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まだまだ足りぬ島外からのサポート 全島断水が生活に深刻な影響 周防大島町

給水ポイントで列をなす住民たち(24日)

 柳井市大畠と周防大島町を結ぶ大島大橋に22日、貨物船エルナ・オルデンドルフが衝突して島への唯一の送水管が破断し、周防大島町の全域で断水が続いている。現在は島外からの給水に頼っている状況だが、1万5000人の暮らしに必要とされる飲料水や生活用水は圧倒的に不足している。風速によっては一時橋が通行止めとなるなど、いまだに本土側とのアクセスは不安定となっており、住民らの生活はなかば孤立化している。

 

 事故が発生した翌23日には、損傷した橋梁の点検などのため唯一の陸路である大島大橋が全面通行止めとなったが、24日午前6時40分から歩行者や軽車両、「総重量2㌧以上」を除き通行が可能となった。

 

 島内では圧倒的に給水量が足りていないのが現状だ。水は柳井港から1日4便出ている防予フェリーに給水車を積載して持ち込んでいる。その他には島内の桟橋に停泊している大島商船高等専門学校が所有する実習船「大島丸」に海上保安庁や国交省の船舶で水を運び、40㌧を収容できるタンクへ貯水して空になった給水車に積み替えている。

 

 島には今回破断した送水管から水の供給を受け貯水しておく「配水池」が9カ所ある。事故発生当日の午前8時にはすべて閉栓し、この水を給水車へ積んで給水をおこなってきたが、周防大島町水道課によると24日の時点で配水池の貯水量はかなり減少しているという。

 

 島外から運び込まれる給水に頼らなければならない状況がしばらくは続くことになる。一般家庭や学校、病院、介護施設など全島で水が求められている。

 

通行が再開された大島大橋は終日渋滞(25日)

 供給される水の量が限られているため、とくに枯渇しているのが生活用水だ。入浴ができず洗濯もできない。トイレの水も流れないため、住民たちは自分で川や井戸から水を汲み、バケツで流したり、用を足すたびにトイレのタンクに水をためなければならない。ある女性は「うちには井戸も川もないので飲み水以外に確保できない。用を足した後に洗い流す水も用意できないので、家族で真剣に“ペット用トイレを使うしかないだろうか”と話している。水を少しでも無駄にできないので顔を洗った水をとっておいて、あとで下着を洗うときに再利用している。なかなか十分な量は確保できないので、少しも無駄にできない」と語った。

 

 食器を洗うための水がもったいないので、各家庭ではカップ麺やパンを食べている住民らが多い。食器を使うにもサランラップを敷いて皿が汚れないようにしたり、油分が多い料理は極力控えているという。井戸水を使用している家庭を除いて入浴できない住民がほとんどだが、島外にある温浴施設、アクアヒルやない、上関海峡温泉・鳩子の湯、由宇青少年自然の家の協力によって周防大島町民であれば無料で利用できることになった。

 

 島内ではどこでも給水量の増量が喫緊の要望となっているが、この課題の足かせとなっているのが、24日に開通した大島大橋の「2㌧規制」だ。貨物船の衝突によって橋が損傷しており、現在検査をおこなっているが、どれほどの損傷をうけているのかは完全に把握できていないため、大事をとって重量制限をかけている。このため通常の給水車が通行できていない。事故発生当日にはまだ橋が通行できたことから島内15カ所で臨時給水をおこなっていたが、通行規制が敷かれた24、25日の給水箇所は4カ所となった。フェリーで運んでいる給水車や船からの給水では足りないので、町の職員が軽トラックに容量300㍑のタンクを積み、大畠側まで橋を渡って水を確保している。他にもコンビニやスーパーへ食材を届けるトラックが通行できないことから、本土側では大畠までトラックで運搬し、そこから別の車に総重量2㌧以下で積み替えて島まで運んでいる。

 

 大島病院では人工透析をおこなっており、患者一人に対し1日150~200㍑の水が必要となる。取材した24日には21人の治療が予定されており、透析だけで最大で4㌧もの水を必要としていた。事故当日には給水車が自由に橋を通行でき、1時間に1便と優先的に水を確保できていたが、橋が閉鎖された23日には1日5便ほどに激減した。76㌧を貯水できるタンクで病院で使うすべての水をまかなっているが、24日午前の時点で7分の3まで減少し、患者の入浴はできていない。また、治療などに必要な点滴薬や酸素などの物流全般をトラックで運搬していたのも、大畠側で小分けにして運搬している。水の問題なども含めて万全な体制が保証できない場合は島外にある近隣の病院へ患者を移す計画だが、遠距離を通院しなければならなくなる患者への負担も懸念されている。病院の関係者は「水は島民の命だ。病院のタンクの貯水も減る一方で今日は何とかなっても明日はどうなるかわからない」と語っていた。

 

 学校給食も島内4カ所にある給食調理場が事故当日から使えなくなり、急遽島内のスーパーに依頼して菓子パン1800個を調達することができた。JAも協力して果物の提供を買って出るなど、子どもたちの給食を充実させるために周囲も協力している。現在は毎日パンと牛乳に果物やゼリーを用意しているが、トラックで島外から運搬できないため、町の職員が毎朝大畠側まで車で受けとりに行き、各校の人数分に仕分けて配布している。当面は現状の対応を継続して給食を確保していく方針だが、給食は子供らの貴重な栄養源であり、今後大型車による橋の通行が可能になったり、水が十分に確保できるなど状況に応じて調整していくとしている。

 

 また、学校のトイレや手洗い用の水の確保は衛生的にも必須事項だ。現在トイレにはプールの水を使用している。要望があった学校には貯水タンクを配布し、仮設トイレの設置の要望を受け付け、今後各校へ設置される予定だ。

 

 町内のガソリンスタンドへ燃料を補給するタンクローリーも橋を渡ることができない。各ガソリンスタンドはこの間燃料補給ができないままストックをはき出す状況が続き、自動車への給油を2000円分や10㍑などと上限を決めて営業していた。柳井港から出る防予フェリーが車の運搬をおこなっているが、危険物を積むことはできないため町民からも燃料の枯渇が心配されてきた。だが24日夕方に町内の燃料会社が共同でフェリーのチャーター便を支度することを決め、25日未明に大島町入りした。この日からタンクローリーによる島内のスタンドへの補給が可能となった。当面はこの体制を確保することができている。

 

 大島大橋の手前では終日渋滞が続いている。橋が通行できるようになった24日には午前4時頃から通行止め解除を待つ車が橋の両側に列をなした。前日まで橋が全面通行止めで島内では断水状態が続いたことからスーパーやコンビニの食料品棚はほぼ空の状態となり、家では洗濯もできなかった。そのためこの数日は島外のコインランドリーに洗濯に行く人や買い出しに行く人、通勤や通学の送迎のために島外へ出る住民らで溢れ、大渋滞となった。「普段なら1時間で行ける島外の実家に着くまで3時間以上かかった」という住民もいた。だが重量制限はあるものの本土と周防大島をつなぐ唯一の陸路が通行できるようになったことで、自力で動ける住民らにとっては生活の幅が格段に広がっている。

 

通行止めになって解除を待つ車の列

空になったスーパーの食品棚(24日)

町民同士の助け合い 井戸水や地下水を配る

 

 住民らの間で心配されているのが高齢者の生活だ。周防大島町では高齢化率が50%をこえており、さらにそのうちの60%が75歳以上。千数百人の高齢者が一人暮らしだ。飲料水は島内外のコンビニやスーパーで購入することができ、店頭にもかなりの量がそろえてある。一時期に比べ確保は容易になった。現在住民らが求めているのが風呂、洗濯、トイレなどに使う生活用水だ。飲料水に比べ必要とされる水量が圧倒的に多い。だが高齢者が毎日使う生活用水をみなが使っているような18㍑容器に詰めて使用するには困難なケースも少なくない。給水所が島内4カ所ということで、遠距離を車で移動して給水所へ通うことも負担になり、足を持たない高齢者もいる。町はこうした状況を踏まえ、全民生委員に対して自力での給水が困難な高齢者を聞きとって、島内に住む約500人の孤立した高齢者を対象に職員が毎日水を配って回っている。

 

 島民が必要とする生活用水の確保のため、島内で井戸水や地下水を使用している家庭や施設では、「地下水差し上げます」「井戸水あります」と看板を掲げ、島民みなが自由に使用できるよう提供している。

 

ガソリンスタンドで地下水を配るなど住民同士が助け合っている

 地下水を提供しているガソリンスタンドへ給水に来た高齢女性は、「あまり大きな容器に水を入れると家に帰ってから使うのに持ち上げることもできないので、ペットボトルに小分けにして給水している。昨日も利用させてもらい、今日も明日も利用させてもらい、本当に助かる。知人からも“井戸水をあげるからとりにおいで”と声をかけてもらっているが、いざ世話になる身になるとそう簡単にノコノコともらいに行けるものではない。風呂に入れないし洗濯もできない。街を車で走っているときに洗濯物が干してあるのを見かけるとうらやましく思ってしまう。だからこそ、みんなが利用できるこういう場で水を提供してもらえるのは本当にありがたい」と話していた。

 

 ガソリンスタンドの店長は「橋が通行止めとなった23日には給水所で4時間待ちの大行列ができていた。スーパーの食材・食品売り場も空になり島中が大混乱に陥った。給油に来る客も表情がいつもとは明らかに違って自分自身も生活の危機を感じた。そこでいつも洗車に使っている地下水を提供することに決めた。利用者に喜んでもらえてよかったと思う」と話していた。

 

送水再開は11月上旬か

 

 事故直後から周防大島町で断水が続き、橋も通行規制がかかって思うように給水量がまかなえていない状況を受け、山口県は24日、自衛隊に災害派遣を要請した。25日からは自衛隊の給水車4台が島内で給水活動をおこなった。また、海水をくみ上げて浄化し、生活用水として利用できる自衛隊の装置も設置し稼働を開始した。

 

 今後町内への給水量は増加する見通しだ。国や県の大型貯水船の運航計画も進んでおり、現在接岸する港の幅や深さとの兼ね合いを調整中だという。

 

 また、周防大島町と柳井市が連携して24日夜に大畠側の消火栓から歩道を通じて、1・4㌔ほど離れた橋の反対側まで消防用ホースを70本以上つないで送水設備を確保した。現在水を流してホースの中を洗浄すると同時に水質検査もおこなっており、飲料水としての利用を目指しているという。周防大島側のホースの先を給水ポイントとして活用できるようになれば、橋を渡らずとも給水車に水を補給することができるようになるため、大幅な給水量の増加が見込めるとのことだった。

 

1・4㌔ほど消防ホースを接続して島側に水を供給

 島内への送水再開の見通しは11月上旬とみられている。橋の歩道に仮設の送水管を布設する計画だが、送水される水が島内の配水池に直接届くというものではなく、まずは周防大島側で供給源を確保できるようにするためのいわば「仮設の仮設」の送水管だ。島内で必要とされる水の約10%ほどの供給量が見込まれている。


 また、山口県は現在2㌧以内としている大島大橋の通行規制緩和を早期実現するよう調整中で、来週にも終日8㌧まで通行可能となる見通しだ。ただ橋の損傷がどれほどのものなのか、島内ではだれも分からない状態だ。「1㍍ほど骨組みがずれたらしい」「車で走ると普段より振動が大きい」などと噂話も広がっており「何が本当か分からない」と語られていた。25日には午前中から風速3㍍をこえたとして約2時間通行止めとなり、基準を風速5㍍に引きあげて通行を再開させたが、島民にとっての唯一の本土への陸路の通行は、依然として不安定な状況が続いている。

 

 今後は早急な給水量の増量と配水池への送水再開が求められている。住民への給水体制は当面は島外からの給水に頼る状況が続く見通しで、この状態が長引くほど島民、とりわけ高齢者や子どもたちの栄養面、衛生面、健康状態などへの配慮が求められている。町職員も交代しながら24時間体制で給水活動やマスコミ対応、情報収集にあたっているため、手一杯の状況だ。今後事態が長期化すれば、公共サービスにおける人員の増員も必要とされる。

 

 一本の橋、一本の送水管が機能不全となるだけで孤立化して、一気に「被災地」さながらの状態に陥っている。住民たちの暮らしを守る島内外からの全面的なサポートが必要になっている。

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