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柏崎市議が語る 新潟中越地震で柏崎刈羽原発はどうなったか

 昨年10月、新潟県で阪神大震災につぐ大規模な地震があり、甚大な被害となった。その地には世界最大規模の7基という東京電力の柏崎刈羽原発がある。「原発はどうなったか」と全国が高い関心をもってニュースを見守った。だがマスコミはいっさい知らせなかった。意図的な報道管制をしいたのである。このたび矢部忠夫氏ら柏崎市議四氏が山口県を訪れる機会があり、長周新聞社に立ち寄り、現地の状況を知らせてくれた。山口県では中国電力が二井県政をおし立てて上関原発建設を推進しているが、この地域は地震地帯として専門家が危険性を指摘しており、2月22日には付近で震度3の地震が発生した。新潟県中越地震発生で柏崎刈羽原発現地はどうなったのか、以下に紹介する。
 
 でたらめな原発立地調査
 新潟県中越地震は昨年10月23日午後五時五六分ごろ発生。震源地は柏崎市に近い小千谷市付近、震源の深さは20㌔、マグニチュードは6・8と推定される。小千谷市で震度六強、柏崎市では震度五を観測した。その後も強い余震がつづいた。
 地震発生と同時に柏崎市内はほぼ全域で停電。家が傾いたり、崩れた土砂が家の中に入って住めなくなったり、ブロック塀の倒壊もあいついだ。住宅の全壊16棟、大規模半壊42棟、半壊106棟、一部破損は461棟。応急仮設住宅も建設された。道路は市内のいたるところで陥没・土砂崩れ・隆起が起こり、農業集落排水事業もマンホールが浮き上がったり、沈んだりして使えなくなった。
 学校や総合体育館、民間施設をふくめ87カ所に避難所を開設し、ピーク時には約6200人の市民が避難した。停電のため建設業協会柏崎支部が自家発電装置13機を手配し、電気を供給した。死者は出なかったが、54人がけがなどをし、病院で治療を受けた。
 このように、柏崎市内では地震の被害は甚大であり、被害総額は柏崎市の年間予算にも相当するとみられている。こうしたなかで、「原発は大丈夫か」というのが市民が一番に心配したことであった。だが、地震発生から40分間も、東京電力からの連絡はなく、市民は不安をかかえて過した。
 原発周辺で震度3以上の地震が発生した場合は、ただちに通報連絡することが決められていたが、東電はこれを破った。また、テレビの地震情報では、柏崎市の震度はテロップで流さず、地震の被害はたいしたことないかのような印象を与えた。矢部市議は地震直後に市庁舎から発電所への直通電話をかけたが、40分ほどまったくつうじなかったと語っている。
 市民のなかでは、地震発生直後から「大きな余震がつづいている。東電はなぜ柏崎刈羽原発を止めないのか」との声が強まった。これにたいし東電は、「耐震設計になっており、原発は安全。通常運転して、元気に東京に送電をつづけている」と市民の心配を逆なでするような広報活動をおこなっていた。だが11月4日には、大きな余震があり、柏崎刈羽原発七号機が自動停止した。これについても東電は「地震の影響ではない」といいはっている。

 耐震設計の三倍を超す加速度観測 近くの小千谷市
 地震があいつぐなかで、原発の耐震設計についても見直しが要求されている。昨年11月2日に柏崎原発反対地元3団体は東電柏崎刈羽原発所長にたいし、「地震終息まで、原発停止」を求めて申し入れをおこなっている。そのなかで、柏崎刈羽原発の耐震設計について問題にしている。同原発の設置許可は1977年9月におりているが、当時は「気比ノ宮断層がM6・9の地震を起こす。そのさいに原発敷地は220ガルの加速度が生じるので300ガルで設計すればじゅうぶん」としている。
 だが、政府の地震調査委員会は昨年10月、気比ノ宮断層をふくむ新潟市沖の日本海から今回の地震地域までの83㌔㍍を長岡平野西縁断層帯とし、M8の地震が起こる。その発生確率は30年間で2%との警告をしていた。昨年10月の新潟県中越地震では、気象庁が小千谷で1007ガルを観測しており、東電が想定した220ガルや設計の300ガルを大きくこえている。
 同3団体は「政府の地震調査委員会さえ、東電の耐震設計の前提(M6・9)を否定し、M八を想定しています。長岡平野西縁断層帯でM八の地震が発生したら、柏崎刈羽原発は耐えられません」として、原発停止を要求した。
 その後、中部電力は、東海地震で想定されている「基準時震動」600ガルを1000ガルに引き上げ、これに耐えうるように浜岡原発の補強工事をおこなうことを発表した。600億円をかけて、排気塔の鉄骨補強や配管の支持装置の追加などをおこなうとしている。これに比べ、「100ガルの縦揺れで原子炉は緊急停止するので安全上問題ない」とする東電の対応にたいし、「浜岡原発と同様の補強工事を」との要請が出ている。
 東京電力の柏崎刈羽原発は七号機まであり、日本一のみならず世界一の原発地帯となっており、地元住民は消防自動車が原発の方向にむかったというだけで、「原発になにかあったのではないか」と不安におびえる生活を強いられていることを、柏崎の4市議はとくに強調した。今回のような大規模な地震があっても、ほんとうのことは住民にはなにも伝えられず、東電は住民の安全より、利潤を第一にして原発の運転をつづけたことを怒りをもって追及した。
 新潟県中越地震は大きな被害をもたらし、地域の人人の生活に大きな困難をもたらした。大地震による原発破壊の想像を絶する被害の危険性とともに、そこには、「世界一の大規模な原発を国の審査をくぐって建設するところであるから、地震など起きない」と多くの人人を思いこませ、人人の地震への準備をほとんどさせなかったという面でも、東電と政府の責任は大きい。原発を建設するとき、電力会社も政府も、ろくな地震調査もしないということは、中越地震の重大な教訓である。
 上関の対岸にある伊方沖に、近年巨大な活断層が発見されている。上関は国の重要な地震警戒地域に指定されているところである。東電と比べたらヒヨコほどの田舎会社で、原発の稼働期間まで会社がもつことはまずない中国電力が、上関に原発を建設するというのはとんでもないごう慢なことである。

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