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周防大島町・損害賠償問題で住民説明会 賠償請求書類の準備呼び掛け

説明会で意見を述べる住民(25日、周防大島町)

 周防大島町にある大島文化センターで25日、大島大橋損傷にともなう損害賠償に関する住民説明会がおこなわれ、住民約150人が参加した。10月22日にドイツの海運会社オルデンドルフ・キャリアーズが所有する貨物船が大島大橋に衝突したことによって、周防大島では全島断水が40日間続き、橋が損傷して車両の通行が制限されたことから人人の往来に大きな影響が出た。オルデンドルフ社に対して賠償請求していく第一歩として、弁護士が住民たちに対して損害賠償の流れや焦点となっている「船主責任制限法」の中身について説明をおこなった。

 

 事故によって生じた橋や送水管の修理費をはじめ、島民や島内事業者の損害に対する賠償で問題になっているのが「船主責任制限法」だ。一般的な事故ならば加害者が被害者に対して全額賠償するのが当然だが、海の事故の場合、海運業そのものが海上という危険な環境下であることや、事故が発生した場合の損害が大きいことなどから海運業を保護するために、国際法に基づいて賠償責任を一定に制限する法律がある。

 

 事故を起こした船の大きさに応じて限度額が高くなり、今回の場合の限度額は24億円と推定されている。しかし、橋と送水管の工事費用だけですでに28億円をこえていることから、同法に基づいた賠償額では長期間で広範囲に及んだ損害に対してあまりにも少なすぎることが問題になっている。

 

 同法については、オルデンドルフ社が適用の申し立てをおこなっておらず、正式な手続きは始まっていない。説明会で町は「仮に、同法による手続きがいつ開始されても対応できるよう賠償請求に係る裁判所への提出書類の準備をしっかりとしておいてください」と呼びかけた。

 

 船主責任制限法が適用された場合、賠償請求の対象として想定されるのは、給水タンクの購入費や給水に使用した車のガソリン代、大島大橋の渋滞などにより減少した給与、慰謝料など。これらを裁判所が選んだ管理人が認否する。説明をおこなった弁護士は、「給与が減額した場合の給与損害証明書や、断水中に購入した給水タンクやガソリンなどの領収書を準備、保管しておいて欲しい」「慰謝料を請求するうえでの具体的な事実関係を証明するために、一日の給水量や給水回数、給水を強いられた期間などを今の記憶が鮮明な内にメモしておくことが重要だ」と説明した。

 

 参加者からの質疑応答では、「できれば裁判沙汰にせずにオルデンドルフ社に全額補償してもらいたい。人道的に見て、町民の苦しみに報いて欲しい」「何をどう弁護士に頼っていいのかもこのままでは分からない。加害者側に交渉していくための大きな枠組みを町につくってもらいたい」などの意見が出た。

 

 船主責任制限法が適用された場合、県、町、企業団、周防大島島民や事業者などが受けた損害を24億円から各所へ配当することになる。この法律には「自己の故意により、または損害の発生があることを認識しながら自己の無謀な行為によって生じた損害に関するものであるときは、責任制限ができなくなる」という趣旨の内容も含まれており、民事裁判で争えば損害賠償額の制限をなくすことができる可能性もあるという。

 

 説明会は25日から3日間かけて島内4カ所でおこなう予定で、事業者向けの説明会は27日に開催の予定。

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