いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

上関 加納町長が辞職を表明 やり直し町長選へ

 上関町議会が開かれた19日、加納簾香(みすか)町長が佐々木議長に辞職届を提出した。このため9月30日告示、10月5日投票のやり直し町長選となる見込みとなった。上関では、四月の県議選、町長選、神崎氏辞職による町議補欠選挙につづく選挙で、年内に予想される衆議院選とあわせて1年に5回も選挙をすることとなる。選挙のたびに町内推進派の瓦解がすすみ、GHQばりの中電による町占領状態があからさまなものとなっている。上関町をめぐる情勢はどのように動いているか、町民のすすむべき道はどうか考えてみたい。
  
  中電も県も大慌て 暴かれる買収政治 
 現在の事態は直接には春の町長選挙からつづいている。春の町長選挙は奇妙キテレツなものとなった。前年から推進派は三者が乱立し、直前までまとまらず、片山裁定で3人がおりて第四候補の加納氏が出るところとなった。選挙は反対派の山戸陣営が露骨な選挙サボをやり、加納陣営の手助けをする状態。それにもかかわらず、推進派の票が大幅に崩れるものとなった。推進派のなかから中電の買収政治の暴露がはじまって、中電も県も大慌てとなった。
 選挙後、20年来上関の買収選挙を黙認し幇(ほう)助してきた山口県警が、突如として後援会長・神崎氏を逮捕した。この選挙を仕組み、買収の総元締めである中電にはなんのおとがめもないというイカサマであった。それは結局のところ、推進派町民の離反、とりわけ中電の悪事を暴露し、その責任を問うなどということにたいして、「中電に逆らうならブタバコに入れるぞ」という脅しの効果を狙ったものとなった。県警というものは、選挙違反を取り締まることそのものが目的ではなく、中電に逆らうものを脅すという役割を引き受けたわけである。
 町議補欠選挙はさらに奇妙キテレツなものとなった。5年まえの町議選は無投票で人人の度肝をぬいたが、今度は乱立であった。しかし一生懸命町を歩き回って汗を流したものほど落選し、数日まえに中電が押し込み、なんの運動もしないものがそろって当選した。いわば自主的推進派は中電によって切り捨てられ、中電の準社員的なものがとり立てられる情勢となった。みな我欲ばかりで町のため、町民のために働く議員はいないといわれてきた議会も、以前あった少しはだますという格好すらとっ払って、ひたすら中電のいいなりとなって、町民の利益を売り飛ばすことに粉骨砕身する、それで中電に認められていい目にあうという色彩を強めることとなった。
 一方の反対派幹部どもは、永遠に反対派をつづけるために、すなわち原発が終わらないように、要するに自分のメシの食いあげにならないために動くという姿を広く暴露されるところとなった。何度選挙をしても、町民を疲れさせるばかりという役割をはたしてきた。町民の推進離れ、反対世論は圧倒しているが、それを代表して旗を振ろうというものは、四方八方から袋だたきにしてつぶすというヤクザ的機能だけは健在という状態となった。
 古い推進派町民は語っている。「結局だまされていたわけだが、自分たちの意志で推進をするという時期は終わった。いまは中電のいいなりになるものばかりの推進になった」と。選挙は、町民をだまし、おだてて票を集めるというものではなく、候補者を指定して枠をつくることから、いついつカネを受けとった、就職の世話をした、酒を飲んだとか、町内の企業はもちろん、周辺の企業、関西や東京の企業に勤めている親類を脅すことから、買収と脅しの中電企業選挙がむきだしとなった。
 中電は役場も議会も、漁協も、区も、四代のお宮も、町のなにもかも買収してしまったが、選挙そのものも買収してしまうところとなった。それはちょうど米英軍に占領されたイラクと同じようなものであり、敗戦後のGHQ占領下の日本と同じような、中電占領下の町となってしまった。それは一見中電の強さのようであるが、実際には町民を動員する力をなくしたことをあらわしており、衰弱のあらわれである。「弱い犬ほどよくほえる」という状態といえる。
  
   大衆的な力結集を
 今度の町長選の候補は、推進派乱戦、反対派人材難の特徴を見せている。近年中電におだてられてゴルフなどもはじめて新実力者を自認する西哲夫議員が「つぎは自分だ」と鼻息を荒くし、商工会長の岡村氏も「自分がやる」という話もあり、中電は補欠選に出した井上氏を出すという話もあり、2度腰砕けになった右田氏も色気を捨てていないといわれる。だれが町民に認められるかという争いではなく、だれが中電に認められるかの抗争が展開される見込みとなっている。町民はしらけてそれを眺めている。
 先の町長選挙は、神崎氏は議長の椅子に手が届いたと思った瞬間にブタバコへ行く羽目となり、加納氏も町長の椅子に座ったと思ったらそこは電気椅子で地獄行きであった。現在町長の椅子に目を血走らせている人人は、そのような教訓はクソ食らえで突っ走っている状態。これらの顔ぶれも、加納氏ほどの知恵のめぐりはないとみられ、自爆候補となる運命が見ものとなっている。
 このような奇妙キテレツな上関町の政治状況、とりわけ神崎氏逮捕と加納氏辞職をつくり出した原動力はなにか。それは町民のなかで原発騒動22年をへて、反対世論が圧倒してきており、推進派が総瓦解をはじめていることである。そして中電が、町民を推進で動員する意志も力も喪失してしまい、もっぱら脅しつけて責任を転嫁し逃げようとしているからである。
 やり直し町長選の注目点はなにか。それは選挙違反逮捕、加納町長辞職をつくり出した原動力、すなわち中電の町を管理支配する構図を突き破る町民の大衆的な力、推進離れ、原発撤回の力をいかに強め、それを選挙にいかに反映するかである。
 原発問題は、新「日米防衛協力指針(ガイドライン)」のもとでの戦時体制づくりのなかで、戦時には標的となり、原水爆戦争を引き寄せるものであって、上関町だけではなく国土を廃虚にするものであること、かつての戦争の苦難を思い起こしてそのようなものは撤回に追い込まなければならないというのが、町民のなかで強まってきた最大の要素である。
 また原発推進町政は、町のため町民のためではなく、町民の利益を売り飛ばして我欲をはかる中電カイライの売町政治であり、漁業を中心に農業、商工業の発展をおしとどめ、さらに老人も若者も住みにくくさせて、意図的に町を寂れさせる政治であったことが明らかとなってきた。それは大島郡と比較して歴然としたものとなった。中電の町から町民主権の町をとりもどすこと、全町が団結して地道な町の発展をはかることが共通の要求として強まるところとなった。
 町内各地でそのような大衆論議を強め、22年におよぶ大企業、国、県の力による抑圧のなかから、町民の力、全県、全国人民の連帯の力を信頼して、中電のカイライに恥をかかせ中電を撤退に追いこむ町民運動を強めることである。あらゆる妨害に立ちむかって町民の要求を代表していく町長候補、町議候補を立てるには、そのような大衆運動の力をつくることが決定的な前提である。
 それは中電という企業、国、県から警察、商業マスコミ、暴力団といった金力、権力とのたたかいであり、全県、全国の人民の共同斗争を強め、上関現地の町民と連帯し激励する力を強めることと結びつくことが不可欠である。上関町の現状は、日本中の市町村が直面している状況の縮図である。大企業と国、県の圧政のもとで、それを打開する力を発揮することは、全国をおおいに激励するものとなる。

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。