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下関市立大学の名誉教授ら7人が意見書提出 新専攻科設置と定款改訂で 大学運営の在り方を危惧

 下関市立大学名誉教授ら有志7人が「下関市立大学の新専攻科設置並びに定款改訂に関する意見書」を2月27日、前田晋太郎市長と下関市立大学・山村重彰理事長宛に提出した。相原信彦、川本忠雄、雲島逸郎、平岡昭利、堀内隆治、山本興治、吉津直樹の七氏(五〇音順)で、2007年に市立大学が法人化されて以降の名誉教授。うち堀内、吉津の二氏は学長経験者で、意見書提出は堀内氏が中心となって呼びかけた。

 

記者会見する堀内隆治氏(左)と相原信彦氏(3月2日)

 

 意見書は、「今般、已むに已まれず、公立大学法人への市大名誉教授有志の意見を具申することにしました。今回の専攻科の設置をめぐる市長の方策には、大きな疑問をいだきます。その疑問の上に有志としての提言をいたします。昨年6月以来の専攻科設置、定款改訂問題を憂慮しつつ冷静に注視しておりましたが、新年度開始を前に敢えて、意見を具申することにしました」として、以下次のように問題点を指摘している。

 

 一、下関市立大学の中期計画(2019年~2025年)は先に決定しており、その計画にもない新学科設置です。仮に別のきっかけがあったとしても、中期計画の策定に尽力を尽くした大学教職員の検討がまず行われて然るべきだと思います。

 

 二、報道によれば市長・理事長の唐突な提案として新専攻科設置が示され、教育研究審議会に諮ろうとしたところ、教員側委員が出席を拒み、結果、経営審議会で決定したとのこと。これを勘案すれば、市長が主導する教育研究審議会のあり方に、教員側の大きな不信があって拒否された、と理解できます。思うに、教育研究審議会が開催される条件は、一提案=一試案として諮ることだったと思います。そうした配慮がなされず、市長の一試案に強引な合意を迫るやり方は、結果的に教員の9割以上の反対と反発を招きました。

 

 三、もともと、法人化(地方行政独立法人化)された市大の定款では、経営面が経営審議会、教育研究面(学問の自由)が教育研究審議会と二元化され、経営と学問(研究教育)の調和的均衡が図られるよう予定されています。そのために法人化後の役員においては、理事長は市長の任命に基づき、学長は教授会(教員全体)の意向投票に基づき学長選考委員会で選考するよう決められています。これが、大学と行政の調和的均衡のあり方であり、もって大学の自立と学問の自由が護られてきました。

 

 四、翻って、今回の市大専攻科設置問題は、市長・理事長の提案後は経営審議会だけで決定、即座に教員三名の採用を内定通知するという急展開でした。さらなる異常事態は、新学科設置や教員人事事項を新設の理事会に移し、教員人事等を教授会の範囲外に置くという定款改訂の実施です。

 

 五、以上、縷々、申し上げたように、いまの市大は、これまでの国公立大学の慣例を破った異常事態に陥っています。定款改訂は法的に問題はないと言われますが、そうでしょうか? 専門家の指摘にもある通り、全く不当であるだけでなく、国公立法人化の法的理念、法的精神性を蔑ろにした不法な強権的なやり方だと思わざるをえません。

 

 六、私たち下関市立大学名誉教授は有志の名を連ね、有志の名をもって母校への進言をあえて行います。市長・理事長が新学科設置を取り下げ、新定款を破棄し、旧定款に服するよう、意見具申します。そうでなければ、大学内の調和的均衡が崩れ、上意下達によって正常な大学運営が日常的な危機に瀕することを危惧します。

 

 下関市立大学は1956年、山口大学夜間短期大学から独立、下関商業短期大として創立され、多くの地元勤労学生の貴重な学びの場となりました。その実績の上に卒業生の熱い想いが下関市立大学を誕生させ、設立直後の市財政危機からの大学存続危機をも、学生の負担受容、卒業生や地元有志の支援を得て公立大学として存続を続けました。いわば、学ぶ者の学ぶ志で生まれた大学であり、そのよき伝統を守ってきました。どうか、下関市立大学の原点に立ち返り、教職員一体となった大学共同体、大学の自立と学問の自由に根ざした学びの場を大切にされるよう、重ねて懇請いたします。

 

有志の代表が市役所で会見

 

 市役所で2日に記者会見した堀内氏は、「私は13年、大学を法人化する際に関わった。そのとき、経営と学問研究をわけること、そのために学長と教育研究審議会を守るために協議のなかで引くところは引いた。ところが現在の事態は、定款変更までして新専攻科設置を進め、経営と学問(研究教育)の調和的均衡が崩れている。意欲のある教員が大学を出て行っていることも危惧している。意見書について法人化以降の名誉教授らに呼びかけたところ、みな憂慮し、何かしなければという思いは同じだった。市立大学が道を違わないよう、伝統を守ってほしい」とのべた。

 

 同席した相原名誉教授は、「大学のいいところは、違う意見であっても議論しながらルールに基づいて決めていくところだ。今回の事態は、ルールを逸脱した形で進んでいる。もっと市立大学の問題を市民にアピールする必要性を感じている」とのべた。

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