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肥大化した金融資本主義と貧困と格差をめぐる矛盾 年頭にあたってのご挨拶

(2026年1月1日付掲載)

 

 2026年の新年を迎えて、読者・支持者の皆様に謹んでご挨拶申し上げます。

 

◇      ◇

 

 肥大化した金融資本主義の有り様を映し出すように、NYダウはトランプの金融規制緩和とも相まって史上最高値を更新し続け、日経平均もまた史上最高値の5万円をこえるなど、金融市場だけは空前の株高で浮き足立っています。リーマン・ショック時の日経平均がおよそ7000円余りまで急落していたのから比較すると、その後いかに息を吹き返して膨大なマネーが集積し、市場規模が膨れあがっているのかがわかります。

 

 インフレがひどい世間一般の暮らしとはかけ離れたところで、実は社会の上澄みにはカネが有り余っており、投機が史上例がないほどに活況を呈しているのです。リーマン・ショック時期に「強欲資本主義」と名付けられ、はじけて吹き飛んだはずの金融資本主義の風船が、その後の各国中央銀行による資金注入によってさらに膨れあがり、一握りの富裕層や資本家はマネーゲームによってますます資産を増大させ、持たざる者はますます貧しくなる――。カネ余りの一方でインフレや不況、格差と貧困が深刻化する歪(いびつ)な世界の現実があります。

 

 リーマン・ショックでわかったことは、アメリカのウォール街を中心とした金融資本主義があまりにも肥大化していることでした。直接にはサブプライムローンという住宅ローンの破綻に端を発しましたが、金融工学なるものを用いて株・債券などあらゆるものを金融派生型商品としてヘッジファンドやサブプライムローンなどが生み出され、それが複雑に組み合わさってグローバルに世界市場で売りさばかれ、いかさまのようなマネーゲームがたけなわになっていたことでした。

 

 それは貿易赤字から抜け出せないアメリカが、90年代にかけてITを中心とした金融立国戦略に舵を切り、金融派生型商品を広く世界で売りさばくことで流出したドルを回収しようという政策の結果でもありました。世界中に構造改革を迫り、グローバル化を唱えて国境の壁をとり払っていったのも、とどのつまり資本が国境をこえて自由に移動するため、すなわちグローバル金融市場を創出するためにほかなりませんでした。

 

 前述した株価を見てもわかるように、今日の金融資本主義ははじけてなお焼け太りしているのが実態です。では、なぜ破綻したはずの金融市場・マネーゲームが再び復活し、人々は貧困に喘いでいるなかでこれほどまでに肥大化しているのでしょうか?

 

 最大の要因は、リーマン・ショックを受けてこれを大恐慌にしないために、アメリカでは中央銀行が大規模な量的緩和をして市場に資金を供給し、EUにおいても中央銀行が大規模緩和を実施して銀行の国有化に相当額のユーロを注ぎ込むなど、資本主義の歴史上も例のない禁じ手に打って出たからにほかなりません。日本でも黒田日銀が「大胆な異次元量的緩和」などといってアベノミクスで金融市場にカネをばらまきました(おかげで急激な円安と物価高に見舞われています)が、通貨価値の安定のために設立されたはずの中央銀行が、景気対策の主人公として躍り出て打ち出の小槌を振り回してお札を刷り散らかす――その資金によって金融資本主義がますます肥大化していくというカラクリでした。

 

 世間一般には一滴として滴り落ちてもきやしないカネが、マネーゲームの原資として費やされ、金融寡頭資本に吸い上げられる。数年前のコロナ禍という前代未聞の経済停滞に際しても、各国中央銀行によってリーマン・ショック後を凌駕するほどの膨大な資金が注ぎ込まれ、今日に至る実体経済とは裏腹な「好景気」をひねり出してきました。これはある意味で、滞在的成長力を喪失した資本主義の混迷と腐朽衰退、切羽詰まった現在地を浮き彫りにしているともいえます。資本主義体制が一周して、もはや生産性の向上など望むべくもなく、供給過剰と需要不足がどうにもならず、社会や実体経済と切り離れた雲の上でカネだけがグルグル増殖しているというものです。ブラックロックなどの巨大金融資本だけがより巨大化して富を握りしめ、社会全体を豊かにするために資本が循環しないという矛盾です。

 

◇      ◇

 

 1800年代初頭の産業革命からおよそ200年が経過しました。資本主義の成り立ちを振り返ってみると、蒸気機関や鉄道、電気が発明され、電話が生まれ、自動車が作られ、飛行機も発明され、まだまだ発展の余地が無限に残されていた創生期、欧米の国々は未開拓の世界を植民地としながら安い資源を手に入れ、工業を発達させ、銀行や株式といった仕組みも登場し、資本主義社会は急成長を遂げていきました。封建制を打ち倒して産声を上げた初期は、新しいものをうみだして生産し、消費し、再生産して次々と技術革新を成し遂げ、賃労働と資本という新たな社会の矛盾を形勢しながらも、まだ伸びしろがある創造的な世界だったでしょう。

 

 しかし、100年ほどたった1920年代には過剰生産危機という資本主義の不治の病に見舞われて植民地争奪の第一次世界大戦となり、1929年の世界恐慌を迎えました。この危機を第二次大戦による世界のスクラップ化、破壊によって巨大な復興需要を創出することで乗り切り、戦後しばらくは「相対的安定期」「黄金期」などといわれる時代が生み出されました。資本主義の危機を戦争という破滅的な手段に訴えて打開したのです。そして、唯一戦場になることがなかったアメリカが戦後は二極構造の片側のトップに君臨することとなりました。

 

 ところが資本主義世界の覇権国家だったアメリカも60年代にはベトナム戦争によるドル垂れ流しなどで財政赤字が拡大し、71年には金ドル交換停止の「ニクソン・ショック」となってドルの裏付けとなる金がないことが明らかとなり、ブレトンウッズ体制の破綻が露呈します。そこで80年代からやってきたのが、「市場原理主義」「新自由主義」と称する「グローバリズム」というものでした。巨大な双子の赤字を抱え、ものづくりによって経済的優位性がとれないならば、ITと金融によって世界からカネを回収するという戦略であり、それは今日につながる金融工学やマネーゲームのはじまりでした。結局のところ、資本主義につきものの過剰生産危機の元で資本主義社会としての伸びしろや滞在的成長力を失い、有り余った資金によるイカサマバクチの投機と略奪経済を広げるというものにほかなりませんでした。一連の金融立国戦略のもとで反社会的な金融の論理で産業が支配され、人間性も社会性も無視した大競争が強いられ、奴隷的労働、飢餓人口、貧困人口が世界中で増大してきたのが実態です。

 

 先進国ではアメリカに限らず中産階級が没落し、貧乏になっていくために消費需要がなく、買い手がいないため、資金需要がほとんど動かないか停滞しているというのが共通の現象としてあらわれています。トランプは一方では自由貿易に反して高関税を各国に課し、今になって投資を呼び込んでアメリカ国内の製造業の復活を唱えていますが、先進国といわれる資本主義国ほどどうしようもないまでに格差と貧困が拡大し、置き去りにされた圧倒的多数の人々のなかで、人間が暮らしていける世の中にせよ! まともな社会にせよ! という要求が高まっています。資本主義の総本山たるアメリカでこそその矛盾が激化しており、為政者をして無視できないまでに激突しているのです。

 

 日本政府から巻き上げる80兆円の対米投資というのも、そのカネで米国内で雇用を創出させ、米国民を養えというものにほかなりません。新自由主義、市場原理をやりまくった挙げ句、足が絡まっているのがアメリカであり、それは覇権国家からの転落過程を映し出すものです。アメリカ国内でかつてなく大衆運動が高揚していることは日本のメディアでは触れられませんが、トランプの再登板と暴走の裏側で、資本主義を乗りこえた次の社会の到来を求める機運が強まっているのです。

 

◇      ◇

 

 資本主義各国が没落していく一方で、世界では皮肉にも「資本主義の次男坊」たる国々が台頭し、グローバルサウスを中心にしてドル基軸通貨体制からの離脱を目指す動きも出てきました。やりたい放題だったアメリカ一極支配の束縛から切り離れて、独自に通貨で貿易関係を切り結び、新しい世界を構築していこうというものです。こうして米国と中国という二つの大国による覇権争いが繰り広げられながら世界情勢は動いており、米国追従一辺倒できた日本はどのような立場で世界と切り結んでいくのかが問われています。

 

 前段から見てきたように、異様なる金融資本主義のもとでは、世界的規模でいっそう貧富の差が拡大することをこの数十年来の経験は教えています。それは、このような金融投機資本の支配のもとでは世界が成り立たないことをあらわしています。「インフレ下の株高不況」とは、すなわち富の偏在をあらわすものです。こうした行き詰まった金融資本主義の現在地を認識したうえで、世界的規模でアフター・キャピタリズム(資本主義後)を考えていくことが求められています。それは収奪者が収奪されなければ世界中の人々は暮らしがままならないという矛盾であり、有り余ったカネによって世界を今よりももっと豊かで平和なものにしていく以外にないことを教えています。

 

 社会を生産活動によって動かし、支えている側が主人公となる世界の実現に向けて、長周新聞は2026年の新聞作成に挑んでいく決意です。

 

2026年元日

長周新聞社      

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