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市長選直前に大デモ行進を計画  安岡洋上風力反対の会が集会

 下関市の安岡沖洋上風力発電建設に反対する会は23日、綾羅木地区自治連合会との共催で、伊倉町の川中公民館で住民集会を開いた。綾羅木・安岡地区を中心に約200人の市民が集まった。事業者・前田建設工業が環境影響評価にかかわる調査を終えたとして準備書を提出し、市長意見が求められるなか、参加者の発言は来年3月に予定される市長選に向けていかに反対運動を広げ、市長に風力発電反対を表明させるかに集中した。反対する会の有光哲也会長は市長選投票日の直前に風力反対のデモ行進をおこなうことを提案し、満場の拍手で決定した。
 
 下関市長選の重要な争点に

 住民集会でははじめに、低周波音のマウスと人間への影響を調べた和歌山県立医科大学・武田教授による実験映像が上映された。20の低周波音をマウスに聞かせ続けると、空気振動を感じて脅え、まったく動かなくなった。同じ20を20人の人間に聞かせ続けると「上から抑えつけられて、うずくまりたくなるような感じ」「胸が締めつけられて心臓がドキドキする」という反応が出た。それはストレスから生体を防御する副腎皮質ステロイドホルモンが分泌されるからで、それが仮に24時間続くと頭痛、吐き気などの体調不良を訴えるようになることが明らかにされた。
 続いて安岡地区の開業医が、風力発電の低周波音が生み出す健康被害について次のように話した。人間の耳によく聞こえる音の範囲は100から1万5000といわれ、100以下の聞こえにくい音を低周波音という。低周波音は耳には聞こえないが、頭蓋骨を振動させて脳や耳に入ってくる。そのとき副腎皮質ステロイドホルモンが分泌され、人間に力を与える。それが一瞬であればよい役割を果たすが、風車は24時間動いているので、1日中低周波音に曝露されることによってこのホルモンが出続け心臓の動悸が激しくなったり、血圧が上がって眠れなくなったり、血糖値を上げて糖尿病を悪化させたりするし、胃液が常時出続けて胃潰瘍になる可能性も出てくる。そうして人間の体はヘトヘトの過労状態になる、とのべた。
 開業医は「風力発電は20以下の超低周波音を24時間出し続ける。3㌔以内は絶対だめ、外国の例では8㌔でも10㌔でも安心できない。川中はもとより長府や勝山までその範囲に入る。全員が被害を被るわけではないが、100人中1人に健康被害が出ればその町はだめになる。低周波音は二重サッシも効果はなく、コンクリートも突き抜けるので、防御する手段はない。転居しか方法がない。その問題がわれわれの目の前に迫っている。来年市長選があり、新市長が準備書に対する態度を問われる。風力発電に賛成する市長を絶対に選んではいけない。市長に反対をいわせるように頑張っていこう」と呼びかけた。
 次に綾羅木地区自治連合会会長の太田氏が発言に立ち、「この間自治会長として風力反対の署名を集め駅前のデモ行進にも家族で参加してきた。毎月地元の住民の方が横断幕や幟、プラカード、大漁旗を掲げて国道を通行する人人に風力反対を訴えていることや、安岡の漁師さんたちが前田建設に工事差し止めを求めた裁判を頑張っていることも聞いている。一度建てさせたら簡単には元に戻せないので、今まで通りの生活ができるよう地域を守るため、絶対に建てさせないという強い気持ちを持ってみなさんと一緒に行動したい」とのべた。
 続いて風力発電をめぐる裁判の進行状況について、代理人弁護士が説明した。昨年4月、前田建設は環境調査を妨害したとして反対の会の4人を刑事告訴し警察が家宅捜索をおこない、その後同じ4人に1000万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こした。しかしその後前田建設は4人の誰がどこで何をしたという立証ができていない、裁判所からも新たな証拠提出を求められたが、今のところ証拠は出ていない、と報告した。
 また、山口県漁協下関ひびき支店の漁業者がボーリング調査差し止めの裁判を起こし、広島高裁では棄却となった。前田建設はそれをもって「漁業者が負けた」と宣伝しているが、裁判所は漁業者の漁業権は認めており、調査による被害が少ないので漁業権侵害にはあたらないとしていること、現在それを逆手にとって工事そのものの差し止め裁判を起こしていること、また前田建設は漁業者の抗議でボーリング調査ができないまま準備書を提出していることを明らかにした。

 前田建設の準備書 まともな調査せぬまま

 有光会長は、「前田建設は準備書を提出したが、地元住民や漁師さんたちの反対で、環境調査は半分ぐらいはできていない。それをやったことにして準備書をつくっている。そうしたいいかげんな内容で準備書を出させたことは、私たちの運動が追い込んだ成果だと思う」とのべた。そして、「前田建設は12月16日を期限に住民の意見をとりまとめ、見解書をつけて県知事に提出し、下関市長にも意見を求めることになる。来年の4月末から5月初めが市長が意見をのべる期限だと考えている。3月に市長選があるが、下関市長が“住民が反対しているから建てさせない”といえば建設阻止の大きな力になる。市長選は現職と他に2人の立候補があり、風力発電建設反対を公約にする候補も出るようだ。しっかり見極めていきたい」とのべた。
 これに対して参加した住民のなかからは、「市長選を重視して、これだけの住民の反対の声が市政に反映できるよう、市民の団結した運動をつくるときにきている。中尾市長は市民が反対の陳情に行っても、ただの一度も出てきていない。市民の声に耳を傾けて身を削るような市長をつくろうではないか」「アメリカの大統領選ではTPPをやめるという候補が当選している。江島氏や西本氏のことを考えても口では風力反対をいうが当選したら賛成という者ではだめだ。本当に風力発電をやめる方向に動かさなくてはならない」「われわれは市長にわかってもらうのではなく、市民のみなさんにわかってもらうことが大事だ。市長が替わろうが替わるまいが、横野や安岡だけでなく下関の市民のなかに輪を広げるためにデモをやるべきだ。横野で街頭活動に立っていても“次のデモはいつやるのか”という声をよく聞く」など、どのようにして26万人の全市民の力を結集するかをめぐって真剣な意見がかわされた。
 これに答えて有光会長は、「今、反対の署名は9万8000筆をこえ、10万まであと1781筆となった。署名に込められた市民の気持ちを無駄にせず、再度市長に陳情をおこないたい」とのべるとともに、「デモ行進を市長選投票日の1週間前におこなってはどうか」と提案、会場から大きな拍手が起こった。
 32自治会が一致して風力発電反対で頑張っている安岡地区自治連合会副会長の坂口氏は「風力発電ができたら低周波のために地元から出ていかなければならない人が必ず出てくる。それは戦争が起こるのと同じぐらい大変なことだしみんなの力で絶対に防がなくてはならない。自分たちの住んでいる庭の目の前に低周波の塔ができてはたまらない。阻止するためには何でもやらなくてはならない。一人一人が一人でも多くの人にこの問題を伝えていき、ここに集まる人が10倍、100倍になれば風力発電はできない。住民の生活圏を勝手に侵して金儲けのための風車を建てることなどできるはずがない。日本はそんな国ではないはずだ」とのべた。
 最後に反対する会から風力反対署名や資金カンパの訴えとともに、「みんなが飽きてしまったり、どうせできるだろうというあきらめを誘うのが前田建設のやり方だ。安岡・横野はもとより、唐戸や長府、彦島、小月の友人・知人に署名を広げよう。未来の子どもや孫たちのために運動の輪を広げよう」と訴えがあった。全員で「団結がんばろう」をやり、正念場の奮闘を誓いあった。
 安岡沖洋上風力発電の建設計画は経済産業省がお墨付きを与える国策として持ち込まれたが、この3年間で1000人の風力反対デモ行進を2度おこない、毎月の街頭アピール活動も継続し、反対署名は10万筆に近づくなど、無視することのできない大きな住民運動に発展している。この運動の輪をさらに全市に広げ、市民運動の力で風力発電建設を許すか否かを市長選の争点に押し上げて、誰が市長になってもいうことを聞かせる力にしようと、意気込みあふれる集会となった。

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