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高齢者の懐を襲う負担  介護、年金、医療制度の変化

 「高齢化で膨らみ続ける医療費を現役世代が支えきれない」「介護保険も財政難だ」「若い世代につけを回すのか」などといって、年金生活の高齢者に負担を求める法改悪が立て続けにおこなわれている。現役世代はワーキングプアばかりになって税金をとれなくなっているなかで、わずかでも貯蓄を持っている高齢者の懐に手を突っ込んではぎとっていくような、なりふり構わぬ国民収奪計画が横行している。税制にしろ介護や医療制度にしろ、内容がコロコロ変化して人が気づかないうちにばっさりとられているという、詐欺のような手法に怒りが高まっている。
 
 負担増の法改悪たて続け 増えた税収は海外へばらまき

 高齢者の収入は年金だが、長年かけてきた年金を手にする前に、有無をいわさず各種保険料や税金が天引きされていくようになっている。以前は窓口で支払うなど、支払い方法が選択できていたが、介護保険料は2000年の制度スタート時から天引きで、08年には国民健康保険料の天引き開始と同時に後期高齢者医療制度が始まり、75歳以上の高齢者は後期高齢者医療保険料も天引きされるようになった。さらにその翌年の09年10月からは、市・県民税の天引きも始まり、満額かけてわずか6万円程度しか支給されない国民年金でも、2カ月に1回、手元に届く前にがっぽり天引きされて、振り込まれるのは5万円あまりになる。
 70代の婦人Aさんの家計をのぞかせてもらうと、2カ月に1度の国民年金の支給額は今年10月分で10万7600円(1カ月5万3800円)。そこから介護保険料が9620円、後期高齢者医療保険が9131円引かれ、実際に振り込まれたのは8万8849円(1カ月約4万4400円)だった。年金額は昨年度には年間57万2400円あったのが、今年度は56万8200円と4200円減額したのに対して、後期高齢者医療保険額は昨年度4万7874円に対して今年度は5万431円支払うよう通知が届いている。これだけでも2557円の増額だ。
 夫は、基礎年金に厚生年金などが加わって200万円ばかりの年金があるが、基礎年金部分は引かれ物でほぼ消えてしまう。10月分の場合、基礎年金の4万4566円から介護保険料1万3350円、住民税7400円が引かれ、振り込まれたのは約半額の2万3816円。それと別に後期高齢者医療保険料を1万8300円(年14万715円)支払わないといけない。
 年年引かれる額が増えていくというのが実感だが、ほとんどが天引きなので、いったいどのくらい負担が増えているのか、複雑すぎてわからないのが実際だ。最近消費税の増税で毎日の食材から水道代、電気代などすべての生活費が上がって、ますます生活は厳しくなっている。
 消費税増税に加えて急激な物価高が進行しているが、年金の方は「過去に物価が下落したのに年金額を据え置いたので、本来の水準よりも1・5%高い水準になっている」といって、3年間で2・5%減額する計画が進行中だ。今年度も0・7%のマイナスとなっている。
 さらに今月初めには、年金給付水準を確実に抑えるため、来年度からマクロ経済スライドを完全実施する方向が打ち出された。
 これまでは原則、前年の物価に連動して、物価が上がれば年金もその分増額になる仕組みだったが、04年の制度改革で、年金の伸び率を物価上昇率から財政悪化分(2014年度の厚労省試算で1・1%)を差し引いた値に抑える仕組み(マクロ経済スライド)が導入された。しかしこれでは思い通りに年金が引き下がらないとして、今度は物価の上下にかかわりなく、財政悪化分の1・1%をそのまま削減するというのである。たとえ物価が上がったとしても年金は減額になるという、高齢者の生活など無視した制度だ。これで現在は現役時代の給料の60%台を補償しているものを、団塊の世代が65歳になるときまでに、50%まで引き下げようとしている。
 また合わせて、現在は65歳以上なら120万円まで非課税などの公的年金控除も見直して課税を強化することや、高所得者の基礎年金の国庫負担分(現在は全体の五割)を削減することも議論の俎上にのぼっており、高齢者の生活の糧を根こそぎ奪う勢いの負担増が計画されている。
 着実に収入は減る一方で保険料はどれも上がるばかりだ。下関市の介護保険料(基準額)を見ると
 第1期(平成12~14年度)…3200円
 第2期(平成15~17年度)…3980円
 第3期(平成18~20年度)…4200円
 第4期(平成21~23年度)…4200円
 第5期(平成24~26年度)…5300円と、介護保険料だけでも2100円の増加である。
 さらに山口県の後期高齢者医療保険料は、
 平成20~21年度 4万7272円(所得割率8・71%)
 平成22~23年度 4万6241円(所得割率8・73%)
 平成24~25年度 4万7474円(所得割率9・45%)
 平成26~27年度 5万431円(所得割率10・17%)と、均等割は当初に比べて3159円増加。さらに所得割率も大幅に上昇している。
 保険料だけでなく市県民税も今年6月から復興税1000円が上乗せになっている。これも当初は10年間だったはずが、いつの間にか20年間に引き延ばされた。この住民税の復興増税で国は2000億円の増収を見込んでいる。
 さらに安倍政府は後期高齢者医療保険を巡って、低所得者を対象にした保険料負担を軽減する特例を段階的に廃止する方針を打ち出し、15日の社会保障審議会医療保険部門で大筋了承された。2016年度から実施するとしている。対象になるのは①所得が低い約690万人、②夫や子どもに74歳まで扶養されてきた約175万人と、全加入者約1600万人の約半数に負担増が及ぶもので、高齢者の負担増は約800億円にのぼるとされている。
 国民年金(基礎年金)とほぼ同額の年金収入80万円のケースで見ると、夫の年金が80万円で、妻の年金が80万円以下の場合、現在月額740円の保険料が2240円へと3倍に跳ね上がる。一人暮らしの場合も現在370円が、軽減廃止後は1120円へと3倍になる。
 夫の年金が200万円で、妻が80万円以下の世帯の場合は、5480円が7220円に上がる。
 専業主婦だった女性が夫に先立たれたケースを見ると、現在は年金収入にかかわらず月額370円であるが、廃止後は年金収入に応じて月額1120円か、1870円となり、加入後2年を過ぎていると、一般の一人暮らし世帯と同じ保険料を支払わなければならなくなる。
 また年金年収二〇〇万円の男性の場合には、所得割が半額になるという特例があるが、これも廃止されるため、月月の保険料は4740円から6580円へと上がる。

 介護保険の負担来年8月からは2割へ

 介護・医療分野では6月18日に「医療・介護総合推進法」が成立。「推進する」と称して、大幅な負担増や介護・医療の切り捨てが始まろうとしている。
 その一つが来年8月から介護保険の利用者負担を現在の1割から2割負担への引き上げ。単身で年金収入が280万円以上、世帯所得が160万円以上の高齢者について2割負担にする。
 一方で、今でさえ待機者が多くなかなか入所できない特別養護老人ホームの入所要件を厳しくして、新規入所を「要介護3」以上に限定するほか、低所得者が施設に入所するさいの食費・部屋代の補助対象を縮小。所得が低くても単身で1000万円超、夫婦で2000万円超の預貯金がある場合は補助対象外にする。さらに入所者本人が非課税でも、夫や妻が課税されていれば対象外にするうえ、非課税扱いの遺族年金や障害年金すらも課税扱いの収入とみなして計算するなど、とにかくとれるところからすべてとるという調子である。特別養護老人ホームを巡っては、これまで一人部屋のみ部屋代を徴収していたが、複数部屋の入所者からも部屋代を徴収することも打ち出している。
 そして要支援1、2の高齢者については介護保険から切り離し、訪問介護(ヘルパー派遣)と通所介護(デイサービスなど)市町村事業に移管することが決まり、財政難の地方自治体は大騒ぎとなっている。要介護認定を受けた高齢者全体の27%を占める約150万人が介護保険から切り離されることになり、自治体の財政状況によっては十分な介護を受けることができないことが危惧されている。
 そして費用抑制策として、介護予防費用は年5~6%増えているが、これを各市町村に住む75歳以上の人口増加率(3~4%)を上限とし、予算編成段階で利用者一人当りの費用が上限をこえると、市町村に再検討を求めるなど、費用抑制ありきの方針に介護関係者のなかで憤りが語られている。
 医療費も、70~74歳の前期高齢者医療費負担を1割から2割負担にしたのに続いて、75歳以上の後期高齢者の患者負担も1割から2割にする方針の検討を開始。さらに入院給食費負担を1食250円から450円に値上げする方針や、70歳以上の医療費負担上限(外来)を月4万440円から入院と同じ8万7000円に引き上げることも検討されている。
 高齢者の貧困化は深刻化しており、スーパーでの万引き犯の多くが高齢者を占めるなど、長年働き、日本を支えてきた人人が生きてゆけぬ状況が広がっている。国民にさらなる負担増を強いる一方で、海外には何十兆円とばらまいていく安倍首相の姿に、高齢者やその家族をはじめとして「黙っておけない」と反撃機運が高まっている。

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