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下関 親世代の貧困化が深刻 安心して教育受けられぬ子供 給食だけの一日

 下関市内では、小学生が毎日給食だけで過ごし、お腹が空くので食べ物の万引きをしていたという話、年度初めの検診で治療が必要と診断されても病院に行かない子どもの話、1人親家庭に支給される児童扶養手当の受給者が3000人をこえ、相談窓口が1人から8人に増やされた話などがかわされている。子どもを立派に育てることは親のつとめであるばかりでなく民族のつとめであり、せめて学校だけでものびのびと学び、友だちと交われる場でなければならず、そのために義務教育は親の貧富にかかわりなく平等に受けさせることが建前とされてきた。しかし戦後、それは実現されたことがなく、この間の国の政治は「自己責任」「受益者負担」といって教育の機会均等を公然と破壊してきた。同時に、子どもに教育を受けさせることが困難なほど親の収入が減っており、MCSの撤退をはじめ企業倒産やリストラがあいつぎ、子どもを抱えた親世代が突然仕事を失ったり、給料が激減したりと、貧困化が著しい。子どもたちを日本の将来を担う民族の子として育てるため、安倍政府とその代理・中尾市政に、子どもの教育を保障し、親たちの働く場をつくれの要求を市民の大運動によって実現させなければならない。
 
 非正規雇用拡大の犯罪性露呈

 下関市内のある小学校低学年の男児は、毎日朝食も夕食も食べておらず、お腹を満たすのは学校での給食だけだった。しかしそれでもお腹が空くので、近所で食べ物の万引きをくり返していたが、見かねた店員が声をかけ、教育関係者が相談を受けてそのことが明らかになった。それは特殊なことではないと語られている。
 ある中学校の教師は、年度初めの内科検診や歯科検診で、虫歯があり治療が必要と診断された生徒の1人が何度促しても病院に行った様子がないことを心配している。「病院に行かないのか、それとも行くことができないのか。私たちは家庭のことには踏みこめない。だがその子はいつも暗い顔をしている」と語っている。国民健康保険料が払えず保険証を持たない家庭でも、18歳までは3割負担で医療を受けることができるとはいうものの、その医療費を払うことができない。
 市内の公立高校や私立高校では、「兄弟がもうすぐ進学するから」という理由で修学旅行に行かない母子家庭の生徒が何人かいるという。積み立てる旅費やお小遣いを含めると、費用が10万円をこえるためだ。その生徒の1人は、学校から帰るとすぐにショッピングセンターで閉店までアルバイトをして、生活費などにあてている。
 高校2年、中学3年、小学生の3人兄弟の母親は、生活のために夜に働きに出ている。姉が毎日のご飯をつくり、姉と兄が母親の代わりに小学校の参観日に行って、妹が寂しい思いをしないように頑張っている。近所の人たちは、そのような兄弟の様子を見守りながら、「複雑な環境ではあるが、妹をものすごくかわいがる優しい子どもたちだ。学校では問題児と見なされているようだが、学校では見せない子どもの生活や姿を先生は理解してほしい」と語っている。別の学校でも、小学生の女の子が突然学校に来なくなったため家に行ってみると、一生懸命幼い弟や妹の世話をしていたという話がある。

 母子家庭増え困難増す 子供の貧困率突出 

 以上の背景に、子どもに義務教育を受けさせることが困難なほど、親の収入が少ないことがあげられる。それは多くの働く親たちが、なんの保障もない非正規雇用の安い賃金で働かされ一度身体を壊してしまえばすぐに収入が途絶えるという不安定な環境におかれているからだ。小泉内閣以降の労働の規制緩和が、働く親たちの生活をいっそう困難にし、貧富の格差を拡大している。
 それが夫婦間の衝突や離婚にもつながり、また子どもにも反映して、突然不登校になったり、勉強について行かれず学校で暴れたりというあらわれになっているという。なかには生活の苦しさに負けて親が逃げたり、子育てを放棄するというやりきれない実情も語られている。
 中学生の子どもを育てるある母親は、パートで腰を痛め寝込んでしまい、収入が絶たれた。そして、子どもを高校に行かせられるかどうかと悩んでいる。市の担当者が生活保護の申請をすすめたが、「それはしたくない」と拒否している。
 保育士のパートとして朝8時30分から午後5時まで働きながら2人の子どもを育てる母親の場合、1カ月の収入が少ない月は10万円程度。児童扶養手当と児童手当を受けながら市営住宅で生活している。
 5時に仕事を終えすぐに娘を保育園に迎えに行き、その足で小学生の息子が通う学童保育に迎えに行く。はじめは正社員になることも考えたが、早出や遅出や持ち帰りの仕事があるため辞退した。子どもが熱を出したりした場合は早引きしたり、お金を払って病児保育に預けた。「私の職場はまだ恵まれている。子どもがいるというだけで雇ってもらえない職場も多い。でも子どもが病気で2、3日仕事を休めば、給料はすぐに1、2万円減る」と話した。
 下関市内のある保育園では、遅くまで働く母親の代わりに、24時間保育施設の職員が子どもを迎えにくることがある。母子家庭の場合、親などの援助がなければ正社員として働くことが困難で、多くが非正規雇用のパートで月8、9万円の収入で生活している。
 市内の別の保育園では、最近、ゼロ歳児の園児が急増した。離婚して幼い子どもを連れて地元に帰ってきた母親たちが、早朝から弁当屋のパートに出たり早朝勤務するケースが増えたためで、そのために午前6時30分から子どもを預かっている。冬場になると園長は、子どもたちのために午前五時すぎから部屋を暖めているという。
 下関市では少子高齢化で子育て世帯は減っているが、母子・父子家庭は増えている。学校によっては、クラスの半分が父子・母子家庭というところもある。そして1人親家庭に支給される児童扶養手当の受給者数(対象となる親の人数)が増加しており、2007年度は3137人、08年度は3101人、09年度は2936人、10年度は3027人、11年度は3026人。子どもが2人や3人の家庭もあり、下関市内で数千人の子どもたちがその対象になっている(2010年8月からは父子家庭も支給対象)。
 支給額は、所得に応じて、児童1人の場合が月9780円から4万1430円、児童3人の場合は1万7780円から4万9430円。しかし満額支給はまれで、支給開始から5年たっても「就業意欲が見られない」と見なされると、2分の1が支給停止となる。
 日本はOECDの調査で、国全体の貧困率が16%(2010年)、子どもの貧困率が15・7%(同)と、先進国のなかでも高いことが問題になっている(貧困率とは、国民の所得を低い順に並べ、中央値の半分以下の人の割合を示したもの)。なかでも母親が一人で働き子どもを育てる母子家庭は、貧困率が50%をこえ、先進国のなかでも突出している。「豊かな国」ではなく、「貧困大国」になっているのである。
 しかし、生活の困難さのなかで、それに負けないたくましい子どもを育てる教育実践が発展している。子どもを平和で豊かな未来社会の担い手に育てるために、鉄棒逆上がり全員達成などの目標を掲げ、教師集団が結束して「みんなのために」で子どもたちを鍛える実践が急速に広がっている。そのなかでは朝ご飯を食べて登校することすら厳しい環境の子どもたちを励まし、子どもの生活を変え、働く親たちから大歓迎されている。
 それとともに、安倍政府が平和で繁栄した日本をつくるための教育よりも、アメリカと財界のもうけのためにつくし、雇用を破壊し、憲法を変えて戦争のできる国にしようとしていることに対して、教師集団は結束し、親である労働者や農漁民、勤労市民の切実な願いを代表して、子どもの未来のためにたたかわなければならない。下関市の安倍代理・中尾市政に対して、人工島軍港化やむだな大型箱物事業をやめ、働く場をつくれの市民の大運動を発展させることが切望されている。

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