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村岡知事が埋立許可 要になる祝島の漁業権

 山口県の村岡嗣政知事は3日、中国電力が申請していた上関原発の建設予定地である四代田ノ浦の海を埋め立てる工事の免許延長を許可した。埋め立て免許の新たな期限は19年7月まで。2011年の福島原発事故を経て全国的に原発再稼働に反対する抗議行動が盛り上がっている最中に、再稼働どころか原発新規立地を前に動かす決定であり、首相のお膝元で突破口を開こうとする力が働いていることを示している。
 
 首相お膝元で新規立地動かす 攻防激化は必至 08年段階の振り出しに戻る

 村岡知事は、中電に埋め立て免許延長許可を出すにあたって、「原発本体の審査が国の方で事実上ストップしている。見通しが立たない中で土地の埋め立てを進めるべきではない」とし、原発の着工時期の見通しが立つまでは工事を再開しないようにとの付帯条件をつけた。世論を恐れたへっぴり腰ながら、その行動は「見通しが立つまで工事しないように」とは裏腹に埋め立ての許可を出して、工事を認めるというものだ。行政の許認可としては「どうぞ原発をつくってください」をやったにほかならない。鹿児島県知事が川内原発の再稼働を停止させようとしているなかで、山口県では首相肝いりで知事になった者が流れを引き戻すかのように新規立地に道を開く。全県民の安全を守る立場にある知事が今回の決定を出したことに対する責任は重大である。
 この埋め立て許可を巡る県と中電の問答は、八年前までさかのぼらなければ事情は理解しにくい。2008年10月に二井知事が埋め立て免許を交付したが、中電は期限である3年を経ても埋め立て工事に着工することができなかった。その間2011年に福島原発事故が起こったが、工事に着工できなかった最大の要因は祝島が漁業権放棄に同意しておらず、二井知事の免許交付自体に大きなインチキがあったからにほかならない。本来であれば、海域全体の漁業権者の同意を得たうえで埋め立て許可は出されるのに、上関の場合は漁業補償交渉も完全に終了していないのに、先走って許可を出したことから、中電は海に一切手を付けられない状況になった。祝島の漁業権が放棄されていない状況で下手に工事をすれば、逆に漁業権侵害で訴えられるのが中電で、埋め立て許可は出ているのに工事ができないという全国でも稀なネジレ現象になっていた。従って、許可が失効しないように一年毎に着工する素振りを見せ、「祝島の実力阻止にあってできなかった…」のパフォーマンスをくり返して首の皮をつないできた。
 今回の決定でいっきに工事が前に動き出すという代物ではない。「見通しが立つ」状況になるには、祝島に漁業権放棄を同意させなければ原発建設は一歩も前には進まない関係はこれまで同様変わらない。中電にとっても埋め立て許可が出たからといって工事ができる関係ではなく、元の木阿弥、つまり2008年段階の振り出しに戻ったというだけである。祝島としては村岡知事の推進宣言というか中電へのゲタ預けにも見える今回の決定を受けて、どうこれを迎え撃つのか、補償金受けとりを拒否して漁業権放棄を認めない斗争をどう強めるのかが問われている。

 祝島は漁業権放棄せず 先走った二井知事

 上関原発をめぐる漁業権問題は、2000年に関係8漁協(四代、上関、室津、祝島、平生、田布施、光、牛島)で構成する107共同漁業権管理委員会が、祝島の反対を押し切って中電との間で妥結した漁業補償(125億円。うち四代漁協23億8500万円)をもって、「共同漁業権管理委員会の多数決で漁業権問題は決着済み」といってきた。しかし実際には、祝島の漁業権は消滅しておらず、補償交渉のテーブルについたことすらない。何年にもわたる補償金受けとり騒動は、祝島が漁業権放棄に同意し、さらに補償金を受けとり、妥結の判を押さなければ原発はどうにもならないことを暴露してきた。だから、二井知事および県政の側は県漁協を使って、「漁業補償金を受けとれ」と必死に工作してきた。解決済みならムキになる必要などなかった。
 本来なら関係漁協すべての同意、すなわち漁業権放棄の決議があってはじめて出せる公有水面埋立免許を2008年に二井知事が先走って許可し、「管理委員会の議決に拘束される」という最高裁判決を、「祝島の敗訴」といって騒ぎ、「祝島の漁業権はなくなった」「原発はできるのだから諦めろ」と大がかりなパフォーマンスを打った。当時、中電は土建業者を焚きつけて飯場建設や現地田ノ浦での採掘などをやりいまにも原発ができるような雰囲気をつくっていった。それとセットでまずは祝島漁協を山口県漁協に吸収合併させるよう県水産部が誘導し、さらに県漁協を通じて漁業補償金の受けとりを迫っていった。宙に浮いていた漁業補償金は長年法務局に供託金として眠っていたが、10年の時効が来て国庫没収になる寸前、つまり漁業補償交渉決裂となる2010年段階でも祝島が拒否したことから県漁協が慌てて引き出し、預かる格好になった。その後も受けとっていない補償金に対して、高額な税金が税務署から請求されるぞ!(請求されなかった)等等とハッタリや恫喝など何でもありで迫っていったが、祝島ははねつけていた。
 こうして2009年から何度も受けとりを拒否してきた。「原発はできるからあきらめて受けとれ」だったのが、震災後は「福島事故もあったし、原発はできないから受けとれ」といい、いずれにしても受けとらせることに必死なのが県漁協および、背後でいつも糸を引いている県政であった。
 いずれにしても、祝島の漁業権放棄については総会の3分の2同意が必ず必要で、その手続きは一度も祝島ではやられていない。補償交渉のテーブルについたこともないまま、中電が振り込んできた補償金を「受けとる」ことを3分の2以下の多数決で決めて「漁業補償交渉の完全決着」などと騒いできたが、決着などしていない。漁業権放棄をするためには総会の3分の2以上の同意が不可欠で、なおかつ一人一人の組合員に書面同意を取り付けて補償金を分配しなければ「完全決着」にはならない。祝島を除いた関係7漁協では、107共同漁業権管理委員会が補償交渉を妥結する前に、総会における3分の2同意も含めて正規の手続きを踏んでいる。補償金を受けとるさいには判子を持って組合員が漁協に足を運び、書面同意に応じている。
 公有水面埋立法では漁業権の権利者である漁業者に対して「損害賠償をしなさい」となっているものの、「漁業権を放棄しなさい」とはなっていない。漁業をやりたがっている者が漁業権を行使することについて誰も止めることはできない。海面が空いていれば、漁場として利用するために漁業権が免許されるというのが基本原則である。
 補償金を返却して漁業権を再度交付してもらった事例も、全国ではある。

 郷土を廃虚に導く国策 全国的斗争で撃退

 山口県当局は祝島が漁業権を放棄していないことは承知のうえで埋め立て免許を交付し、恫喝や懐柔などあの手この手で祝島をあきらめさせたうえで中電が工事着工するという計算であった。だが、祝島をあきらめさせることはできず、埋め立て免許の期限が切れ、その後は中電と県が「延長許可」を認めるか否かを巡って質問と回答を往復させ、超スローモーションのキャッチボールのように時間稼ぎをやっていた。それが二井知事―山本知事―村岡知事へと継承されていた。
 そうした茶番的な時間稼ぎをやめて再度免許を交付したというのは、今後3年以内に祝島問題に決着をつける、すなわち受けとりを容認させるために身を乗り出すという意志のあらわれにほかならない。従って祝島に対する攻勢は一層強まることが予想され、全県、全国と連帯して新規立地を撃退する斗争を強めることが待ったなしとなっている。
 原発は福島事故の教訓からも明らかなように、全県民の生命や生活を脅かし、農漁業をはじめとする地場産業を壊滅に追い込み、「絶対安全」ということはない。東日本大震災に続いて今年四月には熊本・大分で大規模地震が発生しており、地震の活動期にあることも明らかになっている。山口県内には東部に岩国断層、中央部に大原湖断層、西部に菊川断層、海中には周防灘断層群や安芸灘断層群などが集中しており、上関原発予定地と伊方原発のど真ん中には中央構造線断層帯が横たわっている。こうした自然災害だけでも対応不可能なのに、安保法制で海外への武力参戦を可能にし、テロやミサイル攻撃の標的にもなるというデタラメが真顔で進行している。原発五四基を腹に抱えて戦争するというのである。
 沖縄・辺野古や高江で横暴なだけでなく、参院選後の安倍政府によるごり押しが山口県でもあらわれている。後は野となれ山となれで郷土を廃虚に導く国策に対して、全国的な政治課題とつなげて対決することが迫られている。

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