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米海軍佐世保基地の揚陸艇 協定破り夜間訓練強行 地元自治体の抗議続く

 長崎県西海市に移駐した米海軍佐世保基地所属のエアクッション型揚陸艇(LCAC)が地元との協定を無視した夜間訓練をくり返し、地元自治体が「市民の安全が確保できない」と強く抗議する事態が続いている。沖縄と同様の傍若無人な米軍の振る舞いが目に余るものとなっており、国民の安全をないがしろにする「日米安保」の姿が浮き彫りになっている。

 

水しぶきを上げて航行する米軍のLCAC(佐世保市)

 米軍佐世保基地のLCAC(7隻)は、海上の揚陸艦から海兵隊員や軍用車両を乗せたまま水上を航行し、上陸後はそのまま陸地を走行できる水陸両用のホバークラフトで、戦時には「殴り込み」(強襲上陸)のために使用される。米国外では日本だけに配備されている。約90㌧の船体を浮上させプロペラで進む構造で、凄まじい爆音とともに水しぶきをあげながら航行する。周囲では日常生活や漁業にも甚大な被害をもたらすため運用中止の声が強まり、5年前に佐世保湾の入口南側に位置する西海町(当時)横瀬に移駐した。

 

 2000年1月、西海町(合併後は西海市)は、LCAC基地の受け入れにあたって夜間訓練を拒否し、それを移駐の条件にするため「夜間及び早朝のLCACの航行についてはおこなわないよう米軍と調整する」とした協定書を福岡防衛施設局と締結した。移駐後の2014年には米海軍が九州防衛局を通じて西海市に夜間訓練の実施を打診したが、西海市は「船舶の安全や住民の安心が脅かされる」「協定を順守すべき」としてこれを拒否し、地元の瀬川漁協も「組合員だけでなく、夜間操業等をおこなっている漁業者が安全に操業するためにも認めることはできない」と抗議していた。

 

 ところが昨年11月7日、突如としてLCAC2隻による夜間訓練を開始し、8日には3隻、9日は1隻、さらに断続的に続けた。今年1月31日、2月1日には事前通告もなく日没後から訓練を開始したため、西海市は「駐機場を受け入れた経緯からして夜間航行は断固受け入れられない」として協定順守を求める要請書を提出。市議会では「夜間航行の禁止を求める意見書」を全会一致で採択した。

 

 だが、在日米軍司令部は、日本のメディアが「協定違反」と報じたことにいきり立ち、公式ツイッターなどのSNS上で「(日本の新聞が)米国が協定を破り佐世保湾においてエアクッション型揚陸艇(LCAC)の夜間訓練を実施したとの誤った主張をした」「米軍と日本の間では、米海軍が夜間にLCACの訓練をしないという合意は一度もなされていない。米国は、記事で書かれたような協定の当事者ではなく、その条件のいずれにも同意したことはなく、拘束されたこともない」と反論。「この誤ったジャーナリズムの実例に異議を唱え」、「記事を修正するために適切な措置を講じることを要請する」と批判した。また、佐世保基地の司令官は、「今後、どの時間に訓練がおこなわれるかは今回の訓練が目安」「昼夜を問わずおこなわれる作戦行動で運用できるようにするため、これからは海軍上層部の決定でおこなわれる」と居直り発言をくり返した。

 

 さらに4月の2~6日、5月は9~15日に夜間訓練をおこなうと一方的に通告し、2日から訓練を強行した。西海市役所には1日に「防災基地対策課」が新設されたばかりだが、夜間訓練は想定していないため防衛省との間にも規定は存在せず、米軍の無法地帯で住民の安全確保に追われている。

 

 米軍との唯一の窓口である防衛省は、米軍の通告を受けて「訓練実施はやむをえないものと判断した」(九州防衛局)と発言しており、「(駐留を認めていることは)米軍がかかる目的の達成のため、訓練を含め、軍隊としての機能に属する諸活動を一般的におこなうことを当然の前提としている」「(今回の訓練は)日没後1時間以内に帰港するなど一定の配慮をおこなった」(防衛省)と米軍側を評価する認識を示すなど、地元との「協定」などなかったかのような態度を決め込んでいる。「夜間訓練をおこなわないように調整する」のではなく、「おこなえるように承認している」のが現実だ。くり返される公文書改ざんや記録廃棄と同様、米軍のためなら協定すらなかったことにする主体性のなさを見せつけている。

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