いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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沖縄県民の意思表示恐れた悪あがき 辺野古・県民投票巡る攻防 「強行」を裏返して見てみると

民主主義無視の投票権剥奪

 

 辺野古埋め立ての是非を問う沖縄県民投票(2月24日に実施予定)をめぐり、沖縄県内41市町村のうち3市の市長が投票の実施を拒否するなどの抵抗をくり広げている。辺野古新基地の建設を推進するために県民投票の効果を弱めたい安倍政府の意向に沿って県民世論との対立を深めている。屈服を迫る力尽くの恫喝や甘言による欺瞞が通用しなくなると、県民が持つ意志表示の権利そのものを奪ってしまうという前代未聞の手法があらわれている。この凶暴さの背景にあるもの、辺野古新基地問題をめぐる力関係について、記者座談会で論議した。

 

 A 辺野古新基地建設のための埋め立ての是非を問う県民投票は、昨年5月から住民有志による署名活動が始まり、わずか2カ月で県内有権者の1割をこえる10万950筆(法定必要数の4倍)に上る署名が集まり、10月に県議会で実施が可決されたものだ。県民投票にあたっては、通常選挙と同じように市町村に投票事務作業を移譲しなければならない。ところが県内41市町村のうち36市町村は投票事務の実施を決めたものの、宮古島、宜野湾、沖縄の3市では、議会が投票事務の予算案を否決し、市長が投票を実施しない意向を表明した。また、石垣市、うるま市も同じく予算を否決し、現在までに市長は態度を明らかにしていない。いずれも辺野古新基地建設の阻止を掲げる玉城県政と対抗する立場で、市長選で自民党政府の強力なバックアップを受けた市長たちだ。

 

 主な拒否理由を見てみると、「投票結果によっては、普天間飛行場の固定化に繋がる懸念が極めて高い」(宜野湾市・松川正則市長)、「市議会の意思を尊重する」(宮古島市・下地敏彦市長)、「○でも×でもない人たちの思いを無視した県民投票は乱暴だ」(沖縄市・桑江朝千夫市長)というものだが、要するに辺野古新基地についての県民の民意を明確にしたくないというのが動機だ。

 

  辺野古新基地の建設によって普天間飛行場が返還される保証はどこにもなく、市民の投票権そのものを奪いとってしまう方がよっぽど乱暴だ。「県がやるものに市の税金は使えない」との意見もあるが、県民投票の事務を委託しても、経費は県が支出するものだ。また3市長とも「市議会の意向を尊重する」というが、市議会で多数を占める与党議員の意志を尊重しているだけで、市民を代表した判断とはいえない。

 

 県全体の有権者数は114万6815人(昨年9月現在)だが、「実施しない」としている3市の有権者は計22万7988人で全体の約20%を占める。うるま市、石垣市を含めると計36万3096人となり、全体の31%をこえる。市議会や市長の権限によって県民から投票の機会を奪うことで、県民投票の結果に大きな穴を開けることが目的であり、それ以外の意味はない。

 

 この3市長があくまで辺野古新基地に賛成の立場に立つのなら、「普天間の固定化を避けるためには辺野古移設が必要」なり、「国防は国の専管事項」「国策には従うべきだ」などの主張を明確に訴えて、「埋め立て賛成に投票しよう」という運動をやればいいだけの話だ。その正否の判断を県民に委ねるのが民主主義だろう。県民投票は、県民の意志を明確に示すため是非いずれかを問うものと定められているが、棄権の選択肢もある。その全県民に与えられた意志表示の機会そのものを奪ってしまえというのは市民の都合ではなく、市長や議員の都合以外のなにものでもない。

 

県民投票請求署名(昨年7月、県庁前)

  先の知事選は、官邸が主導した東京司令部vsオール沖縄(沖縄県民)のたたかいとなり、金力と権力をフル動員しながら自民党政府が大敗した。振興予算を振りかざして企業や業界団体を揺さぶったり、あらゆる圧力と欺瞞を駆使して知事ポストを奪いにいったが、永久的に沖縄を米軍基地支配に縛り付けようとする東京司令部の「乗っとり」は島ぐるみの力によって叩き潰された。

 

 県民投票の実施拒否も、自民党政府が背後で糸を引いていることは明らかで、市民に投票で選ばれたはずの市長が市民の投票権を奪うという本末転倒した行為に及んでいるのはそのためだ。これらの市長や市議会は、官邸や米軍を忖度することで自分の地位を保障してもらう関係をみずから暴露している。同時に、県民の審判から果てしなく逃げ回らなければならないわけで、力関係としては県民の側が圧倒していることを示している。「強行」を裏返して見てみる必要があるのではないか。知事選で打ち倒された側が、なおも懲りずに県民を挑発している関係であり、県民としてはこの悪あがきの芽を摘んでいく以外にない。

 

  逆にいえば、県民投票の結果について、この3市長なり背後勢力の側が自覚しているということでもある。これまでは安倍首相のご飯論法を真似て、辺野古新基地の賛否を問われても「普天間の危険性除去が最優先」などといって誤魔化してきたわけだが、辺野古問題の一点を争点にしたときには欺瞞のしようがない。宜野湾市長にしてみれば、地元で「辺野古埋め立て反対」が多数を占める結果が出たなら、「宜野湾市民のため」という欺瞞が足元から崩れる。県民を分断できなくなる。それがわかっているから市民が持つ県民としての投票権を奪ってしまうというものであり、白旗を上げて逃げ回っているのが現実の姿だ。

 

  沖縄県は、拒否自治体には最後まで実施を要請するが、例え「穴あき状態」であっても県民投票を予定通り実施する方針だ。県が代理で投票事務をおこなう案もあるが、県民を裏切る連中を包囲する世論はさらに鋭さを増すだろう。

 

 沖縄は米軍統治のもとで参政権を奪われ、行政主席(現県知事)も公選でなく米軍の民政官による任命制であったところから、島ぐるみのたたかいによって投票権を勝ちとってきた歴史がある。沖縄県内への新たな米軍基地の建設に対して意志を示す県民の権利を奪った者たちについては、将来にわたってその名を歴史に刻むことになるし、今後は県民からの反撃に晒されることになる。民主主義をことごとく潰して米軍統治下に逆戻りさせて恥じないような思いあがりは大概にしなければならない。

 

 今年は、4月に衆院補欠選挙(3区)、7月に参院選があるが、各地の市長選、市議選も含めて相当なしっぺ返しを覚悟しなければならない趨勢だ。

 

窮地に立つのは日米政府 県民との対決恐れる

 

  辺野古の土砂投入や県民投票の攻防をめぐって、追い詰められているのは県民の側ではなく、日米政府の側であるというのがあるがままの姿だ。「法的拘束力はない」という県民投票からも逃げ回って、県民との直接対決を恐れている。

 

  昨年12月14日には、辺野古埋め立て地への土砂投入に着手したが、沖縄県が試算しただけでも工事完了までに今後13年かかり、総事業費は当初の10倍に及ぶ2・5兆円に達するという。建設予定海域には「マヨネーズ状」の軟弱地盤の存在も明らかになり、知事や地元名護市の承認を必要とする設計の変更は避けられない。工事全体からいえば数十分の一のもっとも容易な部分から着手しているだけで、これをもって「後戻りできない状態」などというものでは決してない。米国政府に対して「工事着工しました!」のアピールをするとともに、「オマエたちがいくら反対しても無駄だ」と県民の諦めを誘うための見切り発車だ。県民が諦めない限り、後回しにした膨大なツケが次次に露呈していくことになる。

 

辺野古基地阻止を誓った知事選での県民集会(昨年9月22日、那覇市)

  一方、県民の民意を無視して安倍政府が強行すればするほど、辺野古の埋め立ては国内だけでなく国際的な注目を集めている。この間、ホワイトハウスのトランプ大統領に対し、県民投票の実施まで埋め立て工事のストップを求める電子署名活動がおこなわれ、開始から10日で10万人に達し、1カ月で20万人をこえた。請願署名が1カ月で10万人をこえた場合は政府が直接回答するというホワイトハウスの制度を利用したもので、米政府は60日以内の回答を迫られている。

 

 国内では、タレントが署名を呼びかけて一部メディアから「政治的発言をするな」などと叩かれていたが、「クイーン」のギタリスト、ブライアン・メイをはじめ海外のアーティストや著名人も署名活動に加わった。知事選で文句なしの過去最多得票で反対の民意が示されながら問答無用で進める基地建設は、「国防のため」でも「安全保障のため」でもなく、米軍のためであることが誰の目にも明らかだからだ。

 

ホワイトハウスへの請願署名サイト。10日現在で署名数は20万6166人に達している

  昨年末は、日ロ交渉でも辺野古問題を指摘したプーチンに「(在日米軍について)日本政府に決定権はあるのか」と問われ、北方領土問題も暗礁に乗り上げようとしている。いくら日ロ間で約束をしたところで、北方領土に米軍基地がつくられたら近隣国にとっては脅威でしかない。日本政府そのものが主権国家とみなされておらず、主体的な外交ができない。

 

  新年早早、安倍首相がNHKの日曜討論で「土砂投入にあたって、あそこのサンゴは移している」云云といい放ってまたも炎上している。専門家からは、サンゴも希少生物も移植しただけでは環境保全措置として何の意味もないことが指摘されているが、工事予定地で確認されているサンゴ約7万4000群体のうち政府が移植したのはわずか9群体だけで、その他の膨大なサンゴは知事の採捕許可が必要であるため無視しているのが実際だ。県の指導を無視した違法工事をしておきながら、口を開くたびにウソを平然と垂れ流すからみなが怒る。県民の生命にかかわる問題について一国の首相の発言としてはあまりにも軽薄で、国際的な信用もますます低下している。

 

  そもそも「辺野古移設が普天間返還の唯一の解決策」というのが大きなウソだ。普天間の返還条件は、2013年に日米両政府が嘉手納基地以南の6施設の返還・統合計画を発表したさいに示したもので、返還条件は8つある。

 

 そのうちの一つが滑走路の問題で、合意文には「普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のため、緊急時における米軍による民間施設の使用を改善する」とある。普天間飛行場の滑走路は約2700㍍だが、辺野古新基地はオーバーランを含めても約1800㍍しかない。沖縄県内で、普天間並みの「長い滑走路」を持っている民間施設は那覇空港であり、米国防総省の高官が「那覇空港の使用を想定している」と明言した事実もある。09年にはキャンベル米国務次官補が「中国との有事に備えるためには、嘉手納と那覇空港を含めて少なくとも滑走路3本が必要だ」と、日米の外務・防衛当局の協議で要求していたことが、ウィキリークスが公開した外交資料で明らかになっている。

 

 2017年6月15日の参院外交防衛委員会で、このことを問われた稲田元防衛大臣が「(辺野古新基地ができても)普天間の返還条件が整わなければ、返還とはならない」と答弁して物議を醸した。この発言で稲田大臣は更迭となったが、あたかも辺野古への「移設」で普天間が返還されるような印象を振りまいて沖縄県民同士を対立させ、さらに「沖縄の痛みを分かち合え」といって本土にも基地や訓練場を造るという手法で日本全土を米軍の不沈空母として提供し、終わってみれば在日米軍が格段に強化されるというシナリオだ。

 

  普天間の空中給油機が移駐した岩国基地でも、「基地の沖合移設」「騒音の解消」といって基地沖合を埋め立て、埋め立てに使った土砂を削り出した愛宕山には学校や病院を兼ね備えたニュータウンを建設するという約束で始まったが、基地面積を1・5倍に拡張したところで、ニュータウンの建設計画は「不採算」として中止された。厚木基地からの空母艦載機部隊(60機)の移駐計画が明らかになったのはその後だ。滑走路も2本になった岩国基地は、120機の戦闘機、米軍関係者1万人を抱える極東最大の基地へと強化され、市民のための住宅予定地は防衛省に買い上げられて広大な米軍住宅へと変貌している。ウソと騙しで市民を翻弄し、力尽くで基地を拡張していくのが「日米同盟」の姿だ。このようなものに対しては「騒音を軽減してください」ではなく、「出て行け」でなければ解決しない。

 

  宜野湾市民のあいだでも、最近、普天間基地の滑走路や施設の大規模リニューアルをしたことや、移転先とされるグアムではまったく工事が始まっておらず更地のままであることが語られており、「返還する気配はない」という実感が強い。今月8日には嘉手納基地の北側滑走路を施設工事のため閉鎖し、その代替滑走路として普天間基地や那覇空港を使用することが報じられている。「移設」といって辺野古新基地計画を進めながら、実際には、嘉手納、普天間、那覇の「滑走路3本体制」がすでに動いている。

 

  沖縄県民が求めているのは、普天間基地の「辺野古移設」でも「本土移設」でもなく、20万人もの県民を殺戮して奪った基地を沖縄県民に返し、米軍は出て行けということだ。侵略者が強奪した基地に代替案など必要ない。その思いは、私たちが取材したオスプレイ配備に反対する佐賀やミサイル基地計画に反対する山口県民と共通するもので、日本全国が抱える問題だ。沖縄のたたかいに連帯してそれぞれの地域で郷土を守るたたかいをくり広げている。民主主義を剥奪し、法治国家の原則さえも投げ捨てていくムキ出しの強権に対して、諦めではなく、日本全国が呼応したたたかいを挑んでいくことが求められている。

 

  沖縄の県民投票をめぐるたたかいは、辺野古問題を県民の頭越しで進める日米政府に対し、反対する側もイデオロギーや政党利害に縛られて運動を形骸化させるのではなく、主人公であるべき県民の力を束ねて形にしていく努力をともなって発展してきた。県民投票が実現にこぎ着けたのは、その力関係において県民の側が圧倒してきた結果であり、これはもう覆い隠すことはできない。政府は力尽くでその民意をねじ伏せようとしているが、要するに県民の意志が形になるのを極度に恐れていることをあらわしている。県民の側が諦めず、さらに結束を強めるなら何の意味も持たない。禁じ手を連発する安倍政府に対して、がっちりと県民世論を束ねて進むことが重要だ。基地建設の前に倒壊するのは安倍政府の側だ。

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