いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

安倍陣営は万単位で票減らすか 首相お膝元の選挙区情勢分析

山口4区の各候補者陣営の出陣式。安倍陣営(左上)、藤田陣営(左下)、黒川陣営(右上)

 首相お膝元の山口4区では異様なる静けさが覆い、熱狂的とはいい難い雰囲気が漂っている。さめざめと選挙模様を眺めながら、「どうしたものか…」と考えている有権者が大半だ。安倍昭恵が企業や病院をはじめとした支援者のもとを懸命に回り、票固めにとりくんでいるのに対して、野党候補が乱立して批判票は割れることが必至であり、はなから安倍晋三の当選が確実視されて面白くないのである。ただ、そんな山口4区もまったく変化がないわけではない。世論の底流にはモリカケ問題への怒りであったり、春の下関市長選にあらわれたような私物化支配への批判が積もりに積もっており、改憲や戦争に向かっていく政治を危惧している有権者も多数いる。この批判世論の高まりのなかで、「安倍晋三は万単位で得票を減らす」という見方が静かに浸透している。4区にはモリカケ疑惑を追及してきた黒川敦彦の参戦という急展開もあったが、首相の地盤では何が動いているのか、記者座談会で情勢を論議した。

 

山口4区の瓦解は始まった 限界あるが確実に変化


  まず立候補の状況から見てみたい。

 

  自民党は安倍晋三、希望の党(旧民進党)が藤田時雄、日共が西岡広伸、無所属で黒川敦彦、郡昭浩の5人が立候補を届け出た。選挙区のポスター掲示板には郡のポスターがまったく貼られていない。選挙カーも用意していないようで、陣営といえるものが存在しない。実質的には4陣営による争いになっている。


  従来の選挙では、民主党、日共、自民党の3陣営による三つ巴のなか、安倍晋三が安倍派+林派+公明党+連合安倍派+宗教票を固めて勝ち抜いてきた。農協や漁協組織もみな安倍についてきた。民主党と日共は批判票の受け皿というより、はじめから勝つ気がない添え物みたいな存在感だ。それならなぜ出馬するのか? という疑問にもなるが、批判票を分散させる役割だけはしっかりと果たしてきた。野党側が心得ているというか、無投票では代議士としての格好がつかないし、安倍圧勝の添え物として市議選を落選したような男を出馬させたりする。それで「選挙で選ばれた安倍晋三」になるわけだ。一言でいうと、野党側のアリバイであり惰性だ。市政を見てもわかるように、日頃から日共議員団や自称「市民派」まで含めて翼賛化がひどい。実質的に無投票みたいな選挙をくり返してきたといっていい。山口4区の事情や歴史に疎い全国の人人からするとわかりにくいかもしれないが、独特の政治構造がある。


  安倍派にとっては「敵なし」なわけだ。まず第一に安倍&林支配のもとで野党が隷属関係を切り結んできたことに「一強」の根拠がある。社民であれ日共であれ、可愛がってもらわないと、市営住宅とか生活保護を支持者に斡旋したり、みずからの得票につながるドブ板をするのに支障を来してしまう。だから安倍&林支配に敢然と反抗するような勢力が県議会にも市議会にもほとんどいない。票欲しさで公金によって飼い慣らされる。隷属そのものだ。そして、飯を食う程度のポジションを得て、たまに批判めいたことを主張したりする。有権者向けのポジショントークみたいなものだ。しかし、欺瞞の皮を剥がしてみると、政党間に対立がないのだ。


  情けない話なのだが、「反対のための反対」を飯の種にする者もいるわけだ。こうした実態について、「なぜ野党を批判するのか!」と文句をいわれても、それが事実なのだから腐敗堕落したものに批判を加えるのは当然だ。有権者の多くがそんな日頃からの生態に辟易しているし、野党の堕落に支えられて安倍&林支配がまかり通っていることを見過ごすことなどできない。役所の職員などはとりわけ見抜いている。

 それが選挙で「民主党ですよ」「共産党ですよ」「私たちが受け皿ですよ」といっても、争点や理念で一票を投じる人は別として、一般の有権者にとっては魅力にならない。「バカではないのか」といって棄権してしまう。


 まず第一に、これが安倍圧勝の一つの側面であることを理解しないことには、4区の困難さは見えない。くたびれた野党も含めた政治勢力の最上段に安倍事務所が君臨している。総翼賛体制は国会よりもはるかに先行している。

 

 4区でおよそ半分の有権者が選挙に幻滅しているのはなぜか? に安倍圧勝の秘密を解明する糸口がある。

 

国会先行する翼賛体制

 

  しかし今回の総選挙では、そんな保守王国の牙城がかつてなく揺らいでいる。私物化政治への批判が強すぎるのもあって、安倍後援会の必死さがこれまでにないと各所で話題になっている。公示前に安倍事務所の私設秘書が戸別訪問していたが、モリカケ疑惑について「信用ならない」と随分叱られたそうだ。それが正直な選挙区の空気だ。後援会幹部たちのなかでも「2万は減る…」「7万8000くらいになったら代議士としても終わりだ…」などと嘆いている人人がいる。表向きの目標は前回得票の10万800票の維持だが、とてもではないが無理だと誰もが見なしている。傘下の企業を引き締めたり後援会名簿をもとに電話作戦を展開しているが、「余りにも評判が悪い…」「人気が落ちている…」とこぼしている。安倍晋三は選挙区には一度も戻らないというが、企業経営者や支援者にせっせと電話をかけてきている。本人も10万票維持に必死だ。現役の首相が7万票台にでもなれば格好がつかないからだ。

 

  陣営を引き締めるために徹底的に危機感を煽るのも選挙では常套手段だが、今回ばかりは本気で危機感を持っているのが特徴だ。医療機関に安倍昭恵が訪れた際も、これまでは挨拶だけ済ませてお見送りされて終わりだったのが、今回は各病棟に足を運んで手当たり次第に職員と握手して回るなど必死だ。その分、職員が集められて時間をとられ「私たちが集められている間、患者さんを誰が見るのか」という反発にもなっていた。さすがKYの異名をとるだけのことはある。前回選挙でも前前回選挙から1万8000票を減らした。今回さらに万単位で減らすとなると、「音を立てて4区は崩壊している」と見なければならない。選挙の度に得票を減らしてきたが、地盤としては安倍晋太郎の置き土産のうえに胡座をかいてきて、金庫番だった奥田とか武田みたいな老秘書が去ってからは得票を減らしっぱなしだ。これは安倍事務所の実力が落ちていることを正直に反映している。


  筆頭秘書として奥田がいた頃は、いわゆる左とか労働組合をとり込むのも得意で、後ろで手を回しながら市長候補を市民派としてプロモーションしたり、陰謀じみた手口が得意だった。これは世間の裏表を知り抜いた県警上がり特有のものだ。利害の異なる安倍派A組やB組、C組、D組から市民派、労組、宗教までふくめてコントロールする様を「奥田マジック」などと呼ぶ人もいた。総翼賛体制の源流がここにある。そのような絶対的支配のもとで選挙の苦労を知らないから、安倍晋三のような政治家ができあがる。選挙区としての責任を問わなければならないのは、世襲政治家を甘ったれた状態で送り出し、岸・佐藤の中央での権力に寄りかかって何がしかをしてやろうという体質が染みついていることだ。そのような中央依存型というか、先生、先生といっておこぼれに預かろうというような性根がはびこったことが、今日のような下関、長門の衰退をつくりだしている原因ともいえる。

 

野党の腐敗堕落が支え

 

  それで先程の話ともかぶるが、歴史的に労働組合上がりが支配の支柱として登用されてきたのも下関の特徴だ。山口銀行では労組出身者が役員への出世コースを約束されているし、長年下関市議会で議長として君臨していた小浜(林派)もサンデン交通の第2組合出身者だ。共産党左派もいて労働運動が激しかったのもあって、分裂に貢献してポジションを得た。同じく林派の県議・塩満も労組上がりだ。自治労も歴代の安倍派市政にとりこまれて今に至っている。「下関は宗教票と労働組合の買収にことのほかカネがかかる街」といわれてきたが、そのようにしてとりこまれて今がある。一筋縄に野党=保守と対決する政党という関係ではない。安倍洋子と連合をつないだ話など、市民オンブズマンをしていた浜砂あたりは鬼籍に入る前に白状しないといけないのではないかとも思う。真っ黒な歴史に彩られている。


  野党殲滅が国会以上に先行している。加藤寿彦(元県議、NTT出身)率いる旧民主党は今回、改憲を掲げる希望の党の候補者を応援している。出陣式は「100人が集まった」などと書いていた新聞社もあったが、連合関係者が30人にメディアが10人というものだった。小池劇場のドタバタもあったが体を為していない。長年連合を地盤にして県議会議員をしてきた分、「カトちゃんは今さら改憲を叫ぶのか?」と一般の支持者のなかで物議を醸している。出陣式では、「われわれは民進党の党籍を持っているが、民進党のわれわれが希望の党公認の藤田候補を推して選挙を戦っていくということだ」と歯切れの悪い弁明に終始していた。「加藤さんは改憲勢力になるのか?」と聞いてみると、「選挙が終わって(私は)立憲民主に行く。憲法改正反対は変わらない」と本人は話していた。


  連合では三菱は昔から隠れ安倍派として認知されてきたし、神戸製鋼は安倍洋子が工場にあらわれて檄を飛ばすような関係だ。これら鉄鋼関係で構成する基幹労連は希望の党の藤田支援を打ち出しているが、実質的には自主投票に近い。連合では自治労出身者の西嶋裕作(県議)が独断で希望の党支持を決めたとかで下部は反発している。これまでの選挙であれば、それなりに民主党候補の政策チラシのポスティングなどをしていたが、今回はそれもない。誰も何もしないのだから、選挙運動はゼロに近い。これは相当に票を減らすだろうと見られている。


  日共候補と民主党候補を足しても前回は3万票そこらだった。山口4区でもっとも民主党候補が躍進したのは09年の総選挙で、戸倉多香子が叩き出した5万8000票が最高だろう。戸倉自身は周南市出身で下関の事情がわからないため、恐らく振り回されたのだろうが、あのときは連合内部で喧嘩が勃発して、公示後に選対が2つできるという信じがたい選挙だった。加藤が主導する選対に対して、民社党出身の松原(三菱出身)や「市民派」を標榜する田辺よし子が安倍支持者の不動産会社にテナントを借りて分裂選対をつくった。そんななかでも5万8000票を積み上げたのは、一つには下関の汚れ野党とは違うのではないか? という一般の期待も含まれていた。演説の上手下手以上に一生懸命さが伝わってくるものだったというのもある。


  4区の選挙構図をあるがままに見てみると、ガタガタの連合が希望の党に変質し、そこに一定の批判票や連合票が回収され、同時に日共候補が1万数千票の組織票を独自候補に回収する。批判票をしっかり分散させる構造ができている。あとはしがらみがないという点において一定の新鮮さを持って乗り込んだ黒川にどれだけの得票が集まるかだろう。ただ、はっきりいってしまうと、そんなに生やさしい選挙区ではない。田辺よし子がついているという意味合いについて陣営がどう考えているのかはわからないが、下関では「安倍派に情報が筒抜けになるのではないか」と懸念する人だっている。警戒して寄りつかない人人もいる。とくに安倍離れしている保守系支持層はわかっている分警戒する。それを安倍陣営が笑って眺めている。「下関市議会で唯一の野党」などと全国に向かって発信するものだから、議会関係者たちは吹きだしている。


  右も左もわからないなかで乗り込んできたのだから無理もないが、誰かが伝えてやらないといけないことだ。本来なら田辺がお友達政治を批判した後に「お前がいうな!」の逆風が黒川陣営に及ぶことまで含めて、選対をとり仕切って適確に判断できる参謀役が必要だが、とにかく体当たりで選挙に挑んでいるから仕方がない。それで結果として県議選レベルに貶めてしまった場合、「4区はどうなっているんだ!」「なぜ選挙に行かないのか!」の批判にさらされるのが有権者なのだとしたら本末転倒だ。私たちは4区の有権者の政治意識が低いなどとはまったく思わない。

 安倍晋三への批判世論は強烈なものがあるが、徹底した組織戦で8~10万票を積み上げる現職を他の候補が乗りこえるほどの存在になり得ているかというと、残念ながらそのような状況にはない。選挙は蓋を開けてみなければわからないが、今のところ風任せでは対抗力にはならないことも事実だ。


 SNSなどで全国が注目しているだけに、仮に野党が敗北したとして「4区は民度が低い」「有権者の意識が低い」の大合唱になることは目に見えている。しかし、過剰に期待してバカ呼ばわりするのは違う。4区でバカ呼ばわりされるのは安倍晋三とかその界隈だけでいい。われわれとしては、選挙構造からして甘くないが、確実に地盤崩壊は始まっているという事実を伝えるほかない。思い通りにならないからといって、4区で難儀している有権者に矛先を向けるのは違う。どうしようもない政治構造のなかで、持って行き場がないから困っている。その見る目は相当に厳しいものがあるし、必ず得票に反映すると思っている。


  持って行き場がないなら黒川に票を入れろといわれて、4区を代表して国政に送り出したい男であると見なされるか否かが最大のポイントだろう。これは黒川陣営の選挙次第ということができる。黒川を応援しに来た山本太郎の演説には喜んでいる有権者も多い。よく勉強していると評判だ。国会のなかで孤軍奮闘している姿も知っているからこそ、「もっとやれ!」と思っている人が少なくない。しかし、その応援があるから勝てるという単純な代物でもない。


 4区の有権者は25万余りいる。このなかで8~10万票の現職を上回ろうと思うと、希望の党と日共候補が2万5000~3万票程度を回収したとして、投票率が80~90%の選挙にならなければ上回ることなどできない。つまり浮動票を相当にかき集めることができなければ歯がたたない。選挙で勝つとは具体的だ。

 

歴史的な変化の始まり

 

  とはいえ、楽勝な選挙でありながら安倍陣営はピリピリムードがすごい。12日におこなわれた彦島地区の演説会では記者クラブ所属の新聞社とテレビ局が会場から閉め出されていた。安倍晋三の意向のようで、秘書たちも「上の判断なので…」と困りながら対応していた。選挙事務所では、市長の前田晋太郎が秘書業務に復帰したのかと思うほど、筆頭秘書・配川や後援会幹部衆たちの指示で下っ端のように働いているようだ。公務そっちのけだ。議会で寝てばかりいる男が、代議士の選挙になるとせっせと働くのだ。いかに市政や議会が舐められているかがわかる。


 A 「万単位で減らす」の最大の根拠は市長選のシコリだ。林派は「安倍事務所がお好きにやればいいじゃないですか」が本音だ。所属市議や県議は表向き「安倍先生、頑張ってください!」と満面の笑顔で演説会や出陣式にあらわれているが、白い歯を見せても嘘が顔ににじみ出ている。


  塩満(林派県議)はあのインプラントの歯に400万円使ったのだとか、安倍派が悪口をいっている。目くそと鼻くそみたいなくだらない喧嘩だが、とにかく両派閥には大きな亀裂が生じている。うだつの上がらない林芳正について、林派のなかには「これほど度胸のない男が首相を目指すなど笑わせるな」という批判もある。仮に安倍応援で組織をフル稼働させるなら、林派トップは自派閥の瓦解を自覚しなければならない。それほど市長選の禍根は深いものがあるし、なまなましくひきずっている。持ちつ持たれつの均衡を破ったのは安倍派であって、「安倍晋三が中尾友昭とは肌が合わないから」という理由で首が飛んでいった。そして自分の秘書を無理矢理市長としてねじ込んだ。


 A 林派の議員たちは自分の支持者に向かって「安倍をよろしく」とはいえず身動きがつかない。あれほど市長選で叩き潰されて、面子も何もあったものではないからだ。山口合同ガスやサンデン、大津屋、サンデン造園、新ホーム等等、林派系列企業のなかでは相当に反感が渦巻いているし、なかには「万単位で減ればいいじゃないですか」と冷ややかに口にする人だっている。しかし、それらが他の4陣営に流れるかというと、流れない。棄権しようとしている。消極的反抗だ。安倍派も承知のうえで、「安倍さんが個人的感情でやり過ぎたんだ」「こうなることがわかっているのに、どうして市長選であそこまでやったのか…」とぼやいている。安倍派にせよ、林派にせよ、市長利権が欲しいだけなのだが、利害が衝突して喧嘩中なのだ。


  林派が機嫌が悪いもとで、目下選挙運動員になってうごめいているのが創価学会だ。とりわけ婦人部が何かにとり憑かれたように「安倍さんをお願いね!」とF票(フレンド)の集票に熱を上げている。この基礎票である長門市も含めた2万票余りが安倍票を底上げする。あと、安倍事務所の秘書が、選挙掲示板以外にも安倍晋三のデカイ顔写真のポスターを街中に貼り巡らせている。少しでも露出を増やそうとしている。


  選挙区で大逆転劇が起こる可能性は限りなく少ないが、しかし選挙はまだ終わってはいない。確実に牙城は崩壊を始めている。その途中経過としての選挙になる。代替わりも含めて安泰で安倍支配が続けられると思ったら大間違いだ。晋太郎や奥田が築き上げてきた地盤の劣化は著しい。林派との正面衝突も含めて、足下が見えないのに願望で突っ走って、自分で地盤をぶっ壊している関係だ。目先でどうこうならなくても、4区の有権者としては必ず安倍&林を突き崩す日がくるし、自分たちの力によって変化させなければならない課題でもある。このように「大和町」こと安倍事務所が歴史的にかさぶたになってきて、政治から経済にいたるまでガチガチの関係ができあがっているが、まさに市長から議会から行政にいたるまで私物化してきた構造とのたたかいでもある。諦めや幻滅ではなく、積極的な反抗に転じることが切望されている。タマがボロとかは二の次の問題だ。野党殲滅が大きく動いている選挙構図のなかで、「保守王国の4区が瓦解している」ことを思い知らせ、痺れさせることが重要だ。

関連する記事

Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterEmail this to someone

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。