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姥に鞭打つ社会

 敬老の日にあわせて総務省が65歳以上の高齢者の推計人口を発表した。高齢者は3619万人となり、総人口に占める割合は29・4%と過去最高を更新。高齢者の就業者数も930万人と21年連続で増加して4人のうち1人が働いており、全就業者(15歳以上)の7人に1人が高齢者という実態が浮き彫りになった。世界でも群を抜く少子高齢化社会に直面しており、これらの高齢者たちが老後を悠々自適に過ごせるわけでもなく、老いてなお働き続けなければ食べていけない構造のなかに置かれていることをあらわした。年金が少ない一方で物価だけは高騰して生活がままならず、老体に鞭打って働き続けなければならない人がいかに多いかである。ご隠居暮らしなどとはほど遠い、姥捨て社会というか、姥に鞭打つ社会の現実である。

 

 確かに20~30年前の60歳と比較して、昨今の60歳は「還暦」といわれてもピンとこないほど若い人が多いのも事実である。戦後からこの方、食料事情も変化して栄養に満たされているのも影響してか、赤いチャンチャンコなんて用意したら怒られそうなほど若々しい人だって少なくない。そんな元気いっぱいの60代が「オレはまだ働ける!」「わたしもまだまだ現役よ!」と生きがいを感じて働いているのはそれでいい。むしろ社会とのつながりを持てて、精神的にも健康的にもいいと思う。バスや電車で席を譲られてご立腹するくらいの方がかっこいい。

 

 一方で、80歳近いのではないかと思うようなご高齢の方がコンビニのレジ打ちを任されてまごついていたりするのを見ると、老後の安心がどうして担保されないのかと思うこともしばしばである。どの職場でも、結構な年齢の方が働いていたりするのだ。そうして、やれ製造工場の火災で80代のパート労働者の女性たちが逃げ遅れて亡くなった等々のニュースを聞くと、どうして80代になってまで働き続けなければならないのか…と思うばかりである。工務店の手伝いに出ている知り合いのお爺さん曰く、腕がある間は技術でもって稼ぐのだという自負もある一方で「月6万の年金じゃ、母ちゃんの分を合わせたって生活できんだろ」「コメまでバカみたいに高くなって…」とぼやくのだった。職人不足で高齢者であっても腕が確かなら引っ張りだこという側面もあるが、やはり根本には少なすぎる年金では生活ができないという事情があるのだ。

 

 いまや生活保護の受給者は多くが高齢者であり、雀の涙ほどの年金では生きていくことができないため受給に至るケースが大半という。だれがどう見ても年金制度が破綻しているからにほかならない。結局のところ生活保護制度で高齢者を抱えていくというなら、その老後を年金財源でまかなうか、生活保護費でまかなうかという出所の違いでしかない。

 

 どの道、国が保障しなければならない以上、破綻した年金制度の見直しと合わせて、国をして高齢者の老後を支えるための制度設計について、抜本的に手直しすることが必要になっているといえる。そうではなく、労働力の流動化政策とあいまって、人手不足の折に外国人技能実習生と並んで高齢者を低賃金・単純労働に駆り出すというのは鬼畜の所行である。意図的に死ぬまで働き続けなければならない状態に囲い込んでいくというのなら、「福祉国家」の看板は下ろすべきである。

 

 戦後のベビーブーム時期に生まれた団塊の世代がもうじき80歳を迎えようかという今日この頃、一方では「8050」問題(80代の親が50代の子どもの生活を支える)なども社会問題になり、「こんなはずじゃなかった…」時代が到来している。本来ならば団塊ジュニアの世代で再びベビーブームが到来しておかしくなかったのに、彼らが社会人として巣立つタイミングは就職氷河期や非正規雇用が蔓延しはじめた時期と重なり、労働政策の結果としてこうしたロストジェネレーション世代は結婚や子育てがままならない状態を余儀なくされた。そこからの少子高齢化であり、なんらの手立ても打たなかったために昨今のような現状を招いているのである。

 

 2050年に向けてますます少子高齢化は深刻なものになるといわれている。わかっているのなら早急に手を打つ。それ以外に国力を維持していく方策はない。現状を追認して数十年後も「就業者の4人に1人は高齢者です」「総人口の50%が高齢者です」等々と驚いているだけ――というのでは能ナシである。

 

武蔵坊五郎                 

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