いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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上関町議選 崩れぬ町民の力示す 崩れたのは反対派の幹部だけ

 中国電力の原発計画を争点とする上関町議会議員選挙は、推進派9議席、反対派3議席となった。これは予想されたことであったが、どう見るか、原発をめぐる現在の情勢と今後の方向とあわせて、記者座談会を持って論議してみた。
  選挙結果を受けて、町民の反応はどうなっているだろうか。
  比較的落ち着いて結果を見ている人が多い。室津の婦人は「予想通りだった。やはりよそ者では勝てるわけがない。親戚もないし信頼もないし、あれではダメだというのが改めてわかった。推進派が山ほど候補を立ててきて、対する反対派が負けにいったような選挙構図だった。高島さんにしても田中さんにしても、地域に入っていく姿勢がまったくなかった。原発をどうやって止めるのかをいわずに、自然を守ればかりいって、混ぜくっているようにしか見られなかった」「祝島と長島が一体となって頑張るような行動がなければ、国や県が抑えつけてくる国策には勝てるわけがない。長島側も祝島頼みでやっていたら負けてしまうし、新しい運動にしないといけない」と話していた。
 別の住民は「9対3は妥当な結果。反対派の駒が悪すぎた。我慢して投票したけど限界だ。“永住します!”と叫んでいたけど、みなが信頼するはずがない」と語っていた。
  上関地区の婦人は「推進派の新人3人が反対派の票を奪った選挙だった。ただ、これで原発ができるわけではない。祝島も補償金を受け取らずに頑張っているし、わたしたちも頑張らねば」と奮起していた。戸津地区の婦人は「反対派がたくさん当選するとは思っていなかったが減ったので驚いた。それにしても玉が悪い。よそ者ではダメだ。選挙が終わって共産党が演説をしていたが、何度やってもあれではダメ。議席が減っても町民が崩れるわけじゃないし、原発とのたたかいは終わりではない」と話していた。候補者選定の段階で不満を感じていた町民は多かったが、いざ選挙本戦に突入すると「町民の原発反対の意志を示さなければ」となっていった選挙だった。
  
 反対の強固さ証明 候補選定時で惨敗構図

  結果はほぼ予測通りになった。推反候補選定の時点で、長島側壊滅の10対2の惨敗構図だったと思う。しかし町民の反対の力は強固だということを証明したと思う。選挙は立候補者を選ぶわけだが、候補者を見ていたら、人が嫌うことを主張する外来者であったり、地元で何も反対運動をしたこともない推進か反対かわからない人物であったり、まったくあてにならない。
 自治労が送りこんだ高島氏個人だったら10票もない。「日共」勢力が擁立した候補もそうだ。しかし、好き嫌いを乗り越えて、原発反対の町民の意志を示さなければならないという意識で崩れぬ力を示した。どんなボロ候補でも、町のため、国のため、原発を阻止するために票を入れる。これがガッチリと3分の1ある。これは、町民の政治意識の高い投票行動であり、すごい力だ。しかし選挙だから、候補者がボロでは推進派崩れの層とか、中間派まで引きつけることはできない。
 対する推進派はそれほど強いか? 今度の推進派の選挙は、実弾もあるだろうが11人立てて親戚取り込みが特徴だった。“なにがなんでも原発をつくらなければ”という町民のなかの力は弱い。町全体が推進で動員されていたという様相はなかった。人は動かずに、立候補者本人が目の色を変えて動き回っていた。ボロい反対派候補が出てきて町民を遠ざける一方で、推進側からは反対派の親戚崩しを見込める新人を立てていった。
  実弾も推進派にいわせると「今回は相場が2万~3万円」といっていた。以前から比較したら割高だが、そのくらい上がっていても不思議ではない。町議選となれば「推進派の敵は推進派」だが、中電としては親戚で反対派を崩しながら、票を上手に配分したということだ。それでも10対2のつもりだったようで、残念がる推進派もいた。中電の職員や関係業者が住民票を移しており、中電の関係者票は150票の5%といわれていた。
  議席は9対3だが、それで原発の工事が進むか進まないかには何も関係がない。これまで反対議員が5人いても、どこにいるか、何をしているのかわからなかったのが、3人になったからといってたいして変わらない。工事が進むかどうかは、祝島にかかっている。補償金を受け取るかどうかの漁業権問題にかかっている。これも、マスコミも、推進派側も反対派組織側も、工事阻止行動が止めているというが、祝島が漁業権を守っているから止まっていることをいわない。
 D 選挙の特徴は第一に、推進派、反対派双方から争点をそらしたことだ。反対派の側はよそ者であることに加えて、原発反対をいわずに「ウミスズメを守れ!」とか「国保料の値下げ!」などといっていた。祝島が「補償金はいらん。原発やめろ!」と、「世のため、人のために」でいっている最中に、「原発止めろ」ではなく「一万円儲かります」という。国策とたたかう精神を崩す作用だ。町民を代表する気はなくて、自分一人を代表して、ある特定の団体の主張だけしている。それがよく票を集めた。それこそ室津なり上関の反対派の力を証明している。
  
 争点をそらす候補 露呈した選挙破壊

  上関原発をめぐる情勢としては、祝島が補償金の受けとりを総会で拒否し、二井知事の埋め立て許可も無効で、このまま5月の供託金没収まで行くと、中電と祝島の漁業権交渉は決裂になる。二八年の原発騒動は終わりになるというなかだ。全町はこれで元気が出ていた。推進派陣営はこれについてはまずいのでいわず、「原発による財源をどう使うか」という「あきらめ」を誘うような先走ったことをいう。ところが肝心の反対派組織側が、祝島のがんばりを伝え、原発は終結の直前に来ているということを一言もいわない。双方とも原発が終わるのが嬉しくないという姿だった。商業新聞も祝島の補償金問題は取材しているくせに報道しない。一番痛いところであることを証明している。
  原発を終わらせるという姿勢がないのと、その方向で町民の世論を一致させ団結させていくという大衆的な運動をやらない。争点を鮮明にさせ、町民の大衆運動でたたかうということを「町民の会」という反対派組織はやったことがない。
 E 今度の町議選で、候補選定とともに、争点をはっきりさせ、たたかっている祝島の婦人たちが長島側にわたり、「力を合わせて原発を終わりにしよう」と町民交流をして回ったら力関係は一変していた。田ノ浦で工事の見張りをするより、町民の団結を強める方がよっぽど力になることだ。
  町民の反対の力は崩れなかった。祝島は強力になったし、長島、室津側もそうだ。崩れたのは反対派の幹部だった。とくに「日共」集団、高島氏を送り込んだ自治労の選挙破壊が決定的だった。町外から大量の人員を投入し、大量のチラシを配って回った。いわば反対派の宣伝の役割を担った。これが、原発を争点とすることをそらし、「ウミスズメを守れ」とか「国保料金を一万円値下げする」とかばかりいう。町民の要求を代表するというのではなく、上から目線で町民をバカにするという印象を振りまいた。
 自治労は二井知事とたたかったことがない。たたかわない立場で、厚かましく上関の選挙に介入してぶちこわしにした。上関では戦後インチキ「共産党」が町をさんざんに破壊してきたことを経験している。シベリア帰りの「共産党」で漁協に雇われ、組合長から自民党に転向して町長になり、原発を引っ張ってきたのが故加納新町長だった。原発問題でもインチキ反対派が町民を食いものにしてきたことを経験してきた。
  そこで教訓になるのが外村勉氏だ。反対派議員をしていたのが、前回選挙で推進派に転向して中電に支えられて当選した。今度は最下位落選だった。反対派からは恨まれ、中電からは使い捨てにされて推進派からはバカにされ、悲しい人生になるといわれている。やはり人を裏切ることは大変なことだ。
  前回選挙では外村が裏切ったといって「室津が崩れた!」と騒いだ。そして上関も祝島も崩れるほかはないと騒ぐものがあらわれた。騒ぐのが目立ったのが上関の「反対派・岩木」周辺だった。今度の選挙ではその連中が崩れた。室津が崩れたのだから祝島も崩れるというシナリオが、祝島の島民は頑として反対を堅持し、室津の反対派も崩れず、崩れたのは外村勉一人だったという物語に完結した。
  今度の選挙は、祝島を補償金問題で崩して、町議選で反対派議員を壊滅させ、町内の反対派町民を落胆させ、あきらめさせて、埋め立て工事進行にすすもうというプログラムだった。中電や二井県政、県漁協から自治労、「日共」集団などが乗り出して大騒ぎしたが、失敗した。もっとも要の祝島では大失敗したし、町議選も崩れたのは幹部だけで町民の意欲をつぶすことはできなかった。全国紙が上関の町議選結果を地方版に小さくしか扱っていなかった。北九州では載っていなかったが、象徴的だった。推進派の本当の勝ちとは見ていないのだ。
  今回選挙で最大リーダーの山戸氏は「反対運動に専念する」といって議員を引退したが、専念してやった運動がこの結果になった。室津の事務所に詰めていたといわれるが、住民からは表に出てこないといわれていた。どうして町民から嫌われるよそ者が出ることを認めて選挙が惨敗するようなことをしたのか、どうして祝島が補償金の受けとりを拒否して原発を止めるところへ来ていることを宣伝しなかったのか、どうして祝島の住民が全町に訴えて回って全町団結を強めるような行動をしなかったのか、町民のなかで論議が始まっている。
  岩木にしても、これまでの支援者に挨拶にもいかないし、やる気のなさはありありだった。推進派側が「岩木は落ちるつもりだ。落ちて補償金をもらいたがっていた」といっていた。150票は町民が勝手に入れたということではないか。
  
 大衆主導の力拡大 国策打ち負かした豊北斗争型

  今度の選挙まで来て、上関の原発反対が、下から大衆的に主導する力が強まってきたということが一つの前進だ。祝島が昨年2月に補償金受けとりを拒否したこと、僅差になったというので田名の抗議行動は婦人たちが強い意欲で主導した。そして昨年末から今年1月の補償金受けとりの問題でも、島民主導だった。推進派からは長島、室津側でも岩木氏ら反対派議員は幹部というだけで、原発に反対し町民を団結させることなど何もやったことはない。はじめから町民の主導だ。大きな政治的な転換が始まっているのが力強いものになるきざしだ。
 E 山口県には豊北原発を阻止した経験がある。豊北町には一人の英雄、カリスマというのはいない。町民が英雄だとみな思っている。「矢玉のおばちゃんたちはすごかった」とか「角島の漁師はすごかった」とか大衆が英雄だった。漁協の組合長というのは、一応反対の旗を振っていたが、肝心なところでは怪しげな動きをするというのはみんな見ていた。しかし代表として担ぎながら、下から主導権を持って肝心なところで局面を動かしていった。
 町長選挙で“海山交流”といわれる大衆行動があった。海側から数千人もの人人が山側に繰り出して協力をお願いして回った。あの当時、「山側は推進ばかりだ」「反対は海側しかいない」と商業マスメディアが煽っていた。そこで矢玉の婦人部の数人が実際に山側に行ってみた。推進派ばかりじゃないというのがわかって、「それならみんなで行こう」となって、ドッと行動に火がついた。そこには、万事幹部に頼るというのではなく、下の方に本当の指導骨幹が存在して、運動を切り開いていた。
 敵は国策であり、自民党国会議員も来るが、それに打ち勝つ力は全県、全国との団結にある。豊北原発阻止山口県共斗会議がつくられ、下関で全県集会をやるが、そこへ矢玉の数人が参加する。「豊北でない者が下関で自分たちの問題として原発反対をやっている」と現地に戻って様子を伝える。こんなことや、長周新聞と接触することは幹部の方は嫌うわけだ。しかし、下からそういう指導骨幹が動いて、みんなを団結させていった。幹部にボロがいようが、首に縄を付けて引っぱっていった。
  上関もそういう形にすすんでいる。とくに祝島が補償金を拒否した行動というのは運動の質が変わって、ひじょうに強いものになったと思う。補償金を受け取らせようとするのは、国策でやってくる。最高裁が祝島の漁業権はなくなったかのような判決を出す。二井知事がもう条件は整ったかのような顔をして埋め立て許可を出す。県農林水産部にそそのかされた県漁協は「祝島が補償金を受け取っても受け取らなくても税金を負担しなければならないと国税がいった」とウソを言う。中電は損害賠償の裁判をやる。
 こういう権力、金力の攻撃を打ち破る力は、自分たちの個人的な損得では勝てない。原発を阻止することが、瀬戸内海全体の漁業を守るためであり、日本人の魚食を守るという真の国益のためだという立場、さらにミサイルが飛んでくるような戦争政治がすすむなかで、ミサイルの標的になる原発をつくって国土を廃虚にするのは、国益に反するという立場である。そして、広島、岩国、全瀬戸内の漁民、さらに全県、全国の人人との共同のたたかいでの団結への確信だ。
 B 選挙戦中盤に柏崎市の原発反対派議員たちがきて、海上からマイクで訴えていた。柏崎刈羽原発が中越沖地震でどうなったか、現地報告の内容はリアルで、ジッと聞いている住民が多かった。もう少し町の数カ所でやったらよかった。
 D 中電、県の側は祝島を潰して、町議選で惨敗させてガックリさせるのが手だったが、そうはならなかった。直前に祝島で漁業補償受け取りを見事にひっくり返されたし、町議選も反対派指導部の権威はガタ落ちになったが、町民のなかでの敗北感はない。祝島の補償金拒否の行動が最大の争点作りだった。みんながやる気になった。町民のなかではそれによる活性化が大きい。
  
 最大の焦点は祝島 上関原発終結の情勢

  上関原発をめぐっては祝島が焦点だ。県漁協が乗り込んで1月の漁協総会を招集したが43対15の大差で受け取り拒否を決議した。しかし、税金の支払い承認をめぐって再度県漁協が乗り込むことを明らかにしている。税金の支払いがひじょうに重要なことを立証している。「補償金を受け取っても受け取らなくても税金がかかる」と国税がいったというペテンだが、受け取っていないものの税金を払う道理はないのが世間の常識だ。
 広島国税は「契約が成立し、組合員が受領してはじめて課税できる」と説明している。「受け取らなくても県漁協が法人税を払う」というのは、祝島が補償金を受け取る意志表示をしていないならまったく根拠はない。「法人税として払っても良い」という承認を何としてもとることで、「受け取る意志を表明した」と言い張るのが埋め立て許可を出した二井知事にとっては命綱だ。そうすれば、埋め立て許可の条件は成立していると言い張り、裁判でごねる材料になるというものだ。
  だいたい人のカネをまき上げるのが大好きな県漁協が、どうしてそんなに税金を払うのに熱心なのかだ。税金は申告をするからかかるものだ。申告する前に税務署があれこれ指図しないのが常識だ。県漁協が「まだ契約が成立していないので」といって申告しなければよいだけだ。それより、祝島は受け取らないといっているのだから中電に返したらいいじゃないか。タイムリミットがあるから大慌てになっている。五月に供託金没収になったら祝島との漁業補償交渉は決裂、終わりだ。
  県漁協のやり口に頭に来ている県内の漁協のなかでは、県漁協のことだから補償金を使い込んでいるのだ、だから税金を払うというんだとも語られている。
  祝島の推進派漁民は「今度は税金の支払いを認めさせる」といっていた。税金問題は中電や二井県政にとってかなりのこだわりなんだ。1月末の総会で、補償金受けとりは拒否が決まったが、税金支払いの件では、山戸氏のブレーンの幹部部分から「税金は払ったらよい」という意見があったのが注目されるところだ。総会では、「受け取ってないものから税金を払う必要はない」というのが圧倒した。しかし、反対派のなかから推進派と一緒に「税金を払え」ということになったら、43対15というわけにはいかなくなる。
  上関原発をめぐる現実は、町議選の結果には関係なく、最後の決着をつけるところまで来ている。
 5月まで様様あるにせよ、供託金を拒否したら終わりになる。
  祝島の行動を含めて国策とたたかう意識は強まっている。広島、岩国との連帯や瀬戸内海漁民との連帯意識が広がったし、原動力になっている。
 そして、下から大衆主導で動かないとダメだと局面は転換している。下からの力をつなげて「原発終わらせよう」のパワーを結集するところへきた。

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