。その行動が中東をこえて世界中の人々に影響を及ぼすのは時間の問題でした。

 

 結果的に、ガザでの軍事行動に直接関与している現役イスラエル兵の宿泊予約を受け入れなかった判断は正しかったと思います。もし各国政府がイスラエルとその好戦的な政策に対して毅然とした態度をとっていたなら、日本や世界の状況は今とはどれほど違っていたでしょうか。長周新聞の読者の皆さんであれば、日本が現在直面している石油供給をめぐる深刻な状況が、アメリカの支援を受けたイスラエルによるガザでのジェノサイドと深く結びついていることをご存じだと思います。もしメディアがガザで起きている21世紀でもっとも重大な犯罪の一つを十分に報道し、さらにイスラエル政府とアメリカ政府の行動が世界全体を不安定化させていることを伝えていたならば、事態はここまで深刻にならなかったのではないかと思います。

 

 私は、不正義に立ち向かわなければ、その不正義は成長し、増殖していくと考えています。ガザで起きたことがまさにそれです。そして、それこそが私が不当解雇された後、会社を相手どって訴訟を起こした理由でもあります。読者の皆さんに伝えたいことはシンプルです。不正義が拡大することを許さないでください。放置すれば、いずれその影響は誰のもとにも及ぶのです」

 

 同志社大学人文科学研究所研究員の役重善洋氏は、「解雇が撤回され、名誉回復がされたことはよかった。ただ、その後ゲストハウスWind Villa(京都市)でも同様の問題が起こっている。イスラエルのジェノサイドをいつまで不処罰のまま放置するのかというのは、世界的な問題だ。そしてジェノサイドという国際法違反は、すべての国が自国の裁判所でその犯罪を訴追・処罰できるという原則(普遍的管轄権)が適用され、日本政府にもその義務がある。しかし、政府がやるべきことをやっていないなかで、民間の心ある人がやむを得ず国際法にのっとってなんらかの行動をすることを迫られている。日本政府はその軍人が入国時にジェノサイドにかかわっているかどうかの調査をするなど、世界に対する義務を果たすべきだ」とのべている。

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