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市街地に1000人の訴え轟く 安岡沖洋上風力に反対する住民集会

前田建設工業による安岡沖風力発電建設計画に反対し、市民1000人がデモ行進(23日・下関市)

 下関市で23日、前田建設工業(東京)の進める安岡沖洋上風力発電建設に反対する大規模なデモ行進がおこなわれた(主催・安岡沖洋上風力発電建設に反対する会)。6月22日に続く2回目のデモ行進となったが、前回の650人を大きく上回り1000人の市民が参加。デモ隊は最後尾が見えないほどの長蛇の列となり、これまでにない大きな反対行動として大成功をおさめた。
 6月に川中でおこなわれたデモ行進以降、市内での反対運動は飛躍的に盛り上がっており、反対署名は6万9000筆に達し、安岡連合自治会をはじめ各種団体、職場、地域の反対表明や市や県への陳情や要望書の提出がおこなわれてきたほか、20日には横野町で反対の会が発足し、決起集会を開催。住民たちが組織的な反対運動に乗り出した。またこの間、風車建設のための環境調査を強行しようとする前田建設に安岡地区住民たちが結束して立ち向かい、幾度にもわたって調査を阻止してきた。そして、地元安岡では漁師たちが行動を開始し、24日に中尾市長へ風力反対を表明するよう求める陳情を提出することを決めるなど、抑圧構造を跳ね返すたたかいがくり広げられている。この日のデモ行進は横野町の住民たちの集団参加をはじめ安岡の漁師など、それぞれの場所でたたかってきた人人やそれに連帯する大勢の市民が結集した。一企業の営利のためにそこに住む人人の生活を破壊して構わぬという、下関を実験台にした国策を許さぬ思いと、未だ態度表明をしない市や県の姿勢を強く問う市民の世論が着実に広がっていることをはっきりと示すものとなった。
 会場のゆめ広場には開会1時間前から人人が集まった。手には手作りのプラカードを持ち、ステージ上には町民がつくった数数の横断幕や幟とともに「大漁」「○○丸」とかかれた安岡の漁師たちの大漁旗が華やかにたち並んだ。
 最初に反対の会の代表が「洋上風車建設反対ということだが、これはみなさんご自身の問題だ。気楽なかたちでいいので、行進をよろしくお願いしたい」と挨拶。続いて、先日決起集会を開いたばかりの横野町反対の会から代表が挨拶した。「遅ればせながら今回、横野沖洋上風力発電に“反対する会”を横野町有志でたちあげた。設置予定地から一番近く、健康被害も一番懸念される横野町が、目に見える活動をしなければ最悪の場合、自分自身が後悔することになるし、先祖にも申し訳がない。さらには子子孫孫にまで迷惑をかけることになるので、やれることはやって、悔いを残さないために会をたちあげたものです」とのべ、「目に見える活動として、20日に決起集会を開き町内のみなさまに趣旨を説明し一緒に活動していただくことをアピールした。そして本日のデモ行進に横断幕と幟をもって参加した。三つめに横断幕・幟を持参し横野町の国道191号線に立ち反対を呼びかける。四番目に他の会と連携した反対運動をくり広げていきたいと思っている。五番目に関係先への陳情やマスコミ等に連絡し広報していく。下関市民のみなさまの深いご理解とご協力、ご支援をお願いしたい」とのべ、大きな拍手が起こった。
 続いてデモ行進をおこなうルートが説明され、シュプレヒコールの練習がおこなわれた。出発前に反対の会の男性より「みなさんはこの集会にいろんな思いがあって参加されていると思う。今回、地元の自治連合会も、漁師の方方も反対してくれ、いろんな職域の方が反対してくれている。今、6万9000筆の反対署名が集まっている。要は地元みながノーといっているのに止まらない。どうやったら止まるかというと、海面使用許可を出す県知事が下関市に意見を聞いてくるが、そのときに市長が“これは駄目だ”といわないと止められない。ただ、今、市長は環境アセスを待ってから伝えようといっている。しかし環境アセスをさせないということで(アセスを)すべて止めている。この前も前田建設が環境アセスの機械を設置したが、道路に置かれていたので“忘れ物”と思って返した。そういうことで環境アセスをやらせない。下関市長にもこれだけ市民みなが嫌だといっているのだから“やめてくれ”といってほしい。このデモ行進が、市長の心、耳に届くように、僕たちの声を届けたいという思いでやっていきたい」とのべられ、会場全体が熱い気持ちをもってデモ行進に出発した。
 デモ行進の隊列は、会場のゆめ広場を出発し、港湾道路から下関警察署前を通って国道を下関駅方面に向かい、人工地盤下を通り再び港湾道路からゆめ広場をまわりハローデイ側から戻るというルートで進んだ。
 「風力発電反対!」の横断幕と大漁旗を先頭にして、側面には横野町の「安岡(横野)沖洋上風力発電建設反対」の横断幕が掲げられ、参加者みなが思いのこもった手作りのプラカードを掲げた。デモの隊列に、沿道から手を振り声援を送る人人や、図書館のなかから手を振る人、車から身を乗り出して手を振る婦人、対向車線からシュプレヒコールにあわせて拳を突き上げるツーリングのバイクなど、周囲からもさまざまな形で連帯があらわされた。そのなかで力強い大太鼓の音にあわせて「風・力・反・対!」の声が響きわたった。親に連れられた小学生や幼児も声を張り上げ、高校生を含めた若い世代や、背中に子どもを負ぶったり、小さな子どもを連れた若い母親や夫婦、作業着姿の若者、誘いあって集団で参加した婦人たち、現役世代、高齢者など、幅広い年齢層の人人が力強く最後まで歩ききった。
 終着点のゆめ広場に到着したあと、反対の会の代表から、「目標1000人といっていたが、そのぐらいの人数が集まった。もう少し頑張ったら前田建設はあきらめると思うが、必要であればまたデモをするのでそのときはよろしくお願いしたい」と挨拶された。
 最後に、本日のデモ行進の締めとして壇上から高らかにシュプレヒコールが叫ばれた。「安岡沖洋上風力発電建設に反対しよう!」「企業のもうけのために市民が犠牲になる必要はない!」「前田建設は下関から即時撤退せよ!」「前田建設の環境調査を引き続き阻止しよう!」「きれいな海と夕日が見える環境を守ろう!」「子どもたちが安心して暮らせるふるさとを引き継ごう!」「市長は地元の切実なる反対の声をきいてくれ!」と、1000人が気合いのこもった拳を突き上げ迫力満点のシュプレヒコールが響いた。大きな拍手のなか閉会し、参加者一人ひとりがこれまでやってきた活動に確信を持ち、今後の反対運動への意欲を胸に、「またやりたいね」「頑張ろうね」と語りあいながら会場をあとにした。
 川棚から電車に乗ってきた高校生5人は、「やっぱり風力発電は建ててはいけないと思った。下関は自然が豊かなところだから。川棚でも小野の辺りに風力発電がたくさん建っているからわかる」といい友人たちとともに署名用紙を持ち帰った。
 前回も参加したという唐戸地区の婦人は、「今日は、前回をはるかに上回る人数が集まっていてよかった。市長はどの団体が陳情に行っても一度も会おうとしない。風力が正しいと思うのなら、堂堂とみんなの前で表明するべきなのにそれもしないで隠れてばかりだ。今度はもっと人の多い唐戸の市役所前で市長に聞こえるようにするべき。下からの力で変えないといけない」と話した。
 安岡の男性は、「良かった。もう1、2回はやらないといけない。前田建設は簡単には引き下がらない。でも安岡に住む私たちは死活問題だ。署名も必ず10万人をこさないといけない。横野の幟が非常に良かった。うちの自治会でもつくろうと思う」と意気込んで語っていた。また、住民あげて参加した横野の反対の会の男性は、「デモをしながら“このデモは市役所まで行かないといけない”と、みんなで話した。もっと長い距離でも歩けた。こんなにみなが反対しているんだ。市長はみなの前で態度表明をしないといけない」と話していた。
 昨年の今頃はまだ反対署名も伸び悩んでいた時期だった。反対の会中枢メンバーに四方八方から圧力が加わり、表に出て運動の旗を振ることができないようにされた人人もいた。しかし一年を経て運動は爆発的な広がりを見せ、市民自身が下から力を束ねることで確かな力を築いてきた。1基につき出力4000㌔㍗という全国的にも前例がない巨大風車で、その高さは150~200㍍ともいわれ、海峡ゆめタワーの1・5倍に匹敵する。経済産業省の肝いりで首相のお膝元に計画が持ち込まれ、目下前田建設工業がその任務遂行のために奔走しているものの、市民世論は崩れるどころか、さらに連帯と団結の力を強めながら勢いよく発展している。権力、金力を振りかざして力づくでかかってくるものに対しては、みなが隊列を固めて力づくの真っ向勝負を挑むしかなく、様様な欺瞞を暴きながら進んできたのがこの1年の過程でもあった。650人だったデモが1000人に膨らみ、その勢いは止まるところを知らない。国策のゴリ押しをはかる挑戦者たちは既に完敗を認めなければならないところまで追い込まれている。

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