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「畜産危機打開へ緊急支援を!」 子牛、豚、鶏も引き連れ…全国の畜産農家が農水省前で訴え 国は食料生産現場を守れ

 全国的に農畜産業の苦境が増すなかで、農民運動全国連絡会(農民連)と国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)は11月30日、東京霞ヶ関の農水省前で「11・30畜産危機突破緊急中央行動」を開催し、全国各地の農家が参加した。畜産業界では今、配合飼料や輸入乾牧草などの飼料高騰をはじめ、電気代や燃料費など生産資材が値上がりしている。一方で農畜産物価格は上昇せず、生産者の赤字や借金は膨らみ、経営が圧迫され続けている。かつてない畜産危機を打開するために、農水省前には北海道から九州までの酪農・肥育・養豚・養鶏農家に加え、子牛や豚、鶏も集まった。また、会場に来られない多くの農家もオンラインで参加し、怒りのスピーチをおこなった。東京大学大学院の鈴木宣弘教授もビデオメッセージを寄せた。また、緊急行動の後には、畜産農家の要求を記した政府への第三次「緊急要望書」提出もおこなった。

 

農水省前でおこなれた畜産危機突破緊急行動(11月30日)

 最初に挨拶した農民連の長谷川敏郎会長は以下のように訴えた。

 

 今日本の畜産は最大の危機に瀕している。この状況が続けば産業としての崩壊が始まる。まさに今が正念場だ。国民のみなさんにとっても国産の牛乳や牛肉、豚肉、卵が食べられなくなる重大な事態だ。
 私たちは畜産農家を訪問し、10月には野村農水大臣宛の緊急要望書、いわば現代版の直訴状を直接大臣に手渡した。さらに第2次分300人、今日は第3回目でのべ900人をこえる農家の声を届ける。
 今私たちが求めているのは農家への緊急支援だ。畜産は生き物を飼う産業で毎日のエサ代は欠かせない。だが今回の補正予算は、「牛乳が余っているから1頭15万円の補助金を出す代わりに親牛を処分せよ」というものだ。政府は「クラスター事業」で農家に対し「外国のエサは安いから規模拡大せよ」と煽動しておきながら、今度は見殺しにするのか。エサ代はコロナ前から1・5倍になり、生産者負担の増加分は全国で4000億円ともいわれている。しかし政府は800億円の補助しかせず、残りはすべて畜産農家に押しつけている。
 エサの高騰は農家の自己責任ではない。EUは乳価を55%も引き上げ、アメリカも34%引き上げている。再生産可能な価格政策は政府の責任ではないか。従来の対策の延長ではまったく不十分だ。このままでは農家は年を越せない。
 12月22日には第四次の提出行動を計画している。消費者のみなさんと力を合わせ、日本から畜産の火を消さないために頑張ろう。

 

 続いて、東京大学大学院の鈴木宣弘教授が、以下のような動画メッセージを寄せた。

 

*          *

 

 日本の酪農家たちは本当に厳しい状況にある。一昨年に比べて肥料も飼料も価格が2倍、燃料費も3割高と、コストはどんどん上がっている。しかし在庫が多いから価格転嫁できないといって、コメも牛乳も売値がまったく上がらず赤字ばかりが膨らんでいる。このまま放置していたら半年で半分以上の酪農家がやめてしまうかもしれない大変な状況だ。


 そこに追い打ちをかけているのが、「副産物収入の激減」だ。大きな肥育農家が575億円もの負債を抱えて倒産してしまったため、子牛が売れなくなってしまった。夜も寝ずに一生懸命ミルクを与えて育てた子牛が、売れずに殺されてしまう状況になっている。酪農家は精神的にも耐えられなくなり追い込まれている。


 さらに、これ以上生乳を絞っても受け入れないという強制的な減産計画も加わってきている。「乳製品の在庫が多いから減らすしかない」といわれ、昨年北海道の酪農家だけでも100億円規模の負担を強いられている。潰れそうになっている酪農家に対して、乳製品在庫1㌔当り2円70銭などという負担を強いてさらなる追い打ちをかけている。


 そもそも脱脂粉乳が余っているというのに、日本は世界に冠たる膨大な乳製品輸入枠をもうけており、これを「最低輸入義務」だといってやめずに輸入し続けている。しかしこれはあくまで「低関税で輸入すべき枠」としか決まっていない。それでもアメリカにいわれたからといって、コメも乳製品も輸入を続けている。これさえやめれば在庫は一掃されて事態は一気に改善するのにやめない。しかも、今はコメも乳製品も海外の価格の方が高くなってきている。日本に良い物があるのに、それを使わないでわざわざアメリカなどから高く買い、捌けないからそれをエサにして使ったりしている。こんな理不尽なことがあるだろうか。


 普通の国ならコスト高で赤字が生じたら、まず政府は最低限の赤字補填をするが、日本にはない。きちんと他の国のように補填をすべきだ。他の国はこのような事態ではまず、政府が需給の最終調整弁を持っており、穀物も乳製品も買い上げる。そして国内の困っている消費者を助け、外国の困っている人たちも援助する。こうした政策をどの国も持っている。日本だけがそれをやめてしまった。


 そもそも、乳が余っている状況を酪農家の責任のようにいうが、元を正せば「バターが足りない」などと大騒ぎし、生産者に対して国に借金までさせて牛も施設も2倍に増やさせ、どんどん増産するよう国が誘導した。それでいて在庫が増えたから「牛乳を搾るな」「牛を殺せ」という。


 すでに今、有事に突入している。もうすぐ世界の乳製品需給がひっ迫して日本に物が入ってこなくなるかも知れない。そんなときに牛を殺してどうするのか。種付けから乳を搾れるようになるまで3年はかかる。目先の在庫減らしなどの近視眼的な政策によって、これまで何度需給の過剰とひっ迫をくり返してきたのか。日本の政府が他の国のように需給の最終調整弁を持ち、しっかりと生産物を買い上げて国内外の援助に回せば、国内の食料危機も回避できるし国際的にも貢献できる。なぜこのような積極的な政策に財政出動ができないのか。


 国内の農家が本当に潰れそうになっており、自ら命を絶つ酪農家が後を絶たない。政府がなんのためにあるのか考えないといけない。国内の消費者も小売業界もメーカーも、考えないといけない。輸入依存をやめ、国産を使い、国産を食べるように行動しよう。今ここで国内の酪農家が急速な勢いで潰れていけば、供給できる牛乳がなくなる。台湾有事のようなことがいつ起こるかわからないなかで、本当に物が海外から入ってこなくなる。食べるものがなくなる。国民の餓死が現実に迫っている。


 コメは1万2000円だったところから9000円まで値下がりしているが、主食米に対して値下がりの全差額分を支払ったとしても、3500億円だ。全酪農家に牛乳1㌔当り10円、牛1頭当り10万円払ったとしても750億円。食料こそ命を守るための「安全保障の要」だ。食料生産には数兆円かけてでも、国民の命を守るためには絶対に必要だ。


 超党派で「食料安全保障推進法」のようなものを立法する必要がある。縛りを打破して、即刻農林水産業に投入しなければ、今の危機は乗り切れない。「お金を出せば輸入できる」ことを前提にした食料安全保障などもう通用しない。不測の事態に国民の命を守ることが安全保障だ。F35購入費だけで6・6兆円かけ、「防衛費を2倍に」などという前に、食料にこそ財源を投入しなければならない。これが国民の命を守る唯一の道だ。いざというときに食料がなくなっても、オスプレイやF35をかじることはできない。

 

畜産農家らの怒りの声 牛乳が消える事態も

 

 続いて、実際に生産現場に携わる全国の酪農家や和牛農家、養豚家、養鶏農家、獣医師などが現場に駆けつけ、畜産現場が直面している窮状を報告し、農水省に対する意見を訴えた。以下、各氏によるスピーチの要旨を紹介する。

 

 「安全・安心な国産牛乳を生産する会」の酪農家男性(千葉市)は以下のように訴えた。

 

*        *

 

 野村大臣、農水省の方々、今日は「酪農やばいです」と伝えに来た。最近、酪農業界の大変さをテレビやネット、国会でとりあげてくれているが、これはほとんど本当のことだ。しかし、厳密にいうと少しだけ違う。それは、「今日もまた赤字が増えている」ということだ。私たちは毎日生産現場の最前線で赤字を増やして牛乳を生産しているので、何日か前のニュースは過去のことだ。北海道で乳牛を1000頭飼っている大牧場の社長が「年間1億円の赤字だ」といっていた。近所の家族経営の酪農家は一昨日、「エサ代の支払いが480万円だ。また借り入れしないと」といっていた。私の農場では、夏の電気代と燃料代がとんでもなく高くなり、来月の運転資金と合わせて200万円借り入れした。

 

 1日また1日と悪化している。年を無事にこせない酪農家がほとんどだ。クリスマスも金を借りないといけない。餅代のためにも金を借りないといけない。いつ返せるか分からない借金を増やし続けながら、365日毎日休みなく牛乳を搾っている。「辞めればいいじゃないか」と聞こえそうだが、辞められない。国の「増産せよ」の号令に従って牛舎を建てたり機械を買ったりしているから、辞めて返せるような金額ではない。こんな状態が半年以上続いている。それでも「いつか底が来るだろう」「いつか乳がしっかり上がるだろう」「子牛や生乳の相場も戻るだろう」と淡い期待を持っていたが、ゆっくりと時間をかけてわかった。希望が見えません。

 

 来年3月からの早期リタイアとか「焼け石に水」の対策金など、まったく当てにならない。この冬さえこせないのに、来年自給飼料を作るなんて考えられない。チーズを作ろうといわれても、設備投資もできない。需給ギャップがどうのこうのといっても、今日の生活さえもままならない。それでも、牛はエサをくれといってくるし、乳を搾ってくれといってくる。生きているんだ。モノではないんだ。私はボロもうけしたいのではなく、ただ牛を飼って普通にご飯が食べたい。それさえもできなくなり、限界がきている。酪農はヤバイです。

 

 私が思うに、11月に乳価が値上げされても経営苦への効果がなく、年内で諦めて年始から廃業に向かう酪農家が大量に出る。残りは3月まで待ってから、「早期リタイア」を使って廃業を考える人も増えるだろう。今後継続できる牧場は1割にも満たないと思う。断言する。このまま1年経てば、需給ギャップは解消されるどころか足りなくなる。スーパーの棚から牛乳がなくなる。毎日の食卓から、学校給食からも、牛乳が消える。「物価の優等生」のあだ名も返上だ。

 

 牧場がこれだけ潰れたら、当然ながら関係する業者も壊滅する。牧場の従業員、獣医さん、エサ屋さん、機械屋さん、酪農ヘルパー、酪農協の職員、県酪連の職員、指定団体の職員、クーラーステーションの職員、集乳車のドライバー、動物用の薬屋さん、牛の種屋さん、削蹄師さん、検定員さん、コントラクター、農業高校畜産部の方々、乳業メーカー、酪農教育ファームの方々など…私は今いったすべての人たちの顔を知っている。この人たちに私は謝ることしかできない。みんな仕事を失う。もう一度いう。酪農やばいです。壊滅の危機だ。野村大臣には今すぐに現場を救ってほしい。でなければ、酪農の火を消した大臣として歴史に名を残すことになる。「検討する」ではなく、今すぐに現場にお金を落とす対応をとってください。

 

 そして消費者のみなさん、国産畜産物の値上がりにご理解いただき、ありがたい。みなさまの家計の苦しさは、私たちも同じです。それでも国民の食卓を守るため、また年末年始の牛乳廃棄問題を回避すべく、引き続き消費拡大をよろしくお願いします。

 

*         *

 

 千葉県北部酪農協同組合の橋憲二組合長は、「私は約35年間酪農をやっているが、現状はかつてなく厳しい。生きていくうえでもっとも大切な“食料生産”という仕事に誇りを持ってやってきたが、経営が成り立たず、借金を増やしながら酪農をやっていると我慢の限界をこえてばかばかしくなってくる」「今の段階では緊急支援をお願いするしかないが、緊急支援では抜本的な改善にはならない。食料安全保障を前面に打ち出した新しい仕組みを考えなければならない。生産コストに見合った価格で販売されないのはおかしい。一般企業は資材が高騰するたびに年に何回も値上げできるが、私たち農民は需給バランスだけで価格が決まる市場原理の下で、コスト上昇分を価格に転嫁できていない。今のままでは生活できないので、農家に対する直接保障や、生産物に対してコストに見合った契約による取引ができるように変えていく必要がある」と訴えた。そして最後に、「これまでずっと“持続可能な畜産”といわれてきたが、現状は持続可能どころか数カ月ももたない状況が続いている。緊急支援に加え、長期的な視点から私たち農家が安心して生活していける仕組みをみんなで考えていきたい」と語った。

 

 群馬県養豚協会副会長の上原正氏は、飼料代の高騰や養豚業界をとり巻く豚熱被害とその対応などの問題について、以下のようにのべた。

 

*       *

 

 2008年に起きた「平成の畜産危機」でも配合飼料価格が高騰し、多くの畜産農家が危機的な状況に追い込まれた。ただそのときは1年間で配合飼料価格が元に戻り、なんとか生き延びることができた。しかしまた2年前から飼料価格が高騰し、「令和の畜産危機」が起きている。うちの農場では、配合飼料価格が1㌧当り4万円だったものが8万円と2倍にまで値上がりしている。規模が小さい農家では、5万円が10万円になっている。豚1頭当りのエサ代は1万5000円~3万円と、販売価格に近いところまで負担が増えている。

 

 昨年は配合飼料安定基金からの補填があり、なんとか黒字で税金を払うことができた。しかし今年はほとんどの畜産農家が赤字といわれている。来年1月以降もさらなる値上げが予定されており、1㌧当り4000~5000円も上がるのではないかという報道もある。すでに配合飼料安定基金も枯渇している。全農系は全額支払われているが、メーカーからの補填は4分の1ずつ分割という形で全額支給されていない。

 

 私がいる群馬県では、70歳をこえ後継者もいないため、今のうちに廃業しようという農家が増えている。借金もなく、無事に廃業できることは「ハッピーリタイア」と呼ばれている。倒産に追い込まれる前に辞めることができる養豚農家はとても幸せだ。なかには豚熱に感染し、飼料価格高騰により農場の再開を諦めた農家もいる。さらに、M&Aで食品卸売会社に経営を売却する養豚家も出てきている。一方で、銀行から借金をして規模拡大した農家は、辞めるに辞められず困っている。

 

 配合飼料安定基金制度はすでに破綻している。また、赤字になった場合に対応する豚の経営安定交付金・「豚マルキン制度」も、飼料代から安定基金による補填金を差し引いて計算されるため、いまだに発動されていない。

 

 豚熱は4年前に岐阜県で発生して以来、1年かかってようやくワクチンが打てるようになった。ただ、ワクチンを打つ獣医が足りないということで日本養豚協会をはじめ、各県の養豚協会、農民連などが数年間で十数回の農水省交渉をおこなった。その結果、「追加接種」という形で2回目の接種が打てるようになった。また、万が一九州や北海道に豚熱が広がった場合のワクチンの打ち手を確保するために、生産者が打つことも可能になった。私たちが要求すれば実現することは可能だ。 

 

来年の営農計画立たず 行詰まる資金繰り

 

 長野県で獣医師をしている片桐勝則氏は「私は標高1300㍍、人口よりも多い3200頭の乳牛と、300頭の和牛がいる南牧村で約40年獣医をしている。今年になり、33軒ある酪農家のうち3軒が搾乳をやめた。こうした切実な危機感を持ったなかで、村内すべての酪農家のみなさんが、今回農水省に提出する要望書に思いを記してくれ、それを私が預かってきた。自民党の農家もいれば共産党の農家もいるが、党派をこえて“この切実な思いを農水省に伝えてくれ”と託されて私がここに立っている」「“水よりも安い”といわれる牛乳を、どれだけの酪農家が苦労して生産し、その生産のために私たち獣医師も含めた多くの人たちが関わっているということをぜひ消費者のみなさんにも知ってもらい、消費者と生産者が手をとり合って畜産危機を乗りこえたい。この間、BSEやO-157、口蹄疫といった困難を乗りこえてきたのが酪農・畜産業だ」とのべた。

 

 その他にも生産者からの発言があいつぎ、切実な現場の窮状を訴えた。

 

 「酪農地域では今、牛の生産抑制がおこなわれている。収入を増やしたくても、乳を搾ることができない。今年は天候が悪かったため、牧草の収穫が前年度よりも少ない。さらに配合飼料などの穀物の価格高騰、電気代・資材の高騰、子牛の価格が暴落し買い手が付かず、農家に戻ってくる。農家はその子牛を安楽死させるしかない。飲料乳価は11月から1㌔当り10円値上がりすることになるが、加工向けが多い北海道では、積み上がった加工原料乳の在庫処理のため、生産者が1㌔当り2~3円を拠出している。実質的には赤字が増えるばかりで、一農家では対策が不可能だ。政府の今の対策では危機を救えない。畜産危機を打開するための緊急対策を本当にもっとよく考えてほしい。そうでなければ来年の営農計画が立たない。消費税負担も大きい。インボイス制度も中止しなければならない。このままでは収入1000万円以下の農家は生きていけなくなる」(北海道・酪農家)

 

 「父や祖父などが代々受け継いできたこの生活がなくなると思うと本当に悲しい。農水省は農業に携わる者として農家を一軒一軒回って話を聞いてほしい。私たち世代は将来に向けてやる気は十二分にある。それを国が支援してくれるよう求めていきたい。日本の成長は食料なしに実現できない。日本の命を守る農業という仕事に携わるたくさんの人の声を聞いてほしい」(宮崎県・肥育農家)

 

 「養鶏農家でもエサが値上がりしてとても大変だ。うちでは購入飼料と自給飼料米、トウモロコシ、大豆、麦も自前で作って与えている。私たちが育てている牛、豚、鶏、野菜などはすべて大事な食料だ。食料を守るのが日本政府の役割だ。食料供給のために欠かすことのできない飼料が高騰して困っている農家に対し、政府は国民の食料を守るという立場から考えてほしい。消費者も一緒に安心安全な国産の食料を食べて生活してほしい」(埼玉県・鶏卵農家)

 

 島根県酪農協議会の西谷悟郎会長は、日に日に資金繰りが困難になる生産現場の実情について、以下のようにのべた。

 

 私は酪農家の2代目だ。少数の酪農家たちが集まって一緒に小さな酪農組合をやっているが、今までにこれほど厳しい状況はなかった。もう組合による農家の立て替え払いができなくなり、一昨日組合のメインバンクであるJAしまねに金融支援を要請して、とりあえず3000万円借り入れた。その資金もあと3カ月間農家の建て替え払いに充てたらなくなってしまう。毎日毎日仕事をして、精算日には金を持ってこいというような今の状況下で仕事を続けていけるわけがない。行政は金融機関に対して農家への積極的な融資を呼びかけるが、今赤字が増え続けているのに、そのお金はいつ、誰が返すのか。農家経営を預かる農水省は農家の保護者だ。保護者がこの状況を投げるのなら、保護責任者遺棄致死だ。畜産危機というが、これはまぎれもなく「食料危機の始まり」だ。中小の家族経営が成り立つような経営環境を国が作らない限り、この国の農業は寂れてしまう。今やらなければとり返しがつかなくなる。もっと食料を守るための農水省であってほしい。

 

政府に直接要望書提出 今後も取組を継続

 

 緊急行動の後に、政府に対して畜産農家が抱えている意見を届ける「畜産経営を継続するための緊急要望書」の第三次分の提出をおこなった。

 

 要望書では、「私たち畜産農家・業者は、国民に畜産物を安定供給するため、日々、家畜の世話に汗をかき、農業生産に懸命にとりくみ、食糧供給と地域経済を支えています。しかし今般の飼料、燃料、資材、農業機械などの生産コストの高騰により、私たちは今、かつて経験したことのない深刻な経営危機に直面しています。このままでは経営を継続することは困難です」とし、以下の項目について、国に緊急対策を求めた。

 

 一、飼料をはじめとした生産コストの高騰は、コロナ禍や世界的な異常気象、円安、海上輸送費の高騰などが原因です。現行の配合飼料価格安定制度では価格高騰分の一部しか補てんされないため、経営を維持できません。政府は、畜産危機を打開するため、従来の枠組にとらわれない抜本的な対策を行い、コスト上昇分を全額、補てんしてください。

 

 一、畜産経営を維持するため、コスト上昇分を価格に転嫁できるよう、国は責任を持ってメーカーなど実需者に強く働きかけてください。

 

 農民連は、この要望書を誰でもダウンロードできるようにホームページに公開している。そして「思いを記入して農民連に送信してください。また、あなたの知り合いの畜産農家に届けて協力を呼びかけてください。メールでも、FAXでも結構です。届けられた要望書は、一定数がまとまり次第、随時、農水省に提出して要請します。ご協力をお願いします」と訴えている。次の提出行動は12月22日の予定。
 

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