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佐賀空港へのオスプレイ誘致 漁業者説明会は反対が圧倒

 佐賀空港へのオスプレイ配備計画をめぐって住民の反対運動が続いている佐賀市内で、26日から防衛省が地権者説明会を開催している。防衛省は、オスプレイ配備にともなって佐賀空港西側の土地33㌶を新たな自衛隊駐屯地として整備し、格納庫や駐機場、弾薬庫などを建設することを計画しており、地権者に対する説明会ははじめてとなる。だが、昨年の住民説明会に続いて参加者からは反対意見が圧倒し、オスプレイ基地化に反対する地元の強い意志を突きつけるものとなった。
 
 国策の諫早湾干拓でも被害甚大

 佐賀県有明海漁協南川副支所では、26日の午前(現役漁業者)と午後(引退した漁業者)の2回説明会がおこなわれ、対象となった255人の地権者のうち113人が参加した。とくに90人の漁業者が参加した午前の部では、強い反対意見が続出し、防衛省に対して「買収には応じない」と漁協としての断固たる意志を突きつけた。
 防衛省が取得をめざしている佐賀空港隣接地の33㌶は、佐賀県有明海漁協の南川副、早津江、弘江、大詫間の四支所に属する漁業者らが所有する土地で、南川副と弘江では、漁業者個人が出資している土地も含め漁協として不動産を登記している。土地の大半を所有し、漁協の規模として最大の南川副支所の動向が、計画全体の行方を左右する重要な位置を占めている。


 非公開でおこなわれた説明会には、防衛省からは九州防衛局の川嶋局長以下職員、佐賀県の落合政策部長、漁協理事などが参加した。冒頭に佐賀県有明海漁協南川副支所の田中浩人運営委員長が、南川副支所としては運営委員会が全会一致でオスプレイ配備計画反対を決議し、共有地の地権者の組織である「国造搦(がらみ)60㌶管理運営委員会」の総代会でも反対で一致していること、佐賀空港建設時には県と地元八漁協との間で“自衛隊とは共有しない”とする公害防止協定を結んでおり、日本最大シェアを誇る有明海のノリ養殖の未来を守るためにも計画そのものに反対であることを明言した。


 参加者によると、当初、組合員から、佐賀空港建設にあたり、関係自治体四首長が立会人となり、佐賀県知事と有明海八漁協の代表者の間で結んだ公害防止協定で自衛隊との共用を明確に否定しているにもかかわらず、その存在に触れることなく、説明会実施へと手順を進めた県当局の無責任な対応を問う声が出て、「なぜ説明を聞かなければならないのか」と問い詰める場面もあったという。


 防衛省は、「安全保障環境」を整備する必要から、購入したオスプレイ一七機とあわせて、佐賀県北部の目達原駐屯地に所属するヘリ部隊50機を加えた合計約70機、約700~800人の隊員を佐賀空港に配備する予定であること、佐世保基地との一体運用などにおいて「佐賀空港が配備先として最適の飛行場」であることを強調した。もともと主眼であった米軍のオスプレイ訓練基地化については「一旦とりさげた」ものの、可能性は否定していない。自衛隊機の飛行時間も「朝8時~17時」を「基本」(例外もある)としており、年間1万7000回(1日当たり60回程度)の離発着を見込んでいるとした。あわせて夜間離発着訓練をおこなうこと、必要において深夜や早朝など時間外に飛行する場合もあることにも言及した。だが、地権者から計画について賛同する意見は皆無で、ノリ漁業への影響、汚水や雨水などの処理による有明海の環境への影響、あいつぐ墜落事故の原因、有事の際の対応などを追及するとともに、これまで国策に協力してきた有明海漁協や佐賀市民の信頼を裏切ってきた国の責任を問う意見が圧倒した。「最終的に国は土地を強制収容するつもりなのか?」の問いに対しては、防衛省側は「強制収容はしない」とのべた。説明会の時間は予定の一時間半を大幅にこえて二時間以上にのぼった。


 説明会を終えて、取材陣の囲みを受けた南川副支所の田中運営委員長は、「全体を通じて賛成意見はまったく出なかった。南川副支所のノリ漁業者は今後も反対を貫いていく姿勢に変わりはない」としたうえで、主な反対理由として「佐賀市長も立会人になった佐賀空港建設に関する公害防止協定に“自衛隊とは共用しない”とはっきり明記されており、その約束についての説明がされていない」とした。


 また、ノリ養殖への影響として、「オスプレイ基地のために周辺をコンクリートやアスファルトで固めれば、さらに淡水が海に流れ出してノリのバリカン症(低塩分海水や食害によってノリ葉体が消失する現象)などの影響は避けられない。実際に佐賀空港ができてから滑走路の処理水や、大雨時の雨水が海に流れ込む早さが増し、ノリ網からノリ芽が消える症状が出ており、さらなる開発は確実に被害拡大に繋がる」「国策に関していえば、諫早湾干拓事業においても漁業被害を受けたら補償するという約束があったが、佐賀県でも西南地区では諫早湾干拓によってノリ生産にかなりの被害が出ているにもかかわらず、国からは何の補償もされていない。この農水省の対応を見ていると、防衛省の説明も信じることはできない」「昨年12月には沖縄でオスプレイが墜落したが、ノリ養殖は昼も夜も海に出て作業をする。海上だから安全という話にはならない。説明会の最後にも発言したが、オスプレイが飛ぶ有明海でなく、やはり佐賀はバルーンが飛ぶ平和な空であって欲しいと願っている」と強調した。なお、条件交渉にも応じる構えはなく、今後、「同じような説明を受ける必要もない」とのべた。

 決意語るノリ漁業者ら


 参加したノリ漁業者は、「漁民はみんな反対の腹を決めて参加している。沖縄での墜落事故もあり、有明海ノリの存亡にかかわる問題だ。防衛省は、駐屯地から排水は浄化槽に溜めて水質管理して流すといったが、環境基準にあわせてペーパーを書いているだけ。一度でも豪雨が降れば、あの程度の設備で対応できるはずもなく、なし崩し的に海に流されるのは目に見えている」「諫早干拓問題を見ても、農水省は有明海を見捨てたも同然の態度をとってきた。二枚貝は死滅し、小長井や多良のタイラギ漁などは壊滅的な被害を受けており、多くの漁師が廃業して陸に上がった。生活の場をこれ以上汚されてたまるものかという思いがある。安心して生活できる場を次世代に受け継いでいくことが私たちの世代の務めだ。防衛などというのは付け足しに過ぎず、アメリカと一緒になって軍備拡張をやりたいだけの話だ。安全保障という言葉を巧みに並べて国民を黙らせ、アメリカのいうままに基地もつくり、武器も買う。国民の税金の使い方についても大きな間違いを犯している」と語った。


 男性漁業者は、「防衛省は誰も反対できないようなきれいな言葉を並べて説明していたが、実際の行動はともなっていない。諫早干拓では、被害が出れば“真摯に協議する”といっていたものの、協議するだけで“被害はあるが諫早干拓との因果関係が立証されない”といって何の対応もとらない。空港周辺のノリ漁場は、川からの栄養が溜まり、昔からノリ養殖にとっては最高の海域。ここが崩されたら、有明海は致命的な打撃を受けることになる。そのために交わした佐賀空港の公害防止協定を、古川前知事が無視してオスプレイ配備計画を黙認し、それを自民党への手土産にして衆議院議員に鞍替えした。このような背信行為を棚上げにして、軍事基地にさせろという話をまもとに聞くことなどできない」と怒りを露わにした。


 元漁協理事の男性漁業者は、「例え土地が防衛省のいう14億円程度で売れたとしても、1軒あたり高くても4、500万円程度。有明海の環境さえ守れば、1年で稼げる金額で、その涙金のために未来をつぶすことなどできない。説明会の最後に川嶋局長は、“普通は自衛隊の基地をつくるのに住民から反対されないし、既存の基地は地域住民との関係も良好だ”といい、あたかも反対するのは希有な例であるかのような発言をしていた。それなら喜ぶところにつくればいいし、“民間の国際空港として軍事基地化はしない”という当初の約束を破ってまで、地元が反対する佐賀空港に持ってくる必要などないはずだ」とのべた。


 午後からの説明会に参加した元漁業者の男性は、「佐賀空港は北朝鮮のミサイルの標的になるが、本当に安全が保障できるのか? という質問もあったが、防衛省はまともに答えていなかった。自衛隊の次には必ず米軍が来る。そうなれば、静かで豊かな有明海沿岸の暮らしは脅かされる。沖縄の辺野古基地にしても、日本がアメリカの盾になっていることが最大の問題で、汚れた政治家の手土産のためになぜ佐賀空港を差し出さなければいけないのか。この問題は漁民だけの問題ではなく佐賀市民、県民、さらには全国民の問題。これまでの筑後大堰、諫早干拓、佐賀空港建設も執行部や政治家に一任した結果すべて押し切られた。勝つまでたたかう腹づもりで地域住民が一丸になって反対しなければいけない」と話した。

 平和の為に地域が結束

 地域住民の間でも、地権者説明会の動向を注視しながら、安倍政府の下で地方自治や住民生活をないがしろにして進行するオスプレイ配備計画への論議が強まっている。


 自治会長の男性は、「この川副町は室町時代からの干拓によって田畑をつくって発展してきた町。今でこそ減反政策の補助金なしではやっていけなくなっているが、食料増産のための国土造成といって大大的な干拓をして、コメ不足の時代でもこの地域は全国一のコメ生産地になった。だが、国の農政改革のなかでコメづくりだけでは食べていけなくなり、干拓地の使い道も見つからないので県が空港を誘致した。農業も輸入自由化で一気に減反政策が進み、ついにはTPPのために農協を解体するという話に至って農漁業者の怒りに火を付け、前回の知事選では自民党候補の樋渡を引きずり下ろした。豊かだったはずの川副町が国策に振り回されたあげく、ついには軍事基地になるということに愕然とする思いがある。ここで生まれ育ったものとして黙っておれない」と反対運動に立ち上がった動機をのべた。


 別の農業者の男性は、「安全保障というが、今の朝鮮半島の動きをみれば、アメリカの軍事作戦に日本が加勢をしているだけだ。イラクやシリアの状況を見ても、アメリカが一方的に攻撃した国は出口のない泥沼の戦争が何十年も続いている。基地があるところにはミサイルが飛んでくる。自分たちの目先の利益のために簡単に人を殺すような軍事基地ではなく、安心して暮らせる郷土を子どもや孫に残さなければいけない。漁業者任せでなく、農業者も結束して反対していきたい」と決意を語った。


 原発再稼働に同意した山口知事や、「震災は東北でよかった」と発言して辞任した今村復興大臣(佐賀出身、九州比例区選出)の無責任ぶりへの批判も語られており、権力を振りかざして容認を迫る安倍政府の腐りきった実態とともに、地域や生産現場に根を張った力強い反対運動を勝つまで貫いていく決意が口口に語られている。

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