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下関市議会 神戸製鋼の存在を隠す中尾市政 本池妙子市議の一般質問より

長府浄水場の更新完成予想図

 下関市議会では9月定例会の一般質問が20日からおこなわれている。下関市民の会の本池妙子議員は21日に一般質問に立ち、260億円かける長府浄水場更新計画の不可解なろ過方式の変更について追及したほか、老朽化した市民プールの補修や夏休みの学校プールの開放事業など、夏休みの子どもたちに目を向けて予算を振り向けることを要求した。長府浄水場更新計画を巡っては、神鋼環境ソリューション(安倍出身企業として知られる神戸製鋼の関連会社)の働きかけで突如ろ過方式が変更されたが、答弁に立った三木上下水道局長はその理由について、長府浄水場の敷地が液状化すること、技術職員の削減による経費削減(いずれも一度も市議会で説明はなされていない)などをあげ、現在ある施設を大切に使うことを主張する本池市議に「いわれている意味がわからない」とのべるなど、神鋼環境ソリューションを隠し通した印象となった。要旨を紹介する。

 長府浄水場の更新 260億円かける大型事業 水道代値上げとつながる利権

 ①長府浄水場の現状と更新計画
 本池 下関市は20年にわたって長府浄水場の更新計画を検討してきた。それをおもな理由として、2011年に水道料金を15%値上げして5年になる。3月、6月議会でろ過方式の変更や今後の計画について報告があったが、疑問点が多多あり、着工前に再考すべきではないかと考えている。
 水は人間が生きていくうえで必要不可欠だ。飲料水はもちろん、トイレ、風呂、洗濯など私たちが生活を営むうえで欠かせない。人口減少によって水道料金収入が減るなかで、戦後に整備されてきた水道施設の老朽化は全国的な課題にもなっている。水道インフラを守っていくことは非常に大きな問題であり、だからこそこの事業には透明性が求められていると思う。
 まず市内の80%の水をまかなっている長府浄水場の歴史と現状について概略を教えてほしい。
 三木上下水道局長 全浄水処理能力の八割を担っている市内最大の処理施設である。処理された水道水は旧市内、豊浦町の一部、菊川町の一部へ給水されている。世帯数では約11万5000世帯、世帯数の91・3%をまかなっている。
 本池 水道局は一貫して「長府浄水場が築後70年以上を経過、老朽化し、処理能力が低下したために更新事業をする」といってきた。そのため当初から約25年間で総額255億、税込み275億円という大型事業として扱われてきた。6月議会で規模を縮小したという報告があったが平成29~46年の17年間で218億円、今年度までの工事とあわせると241億円、税込み260億円もの大型事業には変わりない。主要な施設すべてが築後70年以上なのか、処理能力がどれだけ低下しているのか説明をお願いする。
 三木上下水道局長 増築しているので、経過年数に違いがある。緩速ろ過池1~2号は71年、4号は64年。高速凝集沈殿池1、2号は57年、3号は50年、急速ろ過池1~3号・7~9号は51年、4~6号・10~12号は42年、横流式沈殿池1系は42年、2系は38年である。急速ろ過池GLF1~8号は42年、9~16号は38年である。
 本池 70年以上過ぎているのは現在使われていない緩速ろ過池だけだ。稼働している施設は38年~51年、57年となっている。市議会にも「70年以上」と報告してきたが、事実とは異なる報告をしていたということか。
 三木上下水道局長 長府浄水場が稼働して70年が経過していると申し上げている。ごまかすつもりはない。また更新事業はあと20年近くかかるので、そこから稼働すると今38年の施設も約60年くらい経過する。設備関係の老朽化も進んでいる。
 本池 コンクリートの法定耐用年数は60年だ。まだ使える施設は大切に使うのが当たり前の感覚だと思うが、そのような方法を検討されたのか。またその場合どのような方法があるのか。
 三木上下水道局長 浄水場内の地盤が液状化する可能性が非常に高いことから、耐震化については基礎工事等をおこなう必要がある。それには稼働中の施設を長期間休止する必要があるが、バックアップ施設もないことから安定した浄水量の確保が困難である。既存の物を耐震化するのは無理だ。
 本池 よその自治体の例を見ると、アセットマネジメントを導入し、コンクリート構造物の実耐用年数を法定耐用年数の1・5倍の90年まで伸ばして施設を使うなど、施設を長く使う方法を研究したり実施している。耐震など、手を加えていかなければならないが、40年そこそこの物を廃止して建て替えるという発想は水道料金収入が減って財政が厳しい事業者が考えることだろうか。
ろ過方式について
 本池 もう一点非常に疑問を感じているのは、ろ過方式の変更だ。もとは急速ろ過方式でおこなうということで基本計画を策定していたと思う。水道料金の値上げ幅はそれらの経費を見込んでのことだ。しかし工事が本格化する直前の平成25年8月になって突然、「生物接触ろ過+膜ろ過方式」が浮上した。長府浄水場内でミニプラントによる実証実験をおこなうとの報告があり、1年間の実証実験をへて今年の3月・6月議会で正式にろ過方式を変更することが報告された。
 すでに基本計画が策定された時点にもかかわらず、突然ろ過方式が変更になった理由はなにか。いつ、だれが、どこで、どのような議論をして決めたものか。また実証実験をおこなったのはどの業者か。
 三木上下水道局長 20年度に更新計画を策定した。当時、生物接触ろ過について採用の可能性があるか検討をおこなったが、5度以下の低水温での処理性能の維持を確認できなかったこと、敷地が狭小であることで採用を見送った。しかし平成24年に低水温における実験をおこなった結果、処理性能の低下は見られなかったこと、急速ろ過池よりも膜ろ過の方がコンパクトに建設できることが確認できたことから処理方式の見直しをおこなった。結果、将来の人口減少に対応可能であること、処理水質の安全性が向上すること、建設費用の削減、建設期間の短縮が可能であること、建設スペースが小さいこと、以上の利点があることで、「生物接触ろ過+膜ろ過」の方が優れていると判断した。
 実証実験は公益財団法人水道技術研究センターのJ―Stepという研究プロジェクトの持ち込み研究という形でおこなった。
 本池 これまで議会には「生物接触ろ過」としか報告されていなかったが、上下水道局にお話を伺ったところ、下関市が導入するのは「上向流式生物接触ろ過」とのことだった。この上向流式生物接触ろ過というのは、どこのメーカーでもできる技術なのか。
 三木上下水道局長 施工実績は4社ある。
 本池 先ほど実証実験をされた業者はJ―Stepといわれたが、設備を持ち込んだのは神鋼環境ソリューションと聞いている。間違いないか。「上向流式生物接触ろ過」は、神鋼環境ソリューションと北九州市上下水道局が開発し、特許を取得している技術だ。それで、「水がきれいになる」といわれるが、木屋川の原水はそれほど汚れているのか。
 三木上下水道局長 木屋川の表流水が汚れているとはいわないが、夏場には濁度が4、冬場は1・2という状況がある。濁度の基準値は2度以下、厚労省の指示でろ過水濁度は0・1度以下で管理している。
 本池 北九州市は、汚染のひどい遠賀川から取水するために生物接触ろ過方式を研究したようだ。生物接触ろ過はカビ臭やマンガンなどの溶解性物質をとり除くのに有効といわれ、膜ろ過はクリプトスポリジウムという原虫をとり除くのに効果が大きいといわれているが、現在それらはとり除かれないまま市民に供給されているのか。
 三木上下水道局長 それはないが、今は非常に優秀な熟練職員が管理をしてようやく成り立っている。職員の経験と24時間体制での監視によるものだ。「生物接触ろ過+膜ろ過方式」は機械的に可能になる。経験ある職員を否定するわけではないが、今後管理がしやすくなる。
 本池 建設費や薬剤費が節約できるという点についてだが、実証実験を見学したさい、内部の激しい動きが印象にある。これが巨大になると、かなりの電気代も必要になると思った。想定されている費用はいくらか。
 三木上下水道局長 平成27年度の長府浄水場の年間動力費(電気、重油など)は年間1億8000万円、同量を新浄水場の処理方式でやると約2億円である。
 本池 電気代だけではなかったが、減るどころか増えるようだ。急速ろ過は薬剤にお金がかかるといわれたが、電気代が上がるなら節約にならないのではないか。同じ形で「生物接触ろ過+膜ろ過方式」を導入している自治体は全国にどれくらいあるのか。
 三木上下水道局長 神戸市と伊万里市で導入している。経費については、60年間の維持管理費を含めてライフサイクルコストを試算したところ、新しい処理方式は617億円、急速ろ過方式と比べると約1%の削減になる。今は熟練職員が20人という大人数で24時間体制で管理しているが、人数の縮小、勤務態勢の変更が可能になると人件費も削減になる。
 建設費も、休止していた緩速ろ過池に建設することができるので、今ある施設を運用しながら建て替えることができる。一括発注すると今より5、6年短縮でき、2、30億円の削減が可能という考え方もある。
 本池 私も伊万里市に聞いてみた。まだ稼働していない有田川浄水場だった。現在工事中のろ過方式は、生物接触ろ過と膜ろ過方式で、やはり神鋼ソリューションの特許方式だそうだ。印象としては小規模で、原水が汚いという条件がある。長府の浄水場と同じ規模で二つを組み合わせた方式はまだ前例がないということだ。
 膜ろ過だけをとり入れている水道局もあるが、かなり小規模で、最大の鳥取が8万立方㍍だ。どちらにしても長府のような大規模浄水場での実施はないように見受けられる。膜が破断する可能性や、環境によって生物が働かない可能性もあるそうだ。「どうなるかはやってみないとわからない」ような方法を市内80%もをまかなっている浄水場に導入する必要があるのだろうか。
 突き詰めていくと、それほど新しい手法が必要なのか疑問だ。この浄水場更新でだれが利益を得るのかということだ。執行部は「値上げした水道代で更新事業がすべてできるわけではない。どの時点かに再度値上げもしないと難しい」といわれていた。下関は人口減少が著しく進み給水量は減っている。当然、料金収入も減少していく。今後、水道管の老朽化にともなう更新や施設の耐震化などで膨大な費用が必要になる。県内他市は「水道代はなるべく値上げしないように努力する」方向で事業をおこなっている。必要以上にお金を使って浄水場をつくるのではなく、今ある施設を大切に使うことこそ一番の節約であると思う。
 長府浄水場の整備については、20年かけて作成した基本計画が唐突に変更となり、必要以上に過剰な整備計画へと変貌し、いつの間にか神戸製鋼の特許技術を使ったものになろうとしている。この全面更新、ならびにろ過方式の変更はやるべきではない。事業全体を洗い出して透明性を持たせること、水道局の現場職員の声に耳を傾け、更新計画は今一度見直すことを求める。
 現状の施設とろ過方式を最大限大事に使い、維持管理していくことこそ、市民の利益を守り生活の向上につながる道だということをのべて、質問を終える。
 三木上下水道局長 いわれることが理解できない。

長府・市民プールの現状について
 本池 長府にある市民プールを訪れた親たちから、老朽化した施設が放置されている現状について「市役所は状況を把握しているのだろうか?」「どうにかして更新できないものなのか」という意見を聞き、私も直接見てきた。長府の市民プールといえば、議場にいる皆さんも含めて一度といわず訪れたことがある場所ではないだろうか。ウォータースライダーや噴水付きの幼児プール、小学生を対象にした25㍍プール、中学生以上を対象にした50㍍競技プール、さらにカップ麺やかき氷を販売している売店等等、夏の休日を過ごした場所として、馴染みがある場所かと思う。プールに足を運ぶ年代の多くは子どもやその親たち、子育て世代が中心かと思う。そうではない世代にとっては目が届かず疎遠になりがちだが、わずか夏の50日間の営業であっても、下関の子どもたちが思う存分「水」と親しみ、楽しい思い出をつくることができる場所として心を砕くことが大切かと思う。
 初めに、長府市民プールの仕組みと現状、とくに今年の入場者数、最近五年間の入場者のすう勢を教えてほしい。個人の入場料金もお願いする。
 吉川観光交流部長 幼児用の遊泳プールが1基、小学生以上の25㍍プールが2基、中学生以上用の50㍍公認プールが1基ある。5年間の施設利用者数は、平成24年度2万8508人、平成25年度2万7919人、平成26年度1万9246人、平成27年度2万5767人、平成28年度3万1414人となっている。個人利用料は大人250円、高校生200円、小学生及び中学生100円、6歳以下の未就学の者は無料だ。
 本池 市民プールは「料金が安くて行きやすい」ことが喜ばれている。今年の夏休みにはサンデンバスが小学生の50円バスを走らせ、高いバス代の負担感も少し緩和されたようだが、自家用車で訪れる親にとっても無料駐車場を完備し、格安の料金で一日中楽しめる場所として親しまれているようだ。
 市民プールの管理運営は、市が委託した指定管理者・公営施設管理公社があたっている。市が支払う指定管理料が毎年3000万円ほど支出され、わずかずつ減ってきている。また管理公社はそのなかから施設修繕料を支払う仕組みになっているが、それも毎年削減されている。
 担当課で聞いたところ、50万円以内の修繕費は指定管理者が出し、それ以上のものは市が出すということで、市は近年は毎年100万円前後の負担をしているという説明だった。
 老朽化の現状はひどいものがあり指定管理料のなかからどうこうできるものだろうかと思う。テントが破れたまま貼り替えられず、よしずがくくりつけられていたり、立ち入り禁止のロープが張られている箇所が多くある。50㍍競技プールでは観覧席の手すりが折れて使用禁止になっていた。築40年といえば老朽化するのはあたりまえだ。ならば新しいテントを張り替えるとか具体的な対応が必要ではないかと思う。テント1区画を張り替えるのに6万円、10区画だと60万円で修繕が可能ということだった。必要な予算を投じればすぐにでも解決する話ではないか。今後老朽化した市民プールはどうなっていくのか。
 吉川観光交流部長 5年間で修繕料は約1100万円支出している。公共施設マネジメント基本方針なども踏まえて、限られた予算のなかで計画的な維持管理に努めていきたい。
 本池 わずかで実現するものは、すぐに解決していただきたい。

小・中学校の現状と教育予算
 本池 市民プールの問題とあわせて現在市内の小学校で夏休みにプールを開放しているところはどれだけあるか。開放していない場合の要因は何か、把握している状況をお願いする。
 石津教育部長 小学校51校のうちプールがあるのは48校、中学校は22校のうち20校。うち小学校31校がプール開放をおこなっている。昨年度からプール開放の申請がなくなった学校に理由を問い合わせたところ、子どもの数が減り参加者が少なくなったこと、これに伴い監視員の確保が困難になったためと聞いている。
 本池 共働き家庭が増えているなか、親たちが夏休みのプールの監視当番になかなか入れない状況がある。仕事を休んで当番に入り、プール開放を支えている父母もおられるようだ。当番が確保できないから学校のプールは閉鎖され、あるいは期間が非常に短いものとなり、市の長府市民プール、菊川温泉プール、夢が丘プール、現在閉鎖されているヘルシーランドなども「公共施設マネジメント」のなかで削減対象としてあがっているようだ。健康づくりのために利用していた大人も含めて、泳げる環境がなくなりつつあるのではないかという懸念がある。
 とくに子どもたちの夏休みから水をとり上げると、より行き場がなくなってしまう。この夏も、公民館や図書館などの冷房が効いた施設に子どもたちが集まってきてゲームに昂じていることが話題になっていた。学校のプール開放についてみると、例えば広島市では、父母が当番に出られないが、市がプール監視員を時給980円で雇用しているようだ。やり方は工夫すればいくらでもあるようだ。下関でそのようなことを考えるつもりはないか。
 石津教育部長 平成26年度に中核市でおこなったアンケートでは回答のあった35市のうちプール開放をおこなっていたのは63%の22市。うち6市は、市または教育委員会が直営または委託しておこなっている。
 学校のプール開放は屋内運動場の夜間開放と同様に、あくまでも施設の一般開放である。教育委員会が主体となって監視員を雇用して実施する考えはない。
 本池 子どもたちの夏休みという点に光を当てると、児童クラブの存在も大きいものがある。昨年度から小学6年生まで入所できるようになったが、実際にはこの夏には入りたくても入れない子どもが100人をこえた。施設が足りないことが大きな要因だと聞いている。また、預けたいが料金が高すぎると多くの父母から意見を伺う。通常の料金に夏休みの加算が加わり、おやつ代も含め一人の子に8000円もかかる。夏休みは給食がなく、とくに共働き家庭の母親たちは頭を悩ませている。家庭でつくり置いてあるものを温めて食べる子は少なく、親たちが渡していくお金はアイスやお菓子に消え、夏休み明けに痩せている子どもの存在が教育現場では問題になっている。家庭の経済的事情にかかわらず、どの子も安心して過ごせる場をつくること、市民プールやその他の問題にしても下関の大人たちの愛情がどこに向いているのかとかかわって、政策的な配慮を加えて対応していくことが求められている。「予算が乏しいのではなく、愛情が乏しいのだ」といわれるようなことがないように、しっかり対応していただきたい。

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