いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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安倍政治への審判が中心争点 山口4区終盤情勢やいかに

安倍昭恵、黒川敦彦、藤田時雄

 解散総選挙は投開票まで残すところ数日と迫っている。今回の選挙は、野党解体・分裂から一気に本選に突入していくという謀略が仕組まれた下で、選挙構図や立候補状況からすると、体制の整わない野党に対して自民党が圧倒的に有利であることは疑いないものだ。しかし、政治意識の鋭さを反映して情勢はめまぐるしく変化し、都市部では立憲民主党が急速に支持を伸ばしたり、「希望」が絶望に転落したり、横綱相撲であるはずの自民党は党首からして「お前が国難」のヤジから逃げ回っているなど、これまでにない様相を呈している。国会という小さな器のなかの一強が、有権者の審判を前にして揺さぶられているのである。全国が注目する山口4区の終盤の選挙情勢ともあわせて、記者座談会で論議した。

 

力を失った国会の中の「一強」


  今回の総選挙はモリカケ逃亡解散に始まって小池劇場、その後の民進党解体と分裂など、めまぐるしく選挙模様が変化しているのが特徴だ。野党殲(せん)滅の過程で小池率いる希望の党がすっかり正体を見透かされてしまい、全国の選挙区で絶望の淵に立たされているのも世論の鋭さをあらわしている。安倍自民とその補完勢力を懲らしめろの世論がいかに強いかがわかる。このなかで、もっぱら「自民圧勝」の序盤調査等がメディアを賑わせているが、これは「どうせ選挙に行っても無駄だ…」と棄権を煽る役割を果たしている。


 これまで低投票率頼みで勝ち抜けてきたのが自民党であって、多くの有権者を排除して「圧勝」などといってきた。投票に行かない残りの5割の有権者の動き如何によっては、選挙情勢は大きく動く可能性を秘めている。


  確かにボロな政党ばかりだが、まともで立派で清廉潔白な政治家や政党がいない以上、安倍政治への審判としてどう有権者の思いを表現するかが問われている。投票率がどうなるかは大きな注目点だろう。自民党の絶対得票率(全有権者のなかに占める得票率)は前回比例で17%、選挙区では公明とあわせて25%そこら。与野党の得票数はさほど変わらないのに議席は3分の2を占めることができる【グラフ参照】

 

 これは小選挙区制の恩恵であって、死票がいかに多いかをあらわしている。選挙区の1等賞+比例票によって、国会の議席を独占できる制度設計になっているわけだ。

 そろそろこの選挙制度自体も問題にするべきだ。議席が世論を反映しないという矛盾は明らかなのだから。それで「一強」などといって驕(おご)り高ぶってしまい、安倍自民党のような低俗な政治がはびこる。


  今回の選挙では、小池が野党殲滅で大活躍して役割を終えた。終盤になって安倍批判をやり始めているものの、第2自民党ではないかと既に世論が見限っている。これは惨憺たる結果になるかもしれない。前原や玄葉、細野といった面面も性根が暴露された。そして、反自民の対抗勢力のような形で民主党左派といわれる部分や枝野が世論によって担ぎ上げられ、立憲民主党が急速に伸びている。ここに選挙全体の空気があらわれている。民主党の失敗は政権与党になったら自民党と同じことをやり始めたことで、もともとの支持基盤が反自民だったわけだ。今さら気付いたのかとも思うが、先祖返りして反自民色によって流れを引き寄せているような光景だ。安倍自民党ではダメだという力が都議選の都民ファースト圧勝の要因になったが、総選挙を揺さぶっている力も同じだ。受け皿が乏しくて困り果てているが、このさい枝野だろうが誰だろうが構わないという世論が底流に流れている。


  小池百合子は初めから終わりまで安倍自民党を助けたといえる。野党殲滅もそうだが、希望の党の失速によって結果的に安倍自民を有利にしたのだから。行動と結果を冷静に見てみると、巧妙に安倍自民党を手助けしていることがわかる。意図したのか失敗したのかは別としてそうなっている。


 それで野党で目立っているのは立憲民主党だが、78人しか立候補していないので議席数でははなから勝負にならない。従って、選挙がどう転んでも自民、公明、維新、希望で総翼賛体制を組んでいくのは疑いない。しかし、投票結果は必ず世論を反映する。受け皿が乏しいという愚弄しきった選挙構図ではあるが、果たして有権者が幻滅し続けているかどうかだ。


  「自公300議席か」などと序盤情勢が報道されるなかで、自民党は早速改憲に向けた動きを見せている。選挙が終わった11月にはトランプを招いてゴルフする予定を発表したり、勝った気になっている。そして、選挙後には改憲ももちろんだが、その具体化である北朝鮮対応など戦争体制まっしぐらで進んでいこうとしている。日米FTAの交渉開始も米国は要求してきている。対米従属の下僕であるなら多少の私物化政治も黙認されて、安倍体制で行きますよというものだ。


 B 何度もいうように、背後勢力にとっては支配の枠組みを脅かさない限りにおいては誰が首相であってもかまわないわけだ。ただ、第2自民党の本性を暴露した希望の党が瞬殺されたことは、保守2大政党による二刀流の線が潰(つい)えたことを意味する。欺瞞を払いのけたその力が本丸の安倍自民党に直接向かっていく。局面は何も変わらずモリカケ疑惑もそのまま引き継がれる。再びグダグダが続いて支配の安定が損なわれるとなった場合には安倍晋三の賞味期限が切れる。もともとがモリカケ疑惑からの逃亡を意図した解散劇であって、それ以上でも以下でもない。従って、安倍自民党が勝ったところで局面打開にはなり得ない。選挙前と同じというだけだ。むしろ解散総選挙の過程で欺瞞派が正体を見抜かれてスッキリしたのかもしれない。


  議席数だけ見ていたら誤魔化されるが、有権者の投票行動によって何が世論の底流に動いているかを捉えないといけない。これは選挙後の対応にも関わってくる。限界性はあるが、「何をやってもダメだ…」というようなものではない。

 

山口4区 安倍陣営は最大の逆風

 

  山口4区の安倍陣営関係者のなかには低投票率頼みが染みついているせいか、台風襲撃に期待を抱いている人までいる。その方が組織選挙をする側にとっては有利で、いわば「神風」扱いだ。「安倍先生に神風が吹いた」などといって、一層スピリチュアル(霊的)化していくのではないかとも思う。通常であれば恥ずかしくて口にできないことだが、ある意味正直というか、選挙がそのように低俗化している。寝た子(棄権者)を起こしてはならないし、低投票率こそが組織戦の絶対条件であることを自覚している。安倍晋三の得票を見ても分かるように【円グラフ参照】、圧倒的な有権者が棄権する条件だからこそ「圧勝」が担保されている関係だ。

 

  山口4区は全国の縮図みたいな選挙区でもある。野党殲滅で最も痛手を食らったのが加藤寿彦(民進党)率いる藤田陣営(希望の党)だろう。野党共闘であれば日共が出馬をとりやめる約束だったようだが、急転直下、前原の裏切り劇に見舞われ、公認や選挙費用の踏み絵ですったもんだをしているうちに希望の党公認で出馬することになった。そして、4区のなかで泡沫化している。根っからの加藤の支持者が「オマエは改憲勢力になったのか!」と問い合わせている始末だ。陣営関係者は真顔で供託金没収を心配し始めている。出馬にともなう供託金が300万円、その他諸諸の費用を合わせたら500~600万円はかかっているだろうし、今さらどうしようもないものだ。


  加藤陣営もだが、日共の西岡陣営も泡沫状態だ。西岡も総選挙なのに梅光学院の前で経営陣批判の演説をしていたり、何のことだかさっぱり意味がわからない。「再来年の市議選狙いではないか?」といわれる始末だ。日頃は長周新聞の文句ばかり吹聴しているくせに、こんなときだけ新聞の丸写しみたいに梅光問題を切りとって「我が党は」をやるのだからどうしようもない。というか、梅光学院が揉めていることと、この総選挙がどう関係あるのだろうか。ちんぷんかんぷんも甚だしい。安倍批判を徹底してやるならまだしも、矛先が梅光経営陣如きに向く感覚の意味がわからない。オマエは誰とたたかっているのか? と思わせている。梅光の行く末を案じている人人に党として食い込みたい一心なのかも知れないが、ここに親切ごかしの物欲しさがにじみ出ている。だいたい勝つ気はないのに出馬だけはして批判票を分散させ、選挙は市議選なり党勢拡大のためのプロモーションというのが従来からありありだ。こんなものは批判されてしかるべきだ。


  野党共闘の線が消えて乱立になったが、市議会議員の山下隆夫率いる社民党は日共候補の応援につくことを理由に藤田陣営から離れた。藤田陣営が供託金没収まで心配している背景には、連合がこれ幸いに雲散霧消してしまい、誰も何もしない実情がある。「希望の党は応援できない」を理由にして安倍応援に回っている者までいる。本当に黒黒としているが、連合安倍派が裏街道で本格始動している。安倍陣営は表向き10~11万票が目標なのだと掲げている。これは相当に労働組合票に手を回すのではないかと見られている。「カネに汚い」ことでは有名な下関の労働組合票をどうとり込んでいくのかだ。


  選挙区の常識でいえば安倍圧勝が当然視されている。しかし、今回の選挙ではモリカケ問題の追及を掲げた黒川敦彦やその仲間たちが殴り込みをかけ、これまでとは少し様相が異なるのも事実だ。飼い慣らされた野党ではなくて、野良犬みたいに飼い慣らされていない自由奔放な存在として映っている。選挙ポスターに書いている「税金ドロボー、カネ返せ!」も賛否両論あるが、モリカケを気にしている有権者は「その通りだ」と話しているし、ジッとポスターを読んでいる有権者も少なくない。通常なら「よそ者がかき混ぜるな」という批判が出てきてもおかしくないが、結構暖かく迎え入れられているのも特徴だ。これが批判票の受け皿としてどこまで存在感を発揮するかは一つの注目点だろう。アンチ安倍(安倍嫌い)の機運は選挙区の中でもすごいものがある。


  他の陣営の泡沫化とは裏腹に伸びる可能性を秘めているのかもしれない。どこまで伸びるのかは残り数日のやり方次第だし、まだまだ未知数だ。


 確かに選挙としてはにわか仕立てで、いわゆる組織戦とはほど遠いものがある。全国からやってきているボランティアも、右も左もわからない下関、長門を舞台にして走り回っている。このなかで安倍陣営は「万単位で減らすだろう」といわれ、政党色はとくにないが「安倍政治をどうにかしたい」と悶悶としてきた人人が黒川陣営の殴り込みを面白がっている。黒川1人がどうこうというより、真っ向対決しにやってきた度胸を認めているという部分が大きいようだ。4区は決して甘くないのも事実だが、せっかくアンチ安倍を吸収するなら徹底的にやってみた方が面白い。終盤は観光客しか来ないカモンワーフなど海峡沿いに張り付く必要はない。あそこは人が多いように見えて票にはならない。徹底的に市民そのもののなかに訴えを届けるなら、上乗せが期待できるのではないか。


  4区の事情として最も大きいのは保守分裂だ。市長選や林芳正の処遇で悲哀を見ている林派がどう動くのかによっても得票は様変わりする。今のところまったく動いていないといっても過言でないほど、今回の選挙では静観状態だ。市長だった中尾友昭の後援会長の松村久や母体である唐戸魚市も冷めている。サンデン交通もまったく指示が降りていないようだ。これまでなら支援者に電話をかけたり宛名書きをしたりしていたのがシーンとしている。林泰四郎率いる山口合同ガスがフル稼働したらサンデンの比較にならないほど選挙集団としてはプロ揃いだが、これも本気で動いている節がない。みんなでしれっとしている。市長選のシコリは相当のものなのだろう。安倍派も心得ているから「なぜ応援しないんだ!」と強くはいえない。林派がはぶてたら4区の安倍票はどうなるのかも注目点になっている。


  そんなこんなの事情を反映した「万単位で減る」の評価になっている。菊川町で偶然見かけたのだが、安倍昭恵が道の駅で演説しているのに誰も集まっていなかった。これまでならあり得ない光景だ。風当たりは相当に強いし、だからこそ安倍陣営はこれまでになくムキになっている。記者クラブが選挙期間中の陣営の集会について全て取材拒否をくらっているが、安倍昭恵が奔走している様を全国ニュースで流されたくないという事情を反映している。モリカケ疑惑の渦中にありながら、国会証人喚問からも逃げ回っている者が「主人をお願いします」とかけずり回っている様は全国の有権者を刺激する。映像に映されたくないが、しかし風当たりが思いのほか厳しいものだからかけずり回る。そうやって有権者の前に出てきて露出すればするほど、「昭恵さん、モリカケはどうするの?」「籠池の100万円はどうだったの?」という話題が広がっている。聞いてみたいけどSPや秘書たちが叱り飛ばすから遠慮している有権者も多い。ただ、どこかで握手攻めしているときに破れ口なのかおばちゃんが聞いてしまった。そのニュース映像がまた話題になるというくり返しだ。


 4区でいえば、安倍陣営は過去最大の逆風にさらされているといってもいい。このなかで目標通り10~11万を積み上げることができるか、現役首相として“地盤は安泰”を示すことができるのか、面子がかかっている。仮に万単位で減らした場合は、代替わりすら危うくなる。これはしっかりと批判に晒されることが必要だ。

 

未来見据えた闘い 草莽崛起の伝統を今に

 

  下関の気風というか、腐敗堕落した体制を草莽崛起によって下からひっくり返していくというのは明治維新から息づいている伝統であって、政治的には右も左も激しい。市民運動も一度火がついたら10万署名を何度も集めたりする馬力がある。筋を通すなら右とか左とかの小さなことはいわずに協力もする。すべて是是非非だ。このなかで歴代宰相とか安倍晋三にいたる流れは、明治維新革命を裏切った明治の元勲(下級武士出身)であったり、それら長州閥の末裔みたいなものだ。50万領民を裏切って成り上がった者と、明治維新の原動力となった者を混同して見てほしくない。安倍晋三と一括りにするなといいたい。


 なぜこんなことをいうかというと、最近になって安倍晋三憎しから長州憎し、明治維新憎しをリベラルとか左翼陣営がムキになって展開しているからだ。階級性を抜きにして何をいっているのだろうか? と思うものがある。そんなのに限って「四区の有権者は民度が低い」などといいがちだから困ったものだ。


 明治維新後、維新革命の原動力になった奇兵隊は明治政府によって血なまぐさい弾圧にさらされた歴史がある。脱退騒動が起きた県東部でも相当数が木戸孝充らによって処刑された。高杉晋作を援助した白石正一郎は、現在の赤間神宮の初代宮司になってひっそりと余生を過ごしたが、こうして維新革命の原動力になった人人は冷遇された。山口県民のなかに息づいている維新の誇りは、成り上がって中央政府でいい気になった者たちのそれとは異なる。功山寺決起以後に萩の俗論派を叩き潰すたたかいを押し上げ、その後の四境戦争や倒幕を支えた祖先たちへの誇りだ。士農工商の身分を乗り越え、世直しを成し遂げたことへの誇りでもある。これを維新以後の成り上がり者たちと混同するなど論外だ。


 B 最近出回っているもののなかには、長州はイギリスの手先になったテロ集団であり、吉田松陰などはテロ組織の親玉などという論まである。4カ国連合艦隊によって前田砲台が殲滅させられた後、イギリスは香港みたいに彦島を割譲せよと求めてきた。それで幽閉されていた高杉が引っ張り出され、長州藩を代表して交渉に当たった結果、断固としてはね除けた。前田砲台如きを殲滅した程度で勝ったなどというのは大間違いで、何なら長州の50万領民が受けて立つがそれでも戦争をやるか? と凄んでイギリスを追い払った。他国に屈服して明治維新を成し遂げたというような代物ではない。この歴史を重ねて見ると、今の対米従属がいかにみっともないものかがわかる。独立を成し遂げる気概のかけらもない。片隅でせっせと私物化に励んでいる有様だ。欧米列強に屈服する道を進んだのは徳川であって、こんなものが長州として一括りにされたのではたまらない。


  功山寺決起はわずか80人足らずで始まった。それが50万領民の支持を得て瞬く間に倒幕まで押し上げていった。長州藩内だけではない。戊辰戦争でも各地の農民や人民の支えがあってこそ幕府軍とたたかえたわけで、その地の民衆に依拠して兵站が確立できなければたたかえるものではない。松平などは搾取しすぎて領民から支持基盤を失っていたのが敗因だ。やはり例えきっかけが少数派であっても、人人の支持を得るなら多数派に転じるのが世の常だ。どん詰まりのなかから歴史は一気に動いていく。多数派を為した場合には支配の側は抗うことができないわけだ。


 それで選挙模様を見ていて思うことは、文字通り野党解体だが、国会そのものが国民からの信頼を失い、与党も野党も体を為していないのが現実だ。その浮き上がった状態で有権者の前へ出てきて、「どっちがよりマシか」を争っている。しかも5割の有権者を置き去りにして。幕末の世がどうだったのかは文献を読んだり想像することしかできないが、いまや下関でも子ども食堂が当たり前になったり、年寄りが餓死していくような事例も珍しくない。人人が飯も食えない社会という意味では、百姓が一揆を起こしたり子どもを間引いていた時代と何も変わらないではないかと思う。赤ちゃんポストとかいっているが、要するに子どもの間引きだ。


 時代が同じように閉塞して行き詰まっており、打開の展望が求められている。この桎梏となっている腐敗堕落した政治構造を突き破っていく力は圧倒的多数派を形成する国民にある。この力を束ねて正しく導いていく政治勢力の台頭が求められているということだ。選挙の結果だけに一喜一憂するのではなく、未来を見据えてかからないといけない。維新という点でいえば、「大阪維新」みたいな紛い物に維新を語らせてはならない。

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