いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

記者座談会 看過できぬ「反原発詐欺」の汚名 祝島を貶める者は誰か

 2011年の東日本大震災を前後した時期に、上関原発計画に対して長年反対を貫いてきた祝島で「一般社団法人 祝島千年の島づくり基金」なる組織が立ち上げられ、原発に頼らない自然エネルギー100%を目指す島づくりといって各種メディアに持て囃されたことがあった。当時、漁業補償金の受けとりを拒否し続け、断固として新規立地を阻む姿に全国的な共感が高まり、とりわけ反原発の理念に共感する人人のなかで基金に協力する人人があいついだ。しかし6年が経過してみて、資金集めはしたものの肝心な「自然エネルギー」設置は3カ所にとどまり、しかも基金は総額でいくら集まったのか、それに対して費用はいくらかかったのか、毎年の決算や売電収入はどのように処理されているのか等等が誰にも分からず、総会すら開かれないという不透明な事態に陥り、島内外で疑問視する声が高まっている。県外にいる祝島の支持者のなかには「反原発詐欺ではないか」と厳しい指摘をする人までいる。放置していたら祝島の名を貶めるだけでなく、「反原発」が一括りにされて攻撃材料にされかねないこと、人人を幻滅させかねないことから、本紙は真相究明にあたってきた。
 
 カネはどこに消えていった?

 A
 まず、何が起きているのか事実経過から見てみたい。
  ことの発端は4月初めに関西方面から1通の投書が本紙に届いたことだった。そこには祝島で山戸貞夫が代表を務める「一般社団法人 祝島千年の島づくり基金」の会計が長期に不明朗で、不透明不適切な運営実態にあることに疑義を募らせ、正常化を願う思いが綴られていた。本人もそれなりの額を寄付していることや、自身の周囲には祝島訪問時に現金でカンパしたものの領収証がもらえず終いの人もいることを訴え、適切に処理されたのだろうか? と思いを記していた。心ある島民のみなさんには、黙認して支持者を失望させるのではなく、浄財を寄付している人人の思いに応えて正常化のために奮起して欲しい旨が綴られていた。
  内容としては相当に踏み込んだものもあったため、長年取材にあたってきたわれわれとしてもこれはガセネタではないし、看過できないという思いで取材を開始した。島外の支持者を通じて、島のなかから「SOS」を発信しているのではないかと直感させるものがあったからだ。これまでも祝島の複雑極まりない事情や人間関係については最大限配慮してきたつもりだ。やみくもに記事にすればよいという代物でもない。しかし、黙認してはならない事象や、そのことによって原発反対運動が敗北してしまうという決定的な問題については遠慮なく批判を加え、解決することを願って「頑張れ! 頑張れ!」と援助してきた。投書や資料を見たとき、「またか…」「さもありなん」と思ったのと同時に、島民こそさぞかし難儀な思いをしているだろうというのが実感だった。しかし、実際に島内を取材してみなければ真相はわからない。投書だけを鵜呑みにするわけにもいかない。それで島に渡って複数の関係者に話を当てていった。
 D 「一般社団法人 祝島千年の島づくり基金」は2010年の五月に東京で飯田哲也、鎌仲ひとみ、山戸貞夫の3氏で方向性を協議して、2011年1月に発足した組織のようだ。同年4月に認可を受けている。設立にあたっては祝島島内での発想というよりは、飯田哲也氏などの「自然エネルギー100%アイランド構想」が引き金になっている。設立の目的は広く基金を募り、それを元手にして太陽光発電を設置し、その売電収入で原発に依存しない島づくりを実現するというものだった。
 定款には、「当法人は、祝島における自然エネルギーの普及促進によるエネルギー自治の実現を目指すと共に地域住民の結束と地域事業の活性化を支援する」と記し、そのために「祝島の水産、畜産、農産等の振興に寄与する活動」や「祝島の自然環境、文化、文化財の調査、保護活動」「祝島をロケ地とする映画撮影等の誘致活動」などをおこなうとしている。母体は「上関原発に反対する祝島島民の会」(島民の会)で、山戸貞夫が代表についたのも当時島民の会の会長だったからだ。また、設立時の役員も全員が当時の島民の会の運営委員だった。
  設立当初、活動資金を調達するために全国に寄付金を募った結果、数百万円が集まったとされている。実際にどれだけの金額が集まったのかは、山戸貞夫なり会計を担当していた息子の山戸孝以外には知らないようだ。あり得ない話なのだが、役員として名前を連ねているはずの人人に聞いても首を傾げて、寄付金の総額について答えられる人がいない。隠している風でもなく、「本気で知らないんだ…」と驚かされるものがある。いずれにしても、それは、30年間以上にわたって原発反対を貫いてきた祝島島民の粘り強い運動に対する厚い信頼、支援のたまものだった。それなしに寄付金が全国から寄せられることはなかった。
  その寄付金を原資にして2011年9月に第1号ソーラーパネル、2012年6月に第2号、2014年10月に第3号が島内に設置された。売電収入も入ってくるようになった。基金の目的はこの売電収入を島づくり活動資金にあてることだった。しかし、いつまでたっても報告はないし、島づくりの活動資金としても上がってこない。総会も開かれず、会計の内状がいつの間にかわからないようになっていた。
  定款には毎年3月までに1~12月の事業実績、決算、新年度事業計画や予算を通常総会に諮り承認を得るとなっているが、総会は開かれていない。毎年3月末日におこなわなければならないはずの決算総会は2015年3月に一度開催されただけだ。2年ごとにおこなわなければならない役員改選も1度もおこなっていない。そのことを不信に思った「理事」の一人が総会の開催を何度も何度も訴えたとかで、やっと開かれたのが2015年3月31日だった。
 しかし、その際に配布された資料の数字はとても信憑性があるとはいいがたく、まず貸借対照表と損益計算書が釣り合っていない。今手元にもあるんだが、この表記を「貸借対照表」「損益計算書」といっていいのかも疑問で、税務調査がきたらどう対応するのだろう? と思うような代物だ。経理がわからない者を対象にした数字なのかもしれない。経理に精通した者が目を通したら頭の中が「?」マークだらけになるだろうが、とにかく実態がわからないわけだ。組織としては、まず第一に会計処理できる人間が目を通す体制をつくらなければダメだ。
  島づくり基金の会計は山戸孝となっているが、実際は基金の口座は山戸貞夫が管理しているようで、問い詰められた孝が「実態はわからない」と島の人人に話している。どれほどの寄付が寄せられているのか、売電収入は年間どれほどあり、現在までどれほど積み上がってきたのか、結局のところ誰にもわからない。内状を公表するよう求める島民もいたが、それもしない。それで会計不明朗が囁かれ始め、島外の支持者のなかでも「あの基金はどうなったのか」と疑問視される事態に至った。カネのかかわる話だから、役員にしっかり口座の残高を示す通帳を開示するなり透明性を持たせればよいだけなのだが、ブラックボックスになってしまって不信感が募っている。組織として透明性を持たせるような体制にしなければならないわけだ。
  この6年の間に山戸貞夫は島民の会の代表をはずれた。それもさまざまな事情があった。島民の会の会計がどうなっていたのかは、島民の会の人人が一番知っていることで、いいたくなければいわなくてもよい。だが、大概のことは伝わってきた。それで清水敏保が新たに会長になっている。島民の会を母体として発足した島づくり基金の代表としては、本来なら清水が代表につくのがふさわしいともいえる。それこそ役員改選をしなければならない問題だ。だが山戸は島民の会の代表をはずれたあとも島づくり基金の代表の座におり、その会計も握ったまま、誰にもかかわらせたがらないのが実情のようだ。
  法務局に行って法人の登記を調べてみたが、設立時から役員の変更は一切ない。山戸貞夫が代表理事で、その後理事として参加し、島内ではみんなが「あの人も理事だ」と話していた人物は登記すらされていない。また、この間島民の会の役員をやめたことで島づくり基金の役員もおりたと自身では判断し、島内でもそのようにみなされている複数の人物が理事として登記されているままだ。2年に1度おこなうべき役員改選もやっていないため、そのままになっている。基金を立ち上げることだけが目的だったのだろうかと思うほど、その後の運営がいい加減だったことを伺わせている。
 祝島の人人のなかには、島づくり基金にカンパを寄せた人たちから「領収書がこない」「寄付したがどういった使われ方をしているのか」という問い合わせがきており、運営がどうなっているのか疑問を持っている人が多い。数十万円の印税を丸ごと基金として寄せた物書きもいたようだ。

 運動に純粋さは不可欠 正しい解決を期待

  島づくり基金の会計が不明朗な問題を憂慮している人人がもっとも問題にしているのは、「こんなことで祝島の原発反対運動を貶めてはならない」ということだ。寄付金を寄せてくれた全国の人人の気持ちのなかには、三十数年にわたって原発反対を貫いてきた住民たちのたたかいや、3・11以降に広がってきた原発反対の全国のたたかいへの深い信頼と期待がある。祝島はそのシンボルのような存在になっている。だからこそ、このような不適切な運営は、そうした人人への裏切り行為にもなりかねないと心配している。こうした問題が放置されたまま誤解だけが広がると、原発反対の運動への不信感が募っていくことにもなりかねない。「反原発詐欺ではないか!」と推進勢力が大喜びする関係だ。従って、きっちりと基金の管理体制を構築することが求められている。
  問題を単純化して整理してみると、飯田哲也や鎌仲ひとみ監督など反原発の旗手のような人人の肝いりで立ち上げた基金をメディアがこぞって持て囃し、そこに「反原発を貫いている祝島のために」と思った人人が多額の寄付をした。しかし、自然エネルギー100%をうたっていたのに設置したのは3カ所のみで、反原発運動への資金捻出や島づくりへの資金供出など実現したためしがない。そして寄付総額も売電収入の実態も明らかにされず、島民の会の会長職を追われた者が引き続き口座を握りしめ、むしろ島民の会が腫れ物に触るように距離を置いている。
 理念実現には困難性がともなうというのであれば理解もされるが、これでは反原発運動への信頼に便乗した悪質な詐欺だと指摘されても仕方がない。折角「祝島、頑張って」と思って寄付をしたのに、島民の会の活動には役立たず、知らないうちに山戸貞夫が管理している口座に流れるのだから…。
 飯田哲也や鎌仲監督も名前が出ている以上、何らかの態度表明なり正常化に向けた関与を強めるべき問題だろう。なにより、現在の島民の会がしっかりしないといけない。このような問題で全国の人人の期待や信頼を裏切ってよいわけがない。きっちりと正常化させることこそ、全国の人人への正しい対処の仕方だ。是是非非を明らかにしてケジメをつけるなら「よし、もっと応援しよう」となる。逆に問題を曖昧にしてしまうと幻滅させてしまう。関西方面にまで知れ渡っている以上、おかしな誤解が広がる前に対処しなければ嵌(は)められてしまう危険性だってある。
 A 反原発を叫ぶ者のなかにもさまざまいる。決して一括りにはできない。それこそ飯の種にして反原発に寄生する者だっている。原発反対を口の先で唱えるか否かではなく、すべて行動で見分けないといけない。勇ましいことをのべているが実は回し者であるとか、内部に潜り込んでもっともらしいことを唱えながら運動の分裂や敗北ばかり仕掛けるくせ者とか、飛び跳ねて原発反対勢力の印象を歪んだものにする輩とか、気をつけないといけない者だっているわけだ。警戒ばかりしても仕方がないがそれも現実だ。
 みんながみんな福島事故を目撃して純粋に原発はダメだと思っているなら世話はないが、そのような世相に敏感に反応して「これからは自然エネルギーがビジネスになる!」と勝機を見出して仕掛ける人だっている。有名になれると思って売り込みをはかる人もいる。福島の苦しみに同情する人ばかりではない。“他人の不幸は蜜の味”で自身のもうけに転嫁しようとする人もいるということだ。だからこそ祝島の運動はそうではないとはっきりさせて、純粋に進むべきだ。
  別件なんだが、上関の反対運動とかかわって室津に移住してきた高島美登里(自治労書記出身の自然保護活動家)が県内外の反原発支持者に魚を直送している商売についても疑問視する声が以前から上がっていた。生きていくために収入が欠かせないのは事実だが、反原発支持者たちは「祝島の魚」を買って、祝島を応援しているんだ! とまるで信じ込んでいた。毎月のように数千円分購入している人だっていた。ところがあるとき、祝島の人人が「いつも美味しい魚を頂いています」と感謝の連絡をもらって「いったい何の話だ?」となった。祝島の漁師は誰一人として高島に魚を卸していなかったからだ。それでわかったことは、高島が魚を買い付けているのは室津白浜の推進派漁師だったことだ。本紙が高島宅に行って意見を求めたが「話すことはない」とドア越しに追い返される始末だった。
 これも一種の反原発ビジネスなのかなと思わせるものがある。宣伝チラシには確かに「上関の魚」とあるが、購入する支持者の側は「祝島の魚」と聞いてそのように信じている。どうしてそうなったのかはっきりさせるべきだろう。「食べて支援」によって支援されるのは祝島ではなく高島なのだとすると、消費者はどう思うだろうか。目くじらたてるわけでもないが、ちょっとした産地偽装でもある。よくこんなことを思いつくものだと恐れ入るわけだ。上関の魚ではあるが、祝島ではなく室津の推進派漁師から仕入れていると説明したうえで消費者との関係を切り結ばなければ、偽装を疑われても仕方がない。
  「祝島千年の島づくり基金」の存在自体を否定するものではない。それで島づくりや若手の育成、産業振興、国策と対峙するための資金が捻出されるなら、素晴らしい枠組みなのだろう。しかし現実には資金管理の在り方や組織運営の方法まで含めてとても正常とは思えない。島内の不信感もすごいものがある。総会も開かずに果たして税務申告しているのだろうかという疑問もある。従って、祝島の反原発運動を貶めないためにもみんなが納得するように解決することが重要だ。組織としてももっと民主的に意見が交わせる仕組みが必要だ。信頼失墜を指をくわえてながめているのか、「いや、祝島の反対運動を純粋に進めていくんだ」という力を勝たせるのか問われている。
 こうして新聞紙面で世間に知られることについて恥さらしだと怒る人もいるかもしれない。しかし、グジグジして何も始まらないのであれば、広く社会的な判断を仰いで是是非非をはっきりとさせることも大切だ。というより、山戸親子が通帳を開示して収支報告をきっちりやればよいだけの話だ。それこそが誤解を解く鍵になるだろうし、場合によっては激怒される可能性だってある。誰のせいでもなく、本人自身の振る舞いや対応にすべてがかかっている。
 部外者が後方支援できることは限られている。あとは島民のみなさんの頑張りに期待するしかない。祝島の人たちは必ずや正しく解決にあたるだろうと信じている。全国の支持者の方方も、早とちりや誤解をして幻滅するのではなく、もう少し見ておいてほしい。複雑な事情も抱えているが、難儀しながら頑張っている島民が大半で、みんなが純粋かつ懸命に反対運動に献身してきた。これだけは嘘偽りのない事実なのだから   。
 一般社団法人を隠れ蓑にしたカネ集めという批判を払拭して、祝島の島民たちのために機能する基金として確立されないのであれば、そのときはネットなりSNSで名指しで真相を拡散してもらってもかまわない。しかし、解決できない問題ではないし、島民の会が責任を持って管理にあたるはずだ。
 あと、官報にも掲載された「一般社団法人」において、まさかこのような事態が黙認されるということもないだろう。しっかり対応しなければ、それこそ役員に名前を連ねている人人も無関係では済まないし、祝島の名を貶めてしまう関係だ。ある意味、正常化するしか選択肢はない。

関連する記事

Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterEmail this to someone

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。