いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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「先達から受け継いだ平和で豊かな佐賀にオスプレイ基地はいらない」 工事差し止め訴訟で古賀初次氏の意見陳述

1.はじめに

 

 ①私は、昭和24年に生まれ、昭和42年からは父の海苔養殖業を手伝うようになりました。そして、昭和48年頃には父から養殖業を引継ぎ、同年に漁協組合員の地位についても受け継ぎました。それから現在に至るまで、有明海を漁場として海苔養殖業を続けています。

 

 ②今回、国造搦60㌶の土地所有権をめぐる紛争が生じていますが、当該土地は単なる一財産などではありません。私たちの先輩が、数十年にわたって、血のにじむような努力をして手に入れたかけがえのない宝です。

 

 そもそも本件土地に関しては、昭和38年に、国造干拓事業により漁場を失うことに対する生活再建を目的として、南川副漁協の漁業権者のうち入植増反希望者へ土地を優先配分する旨の申合わせがなされていました。しかし、国は不義理にも長年この約束を放置し続けました。そのような中、佐賀県は、あろうことか当該土地に佐賀空港を建設する予定を立て、国から当該土地を買い受けるに至りました。当然、土地をもらい受ける予定となっていた漁業者らはこの計画に猛反発し、その結果、佐賀県はいったん空港建設計画を中止するとともに、昭和56年には本件土地の配分について再度の確認をすることとなりました。そして、昭和63年、ようやく増反希望者個人に対し本件土地の配分が実施されるに至ったのです。

 

 私たちの父世代は、佐賀の平和への思いと有明海の豊かな漁場を守るという確固たる意志を持って、本件土地に関する交渉を続けてきました。今の平和で豊かな佐賀が存在するのは、間違いなくこうした先達の努力の賜物だと思います。

 

 そうであるにもかかわらず、今、私たちの土地が勝手に売り飛ばされ、軍事的拠点として作り替えられようとしています。私たちはこのような愚行を見過ごすことはできません。何とかしなければいけないという思いから本件訴訟を提起するに至りました。

 

2.本件土地に関する私たちの活動

 

1600人が体育館を埋めたオスプレイ配備反対住民集会(2017年7月・佐賀市川副)

2018年4月に開かれたオスプレイ配備反対の住民集会(佐賀市川副)

 ①私は、平成26年7月頃に、当時の防衛副大臣が佐賀空港への自衛隊駐屯地建設及びオスプレイ配備の要請を行ったことをニュースで知りました。戦争を経験してきた先人たちが、佐賀空港建設に際して、佐賀空港の自衛隊との共用を恒久的に阻止し、有事の際に攻撃対象となることを防ぐために、公害防止協定を締結させたという経緯を聞いていましたので、自衛隊の駐屯地建設などとんでもない話だと思いました。

 

 そして、平成26年8月頃、近隣の自治会長らと話し合った上で、オスプレイ対策協議会を結成し、オスプレイ配備等に対する反対活動を行うようになりました。その後、同協議会は支援の輪を広げ、「オスプレイ反対住民の会」に発展しています。

 

 同会では、オスプレイについて学ぶために講師を招いて勉強会を開いたり、のぼり旗を掲げて市井の方々に訴えかけたり、反対署名を募って県や国に意見書を提出するなどの活動を行っていました。その活動を通じて多くの協力者と出会うことができ、反対運動も拡大していきました。

 

 ところが、平成30年8月に当時の知事が受け入れを表明し、オスプレイ配備に向けての話し合いが加速度的に進んでいきました。私たちは、このままではいけないと思い、県に対し何度も意見書を提出し、知事との面会を申し出ましたが、担当者は「知事に伝えます。」と言うばかりで、最後まで知事が私たちの前に現れることはありませんでした。

 

 ②令和3年7月30日には、九州防衛局長が私たち個人に対して土地の売却可否に関するアンケートを送ってきました。このアンケートの宛先や内容からは、九州防衛局が私たちを所有者であると認識していたとしか思えません。

 

 また、令和5年3月17日にも、九州防衛局長が「駐屯地予定地の用地取得について」という書面を送付していますが、これも所有者たる私たちだけを対象としています。

 

 こうした経緯を考慮すれば、本件土地に関して、これまで国が漁協ではなく個々人を所有者として認識していたことは明らかです。そうであるにもかかわらず、今になって国は私たちを「関係者」呼ばわりし、所有者としての地位を否定し始めています。

 

 私たちは今回の本件土地の売買契約が締結される前に、何度も、国や漁協に対して、私たち個人こそが所有者であることを訴えてきましたが、全て黙殺されてきました。

 

 ③国は、漁協執行部に対し、「今後の補助事業を円滑に進めたいのであれば本件要請に協力するように」と求めている旨の話も聞いています。

 

 かねてより、私たちは、この問題についてきちんと声を上げるべきだと主張してきましたが、こうした事情を受け、漁協内部から「余計なことはするな」という圧力を受けることが多々ありました。今回の土地取得についておかしいと思いながらも、生活のために迎合せざるを得なくなった漁業者もたくさんいます。

 

 私たちは、今回の問題によって漁業者内部で分断が生じてしまったと感じています。私たち海苔養殖業者は、常に海上で危険にさらされながら作業を行っています。時には海に投げ出されることもあります。私たちは、このように分断が生じた状況で有事の際に同業者が助けてくれるだろうかという一抹の不安に駆られているのです。

 

 なぜ正しさを求めているにもかかわらず、このような不安を抱かなければいけないのか、理不尽でなりません。

 

3.私たちの生活への影響

 

有明海でのノリ養殖(佐賀市)

 オスプレイに関しては、2010年頃から墜落事故が幾度となく発生しており、新聞報道等によればこれまでに10件近い墜落事故が発生しているとのことです。屋久島沖で8名もの死者を出した痛ましい事故が起きたことも記憶に新しいかと思います。

 

 万が一、佐賀空港にオスプレイが配備された場合、これまでの事故態様からすれば、その乗組員や周辺住民に死傷者が出ても何らおかしくありません。また、有明海では多くの漁民が昼夜を問わず活動しており、海上事故であってもその生命身体に危険が及びかねません。仮に事故に直接巻き込まれないにしても、今後の有明海の漁業に深刻な影響を及ぼすものと考えます。

 

 特にノリ養殖業に関しては、冬の海上で日が昇らない時間帯に作業をすることも多く、オスプレイ機が昼夜問わず訓練を実施し、夜間に事故が発生した場合には、我々海苔養殖業者は極寒の海に投げ出され命を落とす危険があります。令和五年11月30日付の佐賀新聞には、有明海漁業協同組合員であるノリ養殖業者の1人のインタビューが掲載されており、「もし有明海に墜落したら燃料が流出し、ノリに影響が出てしまう。」「この先何十年と不安な気持ちを持つことになる。」と述べています。私が抱えている不安は決して私一人の杞憂などではなく、有明海で漁業を営む組合員全体が抱える問題だと思います。

 

4.おわりに

 

 今回の陸上自衛隊駐屯地建設工事は、佐賀空港が軍事基地化し他国からの攻撃対象となる危険を生じさせるだけでなく、配備予定のオスプレイ機を初めとした各種機体の事故によって地域住民の平穏な生活を奪う危険性もあります。

 

 佐賀地方裁判所には、一刻も早く、この駐屯地建設工事を差し止める判断を出して頂きたいということを申し上げまして、私の意見陳述を終わります。

 

(3月15日、佐賀地裁での第1回口頭弁論での意見陳述より)

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