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路線価の倍で中電の土地購入 下関市 不可解な前田砲台公有化事業

本池市議の一般質問

 10日に開会した下関市議会の6月定例会で、代表質問に続いて個人質問がおこなわれた。通常の一般質問とは異なり、予算にかかわる質問でなければならないという特別ルールで運営された。下関市民の会の本池妙子市議は、5億円が計上されている前田砲台跡地の公有化事業について疑問点を追及したほか、市内で深刻になっている失業の実態とあわせて緊急雇用対策の在り方について問い、その他に小中学校の統廃合計画とかかわった適正規模・適正配置事業、唐戸地区再開発事業について執行部の見解を問うた。本池議員の質問と執行部の答弁を紹介したい。
 本池 史跡・前田砲台跡公有化事業についてお聞きしたい。当地が幕末に封建制度から近代統一国家へと発展させた維新のたたかいにおいて、歴史的意義をもつ舞台となったことの意味や、その評価をめぐっては見る者によってさまざまな見解があろうかと思う。このなかで、文化財保護法によって国の史跡へ指定する動きになっているわけだが、まず、5億1267万円もかけてなにがおこなわれようとしているのか、事業の概要を説明してもらいたい。
 また、前田砲台跡の土地は現在だれの所有権になっているのか、権利者は何人いるのか、また事業費の総額5億1267万円のうち、土地の買い取り価格、建物の移転補償、保存管理計画策定など、それぞれいくら使うのか内訳を教えてほしい。
 西岡教育部長 前田砲台跡は平成22年に国の史跡に指定された。確実な保存と将来の整備活用を目的として公有化するものだ。対象面積は5634㎡。そのうち道路部分を除く5526㎡を買いとる。対象地は中国電力株式会社の所有で、鉄筋コンクリート造りの4階建てと3階建ての社員寮があり、配電訓練施設としても利用している。公有化にあたっては建物や施設の除去も必要なことから移転補償が必要になってくる。移転補償は八割が国の補助を得たうえで、単年の直接買い上げ方式でおこなう。土地については本年度土地取得特別会計において起債により先行取得して、来年度から10年かけて一般会計へ買い戻す先行取得起債償還方式としている。また、保存管理計画を25年度と26年度にかけて策定する。こちらの経費も国から5割の補助が得られる。
 事業費の内訳であるが、土地取得費として2億5000万円、社員寮、配電訓練施設の移転補償費として2億5977万1000円、保存管理計画策定経費として290万円を計上しており、総額で5億1267万円となっている。
 本池 私も現地に行ってみたのだが、公有化する敷地のなかにある建物は中国電力の寄宿舎として長年使われていた施設だった。土地も中国電力の敷地だ。「移転補償」に2億5977万円かけるということだが、中国電力の寄宿舎を解体して新たに同じ環境の建物を別の場所に建てる費用ととらえたらよいのか。また、その場合に移転場所というのは下関市内になるのか確認したいと思う。あと、今現地にある建物は築何年ぐらいのもので、その資産価値としては、どれくらいのものと見なしているのか教えてほしい。
 西岡教育部長 それにつきましては今後相手様と交渉しながらしていくことで、まだ具体的な交渉に入っていない。この予算がついて交渉していくことなので、通常の補償の見積もりということで、建物や訓練施設、駐車場について専門業者に委託して対象物件の移転補償調査等を実施して算定することとなっているが、算定の根拠については国が定める損失基準に基づいてやっている。
 本池 移転補償なのだが、市内に移転するのか、同じような建物を建てるのかといった内容はまだわからないという解釈でよいか。
 西岡教育部長 それについては相手様の意向をまだ全然聞いていないので、通常の基準に基づいて予算要求の段階の見積もりを出さしてもらっている。
 本池 かなり古い建物であると思う。調べたところ、1棟が昭和51年に建てられて築37年、2棟目が昭和60年なので築28年。鉄筋コンクリートということで耐用年数はやや延びるとしても、一般の住宅なら20年程度で資産価値はほぼなくなると思う。築37年、築28年の建物の現在の資産評価が2億6000万円近いと下関市は見なしているということだが、この評価はどなたがおこなった額なのかお聞きしたい。
 西岡教育部長 最終的には市になるが、委託に出して専門業者にお願いしている。これまでの鑑定や調査結果に基づいて修正するので、今回の予算額がそのまま補償費になるわけではない。
 本池 それで現在、その建物のなかに住んでいる住民がいるのだろうか。聞きとりのさいに、担当課から「移転のさいには人が住んでいれば、持ち主への補償だけでなく、入居者への補償も必要だ」といわれたのが印象に残っているのだが、周辺の住民の方にも聞いて回ったところ「4、5年前からはだれも住んでいない」と複数の方が話しておられた。電気メーターも動いておらず、周囲には草が生い茂って、とても人が住んでいるようには思えなかった。市としてはどのように状況を認識しているのか教えてほしい。
 西岡教育部長 今は職員の方(入居者)はいないと聞いている。その辺も含めて時点修正して再算定することになろうかと思う。
 本池 移転するか否かも含めて「中電が決めることだ」ということであれば、例えばとり壊すだけのものに、「移転補償」が出されるなら疑問が生じる。解体費用だけならば、数字は当然違ってくると思うからだ。解体した後、中電が別の場所に同等の施設を建てるかはわからない。それは中電次第であって建てないかもしれない。しかし、「移転補償」という形で多額の費用は出る。こういうやり方については私はたいへん疑問を抱いている。下関営業所も随分人員が合理化されて減ってきているようだが、前田の寄宿舎も実質的には遊休施設ではないかと思う。
 中国電力については、現在の苅田(かんだ)社長が下関出身であったり、下関商工会議所の林孝介元会頭が非常勤の取締役であったり、かかわりが深いのかなと思うが、歴史的史跡の公有化とかかわって、これほどの金額が一電力会社に渡っていくというのは、市民はどう思うだろうかと考えないわけにはいかない。老朽化して解体すらできない家屋は市内にたくさんある。「築30~40年近い遊休施設や土地が、五億円で買いとってもらえる中電はうらやましいな」「大企業の財産処分にはすごいお金が動くのだ」という声が市民のなかから出てきてもおかしくないと思う。
 それで、公有化してどのような利用・活用方法をイメージしているのか。
 西岡教育部長 25、26年の2カ年で管理計画を策定する。その後はその計画に基づいて整備活用にかかる基本計画を策定し、国の補助を得たうえで公開することになる。
 本池 あと、土地の評価額の問題だが、先ほど2億5000万円(5526㎡、1㎡=4万5200円)といわれたが、資産税課で路線価を調べたところ、国道沿いは1㎡=2万9000円だったが前田砲台側の高台周辺は1㎡=2万800円だった。土地の評価額があまりにも高いように思うが、どのような算定基準で計算されているのか教えてほしい。
 西岡教育部長 土地鑑定評価士2人からこの土地の鑑定をいただいた。路線価だけで土地が売買されるわけではないので、ちょっと割り増しになったりする。今後、これをもとに中電さんと交渉していくことになる。
 本池 「ちょっと割り増し」なのではなくて、倍以上になっている。「ちょっと割り増し」という表現はやめてもらいたい。路線価に近づくようにしなければ疑問が生じると思うがどうか。
 西岡教育部長 そりゃ当然、予算執行にあたっては最小の経費でということなので、当然交渉していくべきだと思う。
 本池 (公有化事業は)5億1200万円という巨額の費用をかけて、原っぱの状態になるというように認識したいと思う。
 
 創出はわずか60人 緊急雇用対策 昨年より予算半減

 本池 次に緊急雇用創出事業について質問する。今年の3月末、彦島の三井金属の子会社MCSが完全閉鎖したのをはじめ、最近では武久町の瀨戸﨑鉄工で60人の人員削減がおこなわれていたり、市内の失業状況は深刻化している。このなかで緊急雇用創出事業には当初予算に計上された1億円に加えて、今回の補正予算で起業支援型地域雇用創造事業として1億円が加えられている。合わせて2億円あまりの予算だが、この補助金によって何人の雇用人数が見込まれて何社の企業が対象になっているのか、当初予算、補正予算それぞれの企業数、雇用人数を尋ねたいと思う。
 森本産業振興部長 補正予算に計上した起業支援型地域雇用創造事業では25、26年度を通して15事業を実施して、雇用人数は29人を予定している。当初予算の1億円は16事業、31人の雇用を予定している。
 本池 一昨年の緊急雇用創出事業費は8億円で、昨年は4億円だった。それぞれの年の事業によって、何人の雇用がうまれたのかも年度別に教えてほしい。
 森本産業振興部長 平成21年度から緊急雇用制度がはじまったが、24年度までで2161人の雇用が創出されている。21年度が479人、22年度が574人、23年度が785人、24年度が323人となっている。
 本池 今年度は60人ということになるが、かなり今年度は少ない人数だと思う。雇用の問題は市民生活の安定にも関わる重要な問題であると思う。市内の失業状況に見合ったものでなければならないと考える。そのこととかかわって、市内の失業状況について、どのように認識しているのか、昨年との比較で答えていただきたい。また、その数字をどう判断されるのか聞きたい。
 森本産業振興部長 下関市の有効求人倍率を見てみると、本年4月は0・93倍。月間求職者数は5792人。そのうちパートを除く求職者数は4078人となっている。昨年同期と比較すると145人減少している。有効求人倍率の改善につながっている。ただ、依然として厳しい雇用情勢だと認識はしている。市長はじめ幹部職員が地元企業を訪問して求人確保要請をしているところだ。また、若者就職支援アドバイザーを通じて就職支援している。
 本池 失業状態は深刻で「劇的に改善された」といえる状態にはない。ところが、雇用創出の予算は大幅に減るばかりとなっている。予算額は一昨年よりも4分の1へと減っているが、失業者数、求職者数が2年前と比べて4分の1ほどに減った、つまり改善したという状態では決してない。貴船町にあるハローワークにはたくさんの市民が職を求めて通われている。単純な数字の比較でいうわけではないが、求職者数に対して、例えば今年度の雇用対象が60人というのは、あまりに少ないと思う。市独自の失業対策を実施する必要性について、どう考えているのかお聞きしたい。
 森本産業振興部長 国の補助でやっている事業なので、国政レベルの話になると思うが、当初と比較して予算や雇用人数が減っているということだが、ちょうど20年10月にリーマンショックが起きて、これが地方に影響が及んでくる時期だったと思う。この時点での有効求人倍率は0・68。21年6月には0・54と落ちた。それが24年度には1・00まで改善した。そうはいっても厳しい状態には変わりないので、今度は緊急雇用の視点が変わって、今回の起業支援型が創設されたのではないかと思う。国の施策としての事業だけでなく、市としての雇用対策としては、緊急セーフティーネットで離職者に対する緊急支援対策をしている。市単独で融資制度も設けている。そして起業への求人確保要請をしている。
 本池 やはり下関の産業は観光だけではないし、農林水産業や造船、鉄工、土木、建築、商工業などを含めて、地場産業を中心に経済が循環するよう、いかに行政としてかかわっていくかが、今後の下関の将来ともかかわった重要な問題だと思う。製造業の首切りが顕著だが、人口減少や現役世代の流出による少子高齢化、自主財源の減少など、近年は拍車がかかっている。こうした問題について自己責任の問題に収斂するようでは、事態はますます深刻なものにならざるを得ない。「アベノミクス」も連日の株価暴落や再度の円高局面に直面してどうなるかわからないが、産業振興、なかでも失業対策にもっと本腰を入れるよう求めたい。
 
 学校統廃合を推進 「適正規模 適正配置」 方針作りも急ぐ

 本池 下関市立の小中学校の統廃合計画については、江島前市長の時期に大規模な統廃合計画が「適正規模・適正配置」といって打ち出され、地域住民や勤労父母、市民のなかで大きな反発が起きた経緯がある。中尾市長はこの間、「強行はしないが、要望が出たらおこなう」としてきたが、「適正規模・適正配置」という言葉を聞いたとき、「学校統廃合」を思い浮かべる市民は多いと思う。平成27年度以降の方針をつくる組織を立ち上げるということだが、「統廃合を進める」という意味なのか聞きたい。
 波佐間教育長 26年度に計画が終了するので、それをもとに次の計画をたてるということである。
 本池 市長がいうように「要望が出たらおこなう」という従来の姿勢ならば、わざわざ教育委員会に付属機関を設置する必要はないと思う。27年度以降に例えば、どこの小学校とどこの小学校を統合すれば何人になるというような、具体的な計画案をつくるということなのか確認したい。
 波佐間教育長 子どもたちの学習環境をしっかり見据えて、どのような学習環境を作ることが望ましいかということかと思う。それぞれの地域で学習会をして意見を聞く中で、合意形成ができたところは統廃合をおこなうということだ。
 本池 少子高齢化で子どもの数がめっきり減っているのは事実だ。しかし「子どもが少ないからといって学校をなくすと、とくに農漁村では余計にでも若者は帰って来れなくなる」といわれている。条件が変わるからだ。人口減少が著しい豊北町では大規模な保育所統廃合がおこなわれたが、そのことによって拍車がかかるという事態にもなりかねないと思う。地域の住環境やコミュニティーともかかわった大きな問題だ。若い人が結婚して子どもを生み育てるには、働く場がないといけないし、産業振興、雇用確保の問題とも合わせて考えなければならないと思う。「行財政の効率化」だけで進めるべきではないという意見としてのべておきたい。
 
 483万円の計上 唐戸地区市街地開発 「計画作る」と

 本池 最後に唐戸地区市街地開発基本計画について質問する。補正予算には483万円の予算が計上されている。唐戸地区には唐戸商店街がある。リーマンショック以後、下関市民の生活も急激に厳しくなり、商店街でもたくさんの店舗が閉店していった。市はこの事業で何をしようとしているのか、簡潔に説明してほしい。
 都市整備部長 唐戸地区をとり巻く状況が変化しているので、意見を聞きながら唐戸地区としての街作りの方向性の見直しをおこないたい。
 本池 市は事業の主体ではなく、商店主が計画したことに国、県の補助金をとれるものを紹介する、ということか。
 都市整備部長 再開発事業は地域の課題解決に向け、地域のみな様で相互の理解を深め、事業を実施する市街地再開発組合についても、地域のみな様みずからが設立して事業計画をたて、施設の建設等をおこなうものだ。本市としても地域のみな様のご意向を聞きながら整備方針などを検討して、将来的な構想をお示しするとともに、必要な助言等をおこなっていきたいと思う。
 本池 昭和62年の唐戸地区再開発計画が頓挫していると説明されているが、市として教訓にしていることがあれば一言。
 都市整備部長 頓挫しているわけではなく、かなり時間がたっているので社会情勢に合わせて更新するということだ。

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